米国スタートアップ資金調達底堅く、有力企業に集中する傾向

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新型コロナウイルス禍による景気悪化の中、金融緩和に伴う金余りを背景に、有力企業に投資マネーが集中する構図が一段と強まっています。4~6月に米国で1億ドル以上を調達した「メガラウンド」は69件と四半期ベースで過去最高となりました。中国でも大型調達が相次いでおり、7月以降も同様の傾向が続き、スタートアップへの選別の目が厳しくなっているようです。

米調査会社のCBインサイツによると、4~6月の米国でのメガラウンドの調達件数は69件と1~3月から9件多くなりました。メガラウンドの総額でも121億ドルと2四半期連続で100億ドルを超え、19年10~12月の88億ドルを底に上昇傾向にあります。

米国で最も多くのお金を集めたのはFintechベンチャーの代表格である決済サービスのストライプです。大手ベンチャーキャピタルの米セコイア・キャピタルや米グーグルなどから6億ドルを調達しました。新型コロナを機にオンライン決済への需要が増加しています

データ分析のパランティア・テクノロジーズは5億ドルの資金調達に成功しました。同社は米中央情報局(CIA)などの公的機関や大手企業にビッグデータの分析基盤を提供し、日本のSOMPOホールディングスからも出資を受けています。

遺伝子治療のサナ・バイオテクノロジーは4億8100万ドルを調達した。損傷した組織を再生する治療技術の開発に期待が集まっています。

有力スタートアップの資金調達市場が活況なのは米国だけではありません。4~6月の調達額で世界最高となったたのが中国のオンライン学習塾「作業幇」です。カタール投資庁などから7億5000万ドルを調達しました。新型コロナの影響で学生らが自宅で勉強する機会が増え、1日約5000万人が同社のサービスを使っており、類型登録者数は計8億人を超えました。

ただ、大型案件に資金が集まる傾向の一方、全体の件数、また調達金額をみると、新型コロナの影響で景気の先行きが見通しにくくなり多くのVCの慎重姿勢が浮かび上がります。CBインサイツによると、世界の95%超を占める米国と欧州、アジアの3地域の4~6月の投資額は490億ドルと前年同期比で12%減少しました。件数ベースでも3670件と同9%少なくなっています。特に、輸送や観光、小売りなど人の往来を前提とする企業は資金面で厳しい局面を迎えています

CBインサイツによると、日本のユニコーンは人工知能(AI)開発のプリファード・ネットワークスなど3社のみとなっています。カテゴリー別では、金融、環境・エネルギー、医療・介護などの分野で資金調達が盛んです。

編集部のコメント

編集者
コロナ禍に伴うライフスタイル・産業構造の変化、世界的な金融緩和傾向の中、スタートアップの選別はよりシビアになっています。成長ストーリーを如何にわかりやすく投資家・VCに訴求できるか、またその経営の推進力をアピールできるかが重要です。

金融緩和が強まる際の資金流入先はこれまで上場株式市場や不動産市場が主でしたが、ベンチャー企業の成長速度が高まりユニコーンにまで成長する期間が短期化する中、また低金利環境が続く中、より高利回りが期待できるベンチャー投資にも資金が流入するようになっています。実績・実力のある起業家にとっては、チャレンジがしやすい土壌が整ってきていると言えそうです。

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