スタートアップが人材を獲得するための3つの秘訣

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優秀な女性を採用するコツとは?

(2015/12/15更新)

景気のゆるやかな回復とともに、有効求人倍率は1.24倍と高い水準を維持しており、スタートアップ企業にとっては、これまで以上に人材の獲得が難しくなっているのではないでしょうか?人材の争奪戦が激しく繰り広げられる中で「いい人材がなかなか来てくれない」「優秀な人材に出逢っても、入社を辞退されてしまう」など、多くの経営者の方々からこのような悩みを伺います。そこで今回は、スタートアップ企業がいい人材を獲得するための秘訣をご紹介します。

1.女性を積極的に活用する先駆者とは?

いい人材を獲得するための秘訣をお話しする前に、まずスタートアップ企業の人材採用の現状を見ておきたいと思います。

ご存知のように、少子高齢化社会を支える労働の担い手として、現在、政府で政策を推進しているのが「女性の活用」です。

そして、この女性の活用を積極的に行っているのが、スタートアップ企業の女性経営者だということをご存知でしょうか。

次のグラフは、開業から5年以内の約1万2000社の経営者を対象に実施した調査の結果です。

■開業5年以内の経営者の性別と、従業員の性別構成

 
この調査を見ていくと、男性経営者と女性経営者では、雇用する従業員の性別に大きな違いがあることが分かります。

上段のグラフは、従業員の数です。開業から5年以内の会社の従業員の数を比べてみると男性経営者の会社では平均6.8人の従業員に対して、女性経営者の会社では平均6.0人の従業員を採用しています。

女性経営者のほうが男性経営者に比べて雇う従業員の数は少ないものの ―――― 下段のグラフは従業員の性別の構成ですが、男性経営者が女性を採用するケースは約50%、これに対して女性経営者が女性を採用するケースは約60%を超えており、男性経営者と比較して10%以上、上回っています。

開業間もない会社の調査でも、ほぼ同じような結果が出ており、女性経営者は女性を採用する傾向が強いと言われています。

2.働く女性たちが会社を選ぶ基準

前章では、経営者の立場から採用する人材を見ていきましたが、逆に採用される立場の女性たちは、会社を選ぶうえでどのようなことを重視しているのでしょうか。

ここでは、スタートアップが求めている社会経験のあるキャリア女性の声に注目してみていきましょう。

キャリアデザインセンターが働く女性270人を対象に実施した「会社選びの基準」に関する調査によれば、会社を選ぶときに重視するポイントの1位は「給料」、2位は「仕事内容」となっています。

また、7割近くの女性が「学生のころの就職活動と現在では、会社を選ぶときに重視することが変わった」と回答。それでは、学生時代と社会人を経験した現在とでは、会社を選ぶうえで何が変わったのでしょうか?

「学生時代は重視していたけど現在はそれほど重視していない」という項目を聞いてみると「勤務地」「業界」「知名度」が上位に入っており、その一方で「学生時代よりも重視するようになったこと」を聞いてみると「福利厚生」「ワークライフバランス」「社員の人柄」が上位にランクインしています。

■「学生のころ会社を選ぶときに重視したこと」と「今会社を選ぶときに重視することの比較

 
この調査結果から、社会を経験している女性たちは、会社の知名度や業界よりも、職場の雰囲気や働きやすさなどを重視していることが分かります。

実は、仕事内容や会社の知名度よりも、ワークライフバランスや職場の雰囲気などを重視する傾向は、ここ数年、新卒学生や20代の男性にもその傾向が顕著に表れています。

その中で最も重視されているのが、一緒に働く上司や先輩です。人柄はもちろん、ライフスタイルも含めた働き方・生き方のお手本となる上司や先輩、仲間を求める傾向がより強くなっています。

コラム:働く女性たちの本音 ~結婚、出産は働く女性のターニングポイント~
    厚生労働省の「労働白書(平成17年度版 人口減少社会における労働政策の課題)」の調査では、「結婚をしても仕事を続けたい」と考えている女性は約60%、「出産をしても仕事を続けたい」と考えている女性は、70%を超えています。

    仕事を続けるためには、「結婚や出産、育児に理解のある職場環境や制度が必要」と考えている女性が半数以上、「相談できる同僚や先輩を望む女性」が40%以上を超えています。

3.いい人材を獲得するための3つの心構え

スタートアップ企業を取り巻く人材採用の現状を見てきましたが、ここからは良い人材を獲得するための心構えや秘訣を具体的に見ていきましょう。

【ポイント➀】-フラットな立場で接する

スタートアップでは、知人やハローワークの紹介によって経営者が直接、採用を行う機会が多いと思いますが、その際、気をつけたいのが候補者と接するときの態度です。

雇用する側(=選ぶ)と採用される側(=選ばれる)という立場になってしまい、知らず知らずのうちに上下関係ができてしまっていることがあります。

前章でも、ご紹介したように働く女性たちは、「働きやすい職場環境」や「上司や先輩に相談しやすい環境」を求めています。

いい人材を獲得するためには、面接での話し方やコミュニケーションはもちろん、それ以前のメールや電話で連絡する段階からフラットな立場で接することを心がけましょう。

【ポイント➁】-デメリットもオープンにする

当たり前のことですが、面接の際に、事業内容や経営ビジョン、そして現在の経営状況などの会社情報をオープンにして、きちんと伝えておくことが大切です。

その際、忘れてはいけないのが、候補者にとってのデメリットも包み隠さず伝えておくことがとても重要です。

例えば……

  • 担当業務が多岐にわたること や 専門外の業務もあること
  • 繁忙期は、長時間労働になること
  • 時期によっては、休日出勤があること

など、
候補者のデメリットも事前に伝えておきましょう。

以前から雇用のミスマッチが叫ばれていますが、入社した社員が早々に辞めてしまうその多くの原因は、入社前の働くイメージと入社後の働くイメージのズレにあります。

入社後、会社の実状を目の当たりにして「こんなはずじゃなかった」「面接の話しと違う」などのギャップを感じて早々に辞めてしまうというケースが少なくありません。

特にスタートアップ企業の採用においては、「人材を選ぶ」というよりは、面接などを通してお互いにとって働きやすい環境を模索する、という意識を持つことが大切です。

経営者の事業に対する熱い想いや仕事内容はもちろん、候補者にとってデメリットになる情報を開示することが、ミスマッチを事前に防ぐとともに、経営者や会社に対する信頼感につながります。

【ポイント➂】-オンリーワンの価値を認める

誰でも自分の価値をきちんと認めてくれる上司や会社のもとで働きたいと願うのは、人間として当たり前のことです。

大きな会社と異なり、スタートアップ企業の最大のメリットは大勢の社員の中の1人ではなく、1人ひとりの価値を認めてその人材の能力を活かすことができることです。

ぜひこの人材を獲得したいという候補者に対しては、「あなたの○○な能力をぜひ活かしてほしい」「○○で経験したスキルを発揮してほしい」など、その人材の価値を具体的に伝えることをおすすめします。

また、会社の歯車としてではなく、同じ会社で働く仲間として「一緒にこの会社を創っていこう」「会社を盛り立てていってほしい」と素直な気持ちを示すことで、スタートアップ企業ならではの魅力を感じてもらうことができ、入社の意欲を高めることができます。

さらに、経営ビジョンとともに、活躍してほしい分野や将来的なキャリア形成についても話し合うことができれば、社内でどのような役割が求められているのかがより具体的になり、あなたの会社で働くイメージが鮮明になります。

4.働きやすさを整備することは、経営者の使命

2章のコラムでご紹介したように、働く女性にとって人生のターニングポイントになるのが、結婚や出産です。

結婚・出産の後も、そのまま働き続けたいと願う女性たちが半数以上いる一方で、仕事を続けるためには職場の理解や制度が必要と考えている女性たちが半数以上います。

このような働く女性たちの気持ちを把握していても「スタートアップ企業には、制度の整備はハードルが高い……」とお考えの方も多いのではないでしょうか?

そこで、ぜひ活用していただきたいのが助成金制度の活用です。

現在、政府でも女性の活用を推進しているため、「ポジティブアクション加速化補助金」「両立支援助成金 育休復帰支援プランコース」など、働きやすい環境を整備するための支援を行っています。

いま、導入していない会社でも、面接の際に「今後、福利厚生を充実させていく予定だ」と伝えることができれば、候補者の入社を後押しすることができます。結婚や出産、育児に理解のある職場環境は、会社を選ぶうえでの大きな優位点になります。

ぜひ、助成金制度を上手く活用して、働きやすい職場環境の整備を推進していきましょう。

5.最後に

いい人材を獲得するための心構えや秘訣をご紹介してきましたが、これは入社後の人材に対する心構えにも共通していることです。

せっかくいい人材を獲得しても、定着しづらく、次々と人材が入れ替わってしまうようであれば、会社運営に支障が出るだけではなく、コストの面からも大きな損失です。

昔から「会社経営は人」「人材は人財」と言われていますが、スタートアップ企業では、事業を軌道に乗せることに集中するあまり、人材に対する心遣いが行き届かない場合があります。

卵が先か、鶏が先か、ではありませんが、人材とより良い信頼関係を築き、人材の立場に立った働きやすい環境をつくっていくことがいい人材を獲得するための基盤となります。

そして、小さくてもいい人材が集まる会社こそが、結果的に企業の成長につながります。

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(監修:採用支援サイト「ソーカツタイムズ」編集長 白井千絵 )
(編集:創業手帳編集部)

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