経済産業省 安藤裕介|スタートアップの成長に欠かせないファイナンスの課題を知ろう

創業手帳

経産省スタートアップレポート・読んでほしい点はココ!経産省担当者に創業手帳大久保が聞く

スタートアップが成長するために欠かせないファイナンスは、仕組みが複雑で後戻りできないことから、起業時に将来の見通しを持っておくことが重要だ。

経産省がスタートアップのさらなる成長を後押しするために取りまとめた「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」は、未上場時からIPO後までを通じた11の課題と、その課題に対する検討すべきポイントについて記載された、起業家必見のレポートとなっている。

このレポートを担当した安藤氏は、もと公認会計士としてIPOの支援などを担当していた経歴を持つ。レポートを作成した経緯や見所などについて、創業手帳代表の大久保がうかがった。

安藤裕介(あんどう ゆうすけ)
経済産業省経済産業政策局産業創造課 課長補佐
公認会計士として大手監査法人で上場企業の監査やスタートアップの上場支援に従事。2019年より現職にて大企業とスタートアップとのオープンイノベーションをテーマに、『オープンイノベーション促進税制』の制度創設及び執行、今回の延長拡充に関わるほか、スタートアップの株式取得に先立って機動的な資金供給を実現する新株予約権等の『「コンバーティブル投資手段」活用ガイドライン』や、オープンイノベーションの一つの手段としての『大企業×スタートアップのM&Aに関する調査報告書』の作成等に携わる。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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レポートを作った経緯や思い

大久保:レポートを拝見しましたが、非常によくまとまっていますね。どんな経緯で作られたのでしょうか。

安藤:現状のIPOする前と後の課題や、諸外国との違いを調べてまとめるための調査をしていたときに、「こういったことを前もって知っていたら、創業期の起業家にとってプラスになるのではないか」と思われるトピックスがいろいろとあったので、レポートにまとめようという思いがきっかけですね。

明確な指針がない中、こういう課題と手立てがあるということを示し、創業時からIPOしたあとまで一直線で見通しを立てるための指針を作ることで、スタートアップの成長に貢献でき、ひいては日本の経済成長につながるという気持ちで作りました。

大久保:個人的に何点かつけくわえたいと感じた点がありまして、1点は初期の頃の希薄化に注意してほしいということです。日本政策金融公庫を利用すると、初期の株式価値が低いときの希薄化を防止できるので公的融資も必要だと思っています。上場したようなITスタートアップでも、小さい時代はけっこう、公的融資をやっているんですよね。ただ大っぴらに言わない傾向があると感じていますが。

また、生株(なまかぶ・普通株=議決権が有る株式)を分散させるとよくないのでストックオプションを選択に入れるのは大事です。経営者にとっての株式1%は身を切るような重さですが、受け取り側が理解できていないと経営者側ほどありがたがられないケースが多いんですよね。啓蒙や説明も合わせて必要ということは強調しておきたいところです。もらう側が上場経験者だと、ストックオプションで家を建てたような話を間近で見ているので理解可能なんですが。

最後に、CFOの話が出てきましたが、報酬が高騰しているという事情もあり、事業が軌道に乗るまではなかなかCFOを雇えず、税理士や会計士にお世話になるという起業家も多いと思います。

安藤:そうですね。CFOについては、いい人材はいても、なかなか創業したばかりの会社に来てもらえないということを聞きます。一方で、投資銀行や会計士等の出身だからというので来てもらったら、担当していた業務にギャップがあって、うまくいかなかったという話もあります。反対に、あまり期待していなかったけれどカルチャーフィットからCFOとして活躍しているという話もあり、キャリアだけではなく人物を見ることが大事ということはお伝えしておきたいですね。

会計士をやっていた私でも、このレポートについては知らなかった話もあり、周囲の友人に見てもらっても同じような感想をもらっていますので、スタートアップにまつわるファイナンスの情報を網羅的にまとめることができたのではと自負しています。

レポートの見所は


大久保:会計士の方でも、スタートアップのファイナンスについては知らないこともあるんですね。こうなると、上級編の話も聞きたくなりますね。

安藤:このレポートについても、様々なバックグラウンドの方が見ているので、「ここについてはもっと専門的な話をしてもいいんじゃないか」「ここはもっと噛み砕いた方がいいのでは」など、さまざまな意見を取り入れながらようやくこの形に落ち着きました。

経産省のホームページを見ている方ってそんなに多くないと思うんですが、実はいいレポートなどがたくさんありますので、起業を考えている方はぜひ見ていただきたいですね。

このレポートを読んで、もっと詳しい話が知りたくなったら先輩起業家や専門家の方に話を聞いていただけたらと思います。

大久保:このレポートで一番伝えたいポイントはどこですか。

安藤:そうですね、やはり創業したら後戻りはできず、先々にこういうトラップがあるということを11個の課題で示したので、まずはそれを見ていただきたいですね。理解している方にはなんてことないと思いますが、デットファイナンスとエクイティファイナンスの違いから記載していますので、まずは一通り見ていただいて、全体的な雰囲気を感じていただればと思います。

11個の課題と手立てに加え、上場・未上場のスタートアップCFO、投資家、専門家など、さまざまな目線のプレイヤーの生の声を掲載していますので、ぜひご覧ください。

「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」はこちらからご覧いただけます。

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