50歳で50事業立ち上げ 「新しい一歩を踏み出そう」著者が語る新規事業成功の心得

創業手帳
※このインタビュー内容は2019年07月に行われた取材時点のものです。

守屋実氏の仕事の極意に、創業手帳代表の大久保が迫ります

(2019/07/09更新)

2019年5月15日に「新しい一歩を踏み出そう―会社のプロではなく、仕事のプロになれ!―(ダイヤモンド社)」を上梓した守屋実氏。起業・投資のプロとしてキャリアを積み、これまで立ち上げた事業の数は50にのぼります。2018年には、印刷や物流業界のシェアリングプラットフォームのラクスル株式会社、介護業界のマッチングプラットフォームのブティックス株式会社2社について、2ヶ月連続でのIPOまで実現しました。

現在では、JAXAの上席プロデューサーとして宇宙産業の新規事業に携わるほか、中国山東省の経済顧問にも就任。ベンチャーキャピタルの役員としても活動するなど、年々活躍の幅を広げています。創業手帳代表の大久保が、豊富な経験や安定感で若手起業家に慕われる「新規事業立ち上げのプロ」に、事業を成功させるコツを聞きました。

起業を考えるにあたって、起業家のインタビューはとても役に立つと思います。冊子版の創業手帳(無料)では、何人もの起業家のインタビュー記事を掲載しています。また、起業後に必要となるノウハウも詳しく解説しています。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

守屋 実(もりや みのる)
1969年生まれ。明治学院大学卒。1992年に株式会社ミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で、新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、株式会社エムアウトを、ミスミ創業オーナーの田口氏とともに創業。複数の事業の立上げおよび売却を実施後、2010年、守屋実事務所を設立。設立前、および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。投資を実行し、役員に就任して、自ら事業責任を負うスタイルを基本とする。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

年の数だけ起業!

大久保:守屋さんは今50歳で、起業、事業の立ち上げが計50回。歳の数と同じだけ事業を立ち上げているのはすごいことだと思います。著書の中で、「量稽古」の重要性について書かれていますが、やはりスタートアップは数をこなす経験が大事でしょうか?

守屋:そうですね、本の題名でもありますが、事業を行うにあたって、まずは「一歩を踏み出す」ことが重要であり、さらに数をこなしていく中で初めて見えてくることがあります。

特にスタートアップでは、どんな事業にも「このパターンは危ないな」、みたいな共通点いくつかありますよね。それは目に見えている現象としての「おカネ」や「販路」の問題だけではなく、「組織」や「起業家自身」が原因であるケースもあります。

ググって無かったら「答えがない」、ワケではない

守屋:自分は、若い起業家がさまざまな課題で行き詰まった時に、相談を受けることが多いです。起業家はどうしても、てっとり早く答えを求めたがります。ネットで検索して答えが出てこなければ、それだけでもう駄目だと思ったり。でも、「ググって見つからないから答えそのものがない」なんてワケはないですよね。答えへのたどり着き方、問題の解き方はいろいろあります。

僕は「ゼロ次情報」と呼んでいるのですが、重要な情報は現場に落ちていたりします

量稽古をしていると、「このパターンであれば、現場に立ち返えれば答えに繋がりそう」といった、何かしらの突破口が見えてくることがあります。単に過去の経験や引き出し、そこからくる発想の柔軟性なんですが、これが場数を踏んでいないと、優秀な起業家でも「道がない」と感じて止まってしまったりする。

新規事業のプロの知恵

行き詰まったら現場に行ってみよう
答えはそこに転がっていることが多い

大久保:起業家からの相談に対して、どのようなスタンスでアドバイスしていますか

守屋:起業家からアドバイスを求められれば、「自分はこう思うよ」という形で話します。その人と僕は違う人間だし、これまでしてきた経験も違う。背景が違うことで、その起業家が全く気づかない別の道を伝えられる可能性はあります。

一方で、そのまま言われたことをやれば正解に辿り着く訳ではありません。選択肢は広がるけれども、参考にしかならない。結局、起業家は自分の判断で信じた道を選ばないといけないと思います。成功してきた起業家は、アドバイスは聞きながらも、やりたいことに対してあきらめない、すごい執念みたいなもの持っていることが多い。アドバイスを求めすぎるのも良し悪しですね。

矛盾するようですが、アドバイスを求めること、アドバイスに頼りすぎず自分を信じ切ることの両方が重要だと思います

難題も、経験で「先」を知っていれば突破できる!

大久保:「創業手帳」も、起業のプロセスには共通点が多いな、という着想から生まれました。

守屋:そうですね。特に「間違える所」は似ている気がします。事業で量稽古をこなしていると、起業にも既視感、デジャブを感じるようになります。これ前も見たな、っていう感覚ですね。

起業が初めてだと、経験したことがない課題に突き当たるとすぐ「まったく答えが分からない、こんな壁はとてもじゃないけれど突破できない」と思いがちです。しかし、1回でも経験していると、「難しいようには見えるけれど、解決できる道はある」ということを知っているので、諦めずに進んでいけたりします。先があると分かっていると、突破しやすいんですよね。そういう、経験によって学んだことを伝えられることが、僕の一つの大きな価値なのかなと思っています。

新規事業のプロの知恵

一度経験していれば、次の難題にも「解決の道」が見えてくる

その先人が経験してきた「間違える所」に着目し、起業後に必要となるノウハウとしてまとめているのが冊子版の創業手帳です。また、ノウハウだけではなく、専門家のインタビューも掲載しているので、具体的で使えるはずです。

仕事のプロになるために、「毎日の棚卸し」をする

大久保:若手ビジネスパーソンや起業家が実力をつけるためにおすすめの方法はありますか?

守屋:僕がやっている方法で、おすすめなのが「日次決算」です。会計という意味の決算ではなく、自分の仕事の価値の日次決算です。

毎日、日次決算を繰り返していって、「今日は何が達成できたのか、できなかったのか」を見える化してみると、進化が早くなります。普段から意識していないと1日は惰性で流れてしまいがちですが、日次決算を行えば、「今日はたいした価値が出せなかった、本当にこの時間の使い方で良かったんだろうか」と反省し始めるわけです。そうすると、自然に時間の使い方や仕事のやり方が磨かれていきます

もちろん、続けるのには根気がいります。続けるために、自分の場合は、グーグルカレンダーに書き込んでしまっています。グーグルカレンダーで管理していれば、毎日必ず見るので楽なんです。詳しいことは本にも書いていますが、日次決算はもう5年くらいは続けていますね。

新規事業のプロの知恵

日次、週次の仕事の棚卸し、決算をしてみよう

「会社のプロ」になるか「仕事のプロ」になるか

大久保:事業は、進めている内に次々と問題が出てきます。どう対処していますか?

守屋:スタートアップは、走りながら対応していく組織ですから、何かと問題は起こりますよね。若いメンバーで組織を膨張させながら、高みを目指して挑戦しているわけですから。なので、スタートアップにアドバイスをする時は、組織をまとめるために、社長に対して客観的な視点から意見を伝えたり、メンバーを最適な役割に調整したりすることもあります。

でも実は、大変なのはスタートアップに限りません。一見平穏に見えて問題の根が深いのが大企業の組織です。日本の会社は同質性が高く、「仕事のプロ」ではなくて「会社のプロ」という集団の場合が多い

大企業にありがちなのが、同質性の高い集団の中で、単に上か下かを問うヒエラルキー構造なので、根本的な考え方や発想の差異が少ないことです。一昔前のように世の中がシンプルで、一定の方向に進めば会社も成長できていた時代は、いわゆる金太郎飴のような組織でも良かったのでしょうが、今は会社に求められる課題解決の内容も複雑になってきています。

大企業の新規事業に非常勤のメンバーとして参画することもありますが、そういうケースでは逆に、こり固まった考え方を壊す役割に回ることもあります。発想を変えると、意外なチャンスがあったりします。

今のように事業の先が読みにくい現代において、組織は常にさまざまな問題を抱えており、それを役割分担しながら解決していく必要があります。だから、メンバーの性質が似すぎていると、問題を解決できる確率が落ちると思います。

各々違う得意分野を持つメンバーが、多様な考えや発想を持ち寄って、その中からより良い意見を採用する方がチームとしての勝率は高くなりますよね。

新規事業のプロの視点

会社のプロVS仕事のプロ あなたはどっち?

今の時代、違う背景を持っているチームが強い

後編では、激動の令和で、新しい事業を始めようと考えている人が持っておくべき視点について聞きます。

守屋さんのような方からアドバイスがもらえると事業も非常に豊かになるでしょう。では、起業家はどのようにしてアドバイスをくれる人をみつけたらよいのでしょうか。たとえば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資してもらうのはよい手だと思います。出資することで一蓮托生になるので、事業を伸ばすために適切な支援をしてくれるはずです。資金調達に関する情報だけをまとめた、資金調達手帳(無料)では、ベンチャーキャピタルから出資してもらうためにできることや、エンジェル投資家の心をつかむ方法など、専門家のインタビューを通じて説明しています。また、Web版の資金調達手帳には資金調達一覧が乗っています。登録しておくと投資家や融資の情報もわかります。

書籍紹介


新しい一歩を踏み出そう! 会社のプロではなく、仕事のプロになれ! 
守屋 実 (著)(ダイヤモンド社)

会社のプロではなく、仕事のプロになれ!1社で30年働くのは、もう無理!
ブティックス、ラクスルを2カ月連続上場に導くなど、これまでに50の新規事業を立ち上げてきたプロが教える「人生100年時代」を楽しむ、新しい働き方とは?「人生100年時代」を全力疾走するための勇気とエネルギーとヒントをもらえる指南書。起業家、起業に興味がある人におすすめの本です。

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