アダコテック 河邑 亮太|日本の製造業をもっと楽しくクリエイティブに!「検品AI技術」で製造業全体のボトムアップに挑戦

創業手帳人気インタビュー

国立の研究開発法人である産総研の特許技術をコアに独自AIを開発!検査・検品のプロセスを自動化しモノづくりの進化と革新を支える


日本にはデジタル化が遅れており、アナログな製造過程を何十年も変えられていないという課題を抱える製造業が多くあります。大手企業からの多重下請け構造が多く、変化を起こしにくい体質になっているのです。

そんな日本の製造業に、産業技術総合研究所の特許技術を用いた独自のAIにより、変革をもたらす挑戦をしているのがアダコテックの河邑さんです。

産総研発のAI技術や日本の製造業の課題と解決策について、創業手帳代表の大久保が聞きました。

河邑 亮太(かわむら りょうた)
株式会社アダコテック 代表取締役
一橋大学法学部を卒業後、2011年に三井物産株式会社に入社。南米チリの自動車ローン事業を行う子会社に社長補佐兼CFOとして3年間出向したのち、東京本店では主に新規M&A投資に従事。2018年4月からDMM.comに入社。経営企画室で新規事業立案、及び、投資先のPMI/バリューアップをハンズオンで実施。2019年7月より株式会社アダコテックに執行役員として入社、2019年9月より取締役、2020年4月より現職。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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4億円の資金調達に成功したタイミングでアダコテック代表取締役に就任

大久保:起業までの流れを教えていただけますでしょうか?

河邑:私は創業者ではないのですが、アダコテックの生い立ちをお話しさせていただきます。

アダコテックは産業技術総合研究所(以下、産総研)からスピンアウトした会社です。元々産総研に優れた画像処理の技術があり、この技術をビジネス化してもっと世の中の役に立てるために、伊藤と伊部の2人が創業エンジニアとして、2012年にアダコテックをスタートさせました。

研究所内では優れた技術だったのですが、実用化するまでには紆余曲折ありました。しかし、2019年に初めて外部からの資本を入れて4億円を調達し、このタイミングでベンチャーキャピタルからの紹介で私がアダコテックの4人目の社員として入社しました。その半年後に私がアダコテックの代表取締役に就任し、今まで経営をしているという流れです。

三井物産、DMMを経て就いたアダコテックの「経営者」というキャリア

大久保:河邑さんがアダコテックに入社される前の経歴についても教えていただけますか?

河邑:私は三井物産に7年とDMMに1年半勤務した後に、アダコテックに入社しました。

今までのキャリアの軸は2つあります。

1つ目の軸は、将来経営者になるための経験を積むことでした。学生時代にラクロス部でキャプテンをしていまして、その時に日本一になることができました。この原体験をビジネスの場でも生かしたいと思った時に、「経営者」という職業を志すようになりました。

三井物産入社3年目の時に、幸いにも南米の子会社の経営を任せていただくことになりました。実際に経営を経験してみて、私は「経営者」という仕事が得意かつ自分に合っていると思ったので、今後もその道を進んでいこうと決意しました。

2つ目の軸は、日本をより良くしたいという思いでした。この背景には、私が小学生から中学までをアメリカで過ごした経験があります。

私は野球をしていたということもあり、当時アメリカのメジャーリーグで野茂英雄投手が活躍している姿を見て、同じ日本人として勇気をもらいました。

今は世界的に見ると日本はネガティブな印象を受けることが増えているかもしれませんが、アメリカで私が日本人であることを誇りに思ったように、私の下の世代により良くなった日本を見せてあげたいと思っています。

この2つの軸を基準にキャリアを見つめ直した時に、日本発の優れた技術が基盤にありつつ、日本の基盤産業である「製造業」に変革を起こせる分野であるアダコテックに出会い、ジョインさせていただきました。

大久保:アダコテックにジョインして、河邑さんが社長になった経緯を教えてください。

河邑:当時は別の方が5〜6年ほど経営をしており、その方はアダコテックの黎明期を支えた素晴らしい経営者でした。しかし、ベンチャーキャピタルから出資を受けて、その資金を元にどう事業をスケールするかというステージの経営に関しては、私の方が経験値があると判断され、経営を引き継ぐことになりました。

「検品AI」で日本の製造業をデジタル化

大久保:アダコテックの事業内容を簡単に教えてください。

河邑一言で言うと「検品AI」です。完成した製品の外観を最後にチェックする工程が「検品」です。この検品は全産業のうち約95%は「人の目」で行われています。

アダコテックの検品AIの流れとしては、カメラで画像を認識し、AIでチェックを行い、基準をクリアした製品のみ出荷されるという流れです。

アダコテックはこの検品工程の一部を担う「ソフトウェア」の販売をしている会社です。

大久保:製造工場において「検品」は手間がかかっているのですね。

河邑工場で勤務している方のうち5人に1人は検品をしていると言われるほど、検品には多くの人手が取られている状態です。近年の働き手不足や働き方改革などの課題解決にもつながる技術として産総研からスピンアウトして、この技術をアダコテックが実用化に向けて取り組んでいます。

大久保:アダコテックの技術が日本中の製造業に広まれば、どのような変化が期待できますか?

河邑製造業は本来もっと楽しくクリエイティブな業界だと思っています。しかし、現状は検品をはじめに単純作業が多くなっている業界でもあると思うので、単純作業はAI技術を使って機械化し、AIで集めたデータ解析や業務フローの改善などを人がやるべきだと思います。

大久保:「異常検知」の技術を簡単に言うとどのような仕組みですか?

河邑:AIに正しい製品や部品の画像を読み取らせて、実際に流れてくる製品や部品と照らし合わせて、その差分をチェックするという仕組みです。

この技術の難しいところは、正しい状態か正確にチェックできるかという点です。これまでの画像処理の技術では、その製品や部品が正しいと判断させるためには、何万枚の正しい状態の写真に加え、不良品の写真もできるだけ多くAIに読み込ませる必要がありました。

しかし、アダコテックの特許技術により、たった100枚の正しい状態の画像を読み込ませるだけで、異常検知ができるようになりました。

社会課題を解決するには1点に集中し付加価値を高める必要がある

大久保:今の技術を使って、検品以外の分野に取り組む予定はありますか?

河邑:実は私が入社した当時は、今よりも様々な技術の開発をしていました。

しかし、社会課題を解決するためには、できるだけ一点に集中して、より深く掘り進めて付加価値をつけていく必要があります。そのため、私が入社してまず行ったことは、できる限り「検品」の分野に特化することでした。

まずは一つの分野に特化して進めて、その分野で付加価値を出すことができれば、そこから派生して色々な分野に展開が可能です。

ですので、今は「検品」に集中する事業戦略を取っています。

大久保:この「検品AI技術」をどのように広めていきましたか?

河邑:まずは、テレアポやホームページから問い合わせをしたり、お手紙を書くなど、非常に泥臭い営業を行いました。

あとは展示会に出展して名刺交換を行い、また電話やメールでご連絡をするということを繰り返しました。

検品AIの目的は「人員削減」ではない!付加価値の向上が最重要

大久保:製造業の創業者には年齢が高めな方もいらっしゃると思いますが、AI技術を伝える際に、工夫していることはありますか?

河邑相手の会社の社長と現場担当者、両者と話すことを意識しています。

まず私の方で銀行の担当者や投資家の方などに協力していただきながら、社長に直接お会いできるように努力しています。

一方で、製造業では現場の声を重要視する企業も多いため、現場の担当者にはアダコテックの営業担当が話に行っています。

会社の代表が納得して、現場の方にもこの技術が必要だと感じてもらい、両者に認めてもらえると案件が獲得できることが多いですね。

大久保:河邑さんがトップ営業をすることで、お客様の課題を感じやすいですか?

河邑:私は自社製品やAIのことを話すというよりも、お話しする相手の代表の方が日々向き合っている会社の課題や業界の課題についてお話しすることが多いですね。

業界のことについて一緒に考えながらお話ししているうちに、アダコテックのサービスの話にもなり、現場担当者をお繋ぎ頂けることがあります。

大久保:検品を自動化できたら、お客様にとってどのような良いことがありますか?

河邑:人員をより効率的に配置させられるようになりますし、品質の向上にもつながると思います。また、今までアナログで行っていた検品をデジタル化することでデータが貯まり、今まで見えていなかった改善点が見えるようになることもあります。
製造業のDX化の入口としてもメリットを感じていただいています。

大久保:検品をデジタル化することで、他にはどのようなメリットがありますか?

河邑:データを蓄積することで、人には到底できないハイレベルな品質管理が可能になります。

例えば、1つのパーツを検品する時に、そのパーツが1週間前と比べると今は少しすり減っていることにもAIなら気づけるかもしれません。

検品AIはコスト削減や人員削減という効果にもつながる可能性はありますが、一番のメリットは「品質管理」だと思っています。

産学官連携事業・テックベンチャーを経営する難しさ

大久保:アダコテックは「産学官連携」に近い形での創業だと思うのですが、その会社を経営する難しさはありますか?

河邑:産総研の特許技術は使っていますが、幸いアダコテックの経営は自由にさせてもらえています。

テックベンチャーの多くは自社の技術力をどう生かすか?という考え方になってしまいがちですが、私はあくまでもお客様の課題をどう解決するか?を先に考えるべきだと思っています。

技術力があるテックベンチャーこそ、お客様の課題や世間のニーズを考える「マーケティング」に力を入れる必要があると思います。

大久保:日本のAI業界は今どのような流れがありますか?

河邑AI業界は今時代の転換点にあると感じています。

少し前までは「AIコンサル」のような感じで、色々な企業が抱えている課題をAIを用いて解決するビジネスモデルが多かった印象です。

しかし、最近は「AIはツール」だという認識が広まってきて、AIを使ってどの業界のどの課題を解決するプロダクトを作るのかに注目が集まっています。

アダコテックではそれが「検品に特化したAIプロダクト」です。

今後は特定の業界の特定の課題を解決することに特化したAIプロダクトが増えてくると思います。

今後の製造業では「品質」ではなく「提供できる体験」が最重要

大久保:河邑さんは今の日本の製造業をどのように見ていますか?

河邑:世界的に見ると製造業における「モノづくりの本質」が変わる転換期にあると思っています。この変化の流れに乗り遅れている企業が多いことが日本の製造業の大きな課題だと考えています。

今までは大量生産が当たり前で、差別化要因は「品質」の一点でした。

トヨタが製造業で世界一になれたのは、高品質な車を安く大量生産できたからです。

今は大量生産ではなく、それぞれの顧客にパーソナライズされた「変種変量」なモノづくりへのニーズが高まっています。

差別化ポイントも「品質」だけではなく、「提供できる付加価値や体験」が重要視されています。ここはiPhoneやTeslaへの注目度の高さを見れば明らかだと思います。
日本の製造業の多くはこの流れに逆行して、高品質な製品を大量に作る構造から抜け出せていません。

この理由は多くの製造業は大企業からの多重下請け構造になっており、1つの工場では完成品を作れないことが多いからです。この現状を変えるには、関係企業の全体を変えなければならず、変化が起きづらい構造になってしまっています。

しかし、ここにこそAIの技術を使って、プロセスを自動化して、各製造工程でのデータを蓄積・分析することで、経営者も思い切った舵取りができるようになると思います。

変化を起こしにくい製造業こそAI技術を使って、変化を起こしやすい体質に変えて、業界全体のボトムアップに貢献したいと思っています。

単純作業はAIが行い、人間はよりクリエイティブな作業をすべき

大久保:AIを活用して少しでも製造工程を自動化することが製造業には必要ということでしょうか?

河邑自動化するだけでは根本的な解決にはならないと思います。自動化した上で、提供できる価値をいかに上げられるかが重要視するポイントです。

AI技術を使い検品などの単純作業は自動化しつつ、空いた人員をよりクリエイティブな工程に配置し、提供できる価値の底上げに努めるべきだと思います。

大久保:最後に読者である起業家に向けてメッセージをお願いします。

河邑経営者にとって最も重要なことは「変わり続ける」ことだと思います。

社内の課題も社会課題も日々変動していますし、会社の成長とともに求められることも変動します。

この変化に適応し、会社の形を変えつつ、自分自身も変革する必要があります。

経営者としてブレない「信念」を大切に持ちつつ、前向きに変化に対応できるようになれば強いと思います。

私も日々勉強している身なので、一緒に頑張って日本を盛り上げましょう。

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(取材協力: 株式会社アダコテック 代表取締役 河邑 亮太
(編集: 創業手帳編集部)

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