JBNインターナショナル 大野真徳|世界最大級のビジネスリファーラル組織「BNI」が日本の「紹介営業」を先導する

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年08月に行われた取材時点のものです。

信頼関係に基づくリファーラルマーケティングを全国で展開し、従来のビジネス手法を変革!

BNIは、経営者や事業主が「チャプター」と呼ばれるビジネスチームに所属し、お互いに信頼関係を築き、相互にビジネスの機会を提供することで共に成長していくコミュニティです。

日本では2006年に活動がスタート、フランチャイズ・システムの導入でメンバーを増やし、会員数は現在1万2000人を超えています。

ロンドンでリファーラル(紹介)マーケティングに出会ったJBNインターナショナル代表取締役の大野氏に、起業の経緯からビジネスモデルの魅力、組織を拡大していくヒントなどについて、創業手帳代表の大久保が聞きました。

大野真徳(おおの まさのり)
JBNインターナショナル株式会社 代表取締役
BNIナショナルディレクターを兼務。コーポレートコネクションズ・ジャパン マスターフランチャイジー。千葉県出身。独立後、ロンドンでビジネスをしている時にBNIを知り、チャプターメンバーとして活動、日本にBNIがないことを知り、帰国。日本にリファーラル(紹介)マーケティングの手法を紹介し、全国に広めている。趣味は学生時代から始めたアイスホッケー、ピアノ、料理。二人の女子の父親。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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BNI創立者との出会い


大久保:もともとはどんな仕事をされていたのですか?

大野:大学卒業後、米国系の証券会社に入社して外国債券の営業からスタートしました。5年ほどでフランス系の会社に転職、そこでも外国債券を担当し、2年後にロンドンに転勤して、現地で7年間勤めました。

大久保:BNIを日本に持って来るにあたり、どんな出会いがあったのでしょう?

大野:2002年に退社して、同僚ら4人でインターネットサービスの会社を起業。その頃、BNIを紹介されました。当初は全く知らなくて、説明会に行ってもよくわからない。そのあと、再度説明を聞く機会を経て、ようやく仕組みがわかってきた。それでメンバーになったのがきっかけです。
ロンドンでメンバーとして3年ほど実践していたら、すごい仕組みだなと感心することばかり。日本支部がないのはもったいないと思い、創立者のアイヴァン・マイズナー博士がロンドンに来た時、「何か力になれませんか?」と直接話す機会を得ました。それで、日本でも展開することが決まりました。

理念は「Givers Gain®(ギバーズ・ゲイン)」


大久保:BNIのビジネスモデルの面白さはどこにあると考えますか?

大野:BNIは「Givers Gain®(ギバーズ・ゲイン=与える者は与えられる)」という理念に基づいて活動しています。人のために行動すれば、その恩恵は巡り巡って自分に戻るという意味。メンバー同士が互いのビジネスの売上を伸ばす手助けをすることで、全員が良い結果を得られるという考え方です。

よく異業種交流会と混同されますが、交流が目的ではなく、あくまでもマーケティングの手段として使ってもらいたい。BNIは、顧客と売り手といった一過性の関係ではなく、互いに紹介し合えるような信頼関係を築いて、長期的なレシプロ(相互利益)づくりをします。最初から売ろうとしなくていいので、精神的に楽なんです。ビジョンや夢を語っていると、ファンが増えて紹介してくれるようになる。かけがえのない仲間をつくりつつ、仕事にもつながっていくところが面白いです。

大久保:確かに、新規顧客を3件獲得するより紹介3件のほうが楽ですね。

大野:結局コツなんですよ。入ったばかりでこれから関係を築いていこうという人は、無理して紹介する必要がない。基本的に、自分が十分信頼に値する人を紹介していきます。だから、メンバーになったからと言っても必ず紹介してもらえるとは限らないんです。成果が保障されるものではないし、万人に向いているものでもありません。

会費改定はコミュニティのブランディング価値向上に


大久保:AI全盛時代に、人間の直感や印象などAIではマッチングできないことをやっている点に興味を持ちました。AI時代だからこそと感じていることはありますか?

大野:棲み分けが進むのではないでしょうか。私自身Amazonのヘビーユーザーです。でも、お祝いに花を贈る時などに、BNIのつながりで紹介してもらった花屋があると、やはり安心して使えます。

大久保:BNIには、社長やそれに準ずる人が集まります。情熱があってひとりで頑張っているけれど、どんな風に売っていけばいいかわからない人にとっては、紹介は顧客開拓のとっかかりになりそうです。

大野:そこは長年悩んできたことでもあるんです。メンバーには経験豊富な人も事業を始めたばかりの人もいて幅が広い。紹介するにはいささか不安に感じるステージの人もいるので、その印象が強くなると、全体のブランディングではマイナスになります。
そこで、プログラム利用料、いわゆる年会費を改定することにしました。値上げで、新規登録の人には金銭的にハードルが高くなる。そこはBNIとは別に、御社のような組織とコラボして創業支援ができないか、模索しているところです。

大久保:どのくらいの上げ幅なのですか?

大野:日本での創業から12年間は改定なしで据え置いていました。2018年の初めての改定で20%、今年9月に25%、来年20%。新規の場合さらに登録料がかかりますから、来年9月から1年目は日本の平均大卒初任給だとちょっと足りないレベルになります。
他国からは数年前から日本は安過ぎるとの声が上がり始め、昨今は円安でさらに割安感が増しています。システムの精度が上がりメンバーシップの価値も向上してきたので、妥当なレベルであると確信しています。

紹介営業は信頼関係があってはじめて成立する

大久保:「大野さんってどんな人?」と聞かれたとき、まず「紹介営業の達人」という言葉が思い浮かびます。チラシをまく、アタック営業するなど、数ある営業手法のなかで紹介営業は一番格が高く、多分究極の営業ではないかと思います。BNIを知らない人に向けて紹介営業のコツを教えてもらえますか?

大野:紹介営業は、まず信頼関係があっての話です。前提として時間がかかることを理解して実践すれば、長期的なマーケティング戦略として有効です。買ってもらうというよりも、信頼関係をつくったうえで自分の目指す目標や夢を共有し、ファンになってもらって口コミを広げてもらうことに集中すれば、自然とチームが動いてくれます。その点が腑に落ちれば、結構手堅い、積み上げ式のマーケティングの仕組みであるとわかります。

紹介してもらえる関係づくりとは、たとえば、目の前にいる人に対してどうすれば自分が役に立てるかを考えて、行動の習慣にすること。返報性の原理というじゃないですか。何かしらの施しを受けたらお返しをしたくなるのが人情でしょう。あまり好きな表現ではありませんが、いろいろなところに「貸し」をつくっておく感覚でしょうか。

帳尻を合わせる必要はない

大久保:3人紹介したら3人紹介してもらえるいう風に、釣り合っていればベストですね。帳尻を合わせる必要はありませんか?

大野:それは、よくある誤解です。私もメンバーになって2、3年はそう思っていました。昔は紙の伝票を使っていたので、自分が与えた分ともらった分で伝票の色が違い、与えたほうが多いかもらったほうが多いかが一目瞭然。毎週ミーティングが終わると、一喜一憂していました。でも、実はそんなことを一切考える必要はない。たとえば1年間やってみて、自分が与えたほうが3倍多くてもそれが楽であれば、関係ないんです。

大久保:紹介するのに費用がかかっているわけではないですからね。

大野:そうそう。要領がつかめて、簡単に人の役に立てるようになると、逆に自分がもらう紹介は段々コントロールできるようになります。要するに、自分が本当に欲しいものに絞って紹介してもらう。経験を積んでいくと、与える件数と受ける件数の差は意味がなくなります。

大久保:初心者は、紹介してもらった、あるいは紹介した、などを数の多寡で考えがちですが……。

大野「ギバーズ・ゲイン」では、もらう方はどんどん人数が増えていきます。
退会したメンバーのなかにも相変わらず紹介してくれる人が結構います。自分がメンバーでいる限り、現役メンバーに加えて元メンバーの数が加わって、ビジネス人脈が広がっていくので、比べる必要がほとんどなくなりました。それはやってみないとわからない。私もある日突然気が付いて、すごいと思いました。

大久保:経験を積むと、そう悟る瞬間があるのですね。

大野:これからもっともっと得するんだと思うと、もうやめられなくなります。

大久保:経営者団体でEO(Entrepreneurs’ Organization=起業家機構)がありますが、そこは勉強のみで売ってはダメです。紹介についてもとても厳しい。BNIは売上に特化しているけれど、奇跡的にうまくいっているシステムです。モノが売れない時代に、売上を上げることについてどう考えていますか?

大野:「与える」という考え方は、個人だけでなく、会社など組織でも有効です。組織同士のコラボもそうですし、先に与えるほうが、長期的にみるといい関係を築ける可能性が高い。国内外を問わず、中小企業の経営者同士が積極的につながる流れをつくれたらいいと思っています。

失敗するのはマニュアルをはずれて独創性を持ち込むから


大久保:海外のコミュニティサービスを日本に持ってきたというのも、大野さんの特徴です。コミュニティビジネスをやりたい人は多いけれど難しく、ここまで大きくなったのは稀有な例ですね。秘訣を教えてもらえますか?

大野:おっしゃる通りで、BNIの仕組みを聞いてこれならできると自分たちで始めたけれど続かず、消えていったケースがたくさんありました。BNIにはオペレーションマニュアルがあって、私はナショナルディレクターの研修を受け、それを実践しているだけです。
ただ、国内のフランチャイジーでも、マニュアルと全然違うことをやり出すと、うまくいきません。日本での16年間、失敗例をたくさん見てきました。BNIの仕組みは37年間練り上げられてきたものなので、そのまま使えばいいのです。

大久保:好きなようにやりたい人は、BNI以外で個人的にやればいいのに、独創性を持ち込んでしまう。マクドナルドなのに、全然違う味のハンバーガーが出てきた感じですか?

大野:そうです。フランチャイズ契約を結んで失敗するのは自信がある人に多い。自信がマイナスに作用してしまうんです。

大久保:必ずミーティングに出席しなければならないなどのルールはありますか?

大野:毎週のチャプターミーティング(定例会)は今はオンラインなので、ベッドから出て5分かからずに参加できます。ただし、対面での交流機会は大事なので、他のさまざまなイベントをできる限り対面でやることを推奨しています。

世界のビジネスのやり方を変える!

大久保:組織をうまく運営するには、組織のアイデンティティを重視してルールを守り、コンセプトを崩さない必要がありますね。

大野:それに加えて、ビジョンやミッションは大切にしなければなりません。最近は「ギバーズ・ゲイン」をはじめコアバリューを繰り返し確認するようにしています。

大久保:今おっしゃっていただいたことは、テクニカルな面を重視して方向性を崩さないこと、そしてビジョンを確認すること。その両方が大切だということですね。

大野:そうです。ビジョンとしては「世界のビジネスのやり方を変える」を掲げています。ある意味、社会性が強い事業です。自分だけがどんどん儲けようと思ってやっていたら、全く広がらなかったかもしれません。

私自身、起業した当初は苦労しました。商店街で飛び込み営業をしたこともありました。経験は無駄とは思いませんが、楽しみながら事業を発展させられればそれに越したことはない。もっと多くの人にこの仕組みを使ってもらいたいと思うので、それが伝わったということでしょうか。
長く続けているメンバーは、私と同じで、自分が使ってみてよかったので、ほかの人にも伝えたいというところが共通しています。

人に任せられるようになると、成長スピードが速まる


大久保:今でこそ大きな組織ですが、最初の頃はどうでしたか?

大野:立ち上げて2、3年は結構しんどかったです。公庫で1000万円借りてやりくりしていました。

大久保:土台づくりはそれなりに大変だったわけですね。

大野:ええ。1つ目のチャプターが東京・吉祥寺にできました。そうすると、研修をやったり相談に乗ったり、サービスの提供を始めなければなりません。メンバーが何十人もいるので、結構な仕事量でした。既存のサポートをしながら新規の立ち上げを考えるのをほぼひとりでやっていたので、2つ目のチャプターをつくるまでに1年かかりました。

大久保:飲食店経営でも、1店舗目の出店は楽勝だったのに2店舗目でつまずくケースがあります。それを乗り越えると、途中からぐんと伸びることがありますね。

大野:自分ひとりでやってきたことを人に任せられるようになると、成長スピードが速まります。

働く人皆で仕組みを進化させる

大久保:BNIは国際的な標準ルールがあるので、割と分業化しやすい。個人事業主に権限移譲して広げていくのにコツはありますか?

大野:実は私、人に任せてというのが苦手でした。器用貧乏で、そこそこできてしまうので人に任せられない。でも、時間は限られているし、このままだと自分がボトルネックになるとわかりました。
それでミーティングで、「ひとりではできないので、力を貸してほしい」と言ったら、協力者が段々増えて、フランチャイズ展開できるようになりました。大きく広げるときには、ひとりでは限界がある。自分より優秀な人はたくさんいるのですから。

大久保:基本的なことさえ踏まえれば、あとは研修すればいいのですね。

大野:とはいえ、文化の違いもあって、ローカライズしなければならないところもありました。BNIでは、インクルーシブ・リーダーシップといって、一緒に仕事をする人は業務委託も含め、いろいろな役割を担ってもらっています。皆が参加して仕組みの精度を上げ、進化させていくところはユニークです。

いろいろな人の力を借りれば、もっと世の中のためになる


大久保::海外との交流はありますか?

大野:全世界のチャプター数は1万を超えています。2週に1回、マスターマインドグループの集まりがあって、アジアの国の代表5人くらいで互いの経験をシェアしたり助け合ったりします。同じ仕組みなのに、ラテン系や南国は緩い。国民性や文化的背景の違いを実感することがあります。日本人はきちんとルールを守るし、まじめ。成果を出しやすいとも言えます。

大久保:最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします。

大野:アフリカの格言で、「急いで行きたければひとりで行きなさい。遠くへ行きたければ皆で行きなさい」というのがあります。高い目標や大きな夢を実現したいのであれば、仲間の力を借りるほうが可能性が高い。

大久保:ご自身の経験を踏まえているから、説得力がありますね。

大野:私はもともとは内向的な性格で、ひとりでやるのが好きなタイプでした。でも、BNIに携わったおかげで、いろいろな人の力を借りたほうがもっと世の中のためになることができるのを学んだ。感謝しています。

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(取材協力: JBNインターナショナル株式会社 代表取締  大野真徳
(編集: 創業手帳編集部)



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