創業手帳代表が日経をさくっと解説 資金調達に関わる4つの話題

12月27日の日経新聞に、以下の4つのニュースが取り上げられました。

1、有価証券報告書に経営計画・リスク明記 金融庁指針
2、ライザップ、子会社を4割削減
3、日銀への金融追加緩和論が強まる
4、ゆうちょ銀行 超低金利で運用難

4つの記事は一見スタートアップとは関わりがなさそうですが、実は起業の資金調達に影響を及ぼす、注目すべき話題です。創業手帳代表の大久保が、さくっと解説します。

過去最高のVC投資と今後の課題

1は、金融庁が上場企業に対して、有価証券報告書の記載内容を大幅に拡充し、事業戦略やリスク、株主還元策など、経営の方向性を詳細に示す情報を明記するよう促す、という話題です。情報開示の範囲を広げることで、投資家が企業の将来性などをより分析しやすくするという狙いがあります。

また、金融庁は企業の制作保有株に関する情報についても、開示が必要な個別銘柄を金額の上位30銘柄から60銘柄に増やすよう求めています。
開示範囲拡大は、金融の透明化で市場の健全化が期待される一方で、戦略投資の説明義務が増えます。現在のスタートアップの株価高騰はCVCが牽引している面が大きく、企業の投資活動においては短期的にタガがはまる抑制要因となりそうです。

ただしスタートアップの銘柄が上位30→60と拡大しても、そこまで影響を受けないという見方もあります。

2は、2年間で50社というスピードでM&Aを進めてきたライザップの瀬戸社長が、業績改善のために子会社の数を4割減らす考えを示したというニュースですが、M&Aの最大級の買い手であったライザップの子会社が買収を止めて、逆にM&Aで売りに出すものが増えること意味しています。

つまり、現在M&Aの買い手が多く、売り手が少ない、スタートアップ未上場株の値段が異常につり上がっている(スタートアップの株価が高い)状態なので、起業家のM&Aエグジットおよび出資調達に若干マイナスな兆候といえるでしょう。

3は、金融市場で株安・円高が進み不安定な動きを続けている中、追加緩和論が高まっているという話題です。

今後の金融緩和で、出資・融資によって資金が供給されることになるので、資金調達の側面ではややプラスの情報です。ただし、これ以上の緩和効果は難しそうです。

4は、ゆうちょ銀行が貯金の限度額を引き上げる意見書を公表した、というニュースです。

超低金利の運用難の中貯金が増えることで、ゆうちょ銀行の経営の舵取りが難しくなるのでは、という懸念があります。一方で、ゆうちょ銀行が1200億円のファンドを作ってスタートアップ投資をしているように、スタートアップとっては、ゆうちょの預金額が増えれば資金が流れ込む要因になるので、ややプラスの情報です。ただ、副次的な意味としては、ゆうちょ銀行が膨張することで他の金融機関を圧迫する可能性もあります。

全体としては、日経平均の値下がりが企業のIPO時の期待に影響し、投資資金にも影響しそうです。VC投資は昨年3000億円を超え、2018年は4000億円に迫る過去最高の勢いとなっています。

創業手帳で起業家と接している印象としては、起業は盛り上がり資金が流入している一方で、起業そのものが急増しているわけではないので、今後、流入した資金にリターンを返す業績を出せる、より良質な起業家とそれを支える起業支援者のエコシステムの充実が期待されます。

解説者 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社の母子手帳、創業手帳を考案。2014年にビズシード社(現:創業手帳)創業。ユニークなビジネスモデルを成功させ、累計100万部を超える。内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学、官公庁などでの講義も600回以上行っている。

(編集:創業手帳編集部)

読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ トレンド
関連タグ 日経新聞 資金調達関連
資金調達手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事

トレンドの創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

【7月3日】起業家むけ「気になるニュースまとめ」
7月3日に出たニュースで、起業家がチェックしたいニュースをまとめました ●日経調査 初任給引き上げ実施7割 日経新聞が「社長100人アンケート」で、直近で初任給を引き上げたと回答した企業が7割に登りま…
【7月24日】起業家むけ「気になるニュース」まとめ
7月24日に出たニュースの中で、起業家が注目したいニュースをまとめました 柔軟な働き方、「取り入れていない」企業はまだ多い 2019年度内閣府年次経済性報告 内閣府が23日に2019年度の年次経済性報…
創業手帳代表が日経をさくっと解説 プラットフォーマー規制・フラットな組織「ホラクラシー」
12月28日の日経新聞に、以下の7つのニュースが取り上げられました。 3面.スマホ決済百花繚乱 5面.プラットフォーマー規制 7面.監査法人、内向き風土、再編 11面.アトラエ新居佳英社長インタビュー…
【7月13日】起業家むけ「気になるニュースまとめ」
7月17日のニュースの中で、起業家が注目したい話題を紹介します。 独禁法の個人情報規制指針発表 購買履歴や位置データも規制対象に 独禁法の個人情報保護規制に関する話題に進展です。公正取引委員会が16日…
近鉄グループが20億円規模のコーポレートベンチャーキャピタル設立へ
平成30年6月26日、近鉄グループホールディングス株式会社は、近鉄ベンチャーパートナーズ株式会社を設立することを発表しました。 ベンチャー企業に対する投資や協創推進を行うコーポレートベンチャーキャピタ…

大久保の視点

「千代田区CULTURExTECH ビジコン2024」が丸の内TOKYO創業ステーションで2024年3月19日に開催
2024年3月19日(火)にStartup Hub Tokyo 丸の内(TOKYO創業ステーション 丸の内 1F・千代田区)で千代田CULTURExTECH…
(2024/3/19)
明治大学ビジコンで優勝&100万円獲得は宇宙ビジネスの蓮見大聖さん明治大学4年「AMATERAS SPACE」
2024年3月13日(木)に明治大学・御茶ノ水キャンパスで第2回明治ビジネスチャレンジ(明治ビジチャレ)が明治大学経営学部主催で行われました。 明治大学の各…
(2024/3/13)
Coral Capitalが虎ノ門ヒルズで「Startup Aquarium 2024」を開催。VCが大規模キャリアイベント
ベンチャーキャピタルのCoral Capitalが主催する「Startup Aquarium 2024」が2024年3月2日(土)に虎ノ門ヒルズで開催されま…
(2024/3/2)
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集
今すぐ
申し込む
【無料】