TREASURE IN STOMACH 柴田愛里沙│北海道から世界へ「ヴィーガン/グルテンフリー」のお菓子を発信

創業手帳

ヴィーガン/グルテンフリーのお菓子を作る理由

起業家の柴田愛里沙さんが経営している「アリサの北海道お菓子店」では、アレルギーのある方や、ムスリム、ヴィーガン、ベジタリアン、美容や健康を気にする方向けに「ヴィーガン/グルテンフリー」のお菓子を販売しています。

大学で物理を勉強し、卒業後はIT畑で働いてきた柴田さん。

ご自身の体験とマーケティング力を活かし、念願のお店をオープンするまでの道のりと今後の展開について、創業手帳の大久保が聞きました。

柴田 愛里沙(しばた ありさ)
株式会社TREASURE IN STOMACH CEO/Founder

北海道札幌市出身。東京理科大学では物理学を専攻。卒業後、都内大手IT広告代理店に入社し法人向けに広告企画提案を行う。
北海道にUターン後はWEBデザイン企業に入社、その後フリーランスを経て、 平和な食と暮らしを愛する会社「株式会社TREASURE IN STOMACH」を創業、代表取締役に就任。宗教や考え方、健康状態に関わらず、みんながおいしいねと笑いあいながら楽しくテーブルを囲める、そんな素敵な食卓があったらいいなという思いが社名に込められている。ドイツ人の祖父を持ち、自然豊かな環境で育ちながらも、アレルギーやアトピーを経験した柴田愛里沙自身の経験に基づいたものづくりをソフトとハード両面から行っている。ヴィーガン/グルテンフリーのスイーツ専門店「アリサの北海道お菓子店chat」の経営や、北海道の食と暮らしのYouTubeチャンネル「愛里沙の北海道暮らし」を運営。ビジョンは、One table for everyone!(みんなのためのテーブル!)

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください。

北海道の実店舗とECでヴィーガン/グルテンフリーのお菓子を販売

こちらのクッキーも全てグルテンフリー&ヴィーガン

乳製品、卵、小麦、白砂糖を使用しないお菓子を提供

大久保:柴田さんが経営されている「アリサの北海道お菓子店」の特色を詳しく教えてください。

柴田:アレルギーのある方や、ムスリム、ヴィーガン、ベジタリアンの方、美容や健康を気にされている方向けに、乳製品、卵、小麦、白砂糖を使用しないお菓子を作って販売しています。

札幌市中央区に本店がありまして、百貨店の催事にも積極的に出店しています。いずれ東京にもお店を出したいので、東京でのポップアップ出店も精力的にしています。
ヴィーガン/グルテンフリーの専門店で、日本でもすごく珍しい存在です。

ヴィーガン/グルテンフリーの菓子店を始めたきっかけ

大久保:ヴィーガン/グルテンフリーの菓子店を始めたきっかけは、何だったのでしょうか?

柴田:私の個人的な理由に紐づいています。私は生まれも育ちも日本ですが、祖父がドイツ人なんです。
ドイツにはムスリムやヴィーガン、小麦アレルギーの方が多くて、多様な食に対応する土壌がある程度整っているのをドイツに行くたびに感じました。私は今31歳ですが、日本だとみんな同じものを食べていることにずっと違和感があったんですね。
というのも、私はアトピーでアレルギー体質のため、小麦や乳製品など食べられないものがあったのですが、学校で友達に説明してもなかなか分かってもらえなかったり、大変な思いをずっとしてきました。大学を卒業して就職してからもその思いは消えませんでした。

周囲にヴィーガンや食品アレルギーをもつ方が増えてきましたし、糖尿病や持病など様々な理由で「この食品は食べられない」と言える社会になってきました。

ですが、日本では乳、卵、小麦、白砂糖を使った画一的な食事が多く、ヴィーガン/グルテンフリーの食べ物はニーズがあるのに足りていないと思いました。私も当事者なので、自分でやってみようと思ったのが起業のきっかけです。

大久保:麦に含まれるグルテンが原因のセリアック病や、蕎麦アレルギーなどで辛い思いをしている方、アレルギーまでいかないけれど気にしている方など、幅があると思います。

柴田:重度の小麦アレルギーの方は、パン屋さんの前を通るだけで呼吸困難になってしまうんですよね。人によってそれぞれで幅広いです。

大久保:食べられないのに好き嫌いのように決めつけられて、辛い思いをしている方もいるわけですよね。

柴田:そうですね。
自分でお料理をする分にはいろいろな材料がネットで手に入るようになってきたのでそんなに苦労しなくなりましたが、誰かと一緒の食事だと特に外食のハードルはまだまだ高いです。

なぜだろうと考えると、そういう境遇にいない方はアレルギーについて知らなかったり、知るきっかけがないからなんですよね。
知るきっかけをどうしたら分かりやすく提供できるかなと考えたときに、美味しそうなお菓子なら、手に取りやすいし、安いし、ちょっと食べてみようかなと楽しい気持ちにもなれると思いました。

ヴィーガン/グルテンフリー、アレルギーで食べられない方がいること、そういう食文化や選択肢もあることに気づくきっかけを作りたくて、菓子店を経営しています。

安心して“みんな”で一緒に食べられるスイーツを

「アリサの北海道お菓子店」で販売されているリンゴタルト

宗教による食事制約

大久保:「ヴィーガン」についてご説明いただいてもいいですか?

柴田「ヴィーガン」は「完全菜食」を意味します。
「動物愛護」の観点で動物に関するものを食べない、環境への配慮、そして自分の健康など、ヴィーガンになる理由は人によって様々です。

大久保:柴田さんがお店を始めたきっかけは、ご自身の健康上の理由と、ヴィーガン/グルテンフリーの食べ物がニーズに対して足りていないというお話でしたが、他にも理由はありますか?

柴田:私の周りには海外の方がとても多のですが、宗教上の理由でヴィーガンをしていらっしゃる方が、日本に来るたびに食事で苦労しているのを間近で見てきました。

大学生の頃、ムスリムの留学生と食事をした時に「このケーキは食べて大丈夫かな」と心配そうに話していたのが印象に残っています。
出てきたものが食べられるか不安に思うのはすごく寂しくて悲しいですよね。みんなで一緒に同じテーブルを囲んで食べられるスイーツがあったらいいのにと思いました。

私個人はアトピーでアレルギーがあるので健康上の理由がありますが、多様な人たちに対応する食のソリューションの一つとして、ヴィーガン/グルテンフリーはいいなと思っています。

ただ社会のいろいろな課題を解決するのに、ヴィーガン/グルテンフリーだけが正しいとは全然思っていないので、あくまで選択肢を増やすための一つの手段ですね。

食に対するお国柄の違い

大久保:宗教上の理由などから海外のほうが日本より食に敏感ということでしょうか?日本人は好き嫌いなく食べましょうという風潮がありますが。

柴田:日本だと居酒屋で全員同じコース料理を食べて、割り勘で会計するということがよくありますよね。私の場合そういうお店に行くと、最悪ウーロン茶と枝豆のために4,000円払うことになります(笑)。

海外では自分の食べるつまみと飲み物をそれぞれが買って、相手が何を食べるのか気にしないし、自分が食べられるものを好きなように選んだらいいよという感覚が根づいています。ただ、お店側としては移民も多いので、宗教対応、アレルギー対応がある程度必要だという感覚が日本よりずっと強い印象です。

ホームパーティに呼ばれても、「何か食べられないものはある?」という聞かれ方をします。日本で聞かれるのは結婚式の招待を受けたときぐらいですので、その辺りのリテラシーの差はひしひしと感じています。

大久保:なるほど。インドなどでも宗教によって、牛や豚を食べられないので鶏や野菜を食べたりしますよね。

柴田:ありますよね。宗教は難しいですね、個人の解釈の仕方によって変わってくるので。

IT畑で身につけたマーケティング力を菓子店で発揮

大学卒業後はIT系の広告代理店に入社

大久保:大学を卒業して、菓子店を開店するまでに他のお仕事もされていたんですか?

柴田:東京理科大学で物理を勉強して卒業後、都内でIT系の広告代理店に入社して、広告企画営業やマーケティングの仕事をしていました。その後、北海道にUターンして、ベンチャー企業でタイ人向けインバウンドアプリのプロモーションやPR、ディレクションなど、社内での仕事は何でもやっていました。

ずっとIT畑でしたが、自分の原体験に紐づく「多様な食」に関する仕事がしたかったんです。大学時代ケーキ屋さんでアルバイトをして仕組みや裏側は理解できていたのもありますが、菓子店をやりたいという夢がずっとありました。

製菓学校に通っていたわけではありませんが、お菓子屋のはじめ方やお菓子屋に必要な要素はアルバイトを通じてそれなりにもっていました。
ですが、ヴィーガン/グルテンフリーのお菓子作りは、修業ができるところが日本ではどこにもないので自分でやるしかなくて……。思い切って会社を立ち上げて、お金を集めてからお店を作ろうと思いました。
今は起業して5年目ですが、途中の紆余曲折含めてキャリアは全部役に立っています。

北海道で広告代理店事業を開始

大久保:起業前に不安はありませんでしたか?

柴田:あまりなかったですね。結構勢いで会社を作ったところがありまして、プロジェクトマネジメントが好きだったということもありますが、事業計画を作ってそれに則ってやっていきました。

最初は1人でやっていましたが、業務委託で外注できる仲間を増やしていきました。
未経験の菓子店をいきなり始めるのではなく、まずは私の会社を知ってもらって関係を築いたり資金を集めようと考えて、広告代理店的な事業も展開しながら準備をしていました。
広告代理店としてのノウハウがあったので、自治体のプロモーションの仕事では電通や大きな代理店とも仕事させていただいて。

そういうつながりを持てたことは会社にとってすごくプラスでした。
菓子店を始めた時にプレスリリースを出すとキャッチアップしてくれたり、メディアを紹介してくれたり、イベント用のお菓子を注文してくれたりと、人とのご縁ってすごく大事なんだなと感じています。

菓子店をやる上でひしひしと感じていますが、マーケティングがなければ、街のお菓子屋で終わってしまいます。

今はネットショップをリニューアルしていて、サブスクリプションサービスを始めるのですが、それは私がずっとIT畑にいたからできることなんです。オンライン販売の構想を常に念頭に置いて菓子店をオープンさせたので、今までのWebディレクション、データや数字を見る経験が非常に役に立っていますね。

大久保:お菓子屋さんとしては異色のタイプですね。

柴田:そうですね。社員のパティシエさんに全部お菓子を作ってもらっていますし、菓子店の経営者としては珍しいタイプですよね。

うちはコンテンツや映像を作るのも得意で、YouTubeもやっています。コンテンツマーケティングとしてnoteやYouTubeを育てて、お菓子の販売に結び付けていけたらいいなと思っています。

グルテンフリーマーケットの大きさ

北海道から美味しさとヘルシーさをアピール

大久保:グルテンフリーでないと食べられない方だけでなく、食べられない人に合わせてグルテンフリーを選ぶ方もいると思いますが、マーケットはどのくらいになるんですか?

柴田:マーケットの大きさは不確定ではありますが、グルテンフリーの方がいたらそちらに合わせましょうという場合が多いですし、グルテンフリーでないと生きていけない方は少ないのですが、生活に取り入れたいと思っている方は多いです。
道内の百貨店でデパ地下の催事によく出店しますが、催事期間中にフロア売上トップをとることもあります。六花亭さんなどの有名なメーカーは別格ですが。

大久保:すごいですね!

柴田:うちのコンテンツやインスタを見て好きになってくれたお客様のほとんどは、アレルギーやヴィーガンではありません。もちろんヴィーガンやアレルギーの方もいるのですが、できればヘルシーなお菓子を食べたいと思っている人が圧倒的なんです。

うちのお菓子は、「北海道発のヴィーガン/グルテンフリー」というブランディングをずっとしているので、普通の食生活をしている人にも、手に取らない理由はないんです。

北海道=なんか美味しそうだな、ヴィーガン/グルテンフリー=ヘルシーで体に良さそう、しかも普通のケーキが食べられる、なんか気になる、という感じで1個買ってみようかなとなるし、そう思っていただけるような情報発信を打ち出したマーケティングをしていますね。

大久保:北海道産だと将来アジア圏でも販売しやすそうですね。

柴田:YouTubeのフォロワーはまだ7,000人くらいしかいませんが、北海道ブランディングをしているので、海外からのアクセスは多いです。
100人くらいにアンケートをしたら、不思議なことにイギリスやドイツ、フランスに住んでいる駐在員の奥様が多かったです。日本を懐かしんで見てくださったのかもしれません。あとは韓国や台湾の方が見てくださっていますね。
コロナではいろいろ難しいですが、もちろんアジアも視野に入れて展開していきたいと思っています。

大久保:コロナが終わった後は観光客もきっとたくさん来るので、楽しみですね。

柴田:本当に楽しみです。
また私どもはムスリムに照準を合わせています。10年以内にクリスチャンよりもムスリムのほうが多くなると言われています。マレーシアやシンガポールなら輸出のハードルも低い国なので、ムスリムの認証を取って進めていきたいなと思っています。

誰もが手に取れる価格でヴィーガン/グルテンフリーのお菓子を提供したい

こだわりを持ちつつ、手に取れる価格に抑える

大久保:今後は海外展開も考えつつ、まず国内で広めたいということでしょうか?

柴田:そうですね。まずは東京に出店して次は関西、ゆくゆくはアジア圏を目指しています。

大久保:柴田さんが普通のお菓子業界出身の方と違うのは、Webマーケティングのお仕事をされていたので、お客様を蓄積したり、ブランディングが強い点ですね。普通そこまでは考えずに、いいお菓子を作ることばかり考えるような気がします。

柴田:「売りやすさ」をベースにものづくりをしています。この形なら発送や製造での業務委託コストが抑えられるしかわいいよね、という視点で商品開発しています。

もちろんいいものを作る大前提はありますが、それと同じくらい大事なのが製造、流通、保管のコストをどうしたら抑えられるかです。

ヴィーガン/グルテンフリーのお菓子は、国産で揃えられない原料もあるので、総合的にはどうしても単価が高くなってしまいます。ただ、市場に出ているヴィーガン/グルテンフリーのお菓子は、なんでこんな価格設定になっているんだろうと思うほど高いものが多いです。

こだわりをしっかり残しつつ、良いものづくりをして、いろいろな要素を考えながら、誰もが手に取りやすい価格で提供していくことをこれからも大切にしていきたいです。

創業手帳は起業後に必要なノウハウについて、起業家や各機関への取材、専門家によるアドバイスなど、多角的な視点でまとめています。起業の成功率を上げる経営ガイドブックとしてご活用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社TREASURE IN STOMACH CEO/Founder 柴田愛里沙
(編集: 創業手帳編集部)

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