起業家のメンタルヘルスは見過ごされがち! 原因や適切なケア方法について徹底解説!

創業手帳

起業家にとって重要なメンタルヘルス。どのように向き合えばいいか解説します。


起業家といえば、アクティブな印象を与えますが、メンタルヘルスについて問題を抱えていることが多いです。
しかし、起業家のメンタルヘルスについては、あまり語られることはありません。そこには、起業家ならではのプレッシャーが関係していることが考えられます。

起業家は、自身のメンタルヘルスと真摯に向き合うことが必要です。今回は、起業家が抱えるメンタルヘルスの問題と適切なケア方法について解説します。

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この記事の目次

起業家がメンタルを病む実情とは


起業家には、メンタルに何らかの問題を抱えている人がとても多いといいます。それはなぜでしょうか。

メンタルヘルスの不調にはどのようなものがあるか

起業家のメンタルヘルス不調の原因には、下記のような問題が考えられます。

・多忙であるため休息が取りにくい
起業家は、様々な業務を抱え、プライベートの時間が削られ睡眠時間などに影響を与えることがあります。

・事業を軌道に乗せることができず、資金繰りに苦しむ
事業を始めたばかりの時は、なかなか事業で収益を出しづらく、資金繰りに難航することが多いです。

・会社の意思決定など責任の重圧を感じる
事業において最終決定を行うため、重大な責任を負いストレスになります。

・同業他社との競合に勝たなければならない
市場に参入するにあたり、同業他社に競り負けると事業が軌道に乗りにくいです。

・役員や従業員、支援者などとすれ違いが起こる
自身の方針と役員もしくは支援者の意見、従業員の労働が自分のイメージと違うと、すり合わせに苦しみます。

・会社の先陣を切る姿勢を崩せない
弱気になると部下たちがついてこなくなるとの考えから、常に気を張ってしまいがちです。

以上のように起業家がかかるストレスは様々あり、許容範囲を超えてしまうとメンタルヘルスに影響を与えることがあります。

起業家のメンタルヘルスに関する調査

特に、起業者を対象としたメンタルヘルス不調に関しては、4割弱の人が気分障害もしくは不安障害のような、気持ちの変調などの問題を抱えていることがわかっています。
また、アメリカのデータでは、起業家の実に半数が不安障害やうつ病、双極性障害等を抱えているとの結果も出ています。

これらの数値は起業家ではない人々の数値を上回るものであり、起業家の中でいかにメンタルヘルス問題が蔓延しているかを示しています。

起業家が抱えるプレッシャーについて

日本国内でも、起業したい人や起業家を支援する動きが増えています。そして、起業家は素晴らしいものであるというイメージを持っている人も少なくありません。

一方で、事業に失敗すると周囲の視線が冷たくなることも事実です。このイメージとの落差が、起業家本人にプレッシャーを与えている可能性があります。
さらに、日本人は失敗に対して後ろ向きな発想を持つことが多く、起業家が失敗したときに自身が重圧を感じて潰れてしまうケースも存在しています。

起業家を圧迫する要素とは

起業家のメンタルを圧迫する要素は、事業に対して成功するための施策を練ること、それがうまくいくかどうかを懸念することが大きいです。
特に、同業他社との競合に負けることを避けるための施策は難しく、様々なデータを参照した上で起業家が意思決定をしなければなりません。

社内でも自分の思ったとおりに業務が進まないとなると、事業計画が崩れかねず懸念も増します。
さらに、会社のトップである立場で多忙な生活を送ることで、家族や友人との時間も削られ、弱音をこぼすことも気分転換することも難しくなります。

日本人が起業にネガティブな思考を持つサイクル

起業家がネガティブな思考に陥るサイクルは、特に日本人に多く見られます。そのサイクルについて下記に説明します。

・起業家が少ない
そもそも、日本では新卒採用をまとめて行う習慣が根付いています。
さらに、前述のように失敗に対するネガティブ感情が強いことから、起業に踏み切る若者が少ないのが現状です、

・成功者が少ない
起業家が少ないということは、それだけ事業に成功した例も少ないということです。
加えて、株式や税金制度の制約、希薄な人材の長期確保制度、さらには国からの積極的な支援が少ないことなどが、起業の成功の妨げになるケースが多いです。

・成功体験が小規模
仮に起業に成功したとしても、支援を行うベンチャーキャピタルとの関係性や支援の状況により、株式上場の規模が小さくなることは否めません。
その結果、思ったような資金調達ができない例もよくあります。

・大々的に成功することを諦める
以上の過程から、大きな成功を収めることを諦めてしまい、結果的に成功のチャンスを捨ててしまう流れに陥ります。

周囲に相談することを避ける傾向

起業家の傾向として、事業運営に行き詰まったとしても役員や部下に相談しない面があります。
これは、会社のトップとして弱みを見せては、役員や部下に不安を抱かせてしまうという危惧があるためと考えられます。

リーダーシップを取ってしっかりと社員を誘導しなければならないという意識が強いことから、運営に問題があっても相談できずそのままにしがちです。
その結果、事態を悪化させることにつながってしまう図式です。

周囲には理解されないという意識

起業家が考えるべきことは、収益を得ることに加えて資金調達の方法、経営方針の意思決定など多岐に及びます。
これらを、会社のトップのみが考慮すべき問題と考え、部下たちには理解されづらいという発想に至ることも多いです。

そのため、ひとりで抱え込んでしまい自分自身が参ってしまうこともあります。

起業家がメンタルを病むことの弊害について

起業家のメンタルヘルスに影響が出ると、事業運営について大事な意思決定を誤る可能性があります。
起業家自身の疲れや不安から、思考が鈍り意思決定についてあやふやになったり、誤った方向に導いたりすることが考えられます。

経営方針が固まらなければ、会社はどこへ向かえば良いのかわからず、適切な事業計画を遂行できなくなる事態にもなりかねません。

適切な判断ができず成長機会を逃す

上記のように、事業運営において適切な判断ができなくなると、事業の有益な成長プランを立てられなくなります。
その結果、会社の成長機会を逃してしまい、事業の失敗を招く事態に陥るかもしれません。

従業員のモチベーション・生産性が下がる

起業家が意思決定に迷ったり不安を見せたりしてしまうと、その雰囲気が会社全体に蔓延し、従業員のモチベーションが低下します。
すると、おのずと作業の生産性が下がり、売上げを有効に得ることも難しくなることから、経営を悪化させる悪循環を起こしてしまう恐れがあります。

起業における意識の改善が重要


日本人が持ちがちな起業に対する誤ったイメージから、メンタルヘルスに不調をきたす可能性があります。

このような意識で起業すべきではない

とにかく利益を優先させる

起業といえば、とにかく利益を上げることを求める傾向にあります。もちろん、利益を上げることは目標のひとつですが、起業してすぐに結果が出るわけではありません。

まずは、事業に費やした初期投資について、長いスパンでその金額を回収していくことから始めるべきです。
そのためには、利益の追求よりも先に事業を軌道に乗せることを考えなければなりません。

意思決定の権限を希望する

自身が会社に雇用される立場であると、会社の経営方針に従わなければならず、それが窮屈で自ら意思決定をしたいと思う人が起業することが多いです。
しかし、実際に経営のすべてにおいて起業家自身が意思決定できるわけではなく、株主の支援者や役員、従業員などの意見も取り入れなければなりません。

そのため、すべて自分の思い通りにしたいと思う発想も、起業にはいささか危険な思考であると言えます。

自分の思うような働き方への意識が強い

起業して経営者になると、時間に縛られない働き方も可能です。また、自身がトップであるため、働き方への圧力を受けることもありません。

このような働き方だけを狙って起業することは、事業に対する意識が希薄といえます。つまり、適切な事業計画を立てることとは程遠いものです。

重圧に勝つための起業への意識

起業に関する意識を強く持つことで、様々な重圧に耐え、また逃れることもできます。
起業にあたって大切なことは、行う事業について確固たる目標や斬新なアイデアを持ち、それによる社会貢献を目指すことです。

さらに、社会貢献のための事業を実現するためには、自身と事業計画を支える優秀な人材を集め、健全な会社として成立させることも必要となります。
起業家とは、事業と社会について高い意識を持って会社の起ち上げに臨む人です。

起業家にとって適切なメンタルケアとは


以下では、起業家に適したメンタルケアについて紹介します。メンタルを整えるためには、身体と心の両方からのアプローチが必要です。

自分でできるメンタルケア5つ

1.十分に睡眠を取る

メンタルヘルスを健全にするための基本的なことですが、睡眠は十分に取るようにしましょう。

睡眠は、身体はもちろん日々の脳の疲れを取り修復するという意味合いも持ちます。
脳のパフォーマンスを最大にするためには、睡眠をしっかり取って休息することが大切です。

これにより、心身ともに健康を保てるだけではなく、明確な思考を取り戻し適切な意思決定や前向きな心を身に着けられます。

2.身体や心の変調に向き合う

忙しくなると、つい自分の心身の状態を後回しにして仕事に打ち込んでしまいます。しかし、ここで無理をしてしまっては、ある日突然メンタルを病むかもしれません。
そのため、少しでも身体や心に変調を感じたら、その事態と向き合い原因を探りましょう。

身体の健康ももちろんですが、感情として苦しいことや悲しいことがあったときにもその事実を認識し、改善のための施策を考えて実行することが求められます。

3.身体を動かす機会を作る

運動をしたり、日光を浴びたりすることで、身体機能が健全に保たれるほか、気分の安定やクリアな思考につながるといわれています。
激しい運動をする時間がなくても、外を歩く、日中に外に出る時間を作るなど、少しの工夫をするだけでも結果は違ってきます。

また、ストレスを感じたときにも上記を実行すれば気持ちが晴れる可能性もあるため、ぜひ実践したいところです。

4.クリアな思考を維持するための食事をする

食事は、ただ単にお腹を満たすものではなく、心身の健康を維持するためのものでもあります。
クリアな思考は、脳の働きを助けるための食事から始まります。
脳細胞や神経伝達物質のもととなるたんぱく質や、組織生成に必要なビタミン類は積極的に摂るようにしましょう。

逆に、脂質や塩分の多い食事は身体を壊す可能性が高いため、できるだけ避けるのが無難です。

5.仕事以外の交友関係を持つ

起業家は、常に仕事のことを考えなければならないわけではありません。オンとオフの切り替えをうまく行い、オフの際には仕事と関係ない友人と交流することも有効です。
日々の重圧や業務をひととき忘れるだけでも、リフレッシュにつながります。

また、本当に自分のメンタルが危機にさらされそうな時、友人に支えてもらえる関係を作れば、孤独に悩みを抱えることも少なくなるはずです。

意識の変革を行おう

ためらわずカウンセリングを受ける

カウンセリングと聞けば、メンタルヘルスに不調をきたしたときに受けるものという印象が強いものです。
しかし、実は心身の健康な状態を保つため、不調をきたす前に受けるといった認識が広まりつつあります。
カウンセラーに悩みを話すだけでも気が晴れることがありますし、思考を整理することでビジネストークに役立てられるメリットもあります。

さらに、精神的に支えてくれる第三者の存在を認識するだけでも、モチベーションが上がり適切なパフォーマンスを発揮することにもつながります。

万が一失敗したときのビジョンを想定する

事業を起ち上げるにあたり、もちろん失敗するリスクはあります。そこで、あらかじめ失敗したときの対処法を考えておくのも良いでしょう。

もし、目標を達成できなかったときに、どのような方法を取るのが一番良いか、事業を撤退すべきか方向転換すべきかなどを事前にシミュレーションしておきます。
つまり、失敗したときの受け皿を用意しておくことで、万が一にも備えることが可能です。

任せられるところは周囲に任せる

起業家は会社のトップでありリーダーですが、起業家ひとりで会社を背負う考えは捨てるほうが無難です。
ひとりで何でも請け負ってしまっては、メンタルを病むことは目に見えています。

そのため、自分自身で作った会社のメンバーを頼り、任せられるところは任せてしまって問題ありません。

また、もし自分が不調をきたしてしまった時に頼れる人材を育てることも、後々に役立ちます。

スケジュールに余裕を持たせる

起業したばかりでは、事業計画を遂行するためのスケジューリングがうまくいかないこともあります。
その結果、無理なスケジュールを組んでしまい、それをこなすことに注力しがちです。

しかし、スケジュールに余裕を持たせることで、もしずれた場合にも方向転換や変更が可能ですし、臨機応変に対応することで気持ちに余裕ができます。

無理な要望は飲まない勇気を持つ

起業したての会社は、資金調達が大きな課題です。そこで、株主や投資家などが資金調達に無理な要望を提示してきても、資金繰りのために従ってしまうことがあります。

無理な要望を遂行しようとすれば、起業家の負担につながります。そのため、まずは自身にできることの線引きをしっかり決めておきましょう。
その上で、飲めない要望についてはきっぱりと断る勇気を持ち、次の策を練るほうがメンタルヘルスの健康には有効です。

起業家のメンタルヘルスを支えるサービス


メンタルにダメージを受けがちな起業家に向けて、メンタルヘルスをケアするサービスが存在しています。

メンタル支援プログラム

起業家を対象とした、メンタルヘルスの専門家やサポーター、スポンサーなどの支援者が集結して、起業家の支えになるプログラムです。
このプログラムにおける支援者は、起業家を支えると同時にコミュニティにもなり、社会全体でバックアップしていくという理念のもとにサービスを提供しています。

オンラインチャットサービス

メンタルヘルスの専門家だけではなく、ボランティアも含めたスタッフがオンラインチャットで話を聞いてくれるサービスです。
このサービスでは、自分の悩みを打ち明けたいと願う起業家に注目されており、様々な話をとにかく聞くことで、起業家のメンタルを守ろうというものです。

オンライン精神科医相談サービス

オンラインで精神科医などの専門家とつながり、メンタルヘルスの相談ができるサービスもあります。
プライバシーを守る観点から、お互いに匿名で話をすることができます。

サービスを提供するサイトからメールを送れば、24時間以内に専門家から返信が来ます。起業家ならではの悩みについて、公私問わず相談をすることが可能です。

まとめ

起業家は、経営者として会社を軌道に乗せるために、孤独なプレッシャーを感じるものです。それが原因で、様々なメンタルヘルスの不調をきたすことも少なくありません。

このような事態を避けるためには、経営者が自身のメンタルと向き合い、適切な対処法を講じるのが良いです。また、自分を追い詰め過ぎず、柔軟な思考を持つことも大切です。
時には、外部のサポートを受けることも考慮し、事業に影響を及ぼさないよう対処しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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