日本茶インストラクター ブレケル・オスカル|「スウェーデン人×経験」を強みに日本茶の魅力を海外に広める

創業手帳人気インタビュー

日本茶の「シングルオリジン」が持つ魅力を国内外に発信する


コーヒーやワインで聞き馴染みのある「シングルオリジン」ですが、ブレケル・オスカルさんは日本茶の「シングルオリジン」に注目し、その魅力を世界へ発信しようとしています。
日本茶のシングルオリジンは、特定の地域・原産地のみで栽培された茶葉を指し、複数の原産地の茶葉をブレンドしたものと比べて、独特の風味や味を持つと言われています。

オスカルさんは、日本茶に魅せられて日本茶のために日本語を習得し、有資格者の中でも外国人はまだ少ない「日本茶インストラクター」の資格を取得。
スウェーデン生まれスウェーデン育ちでありながら、日本茶に精通しているというオンリーワンの強みを生かして日本茶業界を盛り上げているオスカルさんに、創業手帳の大久保がお話しを伺いました。

ブレケル・オスカル
日本茶インストラクター
1985年スウェーデン生まれ、18歳で日本茶に魅了され、その後日本茶の専門家を志す。ルンド大学日本語学科を経て岐阜大学に留学。卒業後、日本の企業に就職。外国人として初めて、手揉み茶の教師補の資格を持つ。世界緑茶協会「CHAllenge」賞受賞。2020年日本茶ブランド「 Senchaism」発売。国内外での日本茶講習会やセミナーを通じ、日本茶の普及を目指す。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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日本茶との出会いは高校3年生

大久保:オスカルさんと日本茶の出会いはいつでしたか?

オスカル高校3年生の時にスウェーデンの紅茶専門店で初めて日本茶と出会いました。

日本茶に出会う前から、映画や本を通じて日本への興味はありました。そのためすぐにでも日本に行ってみたい気持ちがありましたが、高校3年生でスウェーデン在住でしたので、もちろんすぐに日本に行くことなどできませんでした。

日本への航空券も高校生が買える値段ではありませんし、そもそも日本語が話せなかったので、言葉が通じない国に行くことへのハードルもありました。

そこで、まずは日本の食べ物や飲み物を通じて、日本を知ることから始めようと思うようになりました。

スウェーデンは紅茶を含めてもお茶よりコーヒーの消費量が多い国なのですが、たまたま私の両親がコーヒーよりも紅茶を好んでいました。そのため、スウェーデンの家庭としては珍しく広い意味での「お茶」が身近にありました。

このような背景があり、日本に興味を持っていた当時の私が、最初に触れたのが「日本茶」だったのは自然な流れだったと思っています。

大久保:スウェーデンから日本に来るにはどれくらい時間がかかりますか?

オスカル飛行機で約10〜11時間かかります。

私はスウェーデンの中でも南部の都市出身なので、スウェーデンから日本に来る時は、スウェーデンの首都ストックホルムの空港ではなく、デンマークのコペンハーゲンの空港を利用しています。

日本茶には「味」だけでなく「歴史」という魅力もある

大久保:映画や本を通じて日本に興味を持ったとのことですが、日本のどのようなことに具体的に興味を持ちましたか?

オスカル:まずは明治維新をきっかけに日本が一気に近代化した歴史や当時の思想に興味を持ちました。

高校の世界史の授業でも日本の歴史について学びました。元々読書が好きだったこともあり、図書館で日本に関する本を借りて読むことも多々ありました。「近代社会」や「侘び寂び」など幅広く日本に関する本を読みました。

また、戦国時代の独特な文化にも興味を持ちました。特に戦国時代に栄えた茶道では、お茶を飲むために庭や専用の部屋を作ることをとても不思議に感じ、その真意を知りたくて日本茶を飲み始めました。

一般的な高校生でも音楽やファッションなど様々なことに興味を持つと思いますが、そのような感覚で私は日本茶に興味を持ち、まさか1杯のお茶で人生が変わるとは思いもしませんでした。

難しさを知らなかったからこそ日本茶と日本語の世界に飛び込めた

大久保:最初に日本茶を飲んだ時はどう感じましたか?

オスカル:私は現在は日本茶の淹れ方や美味しさを引き出す方法を教える立場にあり、今までに世界15カ国で教えた経験があります。

しかし、私が高校3年生の時に初めて日本茶を買ったのは紅茶の専門店で、緑茶は売っていましたが、店員さんは紅茶の専門家なので緑茶の淹れ方は教えてくれませんでした。

買った茶葉を自宅に持ち帰り、紅茶を淹れる要領で紅茶ポットに茶葉を入れ、熱湯を注いで飲みました。淹れ方が悪かったこともあり、とても青臭くて苦いと感じ、最初の印象はよくありませんでした。

大久保:確かに日本茶は苦味が強いですね。日本語を覚えることは大変ではありませんでしたか?

オスカル:私は日本茶の勉強をするために、日本語を一生懸命勉強しました

日本茶インストラクター講座のテキストを読める程度の日本語レベルを習得するまで、何年もかかりました。日本語の勉強を始める前からその難しさを知っていたら、勉強をしようとは思わなかったかもしれません。

何も知らなかったので、日本語の世界に飛び込むことができたのかもしれません。

趣味だった日本茶を仕事にしようと思ったきっかけ

大久保:最初に日本に来てやったことはなんですか?

オスカル:私が最初に日本に来たのは2006年、観光客としてです。

大学で哲学を専攻していた私はその後のキャリアについて悩んでおり、その悩みを弁護士をしている父親に相談しました。

私の父は海外で生活する経験をしなかったことを後悔していると話してくれて、もし行きたい国があるのであれば、大学を休学して実際に行ってみることを勧めてくれました

日本でホームステイをしたり、実際に日本茶に触れたりすることで、興味がさらに強くなりました。

帰国する際、色々な茶器をスウェーデンに持ち帰りました

最初は趣味として日本茶を淹れていましたが、日本茶を仕事にするきっかけとなったのは、日本人の友人がスウェーデンの私の自宅に遊びに来てくれたことでした。

私の持っている茶葉の種類や茶器の多さに驚き、ここまで日本茶が好きなのであれば「日本茶インストラクター」になることを勧めてくれました。

この話を聞いた時に、スウェーデンにもワインのソムリエを仕事でしている方はいますが、日本茶の専門家はいませんでした。ここにビジネスの可能性を感じましたし、せっかくこの先の人生で何十年も働くのであれば好きなことを仕事にしたいと思いました。

私は優柔不断な性格なのですが、日本茶インストラクターの話を聞いた時は「この資格を取ろう」とすぐに決断しました。

日本茶の専門家になるために、2008年に日本語の学部がある大学に入り直して、人生の舵を大きく切りました。
 
大久保:お茶を楽しむためには茶葉だけでなく、茶室や茶器も大切なんですよね?

オスカル:今の時代はスマホを初めとした「便利さ」を追求したものに溢れていますが、その便利さに喜びを感じたり、生活を豊かにしてくれるものはあまりないように感じています。

しかし、茶器は使う時間や持った感触を含めて、私の人生を豊かにしてくれていると思います。

大久保:戦国時代に殺し合いをしていた武将がお茶に没頭していたということは面白いですよね?

オスカル:武将とお茶は一見全く関わりがないように見えますが、命の危険と隣り合わせな状況である武将だからこそ、茶室での時間が唯一の安らぐ時間だったのかもしれないと感じています。

スウェーデンではなく日本で「日本茶起業」をした経緯

大久保:起業しようと思った経緯を教えてください。

オスカル:日本でお茶の活動を始めたきっかけは静岡県の茶業研修センターの研修生をしたことでした。今までにもアジアからの外国人研修生がいたと聞いていますが、私を受け入れていただいたタイミングでは研修生は私1人でした。

初めて欧米から来た研修生ということで静岡県内で注目していただき、静岡ローカルのテレビ番組への出演や講演会の依頼をいただくようになりました。

研修が終わって東京に移り農水省管轄で運営されている「日本茶輸出促進協議会」という組織で海外に向けたPR活動の職員を2年間勤めました。

職員をしながら、講演会や雑誌の連載、本の出版などの活動も行っていました。

仕事の依頼を多くいただいていたので、その仕事をマネジメントするために会社が必要になり、起業しました。

元々起業を考えていた時には、スウェーデンで会社を作るつもりでした。日本で自分のティーブランドを作ってスウェーデンやヨーロッパでオリジナルの日本茶を販売したいと思っていましたが、スウェーデンに帰ってしまうと日本での講演会など軌道に乗っていた活動が進めにくくなるため、日本で起業することにしました。

外国人であることを強みにして日本茶業界を盛り上げる

大久保:日本人が日本で起業したり、本を書いたりするのも大変だと思いますが、何か一つ自分にしかないオンリーワンを持つことが起業には必要ですか?

オスカル:私にとってのオンリーワンが日本茶ですが、その強みが私になかったら起業していなかったと思います。

日本でも紅茶やコーヒー文化が広まったこともあり、日本茶の国内市場が縮小傾向にあります。そこで日本茶を海外に輸出したいという流れができています。

実際に日本茶の関係者の方々も海外にどんどん日本茶を発信したいと思っているのにも関わらず、コネクションがなかったり、日本茶の魅力を外国語でどう伝えればいいのかわからないと頭を抱えていました。

私も資格を取っている「日本茶インストラクター」は現在約5,000名ほど有資格者がいますが、そのうち外国人は多くても15名ほどです。

有資格者の日本人の中で、英語や外国語を堪能に話せる方も少ないと思います。

外国人である私が静岡県の茶業研修センターで研修生をしたり、日本茶輸出促進協議会で勤務したりしたことが、日本茶市場において私がオンリーワンだと言っていただける理由かもしれません。

日本茶の魅力を海外に発信するために「シングルオリジン」に注目

大久保:コーヒーの市場では「シングルオリジン」という生産者や製法単位での銘柄に注目が集まっていますが、日本茶にもこの流れが必要なんですよね?

オスカル:コーヒーやワインは生産者や農場にまで注目が集まっていますが、世界的に日本茶への注目をさらに集めるためにも、シングルオリジンとしての日本茶に私は注目しています。

日本茶業界は衰退傾向にあると言われることも多いですが、実際に生産者側は高齢化をはじめとして多くの課題があります。

しかし、20年前にはなかった日本茶の品種が出てきたりもしているため、消費者側からすると今の日本茶に面白さはたくさんあると思っています。

大久保:日本茶はブレンド茶が多いんですよね?

オスカル:一般的に多くの人たちに飲まれる緑茶は今後もブレンド茶がメインになると思います。ブレンド茶にはブレンド茶にしかない美味しさがあり、これからも多くの方々に親しみやすい日本茶として、とても重要な役割を担うと考えています。

このブレンド茶とは少し違う切り口で、日本茶の良さを発信するためにも、個性が楽しめる少し高級なシングルオリジンのような日本茶も必要だと思います。

ワイン業界でもロマネコンティのような高級ワインを飲んでいる方はごく一部だけです。しかし、このようなワインがあることで、専門家同士の交流が生まれたり、文化が育っていくと考えています。

ワインのようにこだわり抜いた高級な日本茶も必要ですし、今まで通りに多くの方々に親しまれる味と価格帯の日本茶も、どちらも必要だと思います。

お茶を通じた「一期一会」な出会いが日本での起業に繋がる

大久保:お茶を通じて色々な出会いがありましたか?

オスカル:日本で「一期一会」という言葉がありますが、これは元々茶道の言葉です。
私も様々な場面で一期一会を感じることがあります。今までの活動や経験もタイミングがよかったと思える部分が大きいです。

静岡県の茶業研修センターの研修生になったのも、少し早すぎたら外国人をまだ積極的に受け入れていなかったかもしれません。

また、今はシングルオリジンとしての個性的な種類が増えていて色々な楽しみ方がありますが、30年前にはなかったため、私がここまで日本茶にのめり込めたかわかりません。

色々な場面で一期一会の出会いがあったおかげで、今の私があると強く感じています。

大久保:起業の手続きは日本人がしても大変だと思いますが、オスカルさんも苦労しましたか?

オスカル:起業の手続きについては、色々な方々に助けていただきました。

1件の仕事をするにしても、調整や資料作成などかなり大変で、いかに効率化できるかを考える必要があると考えています。

経営においても、経理や細かい調整など他の方にお願いできる業務はお願いして、私は自分にしかできない業務に集中したいと考えています。

また会社の設立や税務関係は、司法書士や税理士の方々にも相談しながら進めました。

大久保:出資金はどのように調達しましたか?

オスカル:今のところは全て自己資金で行っています。今は事務所や店舗を持たずにミニマルな形で経営をしています。

海外出張も多く、日本国内にいる時も講演会や日本茶産地の視察などで出張が多いため、事務所を構える必要がないのです。

ポストコロナを見据えた日本茶を世界に広める計画

大久保:最後に今後の展望を教えていただけますか?

オスカル:ポストコロナを見据えて色々な計画を立てています。外国人向けに日本茶の生産地を巡ったり、東京にいながら日本各地の日本茶を楽しめるようにする計画も進めています。

また、自社のティーブランドを本格的に海外に売り込んでいきたいと思っています。

今はコロナで海外に行きにくいので難しいですが、今後はお茶の魅力を伝えるために、実際に試飲会やイベントを海外で開催したいと思っています。

冊子版創業手帳では、web版と同様に多くの日本を盛り上げるために起業した経営者の方々のインタビューを掲載しています。無料で届くので、ぜひお問い合わせください。
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(取材協力: 日本茶インストラクター ブレケル・オスカル
(編集: 創業手帳編集部)

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