タイガーモブ 菊地 恵理子|海外インターンのタイガーモブはコロナでどう業態転換に成功したか?日本から地球規模で探究・実践する方法

創業手帳woman

コロナ禍での進化が起業家のヒントに!

コロナウイルスの影響を受けた業種には、飲食・ホテル・旅行業界などがあり、その業界への支援や補助金が話題になっています。飲食・ホテル・旅行も国内向け事業があるため、市場がゼロになったわけではありませんが、文字通り市場がゼロになってしまった業界もあります。

海外に学生のインターンを派遣し、視野を広げる体験を提供することで次世代のリーダーを育成しているタイガーモブがその一例です。

海外に学生を送り込めない中で業態転換に成功した、注目の女性起業家でもあるタイガーモブ代表取締役の菊地恵理子さんにお話を伺いました。

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菊地 恵理子(きくちえりこ)
タイガーモブ株式会社 代表取締役 菊地 恵理子
関西学院大学総合政策学部、寿司アカデミー、Lee Kuan Yew School of Public Policy ”ASEAN地政学プログラム”卒。在学中は中国、蘇州大学へ半年間留学し、その後上海外資系5つ星ホテルにて通訳・翻訳・VIP対応として半年間インターンシップを経験。また、韓国~中国~東南アジアをバックパッカーとして、3ヶ月で8カ国を周る一人旅kikutripを実施。人材会社に入社し、1年目は採用コンサルタントとして営業を、2年目では海外事業部を起ち上げ、海外インターン事業「AJITORA」を始動。約600名の海外送り出し実績を経て、独立。タイガーモブ株式会社を立ち上げる。日本から世界、世界から日本の動きを活性化する為、海外バックパッカー営業等で世界中を飛び周っている。2017年全国商工会議所女性会連合会主催女性起業家大賞スタートアップ部門特別賞、EY Winning Women 2018ファイナリスト受賞。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役

大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

海外インターンシップだから経験できること

大久保:コロナ前までは、どのような事業を展開されていましたか?

菊地「次世代リーダーの創出」をミッションとして、個人応募の大学生・社会人向けに海外インターンシップや短期研修の機会を提供していました。これまでの支援実績は、アジア新興国を中心にアフリカや南米など世界45カ国350件以上に上ります。

受け入れ先の国に赴き、スタートアップ企業やベンチャー企業で営業やマーケティング、デザイン、エンジニアなど実際に業務を行います。インターンシップといえども、取り組むのはリアルな仕事です。日本の常識が通用しない外国で、実践を通して生きる知恵を習得したり、視野を広げていただいていました。

大久保:なぜこの事業を始められたのですか?

菊地:理由は3点ありまして。1つ目は、大学時代に上海でインターンシップを経験したのですが、当時はインターンシップで海外に行くのはコストが高く、業種の選択肢もベビーシッターや農場、旅行業と少なかったんです。それでは全員の希望にマッチしないので、コストをできるだけ下げて、急成長している新興国のスタートアップ企業やベンチャー企業でインターンシップできる機会を提供し、様々な人のニーズを満たせるようにしようと思いました。

2つ目は、海外に身を置き、日本の常識が通用しない経験をたくさんすることで、「自分はなぜここにいるのか?」「どうしてこの価値観を持っているのか?」「これから何がしたいのか?」など、アイデンティティに向き合う機会が自ずと訪れます。数々の失敗と成功体験を積むことで、自分の強みや弱みが明確になるとともに、アイデンティティの軸が明確になっていきます。これが生きる上での糧となり、「自分はこれだ!」と思う分野で旗を立てる大事なヒントとなると思いました。

3つ目は、自分の好きなことや興味関心を地球規模で追求できる点ですね。多くの人は、何かやってみたいことがあっても、自分の身の回りで完結することを想像しがちですが、それでは可能性の幅を狭めてしまいます。せっかくなら、そのテーマを地球規模で考えて、社会にインパクトを出す可能性を最大限広げてほしい。そのような思いで、海外インターンシップの事業を始めました。

ピンチをチャンスに!海外インターンをオンライン化

オンライン海外インターンの様子。教育×途上国に興味を持ち、バングラデシュの教育系スタートアップ企業でインターンを経験後、インターン先に就職。

大久保:コロナ禍でどのような変化がありましたか?

菊地:コロナ前は、参加者数も売り上げも右肩上がりで伸びていて、イケイケどんどん!の勢いで海外インターン受け入れ先や短期海外研修の開発・実施を進めていました。それが新型コロナウイルスの感染拡大により、海外渡航がすべてストップし、売り上げもゼロになりました。海外危機対応の会社と連携しながら、渡航中の方々の帰国を調整したり、これから渡航する方々に中止・延期の連絡をしたり、親御さんへ説明をしたりと、とにかく電話の嵐でした。

それと並行して、毎晩のように社内会議をし「私たちのやるべきことは何か」「やりたいことは何か」と話し合いました。その結果、やはり私たちは「次世代リーダーを創出していきたいし、『実践』をベースに事業を進めていきたい」と全員の意見が一致しました。大ピンチだけれども、それはイコール大チャンスでもあると。コロナの収束を待つのではなく、変化を起こす側に回ろうと決意しました。

最初は何をやればいいのか見当がつきませんでしたが、「世界は停滞したとしても、学びは止めてはいけないよね」という思いで、我々が持っている世界45カ国350件以上の海外ネットワークを用いて、オンラインイベントを毎日のように開催しました。SDGs・国際協力・起業・自分らしさの追求など、様々なテーマでイベントを実施した結果、多い時には1度に500人以上が参加してくださり、今まで取り込めなかった層も含めて小学生からシニアまで計1.5万人との接点が芽生えました。また、録画配信をすることで、会員の方がいつでもどこでも何回でも閲覧できるよう『Global Learning Community』も開設しました。

大久保:オンラインイベントが盛況だったのですね。

菊地:はい。オンラインでも学びは作れると確信しました。しかし、それでも我々がやりたいのはあくまで『実践』だったので、世界中に広がるインターン受け入れ先とアポを取り、各国のコロナの状況や会社の状況、今何に課題を感じているかなどをヒアリングしました。皆さん総じて「やりたいことや、やるべきことはたくさんあるけれど、人がいなくて困っている」とのことでした。加えて、世界中のほとんどの会社がリモートになりましたが、当時は経験もノウハウも不足しており、成果が落ちているという意見が多く出ていました。

一方、渡航できなくなった方々は「やる気はあるけど活かせる場所がない」とのことだったので、両者をマッチングできないかと2020年4月から『オンライン海外インターン事業』を始めました。リモートを活用して海外の企業で働き、自宅から世界の社会課題に参戦できる。日本にいながら海外と関わりを持ち、自分の興味関心を地球規模で実践することができる。そんな環境を作ることができました。

大久保:日本国内の自宅にいながら海外の企業でインターンシップができるのは、画期的で素晴らしいことですね。

菊地:そうなんです。海外インターンをオンライン化することで、今までスケジュールやコスト、学業や本業との兼ね合いを理由に諦めていた層にリーチすることができ、インターン希望者が高校生や社会人にも広がりました。

また、関西学院大学総合政策学部を筆頭に、多くの大学がオンライン海外インターンシップを単位認定型で導入してくださいました。さらに、グローバル人材育成の一環として、オンライン海外インターンを研修として導入してくださる企業も増えました。

アジア新興国など、世界45カ国の企業でインターンを実施

大久保:貴社のサービスは、どのような層に利用してもらいたいですか?また、オンラインで実施する際の効果についても教えていただけますか。

菊地:年齢を問わず、幅広い層の方にご参加いただきたいです。元々海外インターンに多くご参加いただいていた大学生はもちろん、今までは学業や本業との兼ね合いやコストを理由に諦めていた高校生や社会人にもご参加いただけるのがオンライン海外インターンシップの大きな特徴です。留学やインターンなどで海外に渡航することが難しい時期でも、世界に挑戦をしてみたいという思いやテーマへの興味関心があれば参加できるので、ぜひ多くの方にご参加いただきたいですね。

効果については、数多くのインターン先やプログラムから興味関心にあったものを自ら選び、挑戦していただくことで、自分の軸や強みが明確になるきっかけとなります。また、国内では経験することが難しい世界規模の実践機会により、日本で当たり前だと思っていた常識が崩れ、新たに自分なりの価値観が明確になるため、自分らしさや生き方をより明確に認識できるようになります。その点は渡航型の海外インターンと変わらないため、オンラインでも同様の効果を得ることができます。

大久保:現在は、どのようなインターン先がありますか?

菊地:現在、インターンの受け入れ先企業は、アジア新興国やアフリカ、南米などを中心に世界45カ国380件以上に上ります。海外インターンというと、アメリカやヨーロッパ諸国をイメージされる方も多いのですが、世界で起きている課題の多くは途上国といわれる国や地域に存在しています。そのため、具体的な社会課題や地域に根ざしたテーマに興味を持った方に機会を届けやすいのが弊社のインターンの特徴です。

例えば、世界最貧国の一つである西アフリカ・トーゴのアフリカ布と京都の伝統技術を掛け合わせた日本人起業家のもとでのインターンや、日本人がいない環境で自然豊かなインドネシア・ジャワ島を持続可能な観光地に変容させるインターンなど、その場所でしか得られない実践機会を提供しています。

個人・学校・企業向けに3つの事業を展開

長野日本大学高校の新設「探究創造学科」をタイガーモブがプロデュース。

大久保:海外インターン事業以外にも、様々なサービスを展開されていますね。

菊地:はい。『Learning by Doing(実践からの学び)』をコンセプトに、主に3つのサービスを展開しています。1つ目は、海外インターンシップを中心とした個人向けサービスです。小さな一歩から、世界を変える大きな挑戦まで、人生のターニングポイントになるような地球規模での挑戦機会をオフライン・オンライン双方で展開しています。インターンシップ以外にも、気候変動や野生動物保護、紛争などについて世界で活躍するリーダーから学び、アクションを起こす短期プログラムも実施しています。

2つ目は、教育機関向けサービスです。現在は、中学から大学までの各種教育機関にカリキュラムやインターンシッププログラムなどを提供しています。特に高等学校では、2022年度から新たに『総合的な探究の時間』が導入されるのに合わせて、問い合わせが増えていますね。当社がこれまで培ってきた世界中のネットワークとプログラム運営力を活かしたグローバル探究カリキュラムを導入していただいています。

3つ目は、法人向けサービスです。企業のグローバル人材育成課題に応え、海外での実践機会を提供しています。実践機会を通じて、スキルやケイパビリティはもちろんのこと、多様な価値観に触れることで、リフレクション(内省)やリフレーミング(再構築)の機会を提供しているのが特徴です。

大久保:ちなみに、学校向けのサービスは営業が大変そうなイメージがあるのですが、コストも含め、どのように広めていったのですか?

菊地:最初は、新学習指導要領で『総合的な探究の時間』が導入されるにあたり、学校の先生や教育機関の方が「何か良いコンテンツはないか」と探される中で、当社の個人向けサービスを見つけてくださったのがきっかけです。学校への導入が始まってからは、口コミや教育機関向けのイベント登壇などで徐々に知っていただく機会が増えました。また、最近では私たちのビジョンに共感された販売代理店が当社のサービスを広めてくださっています。

学校向けのサービスは、授業コマ数の時間的な制限や予算など、個人向け・企業向けサービスとは異なった制約があります。また、各学校によって扱いたいテーマが異なるのはもちろん、それを通常の授業で行うのか、課外活動なのか、年間を通して行うカリキュラムなのか、夏休みなどを利用して行う短期プログラムなのかによってもニーズは異なります。また、『グローバルな実践機会を提供する』という私たちのサービスの特性上、時差や語学力の問題などもあります。

これらの制約や問題を個別に解決することは困難なので、私たちがカリキュラムを導入する際は、具体的な授業プランを考える前に「そもそも『総合的な探究の時間』を何のために行うのか」を先生方と徹底的に議論するところから始めています。この軸が固まることで、多くの制約や問題が解決可能な課題に変わるんです。

世界中に次世代のリーダーを創出したい

『STARTUP AFRICA in Rwanda』での一枚。アフリカの社会・経済・文化の理解を深めつつ、ハードルの高い現地企業の課題解決やゼロイチでの起業体験に挑戦する。

大久保:今後の展望を教えてください。

菊地:着火をして、その火種がより大きくなるように風を送るのがタイガーモブの役割なので、世界にも通用する『Learning by Doing(実践からの学び)』を展開していく予定です。

特に、私たちは『次世代リーダーの創出』をミッションに、多様な地球課題の担い手となるリーダーを輩出することで、子々孫々に受け継がれるより良い未来を実現したいと考えています。そのために、世界中の多様な組織や人、自然とのコラボレーションを通じて、次世代リーダーを生み出す生態系を創り出し、社会へのインパクトを追求していきます。

また、私たちは次世代リーダーを世界中で創出したいと考えています。生まれや育ちを問わず、地球の状態や世界の課題、自分の存在意義を知り、自分らしさを最大限生かした上で、あらゆる問題に向けてアクションを起こせるような人を創出していきたいですね。

大久保:それでは最後に、このインタビュー記事を読まれている起業家や学生へ向けてメッセージをお願いします。

菊地:「ピンチはチャンスであること。そして、1万年後を見据え、ともに社会を作っていきましょう」とお伝えしたいです。コロナ禍で大変な状況かと思いますが、変化に飲まれるのではなく、変化を起こす側としてアクションを起こすことで、未来は好転します

私たちは、事業の転換はもちろん、組織としても様々な変化を起こしてきました。オフィスを撤去しフルリモートにすることで、好きな場所で好きなことをできる状況を実現させました。例えば、私は北海道の大自然の中で子育てをしながら地球規模での実践・探究を追求しています。ほかにも、北海道・栃木・名古屋などの地方へ移住したり、南アフリカやエジプトなどの海外に拠点を移したメンバーもいます。

また、働き方も副業・兼業・プロボノ・インターン・業務委託など、柔軟に対応することで、想いに共感してくださった方がジョインしやすい環境を整えました。その結果、大手企業や海外の企業から優秀な方々がジョインしてくださっています。過去にとらわれるのではなく、時代の流れに合わせて新たな制度・文化を作ったことで、楽しさが増していますね

また、1万年後を見据えた社会創りに関しては、2020年6月に開催された世界経済フォーラム会議『THE GREAT RESET』の動画にヒントがあるように、環境を犠牲にして経済発展を優先させたり、個人を犠牲にして組織を伸ばすという時代は終わりました。これからは、一人ひとりが自分らしさを最大限発揮して、役割を全うする必要があると思います。もちろん、企業として利益の追求は大切ではありますが、常に「子々孫々にとって、これは良い決断なのか?」と問いながら、皆でより良い社会創りに貢献できれば幸いです。

冊子版の創業手帳では、事業計画など起業の悩み解決事例も掲載されています。無料でお届けいたしますので、ぜひご活用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

創業手帳別冊版「創業手帳 人気インタビュー」は、注目の若手起業家から著名実業家たちの「価値あるエピソード」が無料で読めます。リアルな成功体験談が今後のビジネスのヒントになるはず。ご活用ください。

(取材協力: タイガーモブ株式会社 代表取締役 菊地 恵理子
(編集: 創業手帳編集部)

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