個人事業主の固定資産税は経費扱いにできる?仕訳の方法や特例措置なども徹底解説!

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個人事業主の大きな負担になりやすい固定資産税!対策は必須


固定資産の所有者には毎年固定資産税がかかることを、ご存じの方も多いかもしれません。
固定資産税は、決して安くはないものであり、通常どおり税金を納めれば負担が大きくなってしまうものです。
今回は、固定資産税における基本知識や支払い方法、個人事業主が固定資産税の仕訳方法、軽減措置や特例措置について解説します。

そもそも固定資産税とは?


固定資産税とは、土地・建物などのような固定資産に対して課される税金のことをいいます。
一戸建て・マンション・土地・店舗などを所有している方は、固定資産税が課せられます。
毎年1月1日時点で、所有している固定資産の価格に応じて、法人・個人を問わず税金が課せられる税金です。

固定資産税は、不動産だけでなく、事業を行っている人がその事業を行うために所有している償却資産などにもかかります。
償却資産は、事業で使用するパソコンをはじめとする機械設備、電気設備などが該当します。
償却資産税も固定資産税のひとつとなっていますが、土地や建物などにかかる固定資産税と区別するために、償却資産税という違う呼び方になっているのが特徴です。

固定資産税の金額を決定する方法や納期など


課せられる税額は、都道府県や市区町村の税率によって変わってきます。固定資産税額は、土地や建物のほか、償却資産ごとにした計算式で決定される仕組みです。
ここでは、固定資産税の金額を決定する方法や納期についてご紹介します。

固定資産税の金額はどう決まる?

土地・建物・償却資産ごとに固定資産税の計算式は多少異なります。
例えば、土地にかかる固定資産税の場合、土地の面積・路線価・土地の区分などに基づき、課税評価額を算出し、そこに税率をかけることで算出可能です。

建物の場合は、建物の評価点・床面積などに基づいて算出した課税評価額、償却資産は、取得価額・耐用年数などに基づいて算出した課税評価額に、それぞれ税率をかけた額が固定資産税額になります。
仮に、土地と建物の住所が都市計画税の対象区域になる場合は、その土地と建物に対し、別途都市計画税も課されることになります。

固定資産税の税率や都市計画税に関しては、事前に各都道府県や市区町村で確認が必要です。

納期と支払い方法について

固定資産税は、毎年4回に分けて納期を設けています。
細かな納付時期は市区町村によって違いがありますが、基本的には第1期が6月、第2期は9月、第3期は12月、第4期は2月が目安になっています。
原則年4回となっているものの、希望すれば1年分を一括で納付することも可能です。

納期が近くなると、市区町村より納税通知書が送付されるため、その通知書に基づいて支払いを行います。一括納付を選択した場合は、4~6月頃に納税通知書が送付されます。

固定資産税は、金融機関窓口・税事務所窓口・口座振替・クレジットカード支払いなどから選択可能です。
支払方法についても市区町村によって違いがあるため、その中から支払いやすい方法を選んでください。

固定資産税は経費として計上できる?


経費とは、事業遂行のために必要な支出をいいます。これは、税金に対しても同じことがいえるため、固定資産税も経費として計上することが可能です。
ここでは、個人事業主の必要経費や経費に該当する税金についてご紹介します。

個人事業主の必要経費

個人事業主は、事業を行う上で必要な支出があれば、それらを必要経費として計上できます。
ただし、どこまでを必要経費にできるのかは、明確な基準が法律で決まっているわけではありません。
個人事業主は、必要経費なのか、それ以外のプライベートのものなのかを自身で分けていくことが必要です。

個人事業主の場合、自宅で開業して事業を行っているというケースも多くあります。自宅で業務を行っている場合、プライベートでも使用している範囲が必ずあるはずです。

必要経費として計上できるのは事業分のみなので、事業費と生活費が混在しているような時には、合理的な基準で分けて計算しなければなりません。
すべてを計上できるわけではないことも理解しておく必要があります。

必要経費となる税金とは?

必要経費として計上できるのは、税金に対しても同様です。
そもそも、個人事業主には、固定資産税のほかにも、償却資産税や個人事業税・消費税・自動車税・印紙代などの税金がかかります。
事業を行う中で、公共のサービスを受ける機会がある場合、そこにかかる個人事業税や消費税は必要経費として計上できます。

固定資産税についても、土地や建物を事業で使っているのであれば、必要経費として計上可能です。
ただし、自宅で開業した場合、土地や建物の税金は事業遂行のためだけでなくプライベートでの使用にも該当するため、経費として扱われない点に注意してください。
どのようなものであっても、事業を行う上で必要な支出でなければ、必要経費には計上できません。

固定資産税の仕訳方法について


まず、固定資産税は国税や地方税などの税金に該当するため、「租税公課」という勘定科目で経費として計上します。
具体的な仕訳方法としては2通りあり、以下に固定資産税の仕訳方法を解説します。

固定資産税の額が決まった日に経費処理を行う

ひとつは、固定資産税額が決まった日に経費処理を行う仕訳方法です。この場合、賦課(ふか)決定があった日に経理処理することをいいます。

そもそも、固定資産税は毎年1月1日時点で所有している固定資産に対して課せられる税金です。
ここでいう「賦課決定があった日」というのは、市区町村から送付される納税通知書が届いた日のことです。

例えば、賦課決定で固定資産税が12万円となり、年4回に分けて納付する場合、納付日にそれぞれ3万円支払うことになります。
この場合、賦課決定日に12万円全額を租税公課で処理します。すぐに全額を支払っているわけではないため、負債の勘定科目の未払金を相手勘定にしなければなりません。

固定資産税を支払った日に経費処理を行う

もうひとつは、固定資産税を支払った日に経理処理を行う仕訳方法です。上記と同様に固定資産税が12万円となった場合で経理処理の方法を見ていきます。
この仕訳方法を選択した場合、賦課決定日にはお金を支払っていないため仕訳を行いません。

年4回に分けて、実際に固定資産税を納付した日それぞれ租税公課の勘定科目を使って支払いの仕訳を行います。
賦課決定日に経費処理を行う方法とは異なり、年4回にそれぞれ納付した日にその都度経理処理を行います。

基本的には、賦課決定があった日に経理処理を行うのが原則です。
しかし、処理の簡略化の観点を踏まえ、2つのどちらの方法でも問題ないことになっており、自分がやりやすい方法を選択できます。

固定資産税の軽減措置や特例措置も把握しておこう


個人事業主にとっては、固定資産税をはじめとする税金の負担が大きいものです。負担を減らすため、軽減措置を利用することが可能です。
ここでは、固定資産税の軽減措置や特例措置について解説します。

中小事業者等が生産性を高めるための設備等に係る固定資産税の軽減措置

「中小事業者等が生産性を高めるための設備に係る固定資産税の軽減措置」とは、「最先端設備等導入計画」の認定を受け、取得した新規設備において適用される固定資産税の軽減措置となっています。
課税されることとなった年度から数えて3年度分が対象となり、該当期間は固定資産税の課税標準が0となる内容です。

ただし、この軽減措置は2018年6月6日~2023年3月31日までに導入した設備が対象となっています。
また、取得価額が設備の種類ごとに定められた最低価額以上でなければなりません。

生産性向上特別措置法に基づいた軽減措置となっているので、期間に注意するほか、先端設備の購入を予定している場合は、最低価額を確認する必要があります。

固定ゼロの拡充・延長

「固定ゼロの拡充・延長」とは、生産性向上のため、中小企業者や個人事業主などの新規投資を促進するための特例措置です。
「先端設備等導入計画」の認定を受けた中小企業または個人事業主が、自治体の判断で固定資産税を0または2分の1にする特例が受けられます。
投資後3年度までが対象となっており、全国の2020年3月末時点で、1,647自治体で行っています。

対象になっている設備は、機械装置・器具・備品などの償却資産で、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するものです。
また、事業用家屋は取得価額の合計額300万円以上の先端設備とともに導入されたもの、構築物については、旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するものも追加されています。

固定資産税等(土地)の負担調整措置

「固定資産税等(土地)の負担調整措置」は、固定資産税の負担を抑えるために導入されたものです。
所有している土地の評価額が大幅に上昇した場合、個人事業主にとって固定資産税の負担は大きなものになってしまいます。
この負担地調整措置によって、固定資産税額が大きく上昇するのを防ぎ、毎年徐々に課税標準額の引き上げを行っていく仕組みです。

税額が大きく変わることを防ぎつつ課税の均衡化を図ろうと、負担水準の高い土地では負担を抑制し、負担水準の低い土地ではその水準に応じて課税標準額を引き上げていきます。
多くの自治体で行っていますが、負担調整の割合は自治体によって異なるため、事前に市区町村へ確認が必要です。

新築住宅に係る税額の減額措置

「新築住宅に係る税額の減額措置」とは、その名のとおり新築住宅にかかる固定資産税を3年間減額する措置です。
住宅取得者の初期負担を軽減しつつ、上質な住宅建設促進と居住水準向上による、上質な住宅ストック形成が目的となっています。

一戸建てのような一般住宅の場合、固定資産税が3年間減額され、マンションの場合は5年間、それぞれ半分に減額されます。
ただし、この減額措置は2024年3月31日までの新築分が対象となっており、それ以降は対象になりません。

また、自宅と事務所を兼用する場合、床面積が居住部分で50平方メートル以上280平方メートル以下の住宅が対象です。
一方、120平方メートル以上の部分は減額措置の対象外となってしまうため注意が必要です。

個人事業主の負担を軽減!固定資産税の節税方法


固定資産税は、個人事業主にとって大きな負担になってしまいますが、固定資産評価額を下げる方法や節税方法もいくつか存在します。
最後に、個人事業主が固定資産税を節税するための方法をご紹介します。

1.分筆する

固定資産税は、固定資産税課税標準額に約1.4%の税率をかけて算出されます。
大きな土地が一筆である場合、その分利便性が高い土地や低い土地もすべて同じ評価額になってしまいます。
土地を分筆すれば、いびつな形の土地や利便性が低い土地は評価額を下げることが可能です。

ただし、分筆はひとつの登記簿から分けることになるため、登記・測量などの費用がかかります。
登記や測量の費用と、分筆した場合に減税できる金額を比較して、分筆が本当に必要かどうか検討することが大切です。
また、不合理な分筆で節税目的とみなされないよう注意してください。

2.非課税の土地を申告する

たとえ私有地でも、道路に該当する土地がある場合や公益性の高い公園などの土地は非課税になります。
しかし、道路は申告制のため、申告しないままでは課税対象となってしまいます。

東京都を例に挙げると、道路では幅1.8m以上・ほかの公道に通じている・不特定多数の人が通行している・客観的に見て道路とされるものなどは、私道として認められるものです。
所有している土地に非課税対象の部分が含まれる場合は、各自治体に申告すれば、その分節税が可能です。

3.固定資産台帳をチェックし、間違いがないか確認する

代々引き継がれてきた土地や昔から所有している土地などは、実際の面積と登記簿に記載された面積が異なる場合があります。
土地の面積においては実測値が優先されるため、役所に申し出をすれば正しい面積に直してもらうことが可能です。
登記簿に記載されていた面積よりも実際の面積が小さければ、その分固定資産税の節税につながります。

また、固定資産台帳に誤りがある場合もあります。
固定資産評価額が本当に正しいのか、所有する土地以外の土地が過剰に含まれていないかなど、間違いがないかをチェックしなければなりません。
万が一、誤りがあった場合は5年前までさかのぼって固定資産税の還付が受けられるので、早急に管轄の税務係に申し出る必要があります。

まとめ

個人事業主の場合、固定資産税は全額もしくは一部を必要経費として計上することができます。
経費の計上や仕訳は手間もかかりますが、その分負担を軽減することにつながります。軽減措置や特例措置を利用して、負担を減らすことも可能です。
ほかにも、分筆したり非課税の土地を申告したりするなど、固定資産税の節税方法もいくつかあります。当てはまるものがあるかどうかを確認してみてください。

創業手帳(冊子版)では、個人事業主にかかる税金に関する情報や固定資産税の節税方法なども紹介しています。税金に関しての情報が知りたい方は、ぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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