『ネクストシリコンバレー』著者:矢野圭一郎氏に聞く、ベルリンから見た起業と次の波

創業手帳
※このインタビュー内容は2020年01月に行われた取材時点のものです。

創業手帳の大久保が、矢野氏にベルリンの現状とスタートアップのこれからを聞きました。

(2020/01/24更新)

「ドイツ」というと、どのようなイメージがありますか?日本と同じような自動車産業のものづくりの国、もしくはビールやソーセージ、クラシック音楽などをイメージする人が多いと思います。

しかし、首都「ベルリン」は、今やアートとスタートアップの都となっているのをご存じでしょうか。先鋭的なアーティストやクラブ文化、そしてスタートアップが集結しており、次のシリコンバレーとして注目されつつある都市なのです。

アメリカや中国のスタートアップというと、日本人の尺度からするとスケールが壮大すぎることが多く、刺激にはなるが参考にしにくい面があります。一方で、国の規模や経済水準が似ているドイツのスタートアップ事例は日本にとっても参考になるかもしれません。

そんなベルリンでスタートアップに関わるのが矢野圭一郎さん。元グーグルの社員で、『ネクストシリコンバレー』の著者でもあります。そんな矢野氏に、アートとスタートアップの最前線「ベルリン」について創業手帳の創業者・大久保幸世が聞きました。

矢野 圭一郎(やの・けいいちろう)Interacthub GmbH(インタラクトハブ) CEO
中学と大学をベルリンとハンブルグで過ごし、日本のベンチャー企業勤務を経てセールスフォース・ドットコムやグーグルなど、米大手IT企業の日本法人で法人向けクラウドサービスの事業開発に携わる。スペインのIEビジネススクールでMBA修了後、2015年にベルリンへ渡り、2017年に欧州と日本間の企業とスタートアップを結ぶビジネスマッチングプラットフォームとして、Interacthubを設立。海外在住起業家のネットワーク、一般社団法人WAOJEベルリン支部長。

インタビュアー 大久保幸世/創業手帳株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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ドイツの首都「ベルリン」の現状

大久保:今ベルリンでは、スタートアップやアートがとても盛り上がっていると聞きました。どういう状況なのでしょうか?

矢野:ベルリンには現状約17万社のスタートアップがあり、年間500社以上のスタートアップが新たに登記しています。そして約65万人がスタートアップで働き、投資額も5000億円近くに登ります。

数字だけだとわからないので、特徴を挙げると、シリコンバレー的な巨大資本主導でない循環型経済志向があります。それと適切な表現がないため僕は「マイクロアントレプレナー」といってますが、ロケーションフリー(※)でスケールを目指す新しい小規模事業主的な起業家が多い点があげられます。また、WEB3.0(※)に代表されるブロックチェーン関連の企業が多い点でGAFA等の方向性とちがうところへ向かっている点も見逃せません。

アートに関しては元々アーティストの街として歴史があるので、自然とアートとスタートアップが結びつきやすい環境があるのだと思いますね。

※ロケーションフリー・・・働く場所が限定されない自由な環境
※WEB3.0・・・Web1.0時代、Web2.0時代に続く新しいWeb時代で、Web2.0の「プライバシーの問題」や「中央集権型であること」の課題をブロックチェーン技術によって解決していこうとする次世代のWebのこと

大久保:ドイツという日本と並んで、「堅い国」、「ハード王国」のイメージですが、何故今スタートアップが盛り上がってきているのでしょうか?

矢野:東京集中型の日本とちがって、ドイツは分かりやすく言うと16の小さな国を束ねたような国で、州によって産業も文化もぜんぜん違います。

ハード王国は南ドイツのイメージで、今も有名なAUDI、ベンツ、BMWなど、自動車や半導体、製造業などは全部南部ドイツの州の産業です。

例えば、南ドイツのバイエルン州はそうした製造業が強く、経済力も強いので、日本人が想像するドイツはほぼ南ドイツのイメージになりがちです。しかしベルリンには、昔から製造業・ハード産業は少なく、創造産業が主流です。ビールよりカフェ文化なんですね。強引に日本にあてはめると、福岡と東京のような、文化・メンタリティと主力産業の違いがあります。

一方でベルリンでは、創造産業と研究所が多いので、南ドイツの大手製造業がベルリンにイノベーションセンターを置くのが、ここ5年くらいの傾向です。ベルリンが、80年代初頭から国際的なハッカー団体であるカオスコンピュータークラブの本拠地であることがルーツになっている面もあります。

ベルリンに本拠地がある、世界的ハッカー団体「カオスコンピュータクラブ」の交流会
大久保:矢野さんがベルリンで暮らしていて、スタートアップ、アートの街を象徴するような面白いエピソードはありますか?

 
矢野:東京やロンドンなどと比較すると、とにかくサラリーマンが少ないんです。同じマンションの住民も画家、作家、医者、言語学者、音楽家、同性カップル等バラエティに富んでいます。なので、創業したての起業家でも浮かないし、普通でなくてはいけない圧力も少ない。

私は10歳の娘がいますが、ベルリン国際映画祭の小学生向けプロジェクトがあったり、芸術家・音楽家等表現者へのリスペクトが日本と比較すると圧倒的に高いのです。東京だと、成功していない限りアーティストと名乗りづらい空気があると思うのですが、こちらでは国や州から芸術家向けの支援金があるので日本人の芸術家やDJ、イラストレーター等も多く移住しています。

スタートアップ界隈では、優秀な日本人のソフトウェアエンジニアもかなり多くいます。そんな東欧や米国、シンガポール等で勤務経験がある彼らの話だと、「シリコンバレーよりエンジニアのレベルが高い」そうです。増えるスタートアップのIT人材供給として「CODE University」という、パリの「42」(※)に似たエンジニア養成機関がベルリンにあり、無料でエンジニア育成、学費は年収の数%を還元していくモデルで運営していることも背景にあるかと思います。

反面、B2Bのビジネスは非常に少なく限られているので、フランクフルトやロンドン、東京等のビジネス都市を行き来しているビジネスマンがほとんどです。大企業の本社もほとんどないため、アートとR&D(※)に特化した街という印象です。

※42・・・・・・フランスにある私立のコンピュータプログラミング学校
※R&D・・・・・「Research and Development」の略で、企業などで科学研究や技術開発などを行う業務のこと。また、そのような業務を担う部署や組織

大久保:ドイツでは、どんなITツールが流行っていますか?日本であまり知られていない、起業家の間で使われているものがあれば教えて下さい。

矢野:クレバーシャトルという、相乗りUberみたいなサービスはエコで良いなと思います。あとはあんまり目新しい物は知りません。普通にアメリカや中国のアプリをみんな使っているので。あと暗号通貨については日本よりずっと偏見が少なく身近で、フードデリバリーやチップにビットコインを使えたりします。ツールはひとそれぞれですね。

著書『ネクストシリコンバレー』から紐解く、次期都市とは

大久保:『ネクストシリコンバレー』とはどんな本でしょう?読みどころを教えてください

矢野:日本企業のイノベーション担当者向けの本ですが、ビジネスに関わる全ての人におすすめです。ここ10年、日本企業はシリコンバレー崇拝、深セン崇拝で、これらに「事例」や「先生」を求めがちです。この姿勢が、例えば視察でも海外企業に悪い印象を与えています。

海外では、インプットでなくアウトプットをしてフェアな価値交換をしなくてはいけません。シリコンバレー一極だったイノベーション中心地は、世界にどんどん分散しています。本書では、そうした流れを、その分野に明るい3著者の視点で伝えています。これからの日本企業の関わり方について、ヒントを示しています。

大久保:シリコンバレーの状況と、次に注目している都市はどこですか?

矢野:本でも取り上げている、イスラエル(テルアビブ)・インド(バンガロール/ハイデラバード)はすでに認知されていて、ユニコーンが出るとしたらそれらの地域からだと思います。

その他、話で聞くのはコロンビアのメデジン、ジョージアのトビリシ、モスクワ、ルワンダなどありますが、東欧やメデジン等はスタートアップというより小企業に向いてる気がします。

2017年頃ICO(※)のバブルが弾けイメージが悪くなってしまいましたが、将来的にSTO/IEOが進化して合法的に暗号通貨で調達ができるようになれば、これらの場所から影響力のある企業ができていく可能性があります。なぜなら、投資家がたくさんいる大都市に集まって投資をする必要がなくなるからです。

シリコンバレーについては、子供の保育園料が一人25万円程度といわれるベイエリアで、自己資金をもとに起業するのは相当困難だと思います。シリコンバレーは、かなり前から大企業に就職を希望する人が行く場所になっています。

※ICO・・・・・「Initial Coin Offering」の略で、新規仮想通貨公開のこと

大久保:矢野さんはどんな仕事をしているんでしょう?ご経歴とベルリンに来た経緯も教えてください

矢野:現在Interacthub GmbH(インタラクトハブ)という会社を運営していて、欧州のスタートアップとのネットワークを活用して日本企業のイノベーション支援コンサルティングを提供しています。また、始めて間もないですが海外ビジネス知見のマーケットプレース「expaty.co」というサービスもやっていて、企業が海外で活躍する経営者、デザイナー、エンジニア、弁護士等のプロの知見を1時間単位で購入できるような仕組みを作っています。

過去には、エストニアでICOの会社を作って失敗したりしましたが、ブロックチェーン上の暗号資産のポテンシャルにずっと興味があり、「国際コミュニティ+アート+ブロックチェーン」での新しい価値創造を実現させたいと考えています。

私の経歴は中学と大学にドイツにいて、ベンチャーを経てセールスフォースやグーグル等シリコンバレー系のIT大手を経験し、2015年12月に家族でベルリンに移住。2017年3月にInteracthubを設立しました。クラウドコンピューティングに長く関わっていましたが、2015年頃ブロックチェーンの存在を知り2006年頃のクラウドに似ていると思いました。

ベルリンは当時からAscribe等のブロックチェーン企業があり、文字通り次のシリコンバレーを感じたので来てみたという感覚です。また、他の活動として社団法人WAOJEという海外起業家ネットワークのベルリン支部を起ち上げました。これは国内外で活躍する日本人経営者が欧州の企業と共同事業をつくれるような環境をつくるためです。

大久保:自分もWAOJE東京支部の理事を務めさせていただいています。東京支部は元LINEでC Channelの森川亮さんとか、ネオキャリアの西澤さん、建築家の迫慶一郎さんなどがイベントにいて盛り上がっています。他、30都市ぐらいで活動していますね。
世界中にいる日本人起業家が集まっていて面白いですよね。2018年はカンボジア、2019年はオーストラリアとグローバルベンチャーフォーラムという大規模イベントがあって、世界中から日本人起業家が集まっていて、矢野さんともそこでお会いしましたね。

カンボジアのフォーラムではWAOJE代表理事の猪塚武さんのキリロム工科大を見に行きました。カンボジアの高原で無料の大学をやっていて刺激になりました。海外に行くと視野が広がっていいですね。
欧州のポテンシャルを注目しています。欧州は他にもロンドンで色々仕掛けているクラウリー利恵さんなどユニークな方が多いですね。ベルリンの矢野さんの活躍に期待しています!

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海外で日本人が活躍するために必要なこと

大久保:米国や中国の企業は、国の規模が巨大で資金調達環境もすごく、ユニコーン企業も大量にあると思います。一方で、ドイツや欧州はより日本の参考になりやすいかなと思っています。ドイツやベルリンのスタートアップの事例は日本の参考になると思いますか?

矢野:米国や中国は巨大ドメスティック市場があるから巨額な株式資本があります。投資の世界はとてもドメスティックなので国内が大きいほど有利ですよね?そういう意味では米国・中国が強いのは当然です。そして日本の国内市場は、それらに次いで今は大きいので、日本が国内志向になるのも自然だと思います。

国のGDPでみるとドイツが抜く抜かないとか、ブラジルがさらにのし上がるとか、いろんな見方があります。しかし、僕がベルリンにいて肌感覚で感じるのは、これまでの大国のなかのドメスティックな株式資本主義がかわるんじゃないかと。たとえばベルリンのスタートアップの多くは、ドイツ法人ではありません。米国デラウェアだったり、ジブラルタルやスイスだったり税率が低く、資本を呼びやすい地域に法人を設立し、開発拠点をベルリンやキエフ、ビジネスが成長したらロンドン等、EUの法律や税金のいいとこ取りでやっています。

「N26」などのベルリンのユニコーンは、ドイツでなく、アメリカやUAE、中国から資金調達しています。これを日本に強引にあてはめると、「日本人起業家があえてホーチミンやプノンペンやシンガポールで起業し、東京で商売をする」に近いかもしれません。

巨大ユニコーンはたしかに世界を変えるかもしれませんが、米国人と中国人が圧倒的有利な世界かと。僕がもっとすごいと思うのは、起業が誰にでも身近になり、失敗や成功のノウハウが共有され、利益率のいい小規模事業がどんどん増えることだと思います。たとえば女性起業家を増やすという意味でもそうです。ベルリンはそれに近いかたちが出来てきていると思います。

大久保:海外で活躍している人はパワフルですが、海外で日本人がスタートアップをやる時に参考になるポイントを教えて下さい。また、どういう業種やタイプが成功しやすいですか?

矢野:私が海外の日本人起業家をみてて成功しやすいのは、飲食業、士業、人材紹介業の3業種というのがわかってきました。理由は飲食はジャパンブランドが活かせる、士業と人材紹介は初期投資が殆どかからず自己資金で成長できて利益率が良いからです。ITが難しいのは海外での資金調達が難しく高額なソフトウェアエンジニアを雇いにくい状況があると思います。

日本人の場合、海外で事業を大きくする目的で日本法人をつくってそこでエンジェル投資家などから調達するケースが多い気がします。中でも東南アジアで活躍している経営者が目立ちます。欧米だと日本人は雇われていることが多く、自らの事業で起業している人は特にヨーロッパは少ないです。やはり日本で育った人の感覚は欧米よりアジア地域の人に近く、ビジネスならアジアのほうがやりやすいのかもしれません。

一方でアートや音楽、一部のIT領域(ドイツならドローン、ブロックチェーン)では日本より欧州が先をいっているので、学びに来る、働きに来る人も含めて表現者として活躍している日本人はたくさんいます。今は日本人経営のスタートアップはほとんどありませんが今後変わる可能性はあります。

大久保:スタートアップやITベンチャーの世界で生きてきて、仕事を成功させるノウハウやTIPS、習慣などあれば教えて下さい。

矢野:仕事では「自分の言葉で話す」「相手へのリスペクトを持って接する」「時間とお金にまじめでいる」の3つを意識しています。日本では偉い人や成功者の言葉を引用するのが好まれますが、こちらでは自分の言葉でないと全くひびきません。

あとはなにかチャンスを感じたら、全部やってみる、まずやってみる、あえてやってみる。実際この「やる」っていうのはものすごく大変でなかなか思うようにできないのですが、なにか始めるときにはデータや事例は無いのでそれを作るしかなく、そうするとこの意識がとても大事なんじゃないかと思います。特に外国人の立場で起業したらなおさら使える前例はありません。

大久保:ドイツや欧州と日本の対比で見て、欧州の良いところ・悪いところ、日本の良いところ・悪いところを教えてもらえますか?

矢野:それぞれよし悪しあるので、言い切るのは難しいですが、あえて特徴をまとめると以下のようになります。

【欧州(ベルリン)】 
・良いところ:商業化される前の文化芸術音楽が身近にあり刺激を受ける。様々なライフスタイルが受け入れられやすい。
・悪いところ:役所や大手銀行などが極端に保守的。ひどいサービス。善意を逆手にとるような詐欺がおおく、気が抜けない。
【日本(東京)】
・良いところ:サービスと食事のレベルが高い。極端にクリエイティブな一面がたまにある。東京に関しては良い意味で野心的で優秀な人が多い。
・悪いところ:事例・前例主義。集団主義。マイノリティーへ排他的な面。

ヨーロッパによく、何かの良いイメージにあこがれて来る人もいるのですが、お花畑的な理想の場所は何処にもないです。一方が上がれば一方が下がります。

大久保:日本人起業家のチャンスはどこにありますか?また起業家だけでなく、起業前の若者に生き方のヒントになることがあれば教えてほしいです。

例えば東京もスタートアップがたくさんある。学生のうちからどんどんインターンしたり、サラリーマンでもスタートアップイベントがありますし、支援者やクラウドファンディングや投資でスタートアップに関わるという方法もあります。そうやっていくと面白い世界が見えてくるのかなと思っています。自分も大企業からベンチャー、起業というキャリアですが、大学を出て大企業、という価値観だけでは見えなかった面白い世界が割と身近に転がっているぞ、と思いますね。矢野さんはどうでしょう?

矢野:海外にでると改めて東京は日本人にとってのヒト・モノ・カネの充実度で世界一だと思います。

もし会社を大きく売上を大きくするのを目的にするなら東京がベストだと思います。海外に行くと多くのケースでファイナンスの選択肢がぐんと減ります。海外にでれば外国人である日本人に投資する投資家は少ないのでP/L型のビジネスとなるケースが多いです。

一方でビジネスの方法や成功の定義も今後多様化していきます。成功基準も人それぞれなので自分が一番納得の行く行動をするべきです。私も企業勤務が長かったし、得た学びもたくさんありました。

学生起業で成功した人のスピード感は羨ましく思うところもありますが、大手企業にいたキャリアは信用になりますし、起業のタイミングやバックグラウンドに正解はないと思います。

私が起業してから思うのは、「自分は何者で、何がしたくて、なぜそれをするのか?」を常に問われることです。逆にそこを自分の頭と意思で考えられるなら、面白い世界が身近にゴロゴロころがっているように見えるんじゃないかと。もちろん市場がないと商売としてなりたたないので、客観視できるバランス感覚や分析力も必要だと思います。

起業に関しては「挑戦」でなく、誰にでも「あたりまえの選択肢」になるべき

大久保:矢野さんが注目しているスタートアップの領域を教えてください

矢野:業界でいうと、Web3.0/ブロックチェーン/暗号通貨領域と、人工肉・昆虫食関連、KYC(顧客確認)やモバイルバンクに関連する企業でしょうか。SolarisbankというAPI銀行が(日本のSBIも投資)バンキングのインフラをAPI経由で提供しているため、AWS(AmazonWebService)やGCP(Google Cloud Platform)を使うイメージでスタートアップが簡単に銀行事業が作れるようになり、ユニークなモバイル銀行がここ数年で増えました。

共通するのは機能による差別化ではなく、アップルのマーケティングのような「このモバイルバンクを使うとこういうグループに入れる」と感じさせるコミュニティマーケティングと、言語や文化を問わずつかいやすい優れたUXです。

お金に変わる新しい価値の動かし方と、サステナブルでかつ事業としてなりたちやすそうな領域に注目しています。

オープンAPI銀行, Solarisbankのオフィス。2019年9月に施行されたモバイル銀行の世界規格、PSD2はベルリングループという団体が本拠地となっている。
大久保:これからの社会やテクノロジーの波はどういうものですか?
例えば日本は高齢化が当然進みますが、一方で、AIやロボットが普及しないとどうにもならない、という意味で社会が変わる必要性があり、チャンスも転がっているのではないかと思います。どのあたりに注目していますか?

矢野:私は働き方と価値創造の方法の変化に興味があります。

高齢化による労働力不足をAIで解決というのは目に見えるので分かるのですが、目に見えない、データに見えないものに興味があります。会社員時代はCRMやプロダクティビティーツールを扱っていて、働き方がITツールでどう変わるか実感しましたが、今は副業、働き方、起業のしかたがここ10年で変わって色々な生き方ができる可能性が出てきました。それは自分から海外に移住したり、多拠点活動する場合もそうですし、家族の都合、子育て、介護等で時間と場所が制約された場合もそうですが、どんな状況にあっても価値を作れてそれで「成功できる」というモデルケースをたくさん作るのが大切だと考えています。

リモートツールのさらなる進化で場所を超えたチームアップ、海外送金の手法の改善、移民の受け入れに関する英語の公共サービス・サポートツールの進化等。それが結果出生率や、女性の社会進出や、男性の育児参加率の向上、あるいは全体の起業率の増加や、AI時代の失業率を抑えることに繋がると思うので。起業に関しては”挑戦”でなく、誰にでもあたりまえの選択肢になるべきだと思います。

大久保:矢野さんが今後、将来どういうことをしていくのか、したいのか興味があります。教えて頂けますか?

矢野:まだまだ本当に役に立つ情報は隠されていると思うので、世界中のナレッジをオープンに誰でも使えるようにしたいというのと、お金にかわる価値を作る事業、働き方や生き方の多様性を作っていく事業をトライアンドエラーで作っていきたいと思っています。

大久保:創業手帳の読者に向けて一言どうぞ!

矢野:私は誰もが小さくても自分の事業を始められ、成功失敗のノウハウが共有され、自分なりの価値創造ができる世の中をつくることが最も社会的インパクトが大きいと考えてます。私もチャレンジャーとして皆さんとともに少しでも社会を一歩先に進める推進力になれればと思っています。

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