注目のスタートアップ

株式会社AGE technologies 塩原 優太|不動産の相続手続きのDX事業が注目の企業


不動産の相続手続きを効率化するエイジテック事業の展開で注目されるのが、塩原優太さんが2018年に創業した株式会社AGE technologiesです。

エイジテックという言葉をご存じでしょうか?高齢者の生活や健康をサポートするテクノロジーや、これから迎える超高齢社会における課題を解決するテクノロジーを指す言葉です。
現在、日本は超高齢化社会を迎えようとしており、それに伴う社会的な課題も浮上し出しています。
例えば年金支給や医療コスト増加の問題、介護人口の増加とそれを支える人材不足、独居老人の見守り問題、相続問題などがそうです。

中でも相続に関することについては、「相続権」が発生した時点からバタバタと手続きが開始されるものであり、なかなか一筋縄ではいかないものです。
相続人自身もそれなりの歳に達している上、一定期限内にやらねばならない手続きがあったり、手続きそのものが多岐にわたっており、煩雑・複雑・面倒が多いといったことから、家族間でのいさかいやもめごとに発展するケースも散見されます。

特に『不動産相続』は個人の問題としてだけではなく、社会問題となっている空き家問題や犯罪誘発問題にも直結する大きな課題でしょう。
現代では核家族化が進んでいるため、相続人家族が相続不動産と遠く離れて暮らしていることも多く、従来までは手続き期限も設けられていなかったことも相まって、何十年も放置されたままということもあります。
その結果、家はボロボロに朽ち果て危険な状態になり、土地は荒れ、害虫や異臭の発生や犯罪の温床となり その地域全体に悪影響を及ぼします。
また、年月が経つほど相続する際の煩わしさが増大し、相続人自身の経済的・精神的負担も大きくなります。

国としてもこの問題に対し、ついに相続登記の義務化に関する法案を策定しました。令和6年4月1日からは相続が発生した日より3年以内に登記手続きを取ることが義務化されるようになるのです。

こうした状況の中で、不動産相続をよりスムーズに完結させるエイジテック事業に大きな注目が集まっています。

株式会社AGE technologiesの塩原優太さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

相続に伴って発生した不動産の名義変更手続きがワンストップで完結する「そうぞくドットコム不動産」というサービスを提供しております。
利用者の平均年齢が60歳という、エイジテック分野のサービスとなります。一般の方の相続手続き向けに事業展開しており、1回の手続きにつき、定額69,800円(税別)の価格で提供しています。特徴は大きくわけて3つあります。

1つ目は、必要書類の収集に関して、役所に行かなくても家で待つだけで完了できる点です。相続手続きでは、戸籍謄本や住民票、不動産の固定資産評価証明書など様々な書類集めが発生し、特に戸籍などは「本籍地でしか取得できない」などのペインが発生します。弊社が全国の市区町村から代行取得することでこれらを解決しています(書類の収集状況などは、スマホからリアルタイムでいつでも閲覧可能です)。

2つ目は、手続きに必要な申請書類一式は、ネットで簡単に作成可能という点です。不動産の相続手続きでは、登記申請書、遺産分割協議書、相続関係説明図など、ご自身で作成しなければならない申請書類が複数あります。書類のテンプレートをネット上から取得できますが、実際には状況に応じて何通りものパターンがあるなど、書類の作成は簡単でありません。そうぞくドットコムでは、利用者がシステムに従って必要事項を入力するだけで、申請書類一式をわずか数秒で自動作成できるサービスを提供しています。

最後の特徴は、全国の不動産にて利用可能という点です。すでに全国での利用実績があり、例えば「離れた実家の相続手続き」などが発生した場合でも、現地まで行かずにリモートで手続きを終えることが可能です。また土地、家屋、マンション、田畑、山林など、全ての不動産の種別に対応しております。

・どのような方にこのサービスを使って欲しいですか?

(1)時間が取れず、手間なく相続手続きを終わらせたい方:相続手続きでは故人様との関係を証明するため、ご自身やご家族、また故人様の出生から死亡までの戸籍一式など、たくさんの書類を集める必要があります。また書類を集めて終わりではなく、それらの書類をもとに登記申請書や遺産分割協議書など作成しなければならない書類もいくつかあります。これらの手続きを日々お仕事しながら隙間時間で作業というかたちだと、3ヶ月〜半年ほどかかることもあり、非常に手間がかかります。そうぞくドットコム不動産をご利用いただくことでこのような手間をゼロにすることが可能で。基本的には家で待つだけ、役所とのやり取り、窓口までいく必要もなくなります。

(2)遠方地域の不動産手続きを行う方:例えばご両親の相続が発生した際に、いま住んでいる場所とは離れた遠方に実家があるケースも多いです。相続登記では「不動産が所在する管轄の法務局」に書類を提出する必要がありますが、相続手続きのために、何度も遠方地域へ帰るのは時間的にも、交通費など含めた費用の面でも負担が大きいです。そうぞくドットコム不動産をご利用いただくことで、「リモートで手続きを完了させる」といった体験が可能で、時間・費用の面で効率化を図ることが可能です。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

AGE technologiesは、“AgeTech(エイジテック)”と呼ばれる、高齢社会の課題解決のためのテクノロジー分野を、中長期的に当社が取り組む最大市場としています。AgeTechは金融、住宅、医療、生活・サービスなど複数の事業ドメインから構成され、高齢者だけでなく、その家族など、世代を超えた人々や地域社会によって成り立つ分野です。私たちはまずはDXによるインパクトが最も大きい「相続手続き」において、テクノロジーを通じた変革(ゲームチェンジ)を行っていきます。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

サービスのPFM、特に利用ユーザーに合わせたUI・UXの設計です。
そうぞくドットコムの利用ユーザーは平均年齢が58歳です。効率化や手続きのDXを目指すうえで「いかにテクノロジーを駆使できるか」は重要な点です。しかし、メインターゲットは普段からWebサービスにたくさん触れている方々ではないため、ただ「Webに置き換えただけ」では、使いづらいサービスとなってしまいます。創業当初は「Web完結」にこだわって、紙やアナログなコミュニケーションをできるだけ排除するUXで開発を進めてきました。しかし、その結果ユーザーの離脱が大きく、サービスがなかなかグロースしませんでした。そこで、一部のユーザー体験を「あえてアナログに戻す」だったり、「あえて紙の申込書やパンフレットを発行する」などの工夫を実施しました。自分たちがメインターゲットとしている方々に違和感なくご利用いただけるかという点を意識することで、ようやくサービスの利用者数が増えていきました。今後も「デジタルとアナログを組み合わせた、適切なユーザー体験の設定」は、我々が取り組むエイジテック領域においては非常に重要な点であると認識しております。

・今後どういう会社、サービスにしていきたいですか?

現在は、”不動産の相続手続き”という分野の効率化に取り組んでいます。しかし相続手続きは不動産だけではありません。預貯金の手続き、証券や生命保険、相続税の申告手続きなど、あらゆる相続手続きに対応する予定で、より便利なサービスを目指していきます。また、相続は手続きをして終わりではありません。一度相続を経験したタイミングでも、両親のどちらかがまだご存命だったり、次のご自身の相続を考えたりなど、世代を超えて残り続ける問題が、相続です。この手続き後のユーザーに対して、相談・解決できるようなサービスを展開していく予定です。また相続手続きでは、手続きを行うエンドユーザーだけでなく、それに対応する事業者側の負担も大きくなっています。そうぞくドットコムの運営を通じて培った、デジタル&オペレーションを通じて、事業者側の課題を解決するソフトウェアを提供する予定です。このように、toC、toBに拘らず相続バリューチェーンのあらゆるところに”そうぞくドットコム”が介在することで、超高齢社会の中で起こるあらゆる問題を解決し、その結果として”高齢者とのその家族に纏わるデータを、最も多く保有するテックカンパニー”を目指します。

・今の課題はなんですか?

採用です。エイジテック領域で、No.1のテックカンパニーを目指すには、まだまだ仲間が足りません。エンジニアやデザイナーなどサービスやプロダクトを創る人たち、またそうぞくドットコムを日本中の人たちが知るサービスにするため、マスに向けた戦略的な施策が打てるマーケター、またビジョンに共感いただけるとパートナー企業を発掘したり、彼らと一緒にまだ世に無い新しい相続ソリューション開発を主導できる事業開発メンバーなど、全方位で採用を実施中です。

・読者にメッセージをお願いします。

日本は高齢化比率が28%を超え、世界で見ても圧倒的な高齢大国です。またそれが故に、相続登記の義務化法案・デジタルガバメントの推進など、国が本気で課題として捉え、日々変化が起こっている領域でもあります。一方でこの領域参画するテックプレイヤーはまだまだ少なく、エイジテックの黎明期に参入できるチャンスは非常に大きいです。一緒に人生100年時代を代表するテックカンパニーを創りませんか?ご興味ある方からの応募を、お待ちしております!

会社名 株式会社AGE technologies
代表者名 塩原優太
創業年 2018年
社員数 31名(アルバイト・業務委託含む)
資本金 1.2億円
事業内容 そうぞくドットコムの企画・開発・運営・販売
サービス名 そうぞくドットコム不動産、そうぞくドットコムマガジン
所在地 東京都千代田区九段南3-8-11 飛栄九段ビル B02号室
代表者プロフィール 新卒でIT広告代理店のオプトに入社、Web広告の運用実務を経験。その後アプリ開発を行うスタートアップを経て、中小企業の相続・事業承継に特化したコンサルティング企業へ入社。
拡大する超高齢社会に起こる課題の大きさを感じ、2018年、マーク・オン(旧社名)を創業。
2021年、AGE technologiesへ社名変更。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ AGEtechnologies エイジテック そうぞくドットコム 塩原優太
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