ミラーフィット 黄皓|スマートミラーは応用自在な新ガジェット

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年02月に行われた取材時点のものです。

フィットネス以外にもさまざまな可能性を秘めたスマートミラーの存在をもっと広めたい

婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』『バチェラー・ジャパン』に登場し話題となった若手実業家、黄皓氏。出身地である中国への視線や、メディアへの出演とSNSを上手にマーケティングにつなげているところなど、学ぶところが多々ありそうです。

現在は中国と日本で3社を経営する黄氏に、創業手帳代表の大久保がスマートミラーの可能性や起業の経緯などをお聞きしました。

黄皓(こう こう)
ミラーフィット株式会社代表取締役
中国湖南省出身。高校入学のタイミングで来日し、早稲田大学を卒業後、三菱商事に入社。貿易事業を担う。現在は上海の貿易物流会社の代表取締役とトレーニングジム『BESTA』のサロン経営者を務め、それぞれの活動と並行し、2020年7月ミラーフィット株式会社を創業。2020年、婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』に参加。2021年『バチェラー・ジャパン』シーズン4のバチェラーを務め話題となる。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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フィットネス以外にも応用自在なスマートミラー

大久保:まずは事業についてお聞かせ願えますか。どんなサービスなんでしょうか。

:消費者向けと投資家向けと若干違いがあります。消費者向けには運動に関する「うっ」と感じる瞬間をなくすサービスですね。投資家向けには、「スマートミラー」という新しいIoTデバイスを使って、空間の価値を最大化しようというのが我々のコンセプトです。

ジムに行き続けることって、奇跡の連続だと僕は思っているんです。雨降ったら外に出るのが億劫ですよね。飲み会があったらダサい格好で行くのは嫌だし、そうすると荷物も増える。今日は天気もいいし、他に予定もないし、ジムに行ける!そんな日に限って予約が取れない。「うっ」という瞬間です。そこで、自宅でスマートミラー「ミラーフィット」を見ながらトレーニングができるというサービスを作ったんです。外出しなくていいし、予約もいらないし、トレーナーもいます。

2016年に行われた、フィットネスクラブに通い始めた人々の運動継続率を調べた調査があるんですが、なんと12か月後には約3%の人しか運動を継続できていなかったそうなんです。世界中のジムが、間接照明をつけたり、いろんなキャンペーンを実施したりと努力を重ねても、継続率は3%なんですよ。

自宅ならジムに向かうまでの「うっ」という瞬間をゼロにすることができます。自宅は最高のトレーニング空間なんです。

大久保:縦型の鏡なんですね。パソコンがスマートフォンになって生活を変えたと言われますけど、大きいサイズじゃないとできないこと、というのもありますよね。

テレビの画角ではなく、スマートフォンの16対9の比率のメディアって増えているんですよね。モビリティ(携帯性)は高いけど画面は見にくいスマートフォンもあれば、モビリティは高くないけれど画面は見やすいものもあります。ハードが何というのは大切ですよね。例えばiPhoneはiPodやウォークマンなどが進化したごく最近登場したものですが、鏡というのは3000年前からあります。反射して姿を写すだけなのに、大きくて存在感があるものがほぼすべての家にあるってすごいことですよね。

鏡を高付加価値にしたときに、迷惑に感じる人は少ないと思うんです。毎日眺めるものですから、例えば広告を流したらどうかという案も出ています。

大久保:スマートミラーに関して、フィットネスは自己を律しないとできないことですが、律しない切り口もあるわけですね。

:最終的には「鏡といえばスマートミラーで、スマートミラーといえばミラーフィット」となって欲しいんですが、スマートミラーというものが漠然としているので、広めるのが非常に大変だと感じています。

オンラインフィットネスという切り口で入っていって、横展開でファッションECというアイディアも温めていますし、今度「両親に健康を送ろうキャンペーン」を始めるんですが、ミラーで運動ができるのはもちろん、大きい画面で孫と会話ができたり、見守りサービスもつけられます。

また、資金調達関連でやりとりをしているブロックチェーンやNFT関連の企業があるのですが、NFTアートって僕も持っているんですが、使いどころがなかなかないんですよね。

スマートミラーを鏡として使わない時には、スクリーンセーバーとしてNFTアートを写すということも可能です。少し前に流行った、デジタルアルバムのサイズが大きいバージョンですね。

中国と日本、両方を見てきたことで思い切りがよくなった

大久保:ご出身は中国なんですよね。

:はい、出身は中国の湖南省です。工業地域ですね。僕が小さい頃、両親は日本で仕事していたんですが、もう25年ほど前からベースを上海に移して貿易企業をやっています。

大久保:孫さんも韓国にルーツがありますし、外国にルーツがあるというのはどこか我々と違う視点が持てるのかなという気がするんですが。

:15、16才の時から日本に住んでいますので、考え方のベースは日本なのかなと思いますが、事業をやる上で大きな決断をするときなどは、「日本なら普通はここで止めるよな」というところも、もうひと押しぐっと踏み込めるところはあるかもしれないですね。

コロナでここ2年ほど帰ることができていませんが、それまでは月に一度のペースで上海に通っていましたから、めざましい発展の様子を肌で感じてきました。例えば電子マネーの普及など、ベンチャーやITが勝手に先行して動いて、結果として法規制が始まったりと、とにかく中国は勢いや柔軟性がすごいと感じます。「なんでも始めちゃえ」という勢いがありますね。それを見ていると「やらない理由ってなんなんだろう?」と。

大久保:共産党の国だから規制が強そうと感じるのに、逆っていうのが不思議ですよね。

:そうですね。そのあたりはケースバイケースで、「国の発展につながるならばやっていいですよ、でも管理はしますよ」という感じでしょうか。

両方の国に人脈もありますし、両方の文化もわかりますし、メディアを通して少しでも中国人の印象をよくしたいと思って活動しています。

大久保:『バチェロレッテ・ジャパン』『バチェラー ・ジャパン』には、どういうきっかけで参加されたんですか?また、参加されたことでどのような影響があったのでしょうか。

:参加したきっかけは、友人の紹介ですね。番組に参加したことで、やはり製品やサービスを知ってもらうきっかけになったかなと思います。全国に20店舗ぐらいあるパーソナルトレーニングとセルフエステ、有酸素運動の通い放題というパーソナルジム「BESTA(ビスタ)」を運営しているのですが、とがったサービスなので知ってもらえたら求めている層には必ず届くと思っているところを、広告費をあまりかけずに知っていただけたかなと思っています。

あとは社会的信頼の問題ですね。本来であれば、なかなか知り合えない経営者の方達に、君面白いねと言っていただける。この2年間、本当にいろいろな方に会わせていただいたので、メディアの力はすごいな、ありがたいなと思っています。

大久保:製品は中国の工場で作られているのですか。

:そうです。工場とは毎日のように電話をして、コミュニケーションを取っていますね。中国の工場で大事なのがクオリティコントロールだと思うんですが、いわゆる「いいもの」の定義が工場によっても人によっても曖昧なんです。例えば画面に擦り傷がついていても「これでもいいかな」って思う人はいます。「いいものとはこういうクオリティのもの」ときちんと定義しておくことが、非常に大事になってきます。

逆に言うと、日本は高品質で管理しすぎだと感じますね。JIS規格なども良しとされる幅が狭いので、それに当て込んで海外で生産しようとすると本当に大変です。

「怖くなかった」から起業を決めた

大久保:起業に一番役立った経験は何でしたか?

:最初のパーソナルジムの事業は、創業支援融資を受けて立ち上げたんですが、当時の事業計画書を見るとこんなクオリティでよく通ったなと思います(笑)。ただ、三菱商事時代にメキシコで1年半駐在していたことを含め、約8年間貿易事業で頑張ったことは評価していただけたのかなと思いますね。

大久保日本は無担保で保証協会や公庫から創業資金が借りられ、利息も安いので恵まれていますよね。フィリピンで会社を作ったことがあるんですが、そんなに借りられないですし、日本の起業家は恵まれていると改めて感じました。

:おっしゃる通りだと思いますね。僕もSNSを通じて、日本で起業をするのは融資に対する金利も低く、環境も整っているので非常にローリスクだよ、と発信しています。

大久保:三菱商事というと、世間的にはいい企業に入社したのにどうして、などという声もあると思うのですが、いかがですか。

:三菱商事に対して大きな不安があるわけではなかったんです。ただ、よく「大人になると天井が近づいてくる」という言い方をしますよね。10年目が近づいてきたときに、天井が見えた気がしたんですよね。このまま行くと、一番上は社長、普遍的には部課長クラスで年収2〜3000万円です。もちろん敬意がないわけではなく、ただ僕は想像できてしまう未来よりも、想像し得ない未来に飛び込みたいと思ったんですよね。

怖い怖くない」で言うと怖くなかったんです。当時7年目で年収1200万円。会社を辞めても、自分のキャリアや言語スキルを考えたら例え起業がうまくいかなくても、再就職はできるだろうと思いました。1200万円が900、600になろうとも、食うに困ることはないだろうと。本当にダメだったら何かしら生きる術はある、ホストにだってなれるかもしれないですし。

貧富の差が激しく、のしあがるのが普通のことである中国を体験してきたこと、また父親が起業家であり、起業の相談ができたこともプラスでした。

ですから家庭を含むバックグラウンドも、起業しようという背中を押してくれた一因だったように思います。

さまざまな連携を進め、顧客とのタッチポイントを作っていきたい

大久保:今後の展開についてはどうですか。例えばハードに特化していくのか、ソフトに特化していくのか、というところはいかがでしょうか。

:その点に関しては、ミラーの開発も、ソフトウェアの開発も続けていきたいですね。アップルがiPhoneを作り、多くの人にとって手放せない存在になったように、我々もスマートミラーをそんな存在にしていきたいと思っています。

スマートスピーカーのように、自宅にある全てのIOT家電と連携できるので、スマートロックの解錠や、電気のオン・オフなどもできるようにすることが可能です。

それを踏まえて、今進めているプロジェクトとしては、スマートミラーを装備した一等賃貸戸建てを1000棟建てていく予定です。建築費の中にミラー代は含まれていて、維持費は管理費に含まれます。皆さん管理費の内訳ってそんなに気にされないですよね。

大久保:いろいろと連携の話が進んでいるのですね。今後が楽しみです。スマートミラーというと、やはりまだ未知の存在であるという人が圧倒的に多いと思うのですが、実際に体験できる場所はあるのでしょうか。

:そうですね、やはり15万円の商品ですので、実際に試してから購入したいという声は多いです。先日、伊勢丹でポップアップをさせていただいたのですが、1週間の売り上げが過去1位だったということで、すべての百貨店でポップアップが決まりました。今後各地でポップアップをすることで、より多くの方にスマートミラーを実際に体験していただきたいと思っていますね。

また、今のオフィスがそろそろ人数的にも限界なので、新しいオフィスに移り、今のオフィスは路面店にしようかなと考えています。

大久保:やはり実際に使ってみて、使い心地が試せたり、実際に使っているシーンが思い浮かんだりということは、購入前のステップとして重要なのかもしれませんね。

:そうですね。今後YouTubeでも、どのように自分がスマートミラーを使っているのかということを発信していこうと思っています。起業して以来、マーケティングのためにSNSは積極的に使うようにしています。

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(取材協力: ミラーフィット株式会社 代表取締役 黄皓
(編集: 創業手帳編集部)



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