ココナラ 鈴木 歩|スキルを販売するマーケットプレイス「ココナラ」で自分のストーリーを生きていく人を増やしたい

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年06月に行われた取材時点のものです。

「ココナラ」であらゆる人の可能性を解き放ち、社会とのつながり方の選択肢を増やす


“知識・スキル・経験”を売買できるスキルマーケット「ココナラ」で、一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中を目指し、挑戦しているのがココナラの鈴木さんです。

リクルートからココナラに転職し、経営を任されるまでの経緯や、ココナラの特徴や今後の展望について創業手帳の大久保が聞きました。

鈴木 歩(すずき あゆむ)
株式会社ココナラ 代表取締役社長CEO
早稲田大学卒、株式会社リクルートにて、商品企画・営業・アドテク新規事業での事業開発を経験。その後株式会社リクルートホールディングスにて海外経営企画を経て、2016年5月より株式会社ココナラに参画。2020年9月に代表取締役社長就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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リクルートから転職しココナラの経営を担う

大久保:まずは代表取締役会長の南さんと代表取締役社長CEOの鈴木さんの役割分担を教えてください。

鈴木南はココナラで主に採用とPRを担当しています。ココナラスキルパートナーズというココナラの子会社のファンドでも、南が代表取締役をしています。

私は「ココナラ」や「ココナラ法律相談」など事業全体の経営を担当しています。

創業者は私ではなく、新明、南を含めた3人でした。

創業時から新明が事業、南がコーポレートと役割分担があり、私が6年前に入った時に新明の経営業務を引き継ぎました。

Twitterで繋がった3名で「ココナラ」を創業

大久保:ココナラの立ち上げの経緯を教えてください。

鈴木:創業者の3名はTwitterで知り合いました。南ともう1名の創業者の谷口が東日本大震災をきっかけに、自分たちが本当にやりたいことをやろうと「ウェルセルフ」という会社を立ち上げました。

ウェルセルフのサービス立ち上げ時に医療従事者や薬剤師の方にインタビューをしていると、自分のスキルを今いる医療領域でしか生かせず、もっと幅広くスキルを提供したいという思いを聞きました。

そこで新明がスキル領域のマッチングサービスに着目し、現在のココナラが始まりました。

クラウドソーシングとは違う「スキルマーケット」の特徴

大久保:一般的なクラウドソーシングとスキルECであるココナラの違いを教えてください。

鈴木ココナラはスキルを販売する「マーケットプレイス」です。一人ひとりが持つスキルや経験を売買する場、プラットフォームを立ち上げたいと思い、スキルECを始めています。
EC型になると先に商品がないといけないので、ビジネスの始まりがスキルをもった出品者側にあります。価格の決定権も出品者側にあり、購入者は自分の好みのカテゴリーで条件に合ったものを買うという流れになります。

一方で、クラウドソーシングはサイト側がクライアントから案件を獲得し、プラットフォームに流します。その案件に出品者が手を挙げて、クライアントが出品者を選ぶという流れですので、スキルECとは仕事が発生する流れが逆です。
クラウドソーシングでは、価格決定権がクライアント側に強く傾いているため、価格の安さが重要視されがちです。

「スキル」という「形がないものを売る」サービスの難しさ

大久保:無形物のサービス販売をするECサービスを成立させることは難しくありませんでしたか?

鈴木:無形物だからこそ、物に匹敵するような安心感を購入者に得てもらうために、「情報の可視化」を徹底的に行っています。

マーケットプレイスで大事なことは、価格とクオリティの期待値が合致することです。購入者は金額に応じて商品のクオリティに対する期待値を持ち、その期待値に合致した納品物が送られて来ることが大切です。
そのために、可能な限り情報を可視化して、期待値の差がなくなるようにこだわっています。

また、出品する際に出品者が決められる項目を複雑にしないことが大切です。ココナラでは、値付けできる金額を500円や1000円という区切りの良い設定にしています。中途半端な金額がないからこそ購入者は買う買わないの判断がつきやすいと思います。

大久保:購入者が選ぶ幅を絞ることで、購入しやすくなるということですか?

鈴木:マーケットプレイスにおけるマッチングには、変数が少ない方が期待値に対する負のギャップが生まれにくいです。ココナラではオンライン完結の取引に限定したことで、時間や場所の概念がなくなり、よりシンプルな選択を可能にしています。

テレビCMでも有名なココナラのPR戦略

ココナラHPより抜粋

大久保:ココナラには色々なカテゴリーがあると思いますが、その時々で人気のカテゴリーに注力しながらプロモーションをしているのでしょうか?

鈴木:現状サイトに掲載しているカテゴリーも需要によって統廃合しているため、人気のカテゴリーが残っているとも言えます。

マーケティングの観点では、ココナラは圧倒的にSEOに強いです。利用者がインターネットでバナーやHPの制作を検索すると、ココナラが上位に表示されます。
ココナラを見ればどのような依頼もできるというPRをしていますが、ユーザーが検索する際には、その時にユーザーが求めるものに応じてココナラの商品が紹介されます。最初の接点はユーザーが必要な商品から始まる仕組みになっているのです。

近年はテレビCMを出していますが、テレビCMで特定のカテゴリーに絞ってPRしすぎると、実際のサービスとの相違が生まれてしまいます。結果的に今は「何でもできるココナラ」という訴求になっており、幅広いニーズを獲得できています。

事業や組織の変化を進めるには「バランス」が大切

大久保:事業を拡大させる際には、タイミングによって異なる課題がありますか?

鈴木:今はブランドをシフトさせるバランスが大切だと思っています。
今は総合型のモノのECのように何か必要なものがある時は、まずココナラで検索するという存在になれるようにブランディングを進めています。

変化を急ぎすぎると、ユーザーが取り残されてしまうため、ブランディングにおいても変化のバランスを重視しています。

大久保:ココナラが成長する過程で、プロダクトはどのように変化してきましたか?

鈴木:ココナラの創業当初は「ワンコインで似顔絵や占いを売るサイト」でした。今は取引の6割がビジネス制作関連で、数十万円、数百万円の取引もあります。数年前でさえ、ここまで順調に事業が展開できるとは思っていませんでした。

リクルートからベンチャー企業に転職

大久保:リクルートからベンチャー企業に飛び込んでみて、得られたものはありますか?

鈴木リクルートで10年間全力で働いたので、次は自分の経験値としてゼロイチの部分をがむしゃらにやってみたいと思いました。

ココナラが絶対うまくいくと思ったわけではありません。上場もできず失敗する可能性はありましたが、南や新明という優秀な創業者たちに揉まれながら経営する経験は必ずプラスになると思いました。
もしも会社がうまくいかなくても、この経験値があれば、どんな規模の会社でも活躍できる自信がありました。

転職して数年間は給与が下がる可能性はありますが、飛躍的な成長の可能性もあります。そこを楽しめる人はベンチャーに向いていると思います。

ベンチャー企業が抱える「理想と現実のギャップ」の解消に挑戦したい

大久保:ココナラはWebに関する仕事が多い印象でしたが、占いがメインであったり時期によって違いがあるんですね。

鈴木:私が入った6年前はトップページに掲載されている商品の7割が占いでした。

当時からマーケットプレイスを通じて「一人一人が自分らしく生きていける世の中にする」という会社のビジョンは変わりません。しかし、このビジョンを掲げているにも関わらず、実際はあらゆるサービスではなく、一部のカテゴリーが売れているという偏った状態で「理想と現実のギャップ」に私が介在する価値を感じて、ココナラへの入社を決めました。

大久保:ビジョンと現実に相違があると、多くの人は会社に不信感を抱くと思いますが、鈴木さんはココナラの未来のビジョンにかけたということですか?

鈴木:私は前職のリクルートでベンチャーマインドを持って働いていたこともあり、このギャップを改善することが私の役割だと感じました。

大久保:ベンチャーマインドを持つ方は、そのようなギャップを自分の力で解決したいと思う方が多いように感じますね。

鈴木:私はリクルートという数万人も社員がいる企業からの転職を考えていたので、すでに完成された企業への転職は考えていませんでした。それよりも、未完成の会社に飛び込みたいという気持ちでココナラに転職しました。

社員数20名規模から100名を超えるまでに大きく成長させた方法

大久保:会社が小さい時はできることが限られると思います。資金も社員も少ない中で、ココナラをどのように大きくしたのでしょうか?

鈴木課題を洗い出し、適切な優先順位をつけながら、最速最大の効果が得られることを愚直にやり続ける以外ありませんでした。

私がココナラに入社した時、ココナラには最高のエンジニアがいると聞いていました。私はプロダクトの大幅な修正を意気込み、まずは一つのLPを作ることにして社内のエンジニアに依頼したら、1か月かかると言われて驚きました。最高のエンジニアはいましたが、人数が数名しかおらず、やるべきことが山積みだったのです。
このようなこともあったので、今ある限られたリソースを使い、どれだけレバレッジを利かせた成長を実現させるかと考えると、最短で効果が大きいことを順番にやるしかないと思いました。

失敗を恐れずチャレンジしようという段階ではなく、リソースが少ない分、一つのミスも許されないような状況でしたが、そのプレッシャーが楽しかったです。

大久保:組織が大きくなる時は、社内で揉めることはよくあると思うのですが、ココナラではどうでしたか?

鈴木:ココナラの社員がまだ20名くらいの時ですが、ある男性が入社した日に、私と新明が怒鳴り合いの議論をしていました。その光景を目の当たりにした彼は、社員が創業者と怒鳴り合いの議論ができる会社はとても良い会社で、入社してよかったなと感じたそうです。
さすがにもう怒鳴り合いの議論をすることはありませんが、自由に意見を言い合える雰囲気は今でもあると思います。

組織変革の手法として「ミッションマネジメント」を採用

大久保:具体的にはどういうところから改善していきましたか?

鈴木:いきなりプロダクトの価値を変えることは難しいので、決済手段を増やしました。
知識やスキルをワンコインで売買できるというスタンスでしたが、マーケットプレイスが壊れない範囲で単価をあげることにも着手しました。

内部の組織変革としては、社内の一人一人のパフォーマンスを最大化する必要性を感じて、ミッションマネジメント(経営理念を組織の細部にまで浸透させて、社員と組織の成長に繋げること)を取り入れました。

会社の戦略が決定した時に、その戦略に紐づいて各々のセクションやメンバーでやるべきことを確認し、それを達成すると会社も社員も成長するという考え方を伝えました。

大久保:企業戦略の全体図を見せ、各々の役割を認識させたということですか?

鈴木:人事制度、KPIマネジメントなどを一気通貫して組織的にやっていきました。

大久保:全体像から組織への落とし込みはどのように作っていったのでしょうか?

鈴木:私個人で作ったものを創業者の南や新明に見せて、承認をもらって実行しました。それぞれのメンバーが自分の得意なことを主体的にやる雰囲気のある会社なので、私もできることを積極的に実行しました。

上場した「ココナラ」が今後目指すゴール

大久保:上場して変わったことはありますか?

鈴木:上場の目的は会社とサービスに信頼を感じてもらうことでしたが、実際に上場して変わったことは2つあります。

1つ目の変化は、上場したことで利用者の期待値が上がったと感じます。大企業にも利用していただくことも増えました。

2つ目の変化は、内部的には採用の応募数も、内定を受諾していただける確率も上がったことです。
昔は応募があるだけでありがたかったんですが、上場したことで少しずつココナラのブランド力や採用力が強化され、人材の質やココナラのカルチャーにあった方を選ばせていただくようになりました。

大久保:これから先ココナラが目指しているものをお聞かせください。

鈴木ココナラの最終的なゴールは「全てが揃うマーケットプレイス」になることです。ココナラに来れば困ったことが解決する世界にしたいです。
我々は『一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくる』というビジョンを掲げています。「一人ひとりが」という部分を大切に、出品サイドではプロでもアマチュアでも個人でも法人でも、購入サイドではビジネス目的でもプライベート目的でもどんな利用でも応援したいと思っています。

最終的には全て実現したいと思いますが、今はビジネス利用が伸びているのでココナラビジネスに注力したいと思っています。段階に応じて、色々な部分を成長させていきたいです。

CEOの鈴木氏がココナラで情熱を注ぐ事業

大久保:鈴木さんが情熱を注ぐ対象は事業のどのあたりにありますか?

鈴木:私はココナラのビジョンにとても共感しています。「自分らしいストーリー」とは、自分らしさを体現することだと考えています。

ココナラを通じて、出品者は自分の持つスキルや経験を誰かのために生かすことができます。置かれている環境や場所に関わらず、誰もが好きな時に自分らしさを体現しながら収入を得ることもできます。
購入者にも様々なケースでココナラを利用してもらえると思います。

独立や起業を考えると、必ず資本や仲間の問題が出てきます。そんな時にココナラを通じて、オンラインで有力なスキルホルダーと繋がることができれば、大きな資本もなく、必要な人材を集めて起業できます。
個人が自分らしさを体現するために、社会や個人と繋がっていくための手段がフェアに提供されている世界観を作りたいと思い、ココナラの事業全体に情熱を注いでいます。

大久保:鈴木さんが考える社会が実現するとどうなると思いますか?

鈴木人生100年時代で寿命は伸びていますが、労働人口は減っています。
働きたい、活躍したいけれどチャンスに恵まれていない労働力が無数にあると思います。ココナラのプラットフォームを通じて、活躍し続ける気持ちがある人全員が好きなことで輝ける世界にしたいです。

今後更なる成長が見込めるスキルシェア市場の可能性

大久保:事業の伸ばし方についてはどのようにお考えですか?

鈴木:コアバリューとしてマッチングプラットフォームをずらすことは考えていません。
まだオンライン化していない市場を含めると、スキルシェア市場は何十倍にも成長する可能性があります。しばらくは今いるスキルシェア領域に腰を据えてやっていきたいです。
大久保:今いる場所がすでに、伸び率が高い成長市場にいると感じているんですね。

鈴木:そうです。スキルシェア市場が落ちることはあるかもしれません。しかし、世の中にあるサービス(業務)のオンライン化率は10倍、20倍になると思うので、スキルマーケットはまだまだポテンシャルが高いと思います。

大久保:最後に創業された方へメッセージをお願いします。

鈴木:初めから成功するアイディアを生み出すことは難しいと思います。私も思い通りのシナリオで進んだことは一度もありません。
軌道修正しながら選んだ道を正解にするという自身の力を試される場面はとても多かったので、共に頑張りましょう!困ったことがあれば、ぜひココナラを利用してください!

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(取材協力: 株式会社ココナラ 代表取締役社長CEO 鈴木 歩
(編集: 創業手帳編集部)



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