ベンチャー創業者が知るべき機関設計の基本とは?各機関の役割と必要性

会社の規模や将来設定で変わる会社設立に必要な機関の種類と数

(2020/04/25更新)

創業者は会社の設立時、会社の登記や資金調達などに多くの時間と作業が必要となります。その中でも会社設立時に重要となるのが「機関設計」です。「機関設計」とはどういう会社を創立したいかによって、柔軟に機関を組み合わせる(設計)ことをいいます。

株式会社の機関には、株主総会・取締役・取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・委員会があり、それぞれの機関は会社法の条文に各機関と役割が定められています。
中小企業であれば、少ない機関での機関設計が可能です。逆に、人材やお金の動きが大きい上場会社や大会社は、それらを監視するための機関なども必要になってきます。

各機関の種類や役割、それぞれの会社規模に合った機関設計とはどのようなものかを解説します。

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会社設立に必要な機関とは? 各機関の役割と機能

会社の機関は、「所有」「経営」「監査」「外部監視」の4つの機能に区分されます。

株式会社は、お金を出して会社を作り「所有」する株主(株主総会)と、「経営者」(取締役)は別という考え方を基本としています。この株主=「所有」と取締役=「経営」が機関の基本です。(ただし、中小企業の場合は所有=経営が多い)

規模が大きくなり経営の機動力を増すために取締役会(経営)を設置すると、株主総会(所有)で決議できる内容の一部が、取締役会(経営)に一任されます。取締役会(経営)の力が大きくなると、「所有」と「経営」のパワーバランスが崩れてくることがあります。

そのため、会社法では取締役会を設置する場合、監査役(監査)を設置しなければならないという規定を設けています。
監査役は、取締役(経営)の行為が法や定款に沿っているかをチェックし、取締役会(経営)や株主総会(所有)で報告などを行います。非公開会社などの場合は、監査役の権限を会計に限定することもできます。その場合、会計の専門家である会計参与を置くことも可能です。

会社の規模が大きくなると、経営に対する監視の目がさらに厳しくなり、会計監査人・委員会という「外部監視」の機能がある機関が設置されます。

株主総会 会社の最高意思決定機関。「所有」者の合議体
取締役(会) 会社の業務執行機関。「経営」者またはその合議体
監査役(会) 会社の業務監視機関。「監査」人またはその合議体
会計参与 外部から会社の会計の適正を「外部監視」する機関。取締役会を設置し、監査役を置かない会社では設置が必要
会計監査人 外部から会社の会計の適正を「外部監視」する機関
委員会 監査委員会 委員会設置会社での業務の「外部監視」機関。(ほかに指名・報酬委員会)

中小企業・大企業それぞれの機関設計におけるメリット・デメリット

設置が必要な機関は、企業規模や将来ビジョンによって変わってきます。会社設立時に行う機関設計ですが、その内容によってメリットやデメリットがあります。また、企業規模によって適した機関設計の在り方が違います。
では、どのような企業にどのような機関設計が適しているのでしょうか。

所有・経営・監査・外部監視の4機関がそろうケース(大企業など)

上記4つの役割(機関)をすべてそろえると
・経営と所有が別、プロ経営者を呼びやすい
・業務の適正の監視ができる
・会計の適正を監視することにも向いている

というメリットがあり、株式の譲渡制限のない公開会社、特に上場会社に適しています。

全ての役割(機関)をそろえ、どの役割にも多数の人の意思が反映されなければならない場合、機関の運営手続きが面倒になるというデメリットがあります。
業務執行のため、株主総会や取締役会の開催が頻繁に必要となり、「スピーディで小回りの利く経営」は実現しにくくなるでしょう。
中小企業が創業時に4つの役割(機関)をすべてそろえた形態をとると、手続きの柔軟性の面や、役員報酬・監査役報酬等の報酬面において運営が難しくなることが懸念されます。

所有と経営の2機関での機関設計も法律上可能(中小企業など)

会社の最小の機関設計は株主総会と取締役の2つの機関からなるものです。

会社法上、株主が一人だけの一人会社は認められており、スタートアップの多くはここを出発点にして会社を設立します。取締役兼オーナー、もしくは株主が親族や友人などの近親者の場合、
・経営を柔軟に行うことが可能
・登記手続きもスピーディ

というメリットがあり、特にスタートアップにはこの形態による法人化が頻繁に見受けられます。

しかし、この形態では所有と経営が分離しておらず、業務の監視や会計の監視が不十分なため、ワンマン経営に陥りがちです。さらに、信用力が低いことから資金調達が難しいなどのデメリットがあります。また、上場審査の際に過去の管理体制が上場にふさわしくないと判断されることもあります。

そのため、、株式で資金調達を考える会社や、金融機関からの多額の資金調達を考えている会社は、設立時から3人以上の取締役や監査役を置くほうがいいでしょう。

小規模で会社を設立する際は少ない機関設計によるメリットも多いのですが、将来的な事業拡大などを考えると、最初からしっかりとした機関設計をおこなっておいたほうがいいのかもしれません。

中小企業の機関設計で多い形態

機関設計において2つから4つの機関を設置するようにお話してきました。では、実際に中小企業の機関設計で多い形態はどのようなものなのでしょうか。
中小企業の創業の場合、現在・将来の事業内容や関係者、そして資金調達などの観点から大きく2つの形態に分けられます。

形態1:2つの機関
所有・経営 の最小構成の機能を備える。
  =>株主総会・取締役を機関としておく。

形態2:3つの機関
取締役会を設置し、所有・経営(合議体)・監査 の3つの機能を備える。
  =>株主総会・取締役(会)・監査役(または会計参与)を機関としておく。

中小企業においては、上記2つの形態うちどちらかを事業内容・利害関係人との関係性等から選ぶことが一般的といえます。

創業者が会社の機関を設計する必要性ととるべきアクション

例えば、創業時は小回りの利くスピーディでコンパクトな会社を創設することを想定していたが、すぐに業績が好調となり、外部からどんどん人を起用して経営を任せることを考え始めた、といった場合を想定します。

そうなった時点で機関設計をあらためて考えるとなれば、定款の変更や、登記手続きが必要となります。これらには、法律の専門家でなければ対応できない問題も含まれており、限られた時間の中では対処しきれなくなるリスクが生じます。
創業後に慌てて定款変更や会社の機関の変更登記をするより、会社の成長を見込んで機関設計をしておくほうが無難といえるでしょう。

また、将来株式で資金調達を行うつもりがあるかという点も、機関をどう作るかのポイントになります。株式で資金を調達する場合、業務・会計の適正がないと難しいため、監視機関が必要となります。監視機関をどの時点で設置するかをあらかじめ決めておくといいでしょう。

取締役会・監査役を備えておけば、将来の事業が拡大した場合においても柔軟に対応ができます。監視役に値する専門家や外部の人材との交流を図り、早めに準備しておきましょう。非上場のプライベートエクイティ(※)による資金調達ではなく、上場を目ざすことがわかっている場合はなおさらです。
※プライベートエクイティ:未公開株式(私募形式で発行された株式や社債など)

専門家に相談しながら慎重に決めましょう

会社の機関設計については、事業内容や利害関係人、そして資金調達の将来的な方向性を考えて行うべきです。しかし、どの形態が一番よいか、判断に迷うこともあるでしょう。そのような場合は、登記の際に司法書士に依頼することをおすすめします。司法書士は登記だけでなく、機関設計の相談にも乗ってくれます。

専門家に相談すれば、専門性のある事柄だけに限らず、その他の税務・会計・法務上の問題があっても、他士業との連携により迅速な対応が望めるというメリットがあります。報酬との勘案となりますが、機関設計は創業者がひとりで抱え込んで検討すべき問題ではなく、専門家の力を借りることが非常に効率的な解決につながります。

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