株主総会と取締役会の違いとそれぞれの役割

創業手帳

意外と知らない株主総会と取締役会の違い

今年も「株主総会」、「取締役会」をニュースで耳にする時期がやってきました。
どちらも聞いたことがあると思われる言葉ですが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。今回は意外と知らない「株主総会」と「取締役会」の役割について解説します。

会社経営には、知っておかなければならないことが数多くあります。ですが、起業家がその全てを知るのは時間的にも労力的にも困難です。創業手帳では、そのような起業家のために、専門家のアドバイスを受けながら記事を書いています。また、冊子版の創業手帳は、毎月1.5万部を発行し、その都度、最新の情報にアップデートしています。無料で資料請求できるので、ぜひご活用ください。

株主と取締役の違い

前提として、「株主」と「取締役」の違いから説明しましょう。

「株主」とは、株式会社の株式を保有する個人・法人のことで、簡単に言うと、会社に出資した人のことを指します。株主の持ち株比率(株式保有割合)によって、権利が異なり、多く保有しているほど、影響度は大きくなります。

「取締役」は、会社の代表として業務執行する人のことで、全ての株式会社に必ず置かなければならない機関です。取締役は、株主総会で株主によって選ばれます。

それぞれの株式会社によって、「株主=取締役」の場合もあれば、株主の代わりに取締役が会社運営を行う「株主≠取締役」、という場合もあります。

株主総会と取締役会の違い

「株主総会」や「取締役会」は、重要なことを決める会という点では共通していますが、株主総会は株主が参加する、取締役会は取締役が参加する会議です。また、それぞれに決議できる事項が異なりますので、決議したい項目によって、どちらを開催するかを決めましょう。

以下、それぞれの役割について解説します。

株主総会とは?

株主総会とは、会社に出資をしてくれる「株主」が集まり、株主の総意により会社の意思決定を行う機関です。

株主総会での決議事項

株主総会で決めるのは主に

  • 定款の変更、解散や合併などの会社組織そのものに関する事項
  • 計算書類の承認や株主の利益に直結する事項
  • 取締役などの役員の選任や解任事項
  • 役員報酬について
  • 法律を逸脱しないようにするための取り決めについて

があります。
株主総会を開いた後は、きちんと議事録として記録に残し、株主と経営陣がもめないようにしておくことが大切です。

もし議事録の作成に不安がある方は、司法書士などの専門家に依頼するとよいでしょう。冊子版の創業手帳では、創業期から専門家に依頼したり、顧問契約を結ぶことのメ立地について詳しく解説しています。

関連記事:株主総会の準備をしよう!決議の方法と決議事項のキホン

「株主総会」を開催する理由は?

では、なぜ株主総会を開催するのでしょうか?
それは、出資してくれている株主の意向を無視して会社を経営していけば、出資者の怒りを買いますし、経営が困難になるからです。経営面の問題だけではありません。株を1株でも持っていたら株主が起こすことができる※株主総会決議不存在・無効確認の訴えで裁判になる場合もあるのです。

※株主総会決議不存在・無効確認の訴え:決議が存在しない場合・決議の内容が法令に違反する場合には、株主なら誰でもいつでも決議の不存在・無効を提起できるもの
例えば経営陣の意向で「役員報酬を増額しておこう」と、株主に相談すること無く決めてしまったとします。それを後で知った株主が「そんなに経営にゆとりがあるなら株主に還元しろ!総会で議決していないじゃないか!」として、増額した分を返還する請求を裁判として起こすことにつながる可能性もあります。

また、役員の選任についても同じで、人事異動を行ってしまったあとに「株主総会で人事異動について知らされていなかった」として、異動が白紙に戻ることもあり得るのです。

「株主総会はお金もかかるし、会場も確保しなければならないし・・・」とほったらかしにしておくと、このようなトラブルになる可能性もあります。株主あっての会社、ということを念頭に置いておきましょう。

「取締役会」とは?

株主がたくさんいる大企業の会社の場合、すべての項目を株主総会で決議を行っていると時間がかかってしまいます。そのため、日常的な業務に関する事柄を決める場合に開催するのが取締役会です。ただし、法律に関する事項など、極めて重要な事柄は取締役会では扱いませんので、注意しておきましょう。

ちなみに、会社法により、取締役会を置かなければならない株式会社を取締役会設置会社といい、その取締役は3人以上でないといけないと定められています。
つまり、役員が1人しかいない会社では取締役会を開くことはできないので、すべて株主総会での決議を行うことになるのです。

取締役会での決議事項

取締役会では、会社の財産や社債に関すること、株式分割についてなど、会社における重要事項を決めます。

詳しくは、取締役会とは|いつ、どこで、誰が、何を決める?の記事も合わせてご確認ください。

「取締役会」を開催する理由は?

取締役会は、定款の変更や合併を問うなどの大きな議題ではないものの、非公開会社の場合は、株式の譲渡について決議したり、経営課題についての方針を決めたり、株主総会を開くかどうかということを話し合うために開かれます。

取締役会は、そこで話し合う事柄について利害関係を持つ人は参加できません。自分に都合の良いように日常業務の取り決めを行っていたら、会社として存続できなくなるからです。

いわゆる「ワンマン社長」のもとでは取締役会が開かれていない実態もあるそうですが、ワンマン社長が会社を去ることになった場合、それまできちんと取り決めてこなかったゆえに会社が大混乱を引き起こすことも考えられます。
会社だけでなく、社員を守るためにも取締役会が重要なのです。

株主総会と取締役会を開催するのに準備すること

次の項目からは、株主総会と取締役会を開催する際に必要な準備を紹介します。準備がないまま開催しても、話がまとまらない恐れがあるでしょう。また、株主総会と取締役会では必要な準備が異なるため、それぞれ確認しておいてください。

株主総会の準備

株主総会の事前準備は、次のとおりです。

  • 開催スケジュールを立てる
  • 会場や内容を決める
  • 株主に対し招集通知

株主総会は、原則として年に1回開催します。開催時期は、一般的には基準日での開催です。基準日は、事業年度の末日に定めている会社が多いようです。例えば3月31日が基準日であれば、3月31日から数えて3ヶ月以内に向けて株主総会のスケジュールを立てます。

株主への招集通知前に、対象となる株主を把握しましょう。招集通知が不要となる株主もいるため、事前に確認しておいてください。招集通知の発送は、会社法299条により、次のように定められています。

・公開会社や書面投票・電子投票の会社は2週間前まで
・全株式譲渡制度会社は1週間前まで

なお、招集通知には場所・日時・目的を記載しなければなりません。取締役設置会社の場合は、添付書類も確認しておきましょう。

株主総会の運営は、運営事務局を設定するのが一般的です。当日必要となる書類や会場のセッティングなどを担当します。担当になったら、事前にリハーサルを済ませておくと安心でしょう。株主総会に必要となる書類は、議事録と決議通知書です。それぞれ事前に準備するようにしてください。

取締役会の準備

取締役会の事前準備は、次のとおりです。

  • 開催スケジュールを立てる
  • 取締役に対し招集連絡

取締役会の開催時期は、会社法で3ヶ月に1回以上という規定があります。少なくとも、3ヶ月1回の割合でスケジュールを立てなければなりません。

取締役会の出席は、取締役は必須です。監査役や会計参与は、必要に応じて参加します。開催に必要な人数は、取締役会の過半数です。ただし、利害関係のある取締役は参加できません。

開催スケジュールが明確になったら、各メンバーに通知しましょう。通知は、開催の1週間前までです。書面で通知する決まりはなく、口頭で伝えても構いません。

取締役会は、1つの会場で開催する必要はありません。遠方に取締役がいる場合は、オンライン環境や書類でも決議ができます。

株主総会と取締役会を開催する流れ

次は、株式総会と取締役会の開催の流れを紹介していきます。開催当日に慌てないよう、事前に確認しておいてください。

株主総会の流れ

一般的な株主総会の流れは、次のとおりです。

  • 議長の就任
  • 開会宣言
  • 議事署名人決定
  • 監査報告読み上げ
  • 事業内容の報告
  • 議案上程
  • 審議方法の確定と審議
  • 質疑応答
  • 閉会宣言

事業内容の報告は、取締役が行います。議案提出は、会社側または株主側が行います。提出された議案に基づき、審議と採決を行っていきます。

なお、株主総会では議事録作成と保存が必要です。保存した内容は、登記事項の変更手続きをしておきましょう。最後に配当金があれば、支払い手続きをして終了です。

取締役会の流れ

取締役会の流れの一例は、次のとおりです。

  • 定足数の確認
  • 開会の宣言
  • 議案の提案と審議、採決
  • 報告事項の報告
  • 次回日程の協議

取締役会の決議は、ネット会議や電話会議などのやり方があります。なお、議事録の内容は記録し、書類に出席した取締役と監査役が捺印します。作成した議事録は、本店で保管するようにしてください。

まとめ

きちんと手続きを踏みさえすれば、アットホームな雰囲気で、例えば食事をとりながらでも開催することが可能です。そんな株主総会や取締役会なら、株主同士、取締役同士が懇親をはかるいい機会になるかもしれません。

ただ、起業家自身がルールを全て把握し、手続きを行うことは難しいと思います。その場合は、専門家に相談するとよいでしょう。創業手帳では、会員向けに専門家を無料で紹介しています。会員登録に料金は一切かかりません。また、登録時に創業手帳の冊子の請求も行えます。

「定時株主総会」と「臨時株主総会」、どうやって使い分ける?
定時株主総会と臨時株主総会の違い〜株主総会のキホン〜

(執筆:創業手帳編集部)

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