辻・本郷税理士法人 本郷孔洋|挫折から日本最大級の税理士法人へ

創業手帳人気インタビュー

時代を読む達人、日本最大級の税理士法人グループ 会長独自の経営哲学

国内最大規模の税理士法人の経営者であり、公認会計士として15000社の経営を見てきた本郷氏。
起業し、バブル期の栄枯盛衰やM&A、地方展開などさまざまなステージを経て会社を大きく成長させてきた。
創業手帳代表の大久保が、時代を読む力などについて本郷氏の半生に迫った。

本郷 孔洋(ほんごう よしひろ)
辻・本郷グループ会長
国内最大規模を誇る税理士法人グループの会長。総勢1700名のスタッフを率いる経営者。会計の専門家として会計税務に携わって40余年。早稲田大学第一政経学部を卒業後、ジャーナリストを目指して就職試験に臨むが不合格に終わる。実学を学ぼうと同大学院商学研究科にて会計を学ぶことを決意し、公認会計士となる。75年公認会計士登録、77年には本郷公認会計士事務所を設立。2016年1月、辻・本郷グループ会長に就任、現在に至る。最新著書『経営ノート2022』(東峰書房)ほか著書多数。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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挫折から始まった起業


大久保:ご著書を読ませていただきましたが、発想がエコノミストらしくないというか、自由ですよね。

本郷:大学の専攻が政治で、もともと新聞記者を目指していたんですよ。そういったところが関係あるかもしれませんね。興味の幅は広いですし、ある意味専門家ではなくジェネラリストなんです。

大久保:M&Aなどもあったと思うのですが、ここまで大きくなると予想はされていたのでしょうか。

本郷:予想はしていなかったですね。新聞記者になりたかったけれどなれなかった、挫折組ですから。

何か資格を取ったほうがいいと思い、勉強して会計士の資格を取ったんです。大手の監査法人に入り、3年間監査の仕事をしました。それから3か月の休暇をもらってイギリスに遊びに行ったんですが、3か月の予定がずるずると1年になってしまいまして。明らかに就業規則違反で、帰ってきたら席がなかった(笑)。

仕方なく税理士事務所を開いたのがわたしの起業の始まりです。といっても、きっかけはクビになったことで、目的も何もなかったので、正直起業するという感じではなかったですね。まだなりたかったジャーナリストにも未練がありましたし、会計の仕事にもそんなに興味はありませんでした。正直「食えればいい」という思いでしたね。ですから、起業に大志はいらないというのが私の持論です。

ところが、税務を勉強してみると楽しくて、ハマってしまったんです。別表って知っていますか?あれは優れものですね、芸術と言ってもいい。独立したてでお客もそんなにいないので、楽しくなって勉強に打ち込んでいました。

そのうち決算書を見ながら、社長といろいろ話していると、その人の人生や思考が見えてくるんですね。

大久保:隠してもわかってしまうのでしょうか。

本郷:どこでどういう転換があったとか、決算書にはドラマやストーリーが満載なんです。ジャーナリストよりもディープな情報を取れると感じ、それで仕事が面白くなりました。創業してから10年はあっという間に過ぎ、年商が1億円ぐらい、従業員が15人ぐらいになりました。

体を壊して健康がすべてと知った


大久保:税理士の業界では、そこそこの規模ですよね。お忙しかったのではないでしょうか。

本郷:それこそ24時間営業で働いていましたが、ふと、これでいいんだろうか?と生き方に疑問を覚えました。死ぬほど働いても生涯年収3億円がせいぜいで、その前に体を壊して死んでしまうと思ったんですね。

32才で体を壊し、10年間はほぼ仕事を休んでいました。それまでにある程度の規模まで会社を成長させられていたのは幸運でしたね。

それがひとつの転機となり、ただ体を使って働くのではなく、経営戦略やマーケティングを考えなければと思うようになりました。共同事務所の構想を進めるようになったのもこの頃です。優和という組織で、若手の会計人が集まって何かやろうというものでした。会計業界を引っ張っている方々と知り合うことができ、その後の飛躍の原動力となった「相続対策」についても知ることができて、夢中で勉強した記憶があります。この組織には今でも非常に感謝しています。

起業のそれぞれのステージで誰と知り合うか、これはその後のビジネス展開を大きく左右するので、非常に重要だとわたしは思っています。

大久保:相続対策にはなぜ注目されていたんですか?

本郷:バブルが崩壊する前は、土地の値段がどんどん上がっていき、いわゆる土地神話というものが生まれました。相続税の評価も上がり、対策の依頼がどんどん増えていったんですよね。ピークの年は、登記所が開いている年末ぎりぎりまで仕事をしていたのを覚えています。バブルですから、皆さんの金払いもよかったですね。

ところがバブルが崩壊し、相続対策の依頼は来なくなり、よせばいいのに始めていたカラオケボックス事業と不動産で見事に大失敗しました。

ゴルフは風向きによってボールの飛び方が違いますよね。ビジネスも同じで、社会の風向きに乗らないとダメなんだなと痛感しました。

大久保:そこからどうやって立て直したのですか。

本郷:正直大変でした。100人以上いた従業員は、少しずつ退職していき、1年で50人ぐらい辞めました。どうやって立て直すか? 3か月考えた結論が「基本に帰れ」でした。考えたわりには平凡な結論ですね(笑)。

借金はまだ残っていましたが、1年ぐらいは夢中で営業に力を入れ、なんとか目処が立ちました。また、同じころに思い切って広いところに引っ越しました。不景気だったので、倍ぐらいのスペースが借りられたんです。そうすると自分もやる気が出て、仕事に打ち込むことができましたね。サービス業は、理屈ではない部分も大きいなと思ったことを覚えています。

わたしが経営者の資質で非常に大切だと思っているものは「執念」なんです。危機のときは、ビジネスモデルとか財務危機とか一切関係なし、乗り切れるかどうかというのは経営者の執念次第ではないでしょうか。

経営には必ず波があります。ですから経営者は我慢強く執念がある人でなければいけません。決して逃げないこと、これが起業家の一番の資質ではないかと思いますね。

3年ごとの小変化、10年ごとの大変化がビジネスには必要

大久保:M&Aはどういった経緯でされたのでしょうか。

本郷:やっと事務所が成長軌道に乗ってきたとき、税理士法人制度が導入されました。そんなときに辻会計さんとの合併の話が来たんです。即決に近い判断でした。2年ぐらいは渋谷本部と新宿本部と別々に運営していたんですが、お互いにライバル視してしまってよくなかったんですね。合併はきれいごとではいかないなーと悩んだことを覚えています。

そんなとき、ある大手監査法人の代表社員が「合併のあとに統合するためには、事務所を1箇所にして毎日顔を合わせたほうがいい」とアドバイスをくれて、いろいろ大変なこともありましたが、1箇所にまとめることができたんです。

一緒の場所になってみますと、事務所にボリューム感が出て、実際の人数以上に大きく見えるんですね。売り上げもだいぶ伸び、統合した効果を実感しました。

大久保:地方展開もされていますよね。

本郷:統合から2年ほど経って、せめて大阪、名古屋ぐらいは地方展開をしたいと思っていたときに、地元の先生の後を引き継ぐ形で支部を出すことができました。その流れで本部を含め、今では海外を含め、事務所は81拠点あります。支部の展開のメリットは、若手を支部のヘッドにしたことで、若手が育ったことですね。

わたしの持論として、ビジネスは10年ごとに変化を起こさないと生き残れないと思っているのですが、税理士法人後の10年を振り返ると、最初の合併の3年、実質統合の3年、そして地方展開の3年と分けることができます。3年ごとに小さな変化を起こすことも経営には必要というのが実感としてありますね。

大久保:経営というのは将棋や囲碁のように、やればやるほど上手になるものなんでしょうか。また今の時代をどう見られていますか。

本郷:自分に才能があると思ったことはないんだよね。でも本を読む世代なので、ビジネス書などを読むのは好きで、たくさん本を読んできました。また、月に一度勉強会をやっていて、もう300回を超えているのだけど、それも経営にプラスになっているかな。

日本のGDPは変わらないけど、他のところが倍になったから相対的に差が開いていますよね。中国もEUも遠くに行ってしまった。事業者が減っているのが大きいのではないかと思います。でも、ゲームファイとかメタバースまで行くのはちょっと時間がかかるかな?

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