エンジェル投資家はこう口説け!説得調達のキホン「エンジェル税制」の仕掛け人、元日本IBM社長・北城氏インタビュー(前編)

資金調達手帳

「起業で使って欲しいエンジェル投資」はじめの一歩

(2017/07/03更新)

エンジェル投資家といえば、起業家にとって創業期の資金調達を助けてくれる文字通りの天使。でもそんな人どこにいるの?と思っている起業家の方も少なくないかもしれません。そこで今回は、エンジェル投資家を支援する制度「エンジェル税制」の普及に長く携わっている元日本IBM社長・北城恪太郎氏に、資金調達を応援するエンジェル税制の活用の仕方、そして、エンジェル投資家にもっと起業家のパートナーになってもらうための秘策などを伺いました。

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北城恪太郎(きたしろ かくたろう)
1944年生まれ。
慶應義塾大学工学部、カリフォルニア大学大学院(バークレー校)修士課程修了。
日本アイ・ビー・エム株式会社代表取締役会長、経済同友会代表幹事などのほか、文部科学省中央教育審議会委員など公職も多く歴任。国際基督教大学理事長

ベンチャーにとって「至れり尽くせり」なエンジェル税制

ーはじめに、北城さんとエンジェル税制の関わりから伺えますか。

北城:私は2003年から2007年にかけて経済同友会の代表幹事をしていました。その頃、日本の将来の発展のためにイノベーションが大事だという議論があって、大企業だけでなく、イノベーションの担い手であるベンチャー企業がもっと出てくるような社会を作る必要がある、という話になりました。

そこで注目したのが「エンジェル税制」でした。
当時もエンジェル税制はあったのですけど、キャピタルゲインをした人、例えば株を売って儲かった人などが対象で、一般の人には使うのが難しい税制でした。

お金をたくさん持っている方にたくさん投資していただくのも非常にいいことです。ですが、創業間もないベンチャー企業の資本金を出すのは、だいたい親戚か知人です。そういう人たちが50万円とか100万円の資本金を出すのを支援する制度が必要じゃないか?それも日本で創業する会社の8割は資本金2,000万円以下なので、2,000万円ぐらいのお金を集める仕組みが良いのではないか?そのような考えに至ったのが始まりでした。

入り口を作ってあげて資本金を出す人を増やせば、たくさんの企業ができて、1~2年すればある程度の経営のメドが見えてくる。すると、もう少しお金のある方、いわゆるエンジェル投資家が投資をする。次はベンチャーファンドが支援してくれて、上場間際には金融機関もお金を出す。そういう各ステップに応じた資金調達の仕組み、それを応援する税制が必要じゃないか、ということで経済産業省の方と一緒に国会議員の方々を説得して歩きました。

このような仕組みを作ることで、地方にも企業ができると必ず雇用ができるという側面もありました。その結果、私の考えに賛同してくれた国会議員の先生方の後押しがあって、財務省がこの制度を作ってくれました。

投資家が面白いと言って投資してくれる会社はいいのですが、最初は面白いかどうかわからないものもたくさんあるんですね。だから、必ずしも成功するかどうかわからない所にお金を出すのは寄付するようなものじゃないか、ということでこの税制は所得控除で寄附税制と同じ仕組みになっているわけです。

ーそれはベンチャー界にとってすごい恩人ですね。

北城:ただ、エンジェルという言葉は一般の人になじみがなかったようですね。もし、最初から「創業支援税制」っていう名前だったらもっと理解されたのではないかと思います。会社経営者でも知らない人は多いので、ましてや若い創業者はもっと知らない人がいるかもしれませんね。

ー起業家が何かハードルに感じることがあるのでしょうか。

北城:普通の会社ならたいがいエンジェル税制の適用対象になります。1人がたくさんお金を出して大株主になってはだめなど、いくつか条件はありますけれど。あと、創業の年度が過ぎてしまうと、2年目、3年目では、キャッシュフローが赤字でないといけない。黒字だと対象外です。うまくいってるから増資しようっていうのはだめなんですね。私は黒字だっていいじゃないかと思いますけれど。

書類もそんなに難しくないです。経済産業省や各都道府県もこの税制の案内をしていますし、相談に行けば書類の書き方は教えてくれます。資料だけ読むと大変そうに見えるけど、聞きに行けば教えてもらえる程度の書類です。

ー結構、至れり尽くせりというか、ちゃんとサポートしてくれているわけですね。

北城非常に親切です。私もエンジェル税制を使って何回か投資しましたけど、投資家が用意するものはそんなに多くないです。企業の側は事業計画なんか作って経済産業省が認定しなきゃいけないですけど、そんなに難しいものではありません。

アメリカだとベンチャー投資や株に投資して、損失が出ると所得から引いてくれますが、日本は投資しただけで引いてくれる。そういう意味では世界にもない非常に優遇した税制です。

ー創業者にもっとPRしていきたい制度ですね。

北城:自分の会社は対象外でも仲間が創業することもあると思いますし、紹介してほしいですね。「応援する税制があるから活用したら資本金集めやすくなるよ」と。税理士とか公認会計士にも知ってほしいですね。

ー創業者だけでなく、税理士や会計士の方にも知ってもらえたら、もっと認知されやすくなりますね。

北城実際に減税のメリットを受けるのは投資をしてくれた人です。
創業して苦労した人の話を聞いたら、なかなかお金を出してくれる人が少なくて説得が大変だったけれど、何か見返りがあるのかって言われた時に「投資すると税金が安くなります」って言えばもう少し出してくれたんじゃないかと言っていました。ぜひ日本経済の活性化、特に地方の経済活性化のために活用してほしいですね。地方で会社ができれば雇用にもつながりますから。

小さな話ではなく、大きなビジョンでエンジェルの心をつかめ!

ーエンジェル投資家の心を動かすには、どのように自社の事業をアピールすればいいでしょうか?

北城この事業で社会のこんな問題を解決したい、困っている人を助けたい、といった社会貢献につながる大きなビジョンを伝えることができたら、投資家の心に響くところがあると思います。

起業家自身も何のためにこの会社を作るかっていう高い志があると、たとえ途中で困難なことがあっても乗り越えようって意欲が出てくると思います。エンジェル投資家に説明するためにも、「この事業は本当に社会のために役に立つのか」を自分で何回も問い直したらいいと思います。

投資する人も社会の役に立つものに参加して、たとえ投資が回収できなくても社会の発展のために社会貢献したと思えばいいです。なかなか成功しないかもしれませんが、どこか1つでも成功すれば過去の投資分は回収できますよ。私も7件ぐらいベンチャーに投資していますが、1社上場しただけで他の投資分を回収することができました。

ー公開されている株の投資と少し違って、顔が見える人に投資することで得られる効果も期待できそうですね。

北城:場合によっては株主が応援してくれて成功する確率が高まることもありますね。

家族を持っている男性が起業しようとすると3人の女性を説得しなければならないと言われます。まず自分の奥さんと、奥さんの母親と、自分の母親。この3人の支持がなかなか得られないって言われるけど、いかに社会にとって価値があるのかというのを説明して、3人の女性を説得できれば、エンジェル投資家も説得できるのではないでしょうか。まあ、最近は女性の起業も増えてきて、旦那さんやその父親を説得しなければならないケースもあるみたいですが(笑)。

エンジェルからのアドバイス

小さな話より大きな話で
心をつかめ!

後編はこちら→ベンチャー企業の活躍が日本には必要。「エンジェル税制」の仕掛人 元日本IBM社長・北城氏インタビュー(後編)

(取材協力:日本アイ・ビー・エム株式会社 名誉相談役 北城恪太郎)
(編集:創業手帳編集部)

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