Colors 角前 壽一|オンライン秘書サービス「タスカル」で自分らしい働き方を実現

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年05月に行われた取材時点のものです。

各業務の専門スタッフがサポートすることで起業家が事業に注力できる環境を整える


人手不足の改善や働き方改革が急務となっている今、注目されているのが、Web上で行う業務を代行する「オンラインアシスタントサービス」です。オンライン秘書とも呼ばれるこのようなサービスを利用することで、バックオフィス業務を外注し、起業家は自分がやるべきことに注力できる環境が整います。

自社の悩みの解決をきっかけに、オンラインアシスタントサービス「タスカル」を運営しているのがColorsの角前さんです。

今回は、角前さんがタスカルをリリースするまでの経緯や、250名にもなる組織を社員0で、全て業務委託でマネジメントしている秘訣について、創業手帳の大久保が聞きました。

角前 壽一(かくぜん ひさかず)
株式会社Colors 代表取締役
1982年、大阪府吹田市出身。2005年信州大学理学部卒業。大学卒業後、高校教員になる夢を掲げていたが、進路指導するためには一般企業の経験が必要だと思い、店舗デザインの会社へ入社。その後、2度の交通事故に遭ったことをきっかけで退職し、SEOコンサル業を経て、2013年に株式会社Colorsを創業。2019年にオンラインアシスタントサービス「タスカル」をリリース。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

店舗デザイン、SEOコンサルを経て「Colors」を創業

大久保:まずは起業前のキャリアについて伺えますでしょうか?

角前:大学時代は理学部で、卒業研究では活火山の研究をしていました。

当時、高等学校の先生になりたかったのですが、進路指導をするなら一般企業に勤めてからの方が良さそうだなと思い、「面白そうな会社」という視点で就職活動をしていました。

そこで目を引いたのが、リクルートのOBの方が作った、従業員100名ほどの規模の会社でした。

仕事内容は店舗デザインで、営業をしながら、受注後は作業着を着て現場で監督もするようなことをしていました。

そんな中、26歳の時に2回も交通事故にあい、特に2回目は事故前後の記憶がないほど大きな事故でした。

その時「人生のボーナスステージに入ったから、やりたいことをやろう!」と思い、起業に向けて動き出しました。

大久保:交通事故にあって、ボーナスステージと考えられるのはすごいですね。

角前その事故で命を落としていたかもしれないと思うと、生きているだけでラッキーなので、その後から、残りの人生はもっと好きなことをやりきっていこうと思いました。

すぐに起業しようかとも思ったのですが、会社をやめるのに3年かかった上に、同じ業界で自分が起業するイメージが湧かなかったため、もう1社経験することにしました。

大久保:2社目はどんな会社を選ばれたのですか?

角前:1社目では、建築関連で割と業界として歴史もあり、仕事進め方は、予算を渡されてあとは自由にやって良い、という感じの環境だったため、逆に新しい業界で、全社でシステマチックに業務遂行していて事業を推進して伸びている企業にいきたいと思い、創業5期目の急成長中のSEOコンサル会社に入社しました。

1年間勤務し、2013年8月に「株式会社Colors」を創業しました。

真逆の2社での経験が起業した今に活きている

大久保:2社目でWebマーケティングやSEOの経験を積めるのは、今にも活きそうな領域でしたね。

角前:1社目での、工程管理など現場をさんに上手く動かすための段取りを組み、現場で職人さんたちと汗水垂らしながら働く経験、2社目での、ロジカルに考え数字で組み立てていく経験、この2つを活かしながら、今仕事をしている感覚があります。

大久保:それは狙っていたことなのでしょうか?

角前:事業を進めていくなかで、強みを活かすにはどうしたらいいか?考えていった結果、この2社での経験を活かすのが良いのでは?と考えて、進める中でわかってきた、活かしてきた、っていう感覚ですね。

今まで営業としての経験しか無いと感じていたので、起業後は、知り合いの社長から紹介いただいた会社で営業代行から始めて、少しずつWebコンサルの仕事を増やしたり、自分にできることをとりあえずいろいろ進めていましたね。

進めていくうちに、徐々に売上が上がってきて。3年目くらいには、一人で食っていく分はもう大丈夫だろうと。でも一人ではやっていけるけど、より多くのスタッフや仕組みで構成された、事業ではないなと感じてきて。

組織化してスケールするために様々な会社の事業を研究して、新サービスを作ってみたりしましたが、それもあんまりうまくいかずで。そんな矢先、次女の病気が発覚し、私と妻の実家のある大阪に戻って働き方を変えなければならなくなりました。

このタイミングで、一緒に仕事をしていた仲間とは解散することになり、一人に戻って事業は組み直し、一人で東京と大阪を毎週往復しながらコンサル業を進めていくなかで、東京でも大阪でも、どこにいても安定した業務の体制を取るために、数名のリモートワーカーさんにバックオフィスサポートをしてもらうようになりました。

家族の引っ越し・次女の出産・入退院・長女のケアをしながら、コンサル先のお客様のサポートと、家庭も会社も本当に大変な1年だったのですが、サポートいただいた数名のリモートワーカーさんのおかげで乗り切ることができたんです。

次女の手術が2019年1月に成功し、ふと1年を振り返った中で、今までの経験とリモートワーカーとで、各社に合わせて業務フローを整理し、完了までの段取りを立てて、リモートワーカーがサポートしていく、オンラインアシスタントサービスができるんじゃないか?と感じるようになって、2019年2月にオンラインアシスタントサーボス「タスカル」をリリースしました。

起業前にやるべき準備は「経験作り」と「人脈作り」

大久保:これまでの起業経験で、やっておけば良かったと思うことはありますか?

角前:ノープランで起業したため、もっとちゃんと準備しておけば良かったなと思うことが2つあります。

1つ目は「経験作り」です。これは実際の成功体験・失敗体験に加えて、たくさんの情報に触れ、自分がこれを行うには?というシミュレーションも含め、広い意味での「経験」です。

実際に始めないと、何の準備をしなければいけないか見えてきませんが、後戻りできなくなってから必要な準備ができなくなるのを少しでも減らしていくため、もっとたくさんの「経験」に触れておけば良かったです。

2つ目は「人脈作り」です。起業前は仕事ばかりしていましたし、起業時、元お客さまや元同僚とは関わらずに仕事を開始したこともあり、人脈はほとんどありませんでした。事前に準備をして、特に仕事以外の人脈をもっと作っておけば、違った結果だったかもしれません。

また、借入についてですが、私は1期目の決算で黒字を作ってから申し込みをしましたが、創業時に借入申込をすると通りやすいと後で聞き、これも創業時に調達できていたら、違っていたと思います。

大久保:創業時にお金を借りられて、それからしばらく借りられないということもありますからね。

角前:今の事業をやり始めてから、本当にお金が大事だと思いました。

特に、PL上の利益より、キャッシュがどのくらいあるのかを重点的に考えて、事業を組み立てています。

大久保:大きく分けて「人・ネットワーク」「お金・事業プラン」の二つですかね。

タスカルの前に仕掛けた新規事業で失敗した原因とは

大久保:タスカルの前にも新規事業を立ち上げられていたと思いますが、その時はどのような感じだったのでしょうか?

角前メディアを立ち上げて、マネタイズできず閉じました。

今思えば、ノーコードで程よくサイトを作ることもできたと思います。

私自身には技術がなく、アイディアと営業力しかなかったので、メディア作成に資金を使いすぎて、プロダクトが立ち上がる前にキャッシュが尽きました。

身の丈を知りながら、お金を考えながら事業を考えることを痛感しました。

大久保:構想が大きすぎると、上手くいかないこともありますよね。

角前:大掛かりなメディアも、知らない会社が作って実績がないものはユーザーからの信用がないでしょうし、当時のまま進めていてもマネタイズは難しかったでしょう。

大きい資金をかけてしまうと撤退も難しいでしょうし。資金をかけるべきところを間違えました。

大久保:小さいことができなければ、大きいこともできませんからね。

「タスカル」が生まれたきっかけは「自社の困りごと」を解決するため

大久保:「タスカル」を始められた経緯を教えてください。

角前:次女の病気が発覚し、大阪に引っ越したあと、当時会社で抱えていた案件を自分1人で回さなければいけなくなり、リソースが足りなくなりました。

どこかにオフィスを構えて、チームのスタッフをそこに集めたとしても、結局自分がリモートで仕事をするとなるとあまり意味がないように思えて。

であれば、コストをかけず、リモートワーカーだけで運用できるチームを作ろうと思いました。自社で困ったからというきっかけが「タスカル」のスタートでした。

大久保:自社で困ったから、というのが始まりなんですね。

角前:そうなんです。自社が困っていることを解決するために始めたのですが、意外と他の企業向けにも、使い勝手が良さそうだと思いました。

大久保:少なくともニーズは1つ(自分)あるので、間違い無いですよね。

資金調達をせずにWebサービスを開発できた理由

大久保:プロダクトが成長するまでの苦労はありますか?

角前:我々が提供しているタスカルは、業界の中でも提供単価が低いサービスです。そのため、事業を安定させるにはある程度のご利用社数が必要で、ここまで来るのに大変苦労しました。

コンサル業や受託系のサービスで資金を作り、それを分配しながら新規事業に力を入れていくというプロセスだったので、そこまで慌てずに進められたことで結果的に上手くいったと思っています。これがこの自社プロダクトだけで、資金調達せずにやるという選択肢だと、ここまでやりきれなかったと思います。

3年がかりくらいで徐々に売上比率を変えて、新規事業に移行させていきました。

通常であれば、①金融機関からの借入②投資家からの資金調達③受託サービスで資金を作るか、この3パターンが多いと考えられますが、私の場合は③でした。

Withコロナ時代になりユーザー数が急増

大久保:プロダクトの成長過程についても教えてください。

角前2019年にタスカルをローンチし、最初はWebコンサル事業の取引先を中心にご利用いただきました。

当時、コロナが流行る1年前くらいだったため、オンラインミーティングも普及していなかったですし、リモートで業務をサポートするということを全く理解していただけない方も多かったです。そのため、コンサルや受託開発で資金を作りながら、それをスタッフに分配して、少しずつ地道にお客様を増やしていく1年目を過ごしました。

2年目になって、コロナ禍になり、オンラインセールスがやりやすくなったものの、企業側が先行き不安から新規サービスの導入に慎重だったように感じていて、大きな成長はできませんでした。

3年目の2021年、東京オリンピックが1年遅れで開催されることが決まり、「Withコロナ」で経済活動と両立という風に潮目が変わった感覚があり、商談もオンラインが前提になったり、企業側もテレワークで業務を進める方法を模索する流れの中から夏頃から徐々にお問い合わせが増えていきました。

そこからコンスタントにご利用いただく企業様が増えている状況で、今は約370社ほどのご契約をいただいています。

サービスの内容も、日々スタッフと共に改善を繰り返して、今に至ります。

完全リモートワークで組織をマネジメントするコツ

大久保:リモートワークで組織をマネジメントするコツがあれば教えてください。

角前:他の会社と比べて、いわゆる「ガチガチ」のマネジメントはしていません。

私含めスタッフも全員自宅勤務ですし、スタッフ側の業務環境がわからないため、さまざまなルールは設定するも主体性に任せるほうが効果的かと思っています。

とはいえ、無理させないように、本人のキャパシティの7割くらいをイメージして業務を分担して、さらに各業務のバックアップは本部側で準備を取って、風通しよくコミュニケーションを取りながらなるべくスタッフの負担が本人に集中しないようにしています。

大久保:頑張りすぎている時などは、どのようにして気づくのでしょうか?

角前スタッフの業務状況をリアルタイムでモニタリングして定量的に状況チェックしながら、あとは社内チャットの文面やお客様へのサポートのやり取りから感じる印象等の定性的なものを合わせて見て、キャパコントロールに気をつけています。

子供がいるスタッフの場合、お子さんの学校のイベントがあると時間が一時的にとれなくなったりなどがあったりしますが、すべてのスタッフがそれぞれ、タスカルでの業務時間とタスカル以外の時間とのバランスを取りやすくため、稼働できる時間を2週間ごとに申告してもらっています。それらを全スタッフ分集めて状況確認しながら、仕事を振り分けています。

あとは、今まで業務上進められていたことができなくなった時は、仕事を抱えすぎているか、タスカル以外のプライベート側で何かあった時が多いと感じていて、その際は面談して一時的に依頼を減らしたりしながら、落ち着いたら再度仕事量を戻す等、より各スタッフの状況に応じた柔軟な対応をするようにしています。

約250名の全スタッフが業務委託で成り立つ体制の秘訣

大久保:どのような体制でやられているのでしょうか?

角前マネージャー、サブマネージャー、ディレクター、スタッフ、全メンバーで250名ほどいます。

社員は0です。私以外は全員業務委託スタッフで構成されています。

大久保:250名もスタッフがいるのに、リモートで仕事ができるってすごいですね。

角前:働き方は自由で、スタッフによっては日中子供の予定で働く時間が細切れになる場合があったり、

乳児期で夜泣きでどうしても深夜に起きてしまうので、その時間帯に仕事をしたいというスタッフもいます。

スタッフそれぞれの事情に対応できるようにするために、あえて厳しすぎる管理はせず、稼働報告をきちんとしてもらい、それに対して報酬をお支払いするようなシステムにしています。

大久保:タスカルはどんな方に利用してもらいたいですか?

角前創業後、ようやく自分の生活費くらいは稼げるようになってきたという時に、自分の生活費を全て差し出してまで2人目の人員が欲しいとは思えない、すごい悩む・・・という方にぜひ活用していただきたいです。

また、我々としては、動いた分だけ支払っていただくような仕組みにしているので、正社員を雇用されるよりコストが低く抑えられ、また雇用された正社員さんに依頼できる仕事が意外と少なかった、など稼働を余らせてしまうことはありません。

さらに、タスカルに所属しているスタッフによって得意なスキルが違います。

正社員の方を雇用されて、稼働を余らせてしまうことがあると、もしかしたらその方がそれほど得意でないことを依頼されたり、その結果期待するパフォーマンスが得られなかったり、最悪の場合、モチベーションダウンから離職されてしまうかもしれません。

タスカルをうまく活用いただくことで、業務に応じたそれぞれのスキルを持ったスタッフを、コストを抑えながら事業を進めていただくことができます。

オンライン秘書業界でも最低価格で始められるのが「タスカル」

大久保:タスカルの競合他社と比べた時の強みを教えてください。

角前業務を開始するのに、クラウドソーシングのように募集を作って、出して、集めて、選考する、業務につく、といった長いステップは必要ありません。

タスカルはクレジットカード支払いで定額を定期的に預かりながら、ご依頼に応じて必要な人材をすぐ手配し、最短当日で対応できますので、依頼までの工数がかなり減り、業務のスピードを上げていくことが可能です。

それを一番安いプランだと2万円台から用意しています。

また、10時間稼働〜と小さくご利用が可能で、稼働時間が余った場合は繰越も可能です。そのため、依頼したい稼働が、月毎に波があっても、お支払い頂いている利用料のロスが出にくく、ご利用いただいている皆さんでご依頼を調整していただきやすくしています。

さらに、コンサル業を行っていた経験もあるため、内容を聞いて「こういう業務で何時間でいけそう」という形で業務フローのご提案も、早ければ2時間後には出して、そのまま業務にかかることもあり、ご対応のスピード感も売りの1つです。

大久保:最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

角前:私は日本に数百万社あると言われる中小企業がもっと輝ける社会を創っていきたい、中小企業の集合体で協力して世界と戦える日本を実現させたいと思っています。

私自身も、失敗もたくさんしましたし、ピンチで大変だった時期もたくさん経験してきました。

それをシェアしながら、少しでも皆さんのお力になれることを、本当に楽しみにしています。みなさまの創業をこころから応援しています。ともに頑張りましょう!

関連記事
Enigol 柳沢 智紀|デジタルで生産性を向上させる「Enigol」が企業課題を解決する
ワカルク 石川沙絵子|職住一体を叶える組織づくり!雇用にこだわる理由とは
創業手帳別冊版「創業手帳 人気インタビュー」は、注目の若手起業家から著名実業家たちの「価値あるエピソード」が無料で読めます。リアルな成功体験談が今後のビジネスのヒントになるはず。ご活用ください。

(取材協力: 株式会社Colors 代表取締役 角前壽一
(編集: 創業手帳編集部)



創業手帳
この記事に関連するタグ
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】