デジリハ 岡 勇樹|デジタルとゲーミフィケーションにより「誰もが楽しめるリハビリツール」を目指す

創業手帳

エンタメ要素があればリハビリは楽しい!モチベアップから社会参加までを支援する仕組み作り


高齢化社会の進展と医療技術の進歩により、リハビリを必要とする人は年々増加しています。

リハビリは「基本動作の回復」を目指すのが第一にあり、これまで多くのアプローチ法が考えられてきました。しかし従来のリハビリは、正直楽しくないと感じてしまう人が多いのも事実です。

また、リハビリを行う側も、定量評価(※1)がなかなか行えない手法で施術を行うことや、評価機器の導入が難しいなど、再現性の低い手法に頼らざるを得えません。

株式会社デジリハは、こうした現状を変える一陣の風となるべく、新しいリハビリツール「デジリハ」を開発。ユーザーがただ「基本動作の回復」を目指すのではなく、ユーザーの主体性を引き出しモチベーションアップや継続的なリハビリの実施、更には積極的な社会参加へ導くことも目指しています。

今回は代表取締役を務める岡さんの起業に至るまでの経緯や、どのような想いで社会貢献を実現していこうと考えているのか、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

※1:定量評価・・・データを数値化して客観的に評価を行うこと

岡 勇樹(おか ゆうき)
株式会社デジリハ 代表取締役
NPO法人Ubdobe代表理事
合同会社ONE ON ONE 代表社員
1981年東京生まれ。幼少期の8年間をサンフランシスコで過ごし、音楽漬けで帰国。母と祖父の病気や死がきっかけで高齢者介護・障がい児支援の仕事に従事。現在は医療福祉がテーマのクラブイベントや謎解きイベント事業・居宅介護や重度訪問介護や移動支援などの福祉事業・デジタルアート型リハビリコンテンツ事業・福祉留学事業・レコード屋などを展開中。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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後悔や気づきから得た想いを実現するために起業


大久保:まずはご経歴についてお聞かせ願えますか。

:はい、私は昔から音楽が好きだったので、大学生のころは自分で音楽のイベントを開いたりしていました。バーやクラブでイベントを打ち出し、集客してお金を稼ぐことを学業と平行して行っていましたね。

ところが、軌道に乗りよい感触を感じていた矢先に、私の母が倒れ、ガンで半年後に他界してしまいました。また数年後には祖父が認知症を患うことになりました。

当時は、自分では何も対処することができなかった無力感だけが残っていました。社会人になり働きだしたあともこの経験は尾を引いていて、21歳だった自分に医療や福祉の知識があれば、家族に対するアプローチも違い、もっと何かしてあげることはできたのではないかと。

この後悔や気づきもあり、どうしても医療福祉関係の仕事につきたい想いが強かったため、社会人3年目のときに務めていた会社を退職し、ヘルパーとして働き始めました。

医療福祉関係の仕事をしながら感じていたことが、いまだに医療や福祉は割と閉ざされた世界だと思わされることが多いということです。例えば自分たち家族の間であってもガンであることは隠したままで、亡くなる直前や亡くなったあとに知ることがあるくらいです。

このクローズドな世界をもっとオープンにしていかないと、今後も私のような後悔に苛まれる人が増えていくのだろうと感じていましたね。

ヘルパーとして現場で6年ほど働きつつ、そういった想いを実現していくためにNPO法人も立ち上げました。

大久保:起業を視野に入れて準備をしつつ会社を退職し、よし今日から起業する。というような感じではなかったのですね。

:実はもともと起業するつもりはありませんでした。

あるとき好きだった音楽と医療や福祉を掛け合わせたイベントを開くために協賛企業を探した際、見つけた協賛企業の方に法人化しないのかと言われたことが、法人化をするきっかけとなりました。

最もマッチするであろうNPO法人という形態で法人化を行いました。

必要になったから起業をしたという流れですね。

大久保:なるほど、必要になったから形を整えたのですね。

:そのとおりです。起業自体にあまり価値は感じていなかったんです。

というのも今の時代は、法人化は誰にでも選択が可能なものとなりました。

起業はあくまで何かをやりたい、成し遂げたいときに、継続していくための仕組みのひとつに過ぎないと考えています。

大久保:新しい事業を立ち上げる時は、どのような考え方で進められていますか。

:そうですね、子どもたちのリハビリが大変そうなどといった意見を聞くと、イベント的思考が先行して、楽しく面白い仕組みを考えれば、みんなの悩みもなくなるのではないかと考えを巡らせてしまいます。

自分自身で何かしらやりたいと考えたとき、いつもイベントの企画制作の視点でいるようにしています。

こういった話をしているうちに、これらは事業として成立しそうだという結論に至って、最終的には事業化していくことが多いですね。

大久保:最近はリアルでの接点、人と人との触れ合いが見直されてきている部分もあり、イベントを開いて何かを広げていくやり方も増えそうですね。

:自然とこのようなやり方しかできなかったとも言えるのですが、青年期の長い時間を音楽と共に過ごしてきたこともあり、人を集めて楽しい場を作ることには長けている自負がありました。

お金を稼ぐことが目的ではなく、医療福祉に新しい風を起こして公益となることを目指しているのですが、ソーシャルインパクト(※2)を広げていくためには当然ある程度の資金は必要となっていくので、そのために調達はするというスタンスです。

そのために会社も設立していきます。

大久保:ニーズがあるとわかっている上で起業しているのは強みですよね。

:それでもやっぱり実際やってみると簡単でもなく、ニーズと合っていない部分ももちろんありますので、細かい修正などいろいろと試行錯誤は繰り返していますね。

※2:ソーシャルインパクト・・・社会的影響力のこと

会社は想いを実現するための仕組み


大久保:今はデジリハを始めとして3社を同時展開をされていると思いますが、それぞれを紹介していただけますか。

:はい、まずNPO法人Ubdobeが最も長く、事業内容としては重度訪問介護、移動支援、居宅介護などの福祉事業をやっています。

他には、イベントを定期的に開催したり、受託事業で行政機関や厚労省から調査研究事業を受けたり、ローカル事業として福祉留学の制度を運営したりもしています。

これらは人の動きを作ると言いますか、みんながスムーズに動けるような体制を作るために行っています。

2社目のデジリハは、NPO法人からスピンアウト(※3)して作った株式会社なのですが、リハビリに関するアプリケーションやデータベースを開発し、病院や施設などに提供しています。

メインとなるのがデジタルアートとセンサーを用いたリハビリツール「デジリハ」なのですが、リハビリを越えて特別支援学校で使えるツールや就労支援施設で使えるツール、障害がある人でもお金が稼げる仕組みを作る、などといったデジリハを中心としたさまざまなプロダクトを進行中です。

3社目は合同会社ONE ON ONEというのですが、こちらは1人会社です。

私が好きな音楽に関するイベントを開催したり、レコード屋を開いたりと、私の多くの部分を形成している音楽という要素をこの会社で表現している形ですね。

3社ともそれぞれが繋がっていてシナジー効果を生んでいるのですが、今最も注力しているのはやはり、デジリハを中心とした事業です。

※3:スピンアウト:会社の一部門を切り離し、独立させること

デジリハでリハビリのイメージを塗り替える

大久保:デジリハの事業について詳しくお聞かせください。

:はい、先ほどもお話したように株式会社デジリハは、デジタルリハビリツールの開発、提供を行っています。

障害児者のリハビリをゲーミフィケーション(※4)によって楽しく継続してもらうことを目的とし、この仕組みのことを私たちはデジタル・インタラクティブ・リハビリテーション・システムと呼んでいます。

私が代表を務めてさせていただき、メンバーには理学療法士や社会福祉士、医療福祉関係の専門職など各方面のエキスパートに参画していただいています。ほかにも、当事者家族の方々にも参画していただいています。

従来、リハビリの仕事は属人性が高く、且つリハビリ専門職の数は、必要としている人に対してそこまで多くはありません。そこでリハビリとして再現性が高く、リハビリを受ける側も主体的にリハビリに取り組めることを目指してツールの開発などを行っています。

現在33本のアプリケーションを開発済みで、さまざまな機能や特性を有した人たちの誰もが、自分にあったアプリをプレイすることができるようになっています。

手、足、目など各部位の動きをセンサーにより読み取り、アプリを動かすことでユーザーに成功体験をしてもらいつつ、リハビリに繋がるように設計しています。アプリ内で読み取った動きやその結果は全てデータベースに蓄積しています。

将来的には、データベースに蓄積された情報をもとに疾患や障害別に分析を行い、それぞれの症状に合わせてオーダーメイドのリハビリプログラムの提案も可能になるかもしれません。

データベースの開発は現在進行形で進めていて、データが蓄積されればされるほどより適切な支援が可能となります。蓄積されたデータを細分化、フィードバックを返していくことで、支援職にも各種業務で活用いただけるシステムになります。

ゲーミフィケーションを活用しているため、本人たちもリハビリを受けているという感覚は薄く、昔はリハビリがいやだと言っていた子が、デジリハならやりたいと言ってくれています。

私たちは「リハビリのおかわり」と呼んでいるのですが、これまではあまり聞けなかったリハビリをもっとやりたいという声を、デジリハでは聞くことができています。

大久保:法人の方々からの手応えも得られ始めているのでしょうか。

:重症心身障害児施設からいただいた声なのですが、自分の気持ちや考えを表現するのが難しい子たちが、デジリハを利用し始めてから自ら興味を持って指さしたり、手を伸ばしてきたり、自分を表現してきた、と話していました。

その子の人生にとって、とても革命的なことがきっと起きていて、そういった動きをデジリハが生み出すことができてきています。

これはその子のことだけでなく、ご両親や支援職の方が新しい可能性に気づくためのヒントにもなります。

日常生活でも何か新しいことを取り入れよう、こういう動きを取り入れてみようといった思考を巡らせるための気づきを少しでも与えられれば、その子のよいところを更に伸ばしていけるはずです。

デジリハを利用することで、子どもたちを始めとしてご両親やスタッフの方々それぞれの主体性を引き出せる、引き出していった結果として日常が改善されていく、このような流れを考えています。

また、支援スタッフの方々から、デジリハがきっかけでその子のことをより理解できるようになり、より支援の具体的な内容を議論できるようになったという意見もいただいています。

※4:ゲーミフィケーション・・・ゲーム構造をゲームとは別の分野に応用すること

リハビリは動作の回復を目指すだけではない


大久保:将来はどのような展望を見据えていますか。

:まず利用先の拡大です。

現在はサブスク形式でアプリの利用料を3プランほど設定、特別支援学校などの教育関連、放課後等デイサービスなどの福祉関連、そしてリハビリ病院や医療センターなど、規模に応じて適したプランを提示しています。

海外にも焦点を向け、現在はインドでの調査を進めています。来年からは試験導入を始めたいと考えています。

また、医療福祉業界で認知を拡大させていくためには、著名な方が医学的に証明をする、学会発表を行う、論文を寄稿するなどといったことも大事ですね。

さまざまな証明をしていくために共同研究もやらせていただいていて、認知を広げていけるようにしています。

次に開発についてです。最近では脳卒中や認知症などを患っている方など、子どもたちだけではなく、年齢を問わずお使いいただけるようになり始めました。

これからは多くのデータを蓄積していくことで、例えば1人の利用者のリハビリや療育の情報、学校で学んだことや得意不得意などをひとつのステータスとしてデータにまとめ、次の学校や就労の際にデータを引き継いでもらう形にしていきたいと考えています。

各支援機関でデータ共有ができる、伴走型のデータベースみたいなものを作り、「人生の可動域を拡張し続けるプラットフォーム」を提供したいと考えています。

最も大切なのは一緒にいてくれる仲間


大久保:最後にこれから起業される方や、起業して今壁にぶつかっている方などへアドバイスをいただきたいです。

:私たちも今その渦中にいる状態なのですが、やっぱりずっと一緒にやってくれるチームがいるということが大事なのではないでしょうか。

一緒にがんばってくれる人がいないと、物も作れなければ資金も調達できない。チームとしてメンバーが居続けてくれることが最も大切ですね。そして一緒にいてくれるためにはチームとのコミュニケーションが一番大事だと日々痛感しています。

継続できる仕組みを作るために、いかに良い仲間を集められるかが大事だと思います。

そしていいチームを作って終わりでもなければ、いいプロダクトを作って終わりではないです。

私たちもチームを作って育てている最中ですし、皆さん一緒に頑張っていきましょう。

起業を支援する冊子「創業手帳」では、多くの起業家のインタビューを掲載しています。起業経験者による体験談をご覧いただき、ぜひ今後にお役立てください。
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(取材協力: 株式会社デジリハ 代表取締役 岡 勇樹
(編集: 創業手帳編集部)



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