初回購入から2回目までのリピート間隔をチェックせよ【西村氏連載その5】

創業手帳

ネット通販・超入門!通販コンサルタントの西村公児氏直伝

ネット通販事業で大事になってくるのが、顧客のリピート率。アップさせたいけれど、具体的にどうすればいいか分からないという方も多いのではないでしょうか。

多くのヒット商品を生み出し、企業の通販ビジネスの成長を手助けしてきた「通販コンサルタント&プロデューサー」西村公児氏に、創業手帳代表・大久保がインタビューを行う連載企画。第5回となる今回の記事では、通販事業において顧客のリピート率を上昇させるための仕組みについておうかがいします。

通販ビジネスにおいて、見落としがちな要素についても紹介しますので、通販ビジネスでお悩みの方はぜひお役立てください。

西村公児(にしむら こうじ)
株式会社ルーチェ代表取締役
年商600億円の大手通信販売会社で販売企画から債権管理までを16年経験。その後、化粧品メーカーの中核メンバーとして5年間マーケティング業務に従事し、顧客企業の販促支援でレスポンス率を2倍にアップするなど成果を上げる。
株式会社ルーチェを設立し、「デジタルコマース実践道場」を主宰。テレビ番組、経済情報コンテンツなどメディア出演多数。
平成28年に「一般社団法人インターネット通販協会」を設立し、理事長に就任。『伝説の通販バイブル』(日本経済新聞出版社)、『小さな会社ネット通販 億超えのルール』(すばる舎)など著書多数。現在、多摩大学経営情報学部の非常勤講師として「ビッグデータの活用法」について学生に教える。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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リピート率上昇のため、顧客の期待以上の商品で勝負する

大久保:前回はお客様のファン化についてうかがいました。今回はお客様の「リピート率」についてお聞きしたいと思います。規模の小さい中小企業では、新規のお客様を開拓するよりも、リピート客を狙うほうが効率がいいのでしょうか?

西村:そうですね。マーケティングの神様と呼ばれるコトラー氏も言っていますが、新規と既存のコストの比率は「1:5」で表せます。新規を開拓するためには5倍のコストがかかる計算になります。

既存のお客様の方が、よりコストをかけずにファンになっていただける。これは通販だけではなく、全ての事業に言えます。

大久保:中小企業がネット通販ビジネスで成功するためには、どのくらいのリピート率を目指せばいいのでしょうか?

西村年商10億円を目指す場合は「年間リピート率60%以上」ですね。通販ビジネスでも、長く生き残るためにはリピート率が重要になるのですが、大手企業は年間のリピート率を60%以上で設定しているところが多くあります。

中小企業が通販ビジネスを行う場合も、大手と同じ数値を目指すことが望ましいと思います。初回購入者のうち87%が2回目の購入に踏み切れば、年間のリピート率も60%以上になる可能性が高いので、この数値も意識しておきましょう。

大久保:中小企業でも、大手企業と同じリピート率を目指した方がいいのですね。リピート率の数値は、どのくらいの頻度で見るのがいいのでしょうか?

西村中小企業の場合、1年スパンくらいでリピート率を見ていくのがちょうどいいと思います。もっと短い期間でもいいのですが、私の経験上では年間の数値だけを見ておけば十分だと考えています。

正確に言うと、小さな会社の場合には顧客ごとの「LTV(Life Time Vlue = 顧客生涯価値)を設計する必要があります。

ひとりの顧客が、いくらの商品を何度リピートして購入しているかを把握して、それぞれの顧客にかけているコストも計算したうえで、1年という期間の中でしっかりと利益が出せる仕組みを作るべきだということです。

大久保:では、リピート率を上げるために具体的にはどういったことを意識するべきなのでしょうか?

西村:通販事業で成功するためには、すでにお話した「売れる商品選択」「UVP(独自の価値提供)」に加え、「常にお客様の期待値を越えていくこと」が必要になります。

お客様が事前に商品に対して様々な期待を抱いていることを「事前期待」と呼んでいます。商品が手元に届いたあと、これが「事後評価」に変わるのですが、このふたつの関係性によって、今後リピート客になってくれるかどうかが変わります。

理想は事後評価が事前期待を上回ることで、この状態になって感動するとバランスが崩れるので、誰かに紹介しないとバランスが整わなくなってしまいます。リピートするだけでなく、友人や知人へ商品の宣伝もしてくれるようになるんですね。事後評価が事前期待を上回ると「何これ」とお客様の評価も下がるので、クレームになるという訳です。

ですから、最初の段階でお客様の期待を上回るための商品設計が大切になります。

大久保:ネット通販は数字だけの血も涙もない世界と思いがちですが、前回も感動の話が出ていましたね。下手したらリアルで物を売るよりも、心の動きが大事な世界でもあるんですね。本質的にお客様と繋がることが、ここまで重視されるものだとは思いませんでした。

西村:そうですね。お客様の心の動きがダイレクトに売上げに表れてくるので、売る側もそのつもりで取り組まなければいけない世界ということです。

お客様の初回購入から2回目の購入までのリピート間隔は、非常に重要な指標のひとつとなりますので、必ず集計してチェックするようにしてください。初回購入のお客様のうち、20%以上が1カ月以内にリピート購入してもらえることを目指します。

具体的には、各お客様への「誕生月限定ディスカウント」や、「お得意さま限定セール」といった働きかけ、季節ごとのセール、実際に商品を手にとって試すことができる体験会や座談会の開催などです。

お客様を巻き込み、帰属意識を深めてもらえるように何度もアプローチすることが大切です。

ネット通販も接客と同じ。「お客様の体験」に注目する必要がある

大久保:お客様の声がダイレクトにわかると、商品の改善にもつながりそうですね。

西村:そうですね。ただ、商品が良くても、配送の段階でお客様を残念な気持ちにさせることもあります。例えば、配送員の人が最後にお客様に接しますが、もしあなたが汗がたれている段ボール箱を渡されたらどんな気持ちになるでしょうか。箱に入っている商品にまで、嫌な印象を持ってしまうかもしれませんよね。

ですから、最終的に届けるのが誰なのかという点にも気を付ける必要があります。会社としては、商品さえ作っていればオーケーではなく、届けるところまで完璧にしなければいけません。

大久保:お店で接客をするのと同じような感覚でしょうか。

西村:そうですね。例えば、物を買うときにクレジットカードの番号を入力する段階でエラーが発生し、お客様が購入をやめてしまったら商品が売れる機会を損失したことになります。店舗だとそういう些細なエラーがないのに、「メールや電話が繋がりにくい」とか、オンラインになると意外とあるんですよ。

大久保:実店舗の場合は出ていくのは少し抵抗がありますが、ネットだと離脱するのは簡単ですよね。だからネットの方がより気をつけないといけない。これは盲点かもしれませんね。

西村:そうなんですよね。ネットのほうが離脱しやすいので、そのあたりは細心の注意を払う必要があります。

ご説明したように「顧客が満足・感動する→リピーター化→他の人にも商品を紹介」の流れを作ることがベストです。お客様の感動が、累積していくイメージですね。

大久保:あくまでも、お客様の感動に焦点を当てることが大切なのですね。ではクレームが発生した場合、どのように対処すればいいのでしょうか?

西村クレームには「まず徹底的に謝る」ことですね。対応次第で、クレーム客がファン客に変わることもあります。

具体的には、クレームに対しては電話とメールの両方でしっかりとフォローをいれる必要があり、どちらか一方だけでは駄目ですね。連絡や対応のタイミングについても、早ければ早いほどいいです。

対応が遅くなったり、担当をたらい回しにするほどお客様の怒りのボルテージも上がりますので、電話を受けた担当者が初期対応をするようにマニュアル化しておくといいでしょう。

購買心理については実践を交えつつ学んでいく

大久保:『ネット通販 億超えのルール』では「注文時と商品が届いたときに最も気持ちが高揚するが、その後は減点方式」との記述がありました。西村さんは、人が物を買うことについての心理面を研究し尽くしていらっしゃるという印象を持ったのですが、学問として勉強されていたのでしょうか?

西村:心理について学んだのは、会社員になってからです。特に学問として勉強していたわけではありません。物を販売してブレイクさせるために、ビジネスを始めて実践的に学びました。通販の場合、買い物カゴにいれる時に気持ちが一番昂ぶっていて、後は下がっていくだけなので、ユーザーの気持ちが盛り下がることも、ビジネスの設計図に入れることが大事です。

大久保:購買心理学というのは、学問で学ぶのではなく、専門的に学んでいくしかないのでしょうか。

西村実践を交えながら学ぶのがいいと思います。ビジネスを経験してから経営者になると、社員・お客様・株主、いろんなポジションの人間の心理がわかるようになるので、実践ありきで体系化されます。

大久保:お客様の心理がわかるようになると、後は数字で検証いていくことの繰り返しになるんですね。ところで、「サブスクリプション」という言葉が最近トレンドとなっていますが、ネット通販に影響はありますか?

西村:非常にあります。2021年4月になると総額表示の義務化がスタートし、それ以降、定期購入の縛りが禁止されていきます。従来のネット通販で行っていた、定期購入がNGになるので、業界も大きく変わるはずです。

定期購入が駄目な訳ではなく、通販でもいつでも解約できる「クーリングオフ」の対象になるということです。この理由は、法律を改正しなければならなくなるまで、定期購入を巡るトラブルが増えたからですね。

大久保:そもそも、サブスクリプションという名称も会社視点であって顧客視点じゃないですよね。

西村:そうですね。企業者側の損益の計算をするための言葉としては使うかもしれませんが、お客様的にその言葉を聞くと、どう思うのでしょうね。「優遇年間パスポート」など。お客様が優遇されていると感じる名称に変えるのもありだと思います。

大久保:これもお客様の視点に立つと言うことですね。お客様からの信用を獲得するための方法のひとつとして、「メディアに露出する」ことが挙げられると思います。次回はメディアを利用した広報についてうかがいたいと思います。

(次回へ続きます)

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