ニッチビジネスで成功するために必要な視点とマインド

創業手帳

(2018/10/23更新)

工具のエンジニア、串刺機のコジマ技研工業、高級デニム素材のカイハラなど、特定の市場に集中・特化することで、小規模ながらグローバル市場で高いシェアを誇り、活躍している中小企業があります。

こうした企業が手掛けるビジネスは、いわゆるニッチビジネスです。ニッチとは、隙間を意味します。潤沢な経営資源を持つ大企業に対抗していくには、中小企業はフットワークの軽さを生かして新しい市場を見つけ、あるいは創造して経営資源を集中・特化することが欠かせません。

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「10本のバラ」に対抗するためには「15本のバラ」が必要か?

ビジネスを有利に進めるためには、他社に対する競争優位性を発揮しなければなりません。競争優位性の源泉は、規模、技術力、情報力、ブランド力などさまざまですが、最も単純かつ効果的で、しかも模倣が困難なのは規模だといえるでしょう。大企業が本気で経営資源を投入すれば、ほとんどの市場でたちまちシェアを拡大することができるからです。

これに対して、中小企業は“量”にモノをいわせる戦略をとることができません。では、どのようにすれば競争優位性を確保できるのでしょうか。この点について、アップル社の創業者の1人であるスティーブ・ジョブズ氏が興味深い言葉を残しています。

「美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を一〇本贈ったら、君は一五本贈るかい? そう思った時点で君の負けだ。その女性が本当に何を望んでいるのか、見きわめることが重要なんだ」(*)
出所:「スティーブ・ジョブズ全発言 世界を動かした142の言葉」(PHP研究所)

バラの花を経営資源の量、美しい女性を市場に読み替えると、中小企業の1つの戦略が見えてきます。つまり、“量”の勝負ではなく、市場が「すごい!」と感じる圧倒的な付加価値を生み出すことが重要であるということです。

これは、たとえ市場が小さくても、その中で自社が戦う“土俵”を決め、そこに経営資源を集中的に投下することで競争優位性を発揮するという、「選択と集中」の1つの在り方です。

企業が市場に参入するか否かは市場の規模、成長の余地、技術の困難さなどによって判断されるため、これらを総合的に勘案して “魅力的”に映らなければ、その時点で競合他社がすぐに参入してくることはありません。

ただし、ニッチビジネスは規模が小さいために、環境変化によって市場そのものが消滅してしまうことがあります。また、市場が拡大して魅力度が高まると、大企業の参入があることも認識しておかなければなりません。

コトラーの「競争的マーケティング戦略」

以上で紹介した内容を、マーケティングの視点で体系的にまとめているのがコトラーの「競争的マーケティング戦略」です。相対的経営資源の質・量の2軸によって競争上の地位を4つに分け、それぞれの立場で定石となる戦略を示しています。

1.リーダー

戦略的課題はシェアの維持や利潤の最大化です。全方位的な視点で周辺需要の拡大を図りつつ、他社の試みについては、同質化など圧倒的な経営資源の質・量をもって対抗します。

2.チャレンジャー

戦略的課題はシェアの拡大です。差別化戦略でリーダーに勝負を挑みつつ、自社よりも企業力が劣る企業に攻勢をかけます。

3.ニッチャー

戦略的課題は利益追求とブランド構築です。限られた経営資源を最大限に生かすため、リーダーやチャレンジャーとの勝負を避け、特定の市場に「集中・特化」します。

4.フォロワー

戦略的課題は利益追求です。生存のため、リーダーやチャレンジャーの戦略を速やかに模倣します。「勝つ」よりも「負けない」という、“不敗”の方策をとることが多くなります。

コトラーの「競争的マーケティング戦略」を見ると、ニッチビジネスを展開するニッチャーの戦略を、他と対比しながら確認することができます。

ところで、ニッチビジネスを成功させるためには、“戦う土俵をどこに定めるのか”が重要になるわけですが、それを「この事業をやりたい!」という社長の熱意やひらめきだけで決定するのは危険だといえます。そこで重要になってくるのが、競争優位性の源泉の1つである情報力です。

ニッチビジネスで成功するために必要なこと

コトラーの「競争的マーケティング戦略」は、あくまでも相対的経営資源の質・量によって自社の状況を把握するものです。しかし、特に経営資源の質については、その切り口や時間軸によって評価が変わってきます。

これを大きく読み違わないようにするためには、「3C分析(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社の関係を分析するフレームワーク)」などを用いて、顧客の評価、競合他社との優劣を把握する必要があります。「3C分析」などの精度は、基本的なビジネススキルと良質な情報を収集・分析することで高まってきます。

中小企業であっても、その活動いかんによって情報力を高めることができます。特に顧客から得られる情報は貴重です。単なる業者としての立場ではなく、きめ細かなサービスの提供と現状に甘んじない定期的な提案活動などを通じて、顧客のパートナーとしてのポジションを勝ち取ることができれば、顧客は本音(価値ある情報)を話してくれるようになるでしょう。

同様に、サプライヤーや業界団体などはもとより、取引先の金融機関、友人・知人などからも情報収集できるネットワークを構築しておくことも欠かせません。

情報力の他に、自社の技術などを知的財産化して模倣を防ぐ、国外マーケットにも目を向けて市場を拡大する、次の飯のタネとなるニッチを見つける努力を続けるなども、ニッチビジネスを成功させるために不可欠な取り組みです。

ニッチビジネスを見つけ出す視点とマインド

ニッチビジネスが展開できそうな土俵を発見することは容易ではありません。少し考えれば思いつくようなビジネスは、すでに別の企業が取り組んでいます。

一方、過去を振り返ってみると、インターネット通販の「Amazon」、オフィス用品などの通信販売の「アスクル」のように、今では知らない人がいないサービスも、もとはニッチビジネスとして始まりました。潜在的な需要は至る所に隠れており、着眼点とタイミングさえ合えば、先行者のメリットによって成功を収められる可能性があります。

例えば、既存の市場の形を変えることで、新しい市場が誕生することがあります。今では居酒屋にも置かれているノンアルコール飲料ですが、発売当初はニッチな市場でした。

同様に、既存の流通を見直し、エンドユーザーに一歩近づくことで新しい市場をつくり出している例もあります。分かりやすいのは宅配で、「水の宅配」「食材の宅配」「レンタルDVDの宅配」など、この類は枚挙にいとまがありません。

また、ITをうまく活用することでビジネスの可能性はますます広がります。タクシーの配車予約サービス、衣料品のレンタルサービスなど、「あったら便利だな」という市場のニーズを比較的容易に形にすることができます。

ニッチビジネスに限らず、新しいビジネスを始めるには勇気が要ります。新しいビジネスに取り組んできた多くの企業は、「新たな投資に見合うほどの収益が見込めない」「新しいサービスの価値を市場が認識するまでには時間がかかるため、動向を見きわめたあとに参入しても間に合うだろう」などと不安に駆られたかもしれません。

しかし、そうした不安をはねのけて、新しいビジネスを形にしていった企業の中から勝利者が生まれています。こうした企業は、競合他社が参入に迷っている、あるいは市場すら発見していない状況を尻目に、経営資源を集中的に投下してきました。こうした勇気も、ニッチビジネスを成功させるために必要なマインドだといえるでしょう。

【参考文献】
(*)「スティーブ・ジョブズ全発言 世界を動かした142の言葉」(桑原晃弥、PHP研究所、2011年12月)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年10月1日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

(記事提供元:りそなCollaborare
(執筆:日本情報マート)

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