起業で使える発明家の発想術 株式会社発明ラボックス代表 松本奈緒美インタビュー(前編)

創業手帳

ヒット商品を連発する発明家の発想法とは

(2018/05/02更新)

会社の経営を続けていくためには、置かれている状況などからヒントを得て、新しいアイデアを生み出し、事業に変えていく必要があります。「そんなアイデアが簡単に生まれたら苦労しないよ!」と考えている方が多いかもしれませんが、そういう時はアイデアを生み出して形にするプロである「発明家」の発想法を参考にしてはいかがでしょうか?今回は、株式会社ラボックスの代表取締役であり、自身も発明家である松本奈緒美さんからお話を伺いました。

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松本奈緒美
株式会社発明ラボックス・代表取締役/発明家

「お金をかけずに発明する」をモットーに数々のヒット発明品を生み出している主婦発明家。
販売促進用ツール「紙パズル」100万枚ヒット。掃除機のノズル「ペン先すーぴぃ」は14万個、「おそうじシュシュ」8万個、「おまとめハンガーカバー」「耳あてマフラー」など数々のヒット商品を生み出す。誰でも考えうる簡単な構造であるが特徴を持たせ権利を取得、数々の企業とロイヤルティ契約を結んでいる。

2010年 株式会社発明ラボックス 設立
個人発明家のアイデアをメーカーに繋ぐ「アイデアご意見隊」システム構築
システム会員は、約3,500人  ツイッターフォロワー約2万人

<主なテレビ出演>
2012年12月「ヒルナンデス!日テレ」スーパー主婦コーナー 特集
2013年2月 「笑っていいとも!フジテレビ」出演
2014年9月 「ノンストップ!フジテレビ」特集
2015年3月 「バイキング フジテレビ」出演
2016年9月 「NEWS アンサー テレビ東京」出演
2017年9月 「Rの法則Eテレ」
など、メディア出演多数

発明ラボックスホームページ
https://www.hatsumeilabox.com

知財販売・出願相談 チザオク.COM
https://www.chizaoku.com

自分のために、苦手な家事をラクにしたい!

ーまず、発明に興味を持ったきっかけはどのようなものでしたか?

松本:私はとても家事が苦手なので「なんとか人にやってもらいたい・・・。」とズルイことばかり考えていました。結婚してからは夫に「私も働いているのだから、あなたも家事をやってちょうだい!」と無理強いしていたので、ケンカが絶えませんでした。今思うと当たり前の話なのですが、ある日ようやく気づきました。

「自分ができないから、人にやらせようとしているんだ・・・。」と。

そこで、「自分のために、苦手な家事がラクになる便利なものを作ってみよう!」と思い立ったのが発明するきっかけです。

一番はじめの発明は、水拭き掃除が嫌だったので、吸引しながら拭き掃除ができる掃除機のノズルでした。

不思議なもので、やりたくない家事のはずなのに、自分で作った試作の効果を試す分には全く苦ではありませんでした。むしろ早く効果を知りたいので、試作しては掃除をするようになっていました。
夫も私の作った発明試作品に興味津々で「ちょっと使わせて!」と掃除をしてくれるようになったのです。

お互いに嫌な掃除を押し付け合ってはケンカばかりしていたのに、発明試作を始めてからは、そのケンカの元がなくなったお陰で、家庭が明るくなっていきました。

さらに、「うまくいけば、発明で大金が入るのでは!?」と、夫も急に協力してくれるようになり、より夫婦の結束が強くなりました(笑)。

この掃除機のノズルは、1999年頃に思いつき、試作が完成した時点で特許に出願。メーカー採用まで5年もかかりましたが、販売個数14万個を記録しました。念願のロイヤルティ収入を得ることができたのです。

ーそうだったんですね。今までどれだけの発明に関わってこられたのでしょうか?

松本:先ほどお話しした掃除機のノズルから現在に至るまで、特許、実用新案権10件、意匠3件を出願しました。これらは全て商品化され、ヒット商品となりました。現在はメーカーの商品開発、企業、個人の考えた発明、商品アドバイスなどをしております。

ーそんなに関わっていらっしゃるんですね!ちなみに、発明から事業化までは、どんなステップがあるのでしょうか?

松本:特許などの産業財産権を取得して事業をしたいのであれば、下記のステップを守らなければいけません。

(1)    アイデアを思いつく
(2)    試作を作って具体化してみる
(3)    同じものがないか調査(市場調査・先行技術調査)
※同じようなアイデアがあったら修正する。→(1)に戻る

(4)産業財産権(特許・実用新案・意匠)に出願
(5)広告・宣伝・商談・・など。

(1)〜(3)までを私は「発明トライアングル」と読んでいます。
調査をして、類似があったらまたアイデアを出して修正します。この繰り返しが強い権利を作ります。

この順番を間違えてしまうと、特許など知的財産権が取れなくなる、類似品が販売されていたら、そのメーカーから販売を差し止められる、といった事態が起こるかもしれません。くれぐれも気をつけてください。

ちなみに、「特許」は新規性のあるものに認められますので、出願するまではインターネットでの公開や、チラシ印刷といった「人に知られる行為」をしてはいけません。

例えば、クラウドファンディングなどでネットに公開したアイデアは、公知の技術とされ、基本的に特許など知的財産権は下りません。
(※公開した日から6ヶ月以内でしたら「新規性喪失の例外」を認めてもらう制度がありますが、その証拠などを提出する等、余計なお金がかかります。)

発明のコツは「間違い」を恐れないこと

ー発想を生み出すコツはありますか?

松本:私はこれまで、たくさんのアイデアマンを見てきましたが、彼らに共通することは「組み合わせ発想」をご自身も意識せずにやっていることでした。

発想は、脳に記憶されていた情報の「組み合わせ」から生まれるのですが、勉強が得意な方や事務的な能力の高い方は、この記憶していた情報を「間違いない組み合わせ」で繋ごうとします。

実は、「発想」において「間違いない組み合わせ」をすると、ありきたりのものになってしまいます。ユニークな発想をするためには、情報の繋ぎ方の間違いを許してあげることが大事になるのです。

ポンポンとアイデアを出す人は、この情報の組み合わせが「間違い」だということを何とも思わない人です。この「間違わない」というカベを取り除くことが、発想力を高めるためには重要です。

そこで、発想力を高める為に、私は「一石二鳥思考法シート」をいうものを考案しました。私もこのシートを用いて発想法を教えたり、私自身も、アイデアに困ったときは使っています。以下の図がそれです。

Aには、まず「これは何か?」を入れます。
例えば、「スリッパの新商品を考えよう」という時には「スリッパ」と入れます。

Bには、思いつくものを入れてみます。ここはあまり深く考えなくても大丈夫です。
間違いをしたくない人は、これまで見たことのある組み合わせを考えてしまいますので、ここは深く考えずに言葉だけを入れてみましょう。

そして、AとBを組み合わせてどんなことをしてみたいか?を描いてみます。
イラストも併せて描くことで、よりイメージがしやすくなると思います。

ー発明を考える上でよくやりがちな失敗としては、どんなものがありますか?

松本素人のみならず、プロのデザイナーさんなどにも気をつけて頂きたいのは、先ほどもお話しした出願前にアイデアを公にしてしまうことです。

例えば、ある方は出願せずに某団体主催のアイデアコンテストに出品したところ、優秀賞に選ばれたので「特許などに出願して商品化を目指したい」と相談がありました。

まず、アイデアを公に発表しているので、権利取得は難しい旨をお話しながらも、市場調査をしました。すると、ある会社が新商品として販売していたのです。発売の時期からして、そのコンテストを見て商品を企画・販売したと考えられました。

その方は、商品化になるような素晴らしいアイデアの権利を取得できなかったどころか、真似をされてもその会社にはクレームを入れる資格もありませんでした。

このように、出願せずに公にしてしまうと、権利を取得することはできなくなりますので、くれぐれもご注意ください。

ーちなみに、商標に関して気を付けないといけない点はありますか?

松本会社名や商品名を決める前に「先行調査」をしたほうが良いですね。

登記や、名刺を作成する場合はもちろん、商品名でしたらパッケージや広告を作るなどお金をかけた後に他者がその名称の商標権を持っていた場合、変更せざるを得ない状況になります。時間やお金の無駄になりますので、調査は十分にし、商標登録をすることをオススメします。

商標は特許と違い、すでに公開されていても取得できます。ということは、ビジネスが軌道に乗ってきた時に、他者にその商標を取得される事もあり得る、ということです。いくら早く使っていたとしても、名称を変えなければならない事態になるかもしれません。

例えば、一緒に仕事をしていた人が独立したとき、その人が同じ仕事内容で同じ会社名を商標登録して使用した、というケースがありました。最初に使っていたとはいえ、自分の方が会社名を変えなければならなくなる、ということもあり得ます。

会社名の認知に努力してきても、そのようなことが起こってしまいますので、商標出願は早めにしたほうがいいですね。

発明の醍醐味は「新しい発想」に出会うこと

ー発明家の中には、ひらめき型と理詰め型、どちらが多いでしょうか?

松本発想においては「ひらめき型」だと思います。しかし発想を形にしていく作業は「理詰め型」かもしれません。発明家にとっては両方必要だと思います。

よくある相談で「私が商品化したいアイデアは、自分では形にできないのですが、どうしたらいいのでしょうか?アイデアを形にしてくれる人はいませんか?」と聞かれることがあります。

そういう人の話を聞いてみると、具体的な形状のアイデアもなく「こんな感じ」の域を出ないことがあります。そのような曖昧な状態で第三者が具体的な形を作ったら、それは「第三者の発明」です。

つまり、具体的な構造が特許になります。そして、それを考えた人が「発明者」です。「ひらめき」だけでは発明家にはなれません。

ちなみに、私はその質問に対して、「まずは、自分でできるような簡単な構造などに、考え直すことはできませんか?」と答えます。

例えば、私が発明した「ペン先すーぴぃ」の場合、初期の発想は「掃除機で吸引しながら拭き掃除ができる」というものでした。掃除機の付属としてついているプラスチックの隙間ノズルの少し改良版を考えていたのです。

しかし、プラスチック成形品の試作は自分ではできません。そのため、「自分でできることはなんだろうか?」と考えて、まずは大きさや使い勝手の感覚を知るために、紙で作ってみました。

すると、自分も考えもしなかったアイデアが新たに生まれてきました。
シート状のまま使うことで「隙間の幅に可変して入る」また「拭き掃除ができる」「洗える」という、これまでにない新しい発想の掃除機のノズルになったのです。

試作をして自分で確かめてみることで、新しい発想が生まれます。これが個人発明家として一番楽しいところであり、醍醐味なのです。

【後編は近日公開】成功する発明家と起業家の共通点
「アイデアは○○から生まれる」発明家 松本奈緒美の「成功する考え方」(インタビュー後編)

(取材協力:株式会社発明ラボックス/松本奈緒美
(編集:創業手帳編集部)

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