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2022年3月16日鈴窯 鈴原嵩 | 特別な時間とコーヒーの奥深い味をつくる「ネルドリップ」のドリップセットで注目の企業
特別な時間とコーヒーの奥深い味をつくる「ネルドリップ」のドリップセットで注目なのが、鈴原嵩さんが2013年に創業した鈴窯です。
みなさんはコーヒーを飲む習慣がありますか?
朝ごはんや出勤中、仕事の合間、お菓子を食べる時など、コーヒーを飲む習慣があるという方も多いと思います。全日本コーヒー協会の日本のコーヒーの飲料状況調べによると、2020年の日本人が1週間当たりに飲むコーヒーの量は11.53杯となり、1日1杯以上飲んでいることになります。
最近では定番になったコンビニコーヒーや、自動販売機で買える缶コーヒー、カフェで飲むコーヒー、家で手軽に飲めるインスタントコーヒーなど、わたし達の周りにはたくさんのコーヒーが存在しています。
コーヒーがより身近に・手軽になったからこそ、豆を挽いて、お湯をゆっくり注ぎ、大事に抽出した「1杯のコーヒー」というのは格別なものになるのではないでしょうか。
その1杯のコーヒーを作り出せるのが、鈴窯と丸太衣料株式会社が作り上げた「ネルドリップ」のドリップセット「スピール」です。
ネルドリップとは、「ネル」と呼ばれる布フィルターを使ってコーヒーをいれるドリップの方法です。ネルドリップは、紙のフィルターと比べて目が粗いため、コーヒーオイルが抽出されやすく、まろやかで奥深い味わいになるのが特徴です。
コーヒーをいれる時間や飲む時を特別なものにする、「ネルドリップ」や事業の特徴、今後の課題について、鈴窯の鈴原嵩さんにお話をお聞きしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
「ネルドリップ」というコーヒーのなかでもニッチな分野のドリップセットです。「休符」という意味の「スピール」という名前です。
私たちは陶器の専門家ですが、ネルドリップの核となるのは布のフィルター(ネルフィルター)です。ネルフィルターについては「丸太衣料株式会社(以下マルタ)」様が監修しており、マルタ様は50年以上コーヒーフィルターを生産しておられる会社です。
このプロダクトはマルタ様のご相談から始まり、ネルドリップ分野を盛り上げようと二人三脚で作り上げました。とても美味しいけど取っつきにくいネルドリップの間口を広げるために、細かな工夫を詰め込んでいます。
・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?
コーヒー好きの方はもちろん、一人でゆっくりする時に使っていただきたいと思っています。
2,3杯淹れられるドリッパーですと、つい欲を出してお湯を注ぎすぎたり雑に淹れたりしがちです。一人分しか淹れられないからこそ、慎重にこだわりの一杯を作る心構えが生まれます。
ネルドリップにはこだわった分だけ味に反映される懐の深さがあります。仕事の合間に頭を休めたい時、子供が寝た後の一人の時間、読書のお供がほしい時。そんな時に使っていただけると嬉しいです。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
前述したようにネルドリップの核はネルフィルターですが、ネルフィルターの生産者やノウハウを持った会社は既に非常に少なくなっています。ネルフィルターは生地・形・起毛などの調整で豆の味を変化させる習慣があり、喫茶店黎明期には喫茶店ごとのネルフィルターがあるのが当たり前でした。
現在は新たな抽出方法の登場や、個人の喫茶店の廃業によりそうしたノウハウを持った生産者は非常に少なくなってしまいました。日本の喫茶店のネルドリップへのこだわりは世界でも特殊な文化です。現代のコーヒー豆をネルドリップで使いこなす方が増えて、この文化にもう一度目を向けていただきたいと思っています。
また陶器に関しては、美濃焼の開発力向上に取り組んでいます。具体的には「作ったものが、どこで、誰に、どのように使われているか」を工場の方々に少しずつ伝える活動をしています。
私たちの住む岐阜県土岐市は高い技術を持った工場がたくさんありますが、下請け仕事が多い土地柄か、開発力に欠けている側面があります。まずは一緒に作り上げている満足感を味わってもらい、プライドを持って日々の仕事に取り組んでいただく。その後に「自分たちの技術で何か出来るのでは?」というステップに繋げたいと考えています。
初めてスピールで淹れたコーヒーを工場の人に飲んでもらったときは、美味しさにびっくりされていました。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
創業期は全てロクロで手作りの食器を作り、デパートやイベントで販売していました。その時期に困ったのは単純に技術不足です。なので接客の時はとにかく声をかけてニーズを聞き出して、工房ではそこに向かって練習しまくりました。外注して生産するなんて発想にありませんでしたし、工房で寝泊まりする心も身体もきつい日々でした。
今はネット販売が主ですが、いつも当時のお客様の顔をイメージして発信をしています。人見知りも無くなりましたし、体力のある20代で開業したのは良かったと思っています。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
まずはネルドリップに足りないプロダクトをリリースしつつ、世界のコーヒーファンに奥深さと面白さを伝えていきます。
眠っているアイデアを形にし、まだこの世にないものづくりを皆さんと一緒に形にしていきたいと思っています。
・今の課題はなんですか?
海外展開です。個人の方も小売店の方も既にある程度出荷はしているのですが、実際どのように使われているのかを見れていません。
地域により生活習慣もバラバラのはずですのでお話を聞いて開発に繋げる糸口を掴みたいのですが、コロナの様子を伺っている状態です。
・読者にメッセージをお願いします。
私は陶器だけが専門ですが、WEB制作・広報宣伝・クラウドファンディングなど、なにもかも初めての事に取り組みながらゆっくりプロダクトを育てました。
斜陽産業と呼ばれる業界でも、極小の予算でも、技を活かすアイデアをじっくり育てていけば新しい価値を多くの方にお届け出来ると思います。
「陶器でこんな物出来ないかな」程度のふんわりとしたご相談も受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。等身大の商品開発をしたい方をお待ちしております。
回答者プロフィール | 鈴原嵩(すずはらたかし) 1985年 広島県生まれ、小学校時代を横浜、中学高校時代を沖縄で過ごす 2005年 愛知県立芸術大学陶磁専攻入学 2008年 一年休学し、全国の窯跡の地質調査を行う 2010年 愛知県立芸術大学陶磁専攻卒業 2010年 陶芸家・大泉讃氏に師事 2012年 数ヶ月のバックパッカー体験、オセアニアからアジアを巡る 2013年 現在地に鈴窯を設立、クラフトイベントやデパート出展を開始 2015年 陶磁器デザイナー・佐藤千恵が加わる 2019年 ネルドリッパー”スピール”をマクアケで発表 |
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会社名 | 鈴窯 |
代表者名 | 鈴原嵩 |
創業年 | 2013年 |
住所 | 岐阜県土岐市妻木町1223-3 |
ブランド名 | suzugama |
製品名 | スピール | 事業内容 | 陶磁器製品の開発・生産・販売 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | コーヒー スピール ネルドリッパー 鈴原嵩 鈴窯 陶磁器 |
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