開業費を経費計上して償却すると節税になる!?その実態を徹底解説!

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開業費の経費計上で償却すると節税になるのは事実!


開業費は、事業をスタートするためにかかった費用を指します。開業前にかかった費用は基本的にすべて含まれていて、開業後に費用として計上できます。
つまり、うまく活用すると節税効果が期待できるということです。

今回は、開業費の概要や償却する際の仕訳例、償却時に知っておきたいポイント、開業費を確定申告する際のポイントについて解説します。
節税のために開業費の経費計上を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

そもそも開業費とは?


開業費は、事業をスタートするためにかかった費用です。開業前にかかった費用の大半を計上できるので、把握しておくことをおすすめします。
まずは、開業費の基本的な部分について解説します。

開業費について

開業費は、前述したように事業を行うための準備期間にかかった費用を指します。開業準備費と呼ばれる場合もあります。

業種によってまちまちですが、開業を決めてから実際に事業をスタートするまでに多くの費用がかかるものです。
その費用は特別に収入から控除できるという仕組みがあるので、知っておくと役に立ちます。

事務所を借りるためにかかる権利金や事務所で使う事務用品などが含まれ、初年度だけ発生する費用を開業費と呼びます。

開業費と創業費の違いは?

開業費とよく似た言葉に創業費があります。この2つは混同されがちなので、違いを把握しておくことが大切です。

創業費は、会社が法人として登記するまでの期間にかかった費用を指します。
つまり、法人でなければいけないこと、法人として登記するまでにかかった費用であることなど、条件に違いがあります。

個人事業主の場合だと、創業費ではなく開業費を計上してください。また、創業費は設立登記までにかかった費用だけしか認められないという点にも注意が必要です。

繰延資産として償却可能

開業費は、繰延資産として償却することが可能という点も把握しておくべきポイントです。繰延資産は資産の科目で一旦処理しますが、毎年少しずつ経費化する資産です。
毎年少しずつ経費化することを償却と呼びます。

繰延資産は会計上だと5年均等償却となりますが、税法上では任意となっています。
償却額は0円~全額まで自由に決めて問題なく、5年を超えてしまった場合の罰則もありません。

個人事業主と法人で開業費に含まれるものが異なる

開業費に含まれるものは、個人事業主と法人で異なることにも注意が必要です。次は、それぞれの開業費に含まれるものと含まれないものについて解説します。

個人事業主の場合

個人事業主の場合、開業費に含まれるものは以下が挙げられます。

  • 開業のために参加したセミナー費用
  • 市場調査などにかかったガソリン代・旅費・通信費
  • 打ち合わせにかかった費用
  • 開業までの借入金にかかる利子
  • 宣伝広告費
  • パソコンの購入費
  • Webサイトの制作費
  • など

開業のための必要だと証明できた場合に開業費に計上できます。
打ち合わせにかかった費用や関係者への手土産代も開業費に含まれるので、領収書をなくさないようにしてください。

様々な項目が開業費に含まれますが、10万円以上のものや敷金・礼金、仕入代金は計上できません。10万円以上かかったもの(車など)は固定資産として計上します。

敷金は後で戻ってくるので計上できず、礼金は繰延資産のひとつですが扱いが異なるので開業費に含まれないものに分類されます。
仕入代金は開業前にかかる費用ですが、通常時と同じ売上原価となるので開業費に含まれません。

法人の場合

法人の開業費に含まれるものは、以下のとおりです。

  • 広告宣伝費や営業をスタートする前の研修にかかった費用
  • 市場調査にかかった費用
  • 印鑑・名刺などの制作費用
  • 開業準備のために特別に支出しなければいけない費用
  • など

 
個人事業主の場合と同じく、事業を始めるためにかかった費用が開業費(創業費)となります。

一方、含まれないものは以下の項目です。

  • 事務所の家賃や水道光熱費
  • 後から返還される敷金
  • 10万円以上の固定資産
  • 商品の仕入代
  • など

 
個人事業主と法人では規模が違いますが、基本的に同じように扱われる部分もあります。
しかし、中には異なる部分もあるため、あらかじめ把握しておくと経費計上するとなった時にスムーズに進められるので、リサーチしておいてください。

また、ここでご紹介したのはあくまでも一例で、ほかにも含まれる費用があるかもしれません。迷う部分がある場合は、税務署や税理士に確認することをおすすめします。

開業費を償却する際の仕訳例


開業費を償却する場合の仕訳をどのように行うかイメージしやすくなるように、いくつかのパターンをご紹介します。

・事務用品(2万円)と机(2万円)の合計4万円を購入した場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
開業費 4万円 元入金 4万円 文房具や机の購入

開業前は事業がスタートしていないため、事業用資金はありません。そのため、現金ではなく「元入金」という勘定科目で仕訳をする必要があります。

・決算時の仕訳(事務用品2万円、机2万円の合計4万円分を購入した場合)

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
繰延資産償却 4万円 開業費 4万円 償却額

・広告宣伝費300万円を現金で支払った場合の仕訳(5年で償却する場合)

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
開業費 300万円 現金 300万円 宣伝広告費

決算時の仕訳は、300万円÷(12カ月×5年)×12カ月=600万円となるので、その金額で仕訳します。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
開業費償却費 600万円 開業費 600万円 宣伝広告費

節税するための開業費償却のポイント5つ


開業費を償却する場合、いくつか把握しておきたいポイントがあります。続いては、どのような点を押さえておくと良いのかを解説します。
信頼性を高めたり、後から見返した時もわかりやすくなったりするので、意識して取り組んでみてください。

1.開業前コストも含まれる

開業費には、開業前にかかったコストが含まれます。開業前は帳簿をつけていない期間になりますが、含めることも可能です。
さかのぼれる期間は、一般的に半年~数カ月前とされています。

数年前から準備をコツコツと進めるケースもありますが、あまりに以前のものだと不審に思われる場合があります。
開業準備が数年単位でかかってしまうのであれば、怪しまれないようにレシートや領収書を保管しておくのがおすすめです。
購入した理由や目的、用途などもメモしておくと、証拠になるので怪しまれにくくなります。それらの書類をひとつのファイルにまとめておけば、紛失のリスクも低減できます。

2.領収書は必ず保管しておく

開業費として計上するのであれば、領収書は必ず保管しておいてください。会計帳簿をつけるためには、証拠が必要になるためです。
そのため、開業費としてかかった費用の領収書やレシートは保管しておく必要があります。

しかし、中には、金額が少ない旅費や交通費(バスや移動短い距離の電車など)、接待交際費を割り勘にした金額、慶弔費用といった領収書が出せないものもあります。
そのような場合は、自分で出金伝票を書いておけば問題ありません。支払いが発生した理由などをメモしていけば信頼性が担保され、見返した時もすぐに思い出せます。

レシートはサイズが小さいのでどこかに紛れ込み、なくしてしまう恐れがあるので、なるべく領収書をもらうのがおすすめです。
保管場所を決めておけば、より紛失のリスクは低くなります。

3.任意償却なら金額は自由に設定可能

開業費は、必ずしも5年で均等償却をしなければいけないわけではありません。そのため、任意償却として毎年異なる金額を計上しても大丈夫です。
金額は、0円~前期末までの未償却残高の範囲で自由に設定できます。

初年度にすべて償却できるので、黒字になった場合は課税所得を減らすために全額償却するという選択肢もあります。
赤字になってしまった場合は開業費を償却せず、数年経過して安定したタイミングで行っても問題ありません。

任意償却の未償却残高を計上するタイミングも自由に決められます。均等償却は5年となっていますが、それ以上経過して計上してはいけないという決まりもないからです。
6年目や7年目であっても、経費計上は可能です。

4.管理は仕訳帳への記入で行う

開業費の合計金額が10万円を超えた場合、開業費は資産の科目、開業償却費は経費の科目として仕訳帳へ記入します。
4月1日に開業し、開業費が20万円だった場合を例に具体的な記入方法を解説します。

資産科目の仕訳は、借方が開業費で20万円、貸方が現金で20万円です。年度の償却金額は、開業費全額÷5年×当該年度の月数/12となります。
この場合だと、20万円÷5年×9カ月/12カ月=3万円となり、初年度の経費科目の仕訳は以下のとおりです。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
開業費償却費 3万円 開業費 3万円 開業準備費

開業費が10万円未満は、経費計上の仕訳で記入します。交通費が2万円だけかかり、現金で払った場合は以下のようになります。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
旅費交通費 2万円 現金 2万円 交通費

5.減価償却資産台帳への記入も忘れずに行う

10万円以上の開業費を計上する時は、仕訳帳のほかに減価償却資産台帳にも記入しなければいけません。
開業費は繰延資産となるので、取得・減価償却・売却・除去などの経緯を減価償却資産台帳に記入して管理する必要があるからです。

このことから、開業費の償却を行うなら減価償却資産台帳にも忘れずに記入することが大切です。
修正が発生した時は、仕訳帳と減価償却資産台帳の両方を直しておいてください。片方しか直していないと数字が合わないという事態に陥り、自分が困ることになりかねません。

忘れないようにするためには、両方記入する癖をつけられるようにすぐ書くのがおすすめです。繰り返していくとそれが習慣になり、忘れる事態を避けられます。

開業費の確定申告を行う時のポイント3つ


開業費について理解を深めることができたら、確定申告についても把握しておく必要があります。
最後に、確定申告を行う目的や対象者、スケジュールについて解説します。

1.目的について

日本は、申告納税方式を採用しているため、自分自身で納税額を申告しなければいけないという仕組みになっています。
そのため、個人事業主として収入を得ている方は、原則自分で確定申告をしなければいけません。
確定申告では、1月1日~12月31日までに得た所得(収入から経費・控除を差し引いた金額)を申告し、所得税の支払いを行います。

収入が低いという理由で申告しない人もいますが、個人事業主の所得証明にもなるので、黒字化してから確定申告するというのは得策ではありません。
申告していないと収入が低いことも証明できないため、国民健康保険の軽減措置の対象になれなかったり、非課税証明書を発行できなかったりする場合もあるので注意してください。

2.対象者について

開業して事業を行っている方が全員確定申告の対象になるわけではありません。ここでは、個人事業主と法人の場合に分け、どのような場合に対象者になるのかを紹介します。

個人事業主の場合は、事業が黒字になっている方、事業所得が38万円以上が対象です。
赤字であっても確定申告をするとローンを組みやすくなったり、補助金などを申請しやすくなったりするので、メリットがありそうなら赤字で確定申告をしても問題ありません。

法人は、基本的にすべての法人が確定申告をしなければいけません。
法人税は事業年度終了日(決算日)の翌日から2カ月以内、消費税は売上げが1,000万円を超える場合に申告します。
そして、法人事業税と法人住民税はすべての法人が対象となり、事業年度終了日の翌日から2カ月以内に納付することが定められています。

3.確定申告のスケジュール

確定申告書の提出期間は、毎年2月16日~3月15日の1カ月間です。
土曜日や日曜日、祝日に被ってしまう場合は、翌日または翌々日の月曜日が期限となります。所得税の納付期間も3月15日までとなっています。

ただし、税金の還付を受けるための還付申告は例外なので注意してください。還付申告は、1月1日から申告可能となっていて、3月15日までという縛りもありません。
申告できるようになった日から5年以内ならいつでも還付を受けられます。

確定申告の提出方法は、税務署の窓口へもっていくほか、e-Taxを使ったインターネット申告や郵送、税務署の時間外収集箱への投函といった方法もあります。
窓口は期限日に近づくと混み合ってくるので、早めに足を運ぶのがおすすめです。

まとめ

開業前にかかる費用・開業費は、償却すると節税効果が期待できます。しかし、どこからどこまで含んでいいのかわからないといったケースもみられます。
個人事業主と法人で異なる点もあるので、正しい情報を手に入れておくことが重要です。
開業前の費用を開業費として計上できたり、任意償却であれば金額が事由に設定できたりと節税のためのポイントもあるため、押さえておきましょう。

創業手帳では、開業費を含む開業準備に関する情報も発信しています。開業準備を進めている中で少しでも不安がある方は、ぜひご活用ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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