鈴りん探偵舎 奥山夢菜|「Fラン」だからこそできるコンサルティングで周囲を巻き込む

創業手帳

地方小規模大学の学生が中心になって立ち上げたコンサルティングを行う学生ベンチャーに注目

「Fラン」という言葉を知っていますか?いわゆる「Fランクの大学」を指し、定義はいろいろとあるようですが、一般的には「日東駒専産近甲龍よりも偏差値が低い大学」を意味するようです。

この「Fラン」という言葉を逆手に取り、「探偵舎」という遊び心あるネーミングをつけたある地方大学発の学生ベンチャーが話題になっています。

創業手帳代表の大久保が、代表取締役の奥山氏に、立ち上げの経緯や事業内容、「Fラン」ならではのブランディングについてなど、お話を聞かせていただきました。

奥山 夢菜(おくやま ゆめな)
株式会社鈴りん探偵舎 代表取締役
販売士1級、知的財産管理技能士3級
大学時代に文系学生ベンチャーを協力者と共に起業し、秘書、取締役を経験後、現在代表取締役。複業として、ベンチャー経営・会社員・大学院生・個人事業を行っており、その経験から創業塾などでも多数講師を務める。若者目線での、SNSやITツールを活用した業務効率化や販売促進、高校生・大学生のモチベーションアップを得意とし、大学とのコネクションをいかした企業・行政との産学連携支援も行う。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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学生ならではの発想や感覚を生かしたコンサルティング


高校生との打ち合わせ

大久保:まずは、学生ベンチャーとして鈴りん探偵舎を立ち上げた経緯を教えていただけますか。

奥山:はい。創設者である前代表(大学教員)が、当時勤務していた大学である鈴鹿大学内で、享栄学園の創設者、堀英二氏が実際にデパートを設立し、売り場に高校生を立たせ実践型の教育を行った「アメリカ式実務教育」のエピソードにインスピレーションを受けて、2018年4月にゼミナールに所属する学生を中心に設立したのが鈴りん探偵舎です。

もともと大学では経営学が盛んということもあり、探偵と称して学生がコンサルティングをし、自治体や企業などの困りごとを解決しています。前代表の知り合いや地元行政の仕事から始まって、今では全国から多種多様な依頼が寄せられるようになりました。

大久保:中心は学生なのですか。

奥山:メインは学生ですが、わたしのような社会人もいますし、顧問として中小企業診断士の方にもついてもらっています学生は実践的な学びができますし、中小企業診断士は学生の知恵を借りることができるので、全員にメリットがあります。

さまざまな案件を通して、イノベーションを起こし、企業と若者のチャレンジを応援しています。

大久保:具体的にはどんな案件があるのですか。

奥山特産品のプロモーションやグッズの商品企画、店舗改善計画、さまざまなコンサルティングやミステリーショッパー、キッチンカー事業、高校への出前授業など多岐にわたります。大学生のやりたいことと、企業から求められていることをうまくマッチングするようにしていますね。

大久保:実際に活躍されている大学生である山城さんにもお話を聞きたいのですが、実際に印象に残っているプロジェクトはありますか。

山城:わたしは日本経済大学で前代表の授業を受けて鈴りん探偵舎の存在を知り、大学の授業ではないことができるということ、社会に出る前に社会経験ができるということに惹かれて参加しています。

ミステリーショッパーをやるために販売士の資格を取ったりして、同じ目標に向かっている人が集まって同じことに挑戦できるということは純粋に素晴らしい経験でした。

もともと自分が投資をしてみたいと思っていたことから、高校生に銘柄を選んでもらって私たちがその銘柄の株を買うという授業をしたんですが、自分たちの勉強にもなり、高校生にも「今まではニュースに関心がなかったけど新聞を読むようになりました」と言われて、非常に心に残る経験になりましたね。

大久保:高校生が選ぶ銘柄はどうでしたか。

山城:そこはやはり高校生なので「寒くなるから石油がいいと思います!」というような発想だったりして、思うように上がらないことも多かったのですが、それはそれでなぜ下がったのかをみんなで話し合うようにしていました。

大久保:なるほど。鈴鹿大学の学生だけではないのですね。

奥山:鈴鹿大学から始まりましたが、動きに幅を持たせたいということで別組織としたので、三重県内や関西、福岡など、他拠点のいろんな大学生に参加してもらっています。

嗅覚が鋭かったり、何かをやりたいという情熱がある大学生を1箇所に集められるという強みがあると思っています。

「Fラン」の強みを生かす


三重県高校生起業家育成事業

大久保:「Fラン」のブランド力を生かすということを打ち出されていますが、確かに世の中の大学って有名なものはごく一部で、Fランのほうが圧倒的に多いですよね。ということは当然人口も多いということですし。

奥山:はい。「Fラン」というのはいわゆる大衆目線ですので、「Fラン」でもできるのだから、どんな人でも「消費者目線」という視点がビジネスにつながるんだよ、ということを発信していきたいという思いがあります。
大久保:世の中の上位10%向けに作られたサービスや商品もありますが、市場として大きいのは普通の人に向けたサービスや商品ですもんね。

事業をしていて、実感としてどこが受けていると思われますか。

奥山マーケティングとはこうあるべきだという固定概念から離れて、素直な消費者視点が評価されていると思います。これがかわいい、これはかわいくないというのはやはりこの世代の子たちにしかわからない、非常に感覚的なものです。彼らのSNSを見ているポイントや見方は、論理に基づいているものではないので説明できるものではありません。

良くも悪くも先入観がないですね。もちろん学生の言葉は、必要に応じてこちらで翻訳をしてあげないと企業の方に伝わりにくいこともあるので、わたしのような社会人が関わったり、お客様も巻き込んで、全員で作り上げる協働体験が売りなのではないかと思っています。

大久保:わたしは大学院で授業をしているのですが、昼の部の学生は優等生っぽくてマーケティングの本などを読んできていて基礎知識はありますが、型にはまっているところもある。夜間部の学生は、最初「役に立つことしゃべるのかな?」という目でこちらを見ているんですが、面白い話をすればちゃんと聞いてくれますし、「お父さんが鉄工所やってます」というような学生もいて、起業に対しても身近な視点を持っていたりして、興味深いですね。

奥山:わたしも高校は定時制出身でして、その空気感は実感しているところです。進学校出身だったり、いわゆるエリートだったりといった、敷かれたレールの上を走ってきている学生ではない、型にはまっていない学生に注目しています。

大久保:こういった経験は就職活動にも役立ちそうですよね。話を聞いていると資格などを取っている学生もいるようですし、社会経験ということで達成感もあると思いますし。

奥山:そうですね。プロジェクトを通して学生の人となりを見ていたお客さんや顧問の方が、「就職先を紹介してあげるよ」という流れになることもあります

大久保:社会で役に立つためには、学力だけではなく人間力やコミュニケーション力も重要なので、プロジェクトを通してそういうところを感じてもらえたのでしょうね。

奥山:少し前に三重県の起業家育成のプロジェクトがありまして、県内の高校生たちをグループに分けてグループごとにビジネスプランを練るというものだったんですが、プランの締め切りの少し前にある高校生が「自分ひとりでプランを作りたい」と言ってきたんです。最終的にその高校生が最優秀賞を獲得したんですが、ギリギリまでなんとか自分のやりたいことを言語化してやり切るぞという気持ちが伝わってきて、感動しましたね。機会があれば、ベンチャーマインドを育成することができるんだと感じました。

地方の優位性とは


亀山市PR事業

大久保:地方は人口も減少しているし、頑張ってくれる若者がいないと困りますもんね。

奥山:歓迎していただいているのは感じるので、もっといろいろな方を巻き込んでいきたいですね。地方には資源や特産品もありますし、面白い人たちもいて、どんどんつながっていけるので。地方のほうが競合が少なく、トップになりやすいという特徴もあると思っています。

大久保:農業関係の起業家の方が、10年前だと農村に移住しても特有のコミュニティがあって入りにくかったけど、今はみんな人口の減少に危機感を持っているから大丈夫、ということを言ってましたけど、そういった閉塞感みたいなものを感じたことはないですか?

奥山:30ぐらいで東京から来ました、という方だったら違うかもしれないですけど、地元で育ってきて地元の大学に通っている学生に対しては否定的な反応はないですね。むしろ歓迎していただいていますし、アンテナさえあれば地方のほうがなんでもできると感じています

大久保:最後に、この事業の苦労や醍醐味を教えてください。

奥山:学生ということもあって、世代が変わっていくにつれてメンバーも変わっていくので、変えていく部分やそのままコアにしておく部分がきちんと決まっているわけではなく、組織としてそこをどう共有していくかについては非常に苦労している部分です。

教育に関してもなかなか思った通りにはいかないですし、こうすればいいという正解もないので、求心力のある事例や人を立てて、思いを継承していく人を常に確保していかないとということは常に考えていますね。

ただ、普通に働いていたら会えない方と会えたり、やりたいことを情熱を持ってやり遂げ、それを承継できるという点が醍醐味と感じる部分です。わたしは実はトリプルワークをやっているんですが、影響を受けてダブルワークをしている元学生がいたりと、自分が納得して動いていることで誰かのロールモデルになれたということが、素直に嬉しかったですね。

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(取材協力: 株式会社鈴りん探偵舎 代表取締役 奥山夢菜
(編集: 創業手帳編集部)

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