個人事業主が知っておきたい経費の種類と注意点

創業手帳

個人事業主の経費の一覧表・どこまで計上できるか解説


個人事業主にとって経費は、節税のために大変重要なものです。
しかし、多くの個人事業主は企業のように経理スタッフを抱えているわけではないため、正しく計上できていないこともあります。
正しい経費計上のルールを知らないと、税金を余分に納める可能性もあり、所得が少なくなるかもしれません。

個人事業主の経費の種類や経費計上の注意点について解説します。
税務署から指摘を受けないよう、何をどこまで計上できるか、基本を理解することが大切です。

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個人事業主も経費計上で節税を


経費とは、事業を営む上でかかる費用であり、個人事業主であろうと法人であろうと発生するものです。
そして、経費を正しく計上することで、節税にもつながります。

しかし、どれが経費になるかあいまいな状態で処理していることもあるかもしれません。
正しく経費を計上しないと、税務署から指摘を受けたり、場合によってはペナルティを受けたりする可能性があります。
だからといって、経費にするのを怖がっていては節税につながらないでしょう。

個人事業主も経費と課税の仕組みを把握し、経費計上による節税の重要性を理解しておくことが大切です。

事業所得ー経費=課税所得

個人事業主、法人に関わらず、所得税や住民税など、所得に応じて税額が決まる税金の種類は多いものです。
その税額の計算をする時に必要な「課税所得」の計算式は、

事業所得ー経費

となっており、経費の金額によって左右することがわかります。
つまり、経費をより多く計上できれば課税所得を減らし、結果的には税額を減らすことも可能ということです。
経費について正しい知識を持ち、適切な費用を余すことなく経費計上し、節税を目指しましょう。

経費のほかに各種控除も、課税所得を減らすのに使えますが、対象となる条件が厳密に決められているため、本人の努力や工夫で増やせるものではありません。

課税所得について詳しくはこちらから>>
課税所得とは?節税のために知っておきたい基本知識

事業に必要な出費を経費に

経費にできる条件の基本は、事業に必要な出費であることです。事業に必要で使った費用は正しく分けておくことで、経費計上しやすくなります。
また、事業でもプライベートでも使用する場合には、家事按分が必要です。

個人事業主が経費とそうでないものの区別が難しく感じるのは、プライベートな出費とビジネス利用の出費が不明瞭になるためかもしれません。
経費のためだけでなく、健全な経営のためにも、事業とプライベートは分けて生活するのが良いです。

個人事業主の経費の種類一覧


個人事業主も法人も、基本的には事業のための出費が経費として認められるものです。ただし、一部の経費の扱いでは、個人事業主と法人とでは違うものもあります。

個人事業主が経費にできる費用の種類を一覧で紹介します。詳しい条件や経費計上の仕方など、個人事業主に必要な情報も併せて確認してください。

租税公課

租税公課とは、「租税」と「公課」の2つの種類の経費を指す言葉です。租税は、事業税や固定資産税などの税金で、公課は事業に関する会費などを指します。

個人事業主の租税公課は、家事按分という処理が必要となるものもあります。
家事按分は、事業用とプライベート利用の割合を決める処理で、仕事でもプライベートでも使った費用を明確に分類するために必要です。

例えば、自宅兼オフィスとしている建物にかかる固定資産税は、家事按分によってどれくらいの割合が事業に使われているか算出することが必要です。
割合を計算し、事業用として使った分だけを経費に計上します。

修繕費

修繕費は、器具・機械装置・建物など、事業に使うものを修理した費用や通常の維持管理費用のことです。
ただし、修理によって原状回復させるだけなら有効ですが、機能が高まる場合には修繕費ではなく資産計上して減価償却することになります。
これは、個人でも法人でも同様のルールです。

荷造運賃

荷造運賃は、商品の梱包や発送などに使った費用です。配送業者を使った送料のほか、梱包に使ったダンボールやガムテープなども荷造運賃として計上できます。
ただし、大量に購入して消費しきれない場合には、未使用分は経費計上できません。

水道光熱費

事務所の水道代・電気代・ガス代などは水道光熱費として経費にできます。
個人事業主の場合には、自宅をオフィス代わりに使っていたり、自宅の一部を改築して店などを開いていたりすることがありますが、この場合には租税公課同様に家事按分が必要です。

使用頻度などを検討して、事業用に使ったと思われる分だけを経費計上します。ライフラインは自宅兼事務所の場合、プライベート利用がないことはありません。
そのため、100%事業用として計上するのは避けてください。

保険料

個人事業主が保険料として計上できるものは、事業に関係のある損害保険料・地震保険料・自動車保険料などです。
自分の生命保険や社会保険などは対象になりません。これらの保険料は確定申告の際に保険料控除などで対処します。

自宅や自動車など、事業とプライベート利用で使うものにかかる保険料は、やはり家事按分が必要です。
水道光熱費や租税公課と同じように、使った割合でパーセンテージを決めて按分してください。

消耗品費

消耗品費は、取得価額が10万円未満のもの、または使用可能期間が1年未満のものを購入した費用です。
事業用に購入したものが対象となります。10万円を超える金額のものは全額経費にはできず、毎年減価償却することが必要です。

ただし、青色申告者の場合には、30万円未満のものでも全額をまとめて経費にすることもできます。
その際には、確定申告の際に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要です。

法定福利費

法定福利費とは、従業員の保険料の会社負担分を指す言葉です。
個人事業主でも、従業員数が5名以上いる場合には、社会保険の加入が必要となり、法定福利費が発生することがあります。
法定福利費になる保険料の種類は、健康保険・介護保険・厚生年金・労災保険・雇用保険です。
これらの保険料は従業員と折半、もしくは事業主負担となるため、法定福利費で処理します。

ただし、個人事業主個人の健康保険料などは法定福利費にはなりません。あくまでも、自分以外の従業員の分だと認識しておきます。

給料賃金(専従者給与)

個人事業主でも、従業員を雇用することがあり、その際に支払った給与は給料賃金で経費計上できます。
また、家族や親族に事業を手伝ってもらい給料を払う場合には、青色申告者は専従者給与として全額経費計上が可能です。

ただし、個人事業主が従業員を雇用する場合には、事前に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」を税務署へ提出しなければいけません。
青色申告者の専従者についても事前申請が必要です。

白色申告の場合には、専従者の給与を経費にはできません。
事業主貸で処理をしておき、確定申告の際に白色事業専従者控除で一定額の控除を受けることになります。
経費にはなりませんが、控除も一定の節税効果があるため、忘れずに控除を受けてください。

地代家賃

地代家賃は、賃貸しているオフィスや自宅兼事務所にかかる家賃が対象の経費です。
オフィスを別途構えている場合は全額経費になりますが、自宅兼事務所に場合には、家事按分が必要となります。
租税公課や水道光熱費と同じく、事務所として事業に使った分の割合を出します。地代家賃の家事按分の仕方は、使用面積や使用時間などをもとに行うのが一般的です。

外注工賃

外注工賃とは、外注業者に依頼して作成した名刺や封筒、事業用の公式サイトやネットショップなどの費用です。
会社のロゴ・会社名・商品名などを外注して作ってもらった場合も、外注工賃で処理します。

新聞図書費

事業に関係のある雑誌や書籍などを購入した費用が新聞図書費です。紙ベースの本はもちろん、有料のメールマガジンなども対象となります。
会計実務のハウツー本・ホームページ制作の指南書・ビジネス書などをはじめ、事業に関係なさそうな雑誌などでも、事業の参考になった部分があるものが計上可能です。

支払手数料

事業で使用したサービスの手数料が当てはまります。具体的には、振込手数料・仲介手数料・代引き手数料などです。
事務手数料や証明書などの発行手数料なども当てはまります。

ただし、手数料と呼ばれていても、ほかの経費として扱うものもあります。
ゴミ処理手数料は雑費で、印紙や住民票の発行手数料など行政機関への手数料は租税公課です。
販売手数料は販売促進費に仕訳し、税理士や司法書士に支払う費用は、支払手数料ではなく支払い報酬で処理します。

減価償却費

減価償却は、高額で長期間利用できる物品を購入した場合、一定の期間をかけて経費にしていく処理のことで、毎年の経費を減価償却費と言います。
固定資産として資産計上され、国が決めた耐用年数に従って消却するルールです。

購入年は支払いだけが増えるのに全額経費計上できないため、その年の利益が減ったように感じるかもしれません。
しかし、翌年からは支払いがないのに一定の額の経費が計上できるようになり、売上と経費のバランスも安定します。

消耗品費でも説明したとおり、減価償却のための資産計上は一定の金額を超えた場合に必要です。

旅費交通費

旅費交通費は、電車やバス、タクシー代などの交通費と宿泊を伴う出張の宿泊費用が含まれます。
もちろん、事業用の費用のみが経費となるので、プライベート利用と混ざらないように注意が必要です。
電子マネーなどを使い、履歴と金額がはっきりとわかるようにしておくと後で何に使ったかが明白で整理しやすくなります。

広告宣伝費

広告宣伝費は、チラシ・ポスティング・新聞広告・インターネット広告・看板など、宣伝に使った費用です。

広告宣伝費は、販売促進費と似ており、販売促進費を仕訳に使っている場合には間違いやすくなるかもしれません。
一般的な分け方は、広告宣伝費は間接的な広告に、販売促進費は直接ユーザーにアプローチするアクションにと区別することが多いようです。

貸倒金

貸倒金は、売掛金や貸付金など、将来回収できるはずだった金額を回収できなくなった時に使います。

通信費

通信費は、電話代・インターネットの料金・郵送の切手代・はがき代など、情報のやり取りにかかる費用です。
自宅をオフィスとして使っている人で、事業用とプライベート用の電話やネット回線を分けていない場合には、家事按分が必要です。
また、切手代やはがき代なども、プライベート利用の分は含めてはいけません。

接待交際費

取引先や得意先との飲食費用・得意先へのお祝い金・贈答品の支払いなどが接待交際費にあたります。取引先とのゴルフ代なども同様です。
事業で関わりのある人との交際なので、プライベートの友人との飲食代は含めてはいけません。

個人事業主が経費計上する際の注意点


個人事業主が経費計上する際には、法人とは違ったルールが必要となる場合がありました。
それは、個人事業の場合にはプライベートと事業の両方で使う費用が発生することや家族従業員を持つことなどが主な理由です。
法人よりも条件が複雑に見えがちな個人事業主の経費は、以下の点に注意して経費計上を考えると良いです。

個人で使う・かかるお金はすべて対象外

個人事業主が経費計上する際には、個人で使った分と事業用に使った分の費用を必ず分けなければいけません。
その人個人がプライベートで使ったお金を事業の経費として計上することは、税務調査の対象となり、追徴課税のペナルティが課せられる可能性があります。

個人への税金や個人の資産と見なされるものは、無理に経費にしようとせず、個人の財布から出します。ちょっとした飲食や買い物程度ならと油断するのは危険です。

家事按分はできるだけ正確に

個人事業主の経費には、家事按分しなければいけないものもあります。
家事按分の際には、どれくらいの割合を事業用とするか、できるだけ正確に決めることが大切です。
経費を多くしたいからと行き過ぎた割合で按分すると、税務署から指摘を受ける場合もあります。

家事按分について詳しくはこちらから>>
家事按分とは?個人事業主が覚えておきたい按分の意味や計算方法、税法上の扱いを解説

家族や親族の扱いは確定申告方法で異なる

家族や親族を従業員として雇っている場合、個人事業主の場合には確定申告の方法によって給与の扱いが変わります。
従業員分の給与を経費として計上できるのは青色申告ですが、白色申告でも控除の対象となるため、控除を受けて節税に努めてください。

従業員しか対象とならないものもある

個人事業主は、従業員しか対象とならない経費に注意が必要です。
特に、従業員を雇用している場合には、従業員のみ対象となる経費の勘定科目が増えますが、事業主本人の経費を仕訳しないようにします。

まとめ

個人事業主も必要経費を計上すれば、節税可能ですが、個人事業主の経費計上には法人とは異なる独特なルールもあります。
どの費用がどれだけ経費になるか、対象者は誰かを把握することが大切です。

経費は多く計上するとそれだけ節税できますが、正しく計上することが何よりも重要です。不正をしないように注意点を守り、健全な経営を目指しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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