創業手帳が選ぶ起業経営ニュース 2024年8月28日 注目のニュース 解説入り 創業手帳編集部 IVS厳選セッション「キーエンス流営業」「元DeNA会長の裏話」伝説の証券マン・丸尾さんのIVS案内 IVSではローンチパッドや東大松尾教授の登場、岸田首相のメッセージなど派手なセッションが繰り広げられました。 しかし、ディープなテーマを掘り下げたセッションも魅力です。 そこで、今回は元大和証券の丸尾浩一さんがモデレートしたIVSの2つのセッションをご紹介いたします。 キーエンス元社長の佐々木さんや元DeNA会長・エクサウィザーズ社長の春田さんなど大物が内情を話してくださいました。普段聞けない貴重なセッションの内容を一部お届けいたします。 関連記事 IVSの進化・IVS京都2024現地レポート&島川敏明代表インタビュー 「IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO」優勝は物流自動化のRENATUS ROBOTICS安藤 奨馬さん:賞金1000万円獲得! おすすめセッションその1「営業を学ぶ」 激レア・キーエンス出身社長セッション「起業するなら営業を学べ」 まず、起業すると営業がテーマになります。営業を掘り下げたのが、キーエンス出身の社長が一同に会するキーエンス出身者セッションです。 キーエンスは社員の平均年収で長らく日本一に君臨しています。時価総額も日本でトップ3に入ることが多いです。時価総額上位のトヨタや東京三菱に比べると、社員数と社歴が驚異的に少ないです。そのキーエンスの高収益・高年収の鍵は営業力と言われていますが、その合理的な営業手法が注目を浴びています。 キーエンスは長らくメディア露出を避けてきたこともあり、情報が少ないです。堅実な経営を目指し、目立つ行いを避け、長らく秘密のベールに包まれてきました。そんなキーエンスのOBが一同に介してセッションするのは珍しいです。「実際に役立つ」おすすめセッションです。 キーエンス元社長・佐々木さん「まずはニッチから」 キーエンス元社長の佐々木さんが登壇したのも注目です。佐々木さんは現在、開発テスト業務で急成長した株式会社シフト(プライム上場)の副社長を務めています。東京エレクトロンの社外取締役も務めています。 まずキーエンスの真髄、思考ですが、社名の通り「キーオブサイエンス」、全てが「科学」的であり、合理的な思考がベースにあります。 キーエンスは今でこそ大企業ですが、製品はニッチで狭い領域でも価値があるものを作り、価格を保つことが大事だと言います。キーエンスでさえもニッチからなので、スタートアップは狭く深い領域から始めることが大事と言えます。 営業は個人差がつきにくい? キーエンスの合理性は営業にも現れています。営業が強い会社というと「気合」「強烈な個人技」を連想しますが、キーエンスの場合、緻密な合理化、型(カタ)化が貫かれています。再現性の低い個人技よりも組織的な動きを重視します。 キーエンス出身で営業組織を構築するサービスを展開するグランドセントラルの北口拓実さんによると、短期間に300人の社員を抱えるまでに成長しましたが、徹底した型化に驚いたそうです。キーエンスに新卒で入社する際、個人間の差が付くだろうと想像していたが、入社してみて意外だったのは「営業は個人間で差があまりつかない」ということです。 また、営業が強い会社というとインセンティブや接待も多そうですが、キーエンスにはインセンティブや接待は無いと言います。 営業の軸になるのが顧客・商品・ソリューションのデータベースとCRMを徹底して管理しており、そのCRMのデータを見れば引き継ぎは1日で終わるとのことです。 部品と完成品 他にもキーエンス出身の若手起業家でワンアクトの浅野裕亮さんもセッションに参加しました。ワンアクトはAIのソースコードなどの部品に特化したプラットフォームを展開しており、日本・海外でグローバルに展開しています。同社ではAIのソースコードというAIの「部品」を流通させています。実はパーツに特化しているビジネスモデル、発想もキーエンス流だと言います。 完成品になると全体の完成度を担保するのが難しくなり、事業が複雑になります。一方で部品に特化した方が事業をしやすいと言います。完成品の方が派手で、部品メーカーの方が地味にも見えますが、例えば時価総額で世界を席巻するエヌビディアも部品メーカーです。 部品メーカーというと、言われた通りに作り、値段も買い叩かれているイメージがありますが、キーエンスの場合、部品の提供だけでなく顧客の問題解決を行っています。安く作る下請けではなく、ニーズに応えるので価格を維持でき高収益につながっています。 「徹底する」「考え抜く」それがキーエンス流 キーエンスOBの中でも強烈なインパクトを残したのがVALX(バルクス)の只石さんです。VALXはメジャーリーガーも使っているプロテイン飲料で大ヒットを飛ばしています。 キーエンスとは全く畑違いの領域で、他のOBとも違う雰囲気ですが、「徹底して考える」「当たり前のマーケ理論ではない」徹底したゲリラ戦がVALXの成功要因であり、会場に伝えたいメッセージだと言います。当たり前のマーケティング手法などは誰でもやっています。 しかし、顧客のニーズのその先にある驚くような切り口を徹底して考え抜く事が大事であり、それがキーエンスから学んだ皆さんに伝えたいエッセンスとのことでした。 キーエンスOBが語る「営業」ポイント! ・営業も科学 ・徹底的なカタ化。ゆえに営業の個人差はそこまでつきにくい ・CRMが命 ・インセンも接待も不要 ・売上より一人当たり利益を上げる ・セールスがマーケッターになれるかが鍵 ・量が大事。量の確保が質につながる ・完成品ではなくパーツに特化するのも手 ・徹底して顧客のニーズを考え抜く モデレーター・元大和証券の丸尾さんの感想 「表に出にくいキーエンス出身者のセッション。特に元社長の佐々木さんが出てきたのは驚きでした。 スタートアップもセールスを無視してなかなか成功しにくいです。キーエンスの思考や営業手法を学んでみると成長の気づきが多くあるかもしれません。個人的には接待不要というのは耳が痛い話でしたね。」 おすすめセッションその2「スタートアップの裏側を学ぶ」 DeNA元会長・エクサウィザーズ社長春田さんの裏話セッション「黒子の流儀」 続いて紹介するのは、DeNA元会長で連続してIPOを経験している春田さんのセッションです。 銀行マンから創業間もないDeNAに飛び込んだのが春田さんです。著作『黒子の流儀』にも生々しい話が書かれており、スタートアップにおすすめの本です。 春田さんは元々三井住友銀行出身ですが、途中からスタートアップ、DeNAに飛び込むことになります。まだ怪しいマンションの一室でやっていた時期です。今でこそDeNAはゲームの会社として認知されていますが、ビッダーズのようなオークション・ECサイトの時代です。 そんなDeNAの転機になったのが横浜ベイスターズの買収です。当時の親会社であったTBSが売りたがっていました。今なら買い手が殺到していたことでしょうが、当時はそういう時代ではありませんでした。球団を買うという意味と同時に、広告費を100億円程度使っていたのでそちらでもペイできると踏んでいたそうです。また、意外にも先行していた同じIT企業の楽天の反対にあったそうです。球団を持つということがそれだけインパクトがあり特別なものだということでしょう。 球団買収は何度も流れましたが、三度目の正直で実現しました。当時は20億円の赤字でしたが、今では黒字を稼ぎ出しています。当初はIT系の会社の利益をスピードを持って追うという風土と、球団で職員の性質に違いがあり戸惑ったといいます。 DeNA創業者の南場さんの夫ががんになり看病のために社長の座を降ります。あわせて守安さんへバトンタッチしました。その後、春田さんは守安元社長をサポートしていました。 その後、春田さんは会長退任後、米国に渡り起業します。医療系のスタートアップを創業し、メドピアに売却します。その後、エクサウィザーズを創業しIPOに至ります。エクサウィザーズはエンジニアと営業が半々だといいます。ビジネスとテクノロジーのバランスが取れています。連続してスケールするビジネスを手掛けている春田さんから学べることは多いです。 春田さんから学ぶポイント! ・銀行を辞める選択をする人が少ないが無い時代に、スタートアップに飛び込んだ ・面白いという直観を大切に ・球団の買収は何度も流れた。諦めない ・成功に満足せず、新しいチャレンジをし続けよう ・ビジネスだけ、テックだけではなく両方揃ってビジネスはスケールする モデレーター・元大和証券の丸尾さんの感想 「ゲーム課金はこれ以上ないといえるビジネスモデルです。継続性と従量、ファンの拡大などビジネスの成功要素が詰まっています。 ゲームの考え方は他の分野の起業家にも参考になるかもしれません。 春田さんは畑違いでも当て続けています。違うステージでも成功できる本物の起業家ですね。」 創業手帳代表・大久保の解説 IVSのディープなトークセッションを2つ選んで紹介しました。両方とも「一見、地味だが本質」に迫った秀逸なセッションでした。 実際に生で聞くことで、より深く情報を浴びることができます。こうした場でヒントとネットワークを得ていきましょう。 読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。 カテゴリ イベント 関連タグ DeNA IVS キーエンス セッション この記事を読んだ方が興味をもっている記事 一人会社と個人事業主の違いとは。一人でも法人にするメリット・デメリット 事業計画書とは?メリットや書き方、記入例など解説!無料テンプレートつき。 家族を従業員にする4つのメリットと注意するべきポイント 合同会社設立マニュアル|流れや費用、必要書類を徹底解説 【2024年最新】クラウドファンディングのやり方とは?仕組み・種類・始め方の手順ガイド 酒類販売業免許とは?お酒の販売には免許が必要!飲食店開業のための酒販免許取得を専門家が解説 創業関連の最新情報を毎日お届け! イベントの創業手帳ニュース 【東京都】「第7回 N E W CONFERENCE」女性経営者等活躍に向けた会議(11/25開催) (2024/9/10) 全国有力企業と中小機構のコラボレーション支援プログラム説明会「販路開拓サポート DAY 秋」海外編・国内編(9月12日~13日オンライン開催) (2024/8/29) IVS厳選セッション「キーエンス流営業」「元DeNA会長の裏話」伝説の証券マン・丸尾さんのIVS案内 注目のニュース 解説入り (2024/8/28) スタートアップワールドカップ九州大会:優勝は医薬品開発のStapleBio!熊本で開催 注目のニュース 大久保の視点 (2024/8/27) 【9/8締切】「VC Unlocked: Tokyo 2024」VCやスタートアップ投資に関する包括的なレクチャーを実施 (2024/8/26) 【東京都】「はたらく女性スクエア」を青山に開設 オープニングイベントを9/11に開催 (2024/8/26) 第5回「アトツギ甲子園」開催 キックオフイベント「アトツギSUMMER CAMP」を9月9日・10日に開催 (2024/8/3) 【9/2締切】「NIKKEI THE PITCH GROWTH」全国のスタートアップ・アトツギベンチャーを対象にしたピッチコンテスト (2024/8/3) 公正取引委員会によるフリーランス法説明会 全国9か所で開催 (2024/7/22) 世界最大級のビジネスコンテスト・スタートアップワールドカップ東京大会優勝はDigital Entertainment Asset山田耕三さん 注目のニュース 大久保の視点 解説入り (2024/7/19) キャンペーン 女性対象 有望企業 トレンド 便利なサービス イベント 制度改正 公募 関連するタグのニュース ピッチイベント「IVS2021 LAUNCHPAD NASU」 決勝登壇者14名が決定 2021年11月12日、IVS株式会社は、ピッチイベント「IVS2021 LAUNCHPAD NASU」の登壇者14名が決定したことを発表しました。 「IVS2021 LAUNCHPAD NASU」は… IVSの新イベント「LAUNCHPAD SaaS」会場レポート:優勝はカミナシ、準優勝はJunify 初のテーマ特化型!「LAUNCHPAD SaaS」の様子をお伝えします。 2007年の初開催から通算エントリーは5,000社を超え、日本最大級のピッチコンテストとして 数々のスタートアップが熱戦を繰り… ピッチコンテスト「LAUNCHPAD Entertainment」 プレイベントが6月18日21時から開催 2021年6月18日、株式会社インフィニティベンチャーズサミットは、「LAUNCHPAD Entertainment」に出場する決勝進出者と、プレイベントの開催を発表しました。 インフィニティベンチャ… スタートアップカンファレンス「IVS2021 NASU」 11/17・18・19に開催決定 2021年10月25日、株式会社インフィニティベンチャーズサミットは、「IVS2021 NASU」を、2021年11月17日(水)〜19日(金)に開催することを発表しました。 「IVS」は、2007年… 「インフィニティベンチャーズサミット」がピッチ・コンテスト「LAUNCHPAD」に登壇するスタートアップの募集を開始 株式会社インフィニティベンチャーズサミットは、「LAUNCHPAD」に登壇するスタートアップの募集を開始したことを発表しました。 「LAUNCHPAD」は、経営者が集う完全招待制カンファレンス「Inf… 大久保の視点 スタートアップワールドカップ九州大会:優勝は医薬品開発のStapleBio!熊本で開催 世界最大級のビジネスコンテスト「スタートアップワールドカップ」の九州予選である「KYUSYU REGIONAL 2024」が、2024年8月27日(火)に開… (2024/8/27) 「スタートアップビジネスMBA講座」明治大学MBAの執筆陣と出身起業家が解説 創業手帳代表も執筆陣に参加。注目のスタートアップ本 起業家教育が近年注目を浴びています。しかし、スタートアップはまだ新しい領域であり、不確実性も高く、学問に… (2024/7/29) 世界最大級のビジネスコンテスト・スタートアップワールドカップ東京大会優勝はDigital Entertainment Asset山田耕三さん 世界最大級のビジネスコンテスト「スタートアップワールドカップ」の東京予選である「TOKYO REGIONAL 2024」が、2024年7月19日(金)に開催… (2024/7/19) 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら 注目のニュース IVS厳選セッション「キーエンス流営業」「元DeNA会長の裏話」伝説の証券マン・丸尾さんのIVS案内 スタートアップワールドカップ九州大会:優勝は医薬品開発のStapleBio!熊本で開催 SPONSORED 8/31まで!IKEA Business Network入会で50社さまに5万円のデジタルギフトをプレゼント! 最新の創業手帳ニュース 家計診断・相談サービス「オカネコ」を運営する「400F」が11.4億円調達 (2024/9/13) AI駆動型の細胞分析技術を搭載したイメージングセルソーター「VisionSort」を手がける「シンクサイト」が21.5億円調達 (2024/9/13) 次世代キャリア支援プラットフォーム「BaseMe」を運営する「アレスグッド」が4.6億円調達 (2024/9/13) 【日本商工会議所】「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」 (2024/9/13) 「第11回ロボット大賞」受賞製品発表 経済大臣賞:ファナック 中企業庁長官賞:ハーモテック (2024/9/13) 保育総合ICT「ルクミー」シリーズを展開する「ユニファ」が資金調達 「MIXI」と資本業務提携 (2024/9/12) AIを用いた不正検知サービス・サイバーセキュリティサービスを提供する「ChillStack」が資金調達 (2024/9/12) ごみ処理問題のサステナブルな解決に取り組む「JOYCLE」が資金調達 (2024/9/12) 【東京都・最大100万円助成金】令和6年度「第2回中小企業デジタルツール導入促進支援事業」 (2024/9/12) 9月9日 青果物(野菜・果実)の卸売価格速報値 (2024/9/12) 記事についてのお問い合わせはこちら 創業時に役立つサービス特集 税理士との二人三脚で伸び伸びと経営を 帳簿とは? 帳簿の付け方はエクセル・手書き・会計ソフトどれがいいの? 飲食店でモバイルオーダーを導入するメリットは?効果・デメリットもあわせてご紹介 創業期から税理士をつける3つのメリットと適切な見つけ方を解説 セルフブランディングに役立つファイル転送サービスとは? 中小企業経営者・個人事業主に大打撃? 「インボイス」を今から知っておくべきワケ 注目インタビュー記事 cynaps 岩屋雄介|IoTで建物の省エネ・脱炭素を実現。スタートアップこそ大手と戦わない戦略が重要 パーソナルベンチャーキャピタル チカイケ 秀夫|原体験を掘り起こしてスタートアップのブランディングを支援 えと菜園 小島 希世子|「農業×ホームレス」の可能性とは? テラスマイル 生駒 祐一|【第一回】「日本の農業を世界に仕掛ける」新進気鋭のベンチャーに問う ブレイブテクノロジー 磯本 悟|LINEミニアプリ「matoca」「yoboca」で社会の時(とき)をデザインする すごい改善 吉田 拳|Excelで業務効率化を推進!たった1日で誰でも即戦力になれるコツ
創業手帳が選ぶ起業経営ニュース
2024年8月28日 注目のニュース 解説入りIVS厳選セッション「キーエンス流営業」「元DeNA会長の裏話」伝説の証券マン・丸尾さんのIVS案内
IVSではローンチパッドや東大松尾教授の登場、岸田首相のメッセージなど派手なセッションが繰り広げられました。
しかし、ディープなテーマを掘り下げたセッションも魅力です。
そこで、今回は元大和証券の丸尾浩一さんがモデレートしたIVSの2つのセッションをご紹介いたします。
キーエンス元社長の佐々木さんや元DeNA会長・エクサウィザーズ社長の春田さんなど大物が内情を話してくださいました。普段聞けない貴重なセッションの内容を一部お届けいたします。
IVSの進化・IVS京都2024現地レポート&島川敏明代表インタビュー
「IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO」優勝は物流自動化のRENATUS ROBOTICS安藤 奨馬さん:賞金1000万円獲得!
おすすめセッションその1「営業を学ぶ」
激レア・キーエンス出身社長セッション「起業するなら営業を学べ」
まず、起業すると営業がテーマになります。営業を掘り下げたのが、キーエンス出身の社長が一同に会するキーエンス出身者セッションです。
キーエンスは社員の平均年収で長らく日本一に君臨しています。時価総額も日本でトップ3に入ることが多いです。時価総額上位のトヨタや東京三菱に比べると、社員数と社歴が驚異的に少ないです。そのキーエンスの高収益・高年収の鍵は営業力と言われていますが、その合理的な営業手法が注目を浴びています。
キーエンスは長らくメディア露出を避けてきたこともあり、情報が少ないです。堅実な経営を目指し、目立つ行いを避け、長らく秘密のベールに包まれてきました。そんなキーエンスのOBが一同に介してセッションするのは珍しいです。「実際に役立つ」おすすめセッションです。
キーエンス元社長・佐々木さん「まずはニッチから」
キーエンス元社長の佐々木さんが登壇したのも注目です。佐々木さんは現在、開発テスト業務で急成長した株式会社シフト(プライム上場)の副社長を務めています。東京エレクトロンの社外取締役も務めています。
まずキーエンスの真髄、思考ですが、社名の通り「キーオブサイエンス」、全てが「科学」的であり、合理的な思考がベースにあります。
キーエンスは今でこそ大企業ですが、製品はニッチで狭い領域でも価値があるものを作り、価格を保つことが大事だと言います。キーエンスでさえもニッチからなので、スタートアップは狭く深い領域から始めることが大事と言えます。
営業は個人差がつきにくい?
キーエンスの合理性は営業にも現れています。営業が強い会社というと「気合」「強烈な個人技」を連想しますが、キーエンスの場合、緻密な合理化、型(カタ)化が貫かれています。再現性の低い個人技よりも組織的な動きを重視します。
キーエンス出身で営業組織を構築するサービスを展開するグランドセントラルの北口拓実さんによると、短期間に300人の社員を抱えるまでに成長しましたが、徹底した型化に驚いたそうです。キーエンスに新卒で入社する際、個人間の差が付くだろうと想像していたが、入社してみて意外だったのは「営業は個人間で差があまりつかない」ということです。
また、営業が強い会社というとインセンティブや接待も多そうですが、キーエンスにはインセンティブや接待は無いと言います。
営業の軸になるのが顧客・商品・ソリューションのデータベースとCRMを徹底して管理しており、そのCRMのデータを見れば引き継ぎは1日で終わるとのことです。
部品と完成品
他にもキーエンス出身の若手起業家でワンアクトの浅野裕亮さんもセッションに参加しました。ワンアクトはAIのソースコードなどの部品に特化したプラットフォームを展開しており、日本・海外でグローバルに展開しています。同社ではAIのソースコードというAIの「部品」を流通させています。実はパーツに特化しているビジネスモデル、発想もキーエンス流だと言います。
完成品になると全体の完成度を担保するのが難しくなり、事業が複雑になります。一方で部品に特化した方が事業をしやすいと言います。完成品の方が派手で、部品メーカーの方が地味にも見えますが、例えば時価総額で世界を席巻するエヌビディアも部品メーカーです。
部品メーカーというと、言われた通りに作り、値段も買い叩かれているイメージがありますが、キーエンスの場合、部品の提供だけでなく顧客の問題解決を行っています。安く作る下請けではなく、ニーズに応えるので価格を維持でき高収益につながっています。
「徹底する」「考え抜く」それがキーエンス流
キーエンスOBの中でも強烈なインパクトを残したのがVALX(バルクス)の只石さんです。VALXはメジャーリーガーも使っているプロテイン飲料で大ヒットを飛ばしています。
キーエンスとは全く畑違いの領域で、他のOBとも違う雰囲気ですが、「徹底して考える」「当たり前のマーケ理論ではない」徹底したゲリラ戦がVALXの成功要因であり、会場に伝えたいメッセージだと言います。当たり前のマーケティング手法などは誰でもやっています。
しかし、顧客のニーズのその先にある驚くような切り口を徹底して考え抜く事が大事であり、それがキーエンスから学んだ皆さんに伝えたいエッセンスとのことでした。
・徹底的なカタ化。ゆえに営業の個人差はそこまでつきにくい
・CRMが命
・インセンも接待も不要
・売上より一人当たり利益を上げる
・セールスがマーケッターになれるかが鍵
・量が大事。量の確保が質につながる
・完成品ではなくパーツに特化するのも手
・徹底して顧客のニーズを考え抜く
モデレーター・元大和証券の丸尾さんの感想
「表に出にくいキーエンス出身者のセッション。特に元社長の佐々木さんが出てきたのは驚きでした。
スタートアップもセールスを無視してなかなか成功しにくいです。キーエンスの思考や営業手法を学んでみると成長の気づきが多くあるかもしれません。個人的には接待不要というのは耳が痛い話でしたね。」
おすすめセッションその2「スタートアップの裏側を学ぶ」
DeNA元会長・エクサウィザーズ社長春田さんの裏話セッション「黒子の流儀」
続いて紹介するのは、DeNA元会長で連続してIPOを経験している春田さんのセッションです。
銀行マンから創業間もないDeNAに飛び込んだのが春田さんです。著作『黒子の流儀』にも生々しい話が書かれており、スタートアップにおすすめの本です。
春田さんは元々三井住友銀行出身ですが、途中からスタートアップ、DeNAに飛び込むことになります。まだ怪しいマンションの一室でやっていた時期です。今でこそDeNAはゲームの会社として認知されていますが、ビッダーズのようなオークション・ECサイトの時代です。
そんなDeNAの転機になったのが横浜ベイスターズの買収です。当時の親会社であったTBSが売りたがっていました。今なら買い手が殺到していたことでしょうが、当時はそういう時代ではありませんでした。球団を買うという意味と同時に、広告費を100億円程度使っていたのでそちらでもペイできると踏んでいたそうです。また、意外にも先行していた同じIT企業の楽天の反対にあったそうです。球団を持つということがそれだけインパクトがあり特別なものだということでしょう。
球団買収は何度も流れましたが、三度目の正直で実現しました。当時は20億円の赤字でしたが、今では黒字を稼ぎ出しています。当初はIT系の会社の利益をスピードを持って追うという風土と、球団で職員の性質に違いがあり戸惑ったといいます。
DeNA創業者の南場さんの夫ががんになり看病のために社長の座を降ります。あわせて守安さんへバトンタッチしました。その後、春田さんは守安元社長をサポートしていました。
その後、春田さんは会長退任後、米国に渡り起業します。医療系のスタートアップを創業し、メドピアに売却します。その後、エクサウィザーズを創業しIPOに至ります。エクサウィザーズはエンジニアと営業が半々だといいます。ビジネスとテクノロジーのバランスが取れています。連続してスケールするビジネスを手掛けている春田さんから学べることは多いです。
・面白いという直観を大切に
・球団の買収は何度も流れた。諦めない
・成功に満足せず、新しいチャレンジをし続けよう
・ビジネスだけ、テックだけではなく両方揃ってビジネスはスケールする
モデレーター・元大和証券の丸尾さんの感想
「ゲーム課金はこれ以上ないといえるビジネスモデルです。継続性と従量、ファンの拡大などビジネスの成功要素が詰まっています。
ゲームの考え方は他の分野の起業家にも参考になるかもしれません。
春田さんは畑違いでも当て続けています。違うステージでも成功できる本物の起業家ですね。」
創業手帳代表・大久保の解説
IVSのディープなトークセッションを2つ選んで紹介しました。両方とも「一見、地味だが本質」に迫った秀逸なセッションでした。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。実際に生で聞くことで、より深く情報を浴びることができます。こうした場でヒントとネットワークを得ていきましょう。
イベントの創業手帳ニュース
関連するタグのニュース
2021年11月12日、IVS株式会社は、ピッチイベント「IVS2021 LAUNCHPAD NASU」の登壇者14名が決定したことを発表しました。 「IVS2021 LAUNCHPAD NASU」は…
初のテーマ特化型!「LAUNCHPAD SaaS」の様子をお伝えします。 2007年の初開催から通算エントリーは5,000社を超え、日本最大級のピッチコンテストとして 数々のスタートアップが熱戦を繰り…
2021年6月18日、株式会社インフィニティベンチャーズサミットは、「LAUNCHPAD Entertainment」に出場する決勝進出者と、プレイベントの開催を発表しました。 インフィニティベンチャ…
2021年10月25日、株式会社インフィニティベンチャーズサミットは、「IVS2021 NASU」を、2021年11月17日(水)〜19日(金)に開催することを発表しました。 「IVS」は、2007年…
株式会社インフィニティベンチャーズサミットは、「LAUNCHPAD」に登壇するスタートアップの募集を開始したことを発表しました。 「LAUNCHPAD」は、経営者が集う完全招待制カンファレンス「Inf…
大久保の視点
世界最大級のビジネスコンテスト「スタートアップワールドカップ」の九州予選である「KYUSYU REGIONAL 2024」が、2024年8月27日(火)に開…
創業手帳代表も執筆陣に参加。注目のスタートアップ本 起業家教育が近年注目を浴びています。しかし、スタートアップはまだ新しい領域であり、不確実性も高く、学問に…
世界最大級のビジネスコンテスト「スタートアップワールドカップ」の東京予選である「TOKYO REGIONAL 2024」が、2024年7月19日(金)に開催…
注目のニュース
最新の創業手帳ニュース