半年で有料自習室の目標会員数達成!元教員の立ち上げ奮闘記 スタディグレイス川合善仁さん

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年10月に行われた取材時点のものです。

自身が資格の勉強をする際に必要を感じたことで、有料自習室の起業を思い立った川合さん。元教員というバックグラウンドが強みに

昨今、店舗系ビジネスはコロナの影響を、また教育ビジネスは少子化の影響を受けており、難しい、なかなか手を出しづらいという印象があるのではないでしょうか。そんな中で、自習室の運営で起業し、早速軌道に載せたのがスタディグレイスの川合善仁さんです。静岡県浜松市で展開しており、次の店舗の展開も視野に入れているとのこと。

特徴は教員からの起業という点です。どのようにして自分の強みを生かして起業し、軌道に載せたのかについて詳しくお聞きしました。

川合善仁(かわいよしひと)
スタディグレイス代表
1978年静岡県浜松市で生まれ、東京学芸大学教育学部中等教育教員養成課程理科専攻を卒業後、浜松市内の中高一貫校にて19年間勤務。退職決意後、FP2級や宅地建物取引士などの資格取得の際に学習場所に苦労した。自身の資格勉強の経験と受験生と接した教員経験をもとに、会員制有料自習室を立ち上げた。

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有料自習室で起業しようと思ったのは、自らニーズを感じたから

―本日はよろしくお願いいたします。なぜ今のような事業で起業しようと考えたのですか?

川合:こちらこそよろしくお願いします。
実は教員を辞めようと決めた時、最初は転職を考えていました。転職へ向けて、FPや宅建などの資格取得のためにYouTubeを使って独学していた時に、有料自習室で起業しようと思いつきました。理由としては3点が挙げられます。

まず、自分自身が家以外の勉強場所が欲しかったことです。Wi-Fiがあって集中できる環境が必要でした。2点目は、自分の担任していたクラスの中には塾や予備校へ通う生徒も多く、「自習室を使いたいから通っている」生徒が多数いたことです。3点目は、スタディサプリをはじめ、安価かつ高品質な映像授業の教材が出てきたことにより、塾以外の選択肢を多くの高校生が持てたことです。19年間教員として勤めてきた中で、進路指導や学習指導の経験を活かせること、また学習するための場所が今後重要視されるだろうという予測から起業しました。

―なるほど。長年教員をされてきたからこそ、生徒の観察から需要を読み解くことができたのですね。サービスの強みはなんですか?

川合学校や塾にはない設備と、学習意欲が高い高校生たちから生まれる空気感です。

高校生にはもったいないと言われそうな高機能チェアや、PTA全国協議会推薦品のUSB付電気スタンド、ドリンクサーバーや休憩室、仮眠スペースを設置しました。メリハリをつけた学習が長時間できる環境を用意できるよう、意識しました。塾や予備校と違って授業が無いため、来る義務がありません。よって、勉強したい高校生しかおらず、適度な緊張感があるために自然と学習時間が伸びています。

高校の現場や、大学入試について理解がある自分が運営していることも強みだと思っています。

「有料自習室で勉強」というコンセプトを広めるのが大変だった

―起業する上で、一番大変だったことは何でしょうか?

川合:集客ですね。見学体験していただくまでが大変でした。有料自習室で受験勉強をするという考え方は今まではないものだったので、まず認知されるまでにハードルがありましたね。

―確かに新しい事業は、その必要性を感じてもらうまでに一定の時間がかかりそうですね。そのハードルをどう乗り越えましたか?

川合:いろいろな方法を試しました。ホームページ作成、チラシやビラ配り、リスティング広告、市の広報誌掲載、新聞広告掲載、駅看板設置、野立て看板設置などを行い、少しずつ認知度が上がってきました。その後、友人の紹介にも恵まれて、少しずつ会員が増えてきたような経緯です。

―こういったサービスにおける口コミは力がありそうですね。無人化という観点で行っている取り組みはありますか?

川合NFCカードによる入退室管理、顔認証入退室管理システム、ネットによる相談予約の3点です。やはり自動化できる部分は自動化すると人手がかからずラクですし、これからもこういったテクノロジーは積極的に使っていきたいですね。一方で、悩んだときにいつでもそこにいる人間に相談できる安心感は大事にしたいので、入退室時には、生徒の皆さんに声掛けをして相談しやすい雰囲気を作るようにしています。

―物件探しではどういう点にこだわりましたか?

川合①高校と駅との間の高校生の通学路を意識、②駅の近く、③駐輪場が確保できること(多くの高校生が自転車通学のため)、④専有面積が広い、の4点です。やはり事業の内容的に、立地や使い勝手、また充分な席数の確保が重要だと感じたので、この4点を意識しました。

―公的な融資や補助金、支援で使ったものはありましたか?

川合:「地域創生起業支援金」、「浜松市空店舗利活用補助金」、「浜松市3密対策事業者支援事業費補助金」、「小規模事業者持続化補助金」、「小規模企業経営力向上事業費補助金」の5つを使用しました。こういった補助金、支援金についてはマメに情報収集していましたね。

ーさまざまな補助金を上手に活用されたのですね。創業手帳は読みましたか?感想はいかがでしょうか。

川合:届いて一気に読みました。もっと早く申し込んでいればと思いましたが、1年運営してきたからこそ理解できる内容も多いと感じました。

今は個人事業主ですが、軌道に乗り法人化を検討する際には、とても役立ちそうな内容です!

ー資金調達で大変だったことはありますか?

川合:貯金と退職金で初期投資を行ったので、資金調達はしていません。ランニングコストを収入が超えるまでの不安感は強かったです。

「元教員」の経験が生きる自習室経営

ー元教員の強みはありますか?

川合「受験生がどの時期にどんなことで悩むのか」を経験的に理解しているのは大きいと思います。また、子供を預ける保護者にとっても安心材料になっているのではないかと思います。開室当初は自分の名前や顔を出さずに会員募集をしていたのですが、入会者の中に、誰が運営しているかをfacebookで調べ、私の出身大学が志望校だったのが決め手で見学に来たと言われた方がいました。それから顔や経歴をオープンにしました。

過去には運動部の顧問もしていたので、長時間労働や休日が無いことにも耐えられる身体になっています(笑)。

ー日本の教育業界や教育についての課題感を教えて下さい。

川合:大きなことは言えませんが、課題は先生だと思います。今の先生は忙し過ぎてハイリスクな職業になってきていると思います。このままでは、なり手が少なくなるのではないかと心配しています。教育が大切なら、優秀な人がなりたいと思う職業でなければいけないと思います。

ー本当にその通りですね。それでは最後に、川合さんの今後の夢を教えて下さい。

川合:経済格差が生む教育格差を無くしたい、安心安全な放課後の学習場所を提供したいという思いから、『学校と家庭をつなぐ受験勉強のサードプレイス』としてこのスタディグレイスを創りました。まずは、2店舗目を出し、いろいろな地域に展開していくことが夢です。そして創業手帳の冊子版で取材していただくことも夢になりました。

ー本日は興味深いお話をありがとうございました!
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(取材協力: スタディグレイス代表 川合善仁
(編集: 創業手帳編集部)



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