輸入販売で起業する方法や手順、商品の見つけ方や注意点を解説
個人でも起業しやすいが、法令理解とトラブルへの備えが重要に
個人での起業アイデアを模索するなかで、輸入販売に目を向ける方は少なくありません。現代では、Web上でECサービスを展開すれば、個人でも比較的容易に起業できます。仕入れの規模をコントロールして小さく始めれば、相対的に低いリスクで徐々に事業を拡大できるでしょう。
一方で、輸入販売を始めるなら輸入関連の一定の知識や英語力などが求められます。輸入禁止商品をうっかり販売するなどの、法令違反やトラブルを引き起こさないように注意が必要です。
今回の記事では、個人が輸入販売で起業するメリットや注意点、進め方について紹介します。ビジネスアイデアに悩む起業家の方は、ぜひこの記事を参考に輸入販売を検討してみてください。
創業手帳では、起業を考えている方からの「何をいつまでにどう進めたらよいかわからない」という声から、「創業カレンダー」を作成。起業予定日を起点に、前後1年で必要な手続きやおこなっておくべきことを、カレンダー形式でわかりやすくまとめています。無料でご利用いただけますので是非ご活用ください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
輸入販売とは?
輸入販売とは、海外から輸入した商品を日本国内に販売する事業です。輸入に関する最低限の知識は必要なものの、個人でも手がけることができます。インターネットを活用すれば、個人でも手間なく輸入取引ができる時代になったため、輸入販売は手軽で始めやすいビジネスの一つとなっています。
輸入した商品を販売して収益を得る事業
輸入販売は文字通り、海外から輸入して仕入れた商品を主に日本国内に販売する事業です。この後紹介するように、業種としては「貿易業」になりますが、収益モデルは小売業に近く、売上と仕入値の差が総利益となります。
そこから、Webサイトのサーバー費用や在庫の保管費用などの経費を引いた残りが利益になります。利益率がよく高単価な商品を大きな数量で売れれば利益が拡大します。
小売業と同様に、世の中でニーズが高い売れ行き商品を有利な価格で仕入れて販売するのが成功の鍵です。ただし、輸入製品=日本では製造されていない、入手しにくい製品を販売することになります。
起業家のアイデア次第で高単価・高利益率な商品を販売するチャンスが豊富にあるともいえるでしょう。
輸入販売は貿易業の一つ
輸入販売は、貿易業の一つに分類されます。貿易業とは、輸出・輸入(その両方を行う場合も)を主体として行う事業を指します。1人でほとんど在庫を持たずに小規模で始めるものも、倉庫に在庫を保管して大規模に手がけるものも、共に貿易業です。
近年はWeb上で簡単に海外から製品を仕入れられるようになったため、個人の起業としてチャレンジしやすい業種の一つとなりました。
個人でも輸入販売での起業は可能
輸入販売は、事業運営を法人に限定する規定はないため、個人でも起業して運営可能です。Webを活用したECサービスの発達により、現地に行かずとも低リスク、小規模で仕入れられるようになったため、起業や副業で輸入販売を始める方も少なくありません。
ECサイトを立ち上げたり、楽天市場などのECサービスを活用すれば、販売もWeb上で完結させられるため、店舗を持たずに事業運営することも可能です。
個人輸入と小口輸入の違い
個人で輸入販売を手がける場合「個人輸入」と「小口輸入」の違いに留意しましょう。販売目的の輸入は、たとえロットが小さく、また個人事業主による取引でも「個人輸入」にはなりません。
- 個人輸入|個人が自分で使用する目的で輸入するもの
- 小口輸入|主に個人・小規模事業者が販売する目的で輸入するもの
小口輸入は個人輸入よりも関税が高い傾向にあります。もし、個人輸入と偽って販売用商品を輸入すると、脱税にあたりますので避けてください。
輸入販売での起業の準備
輸入販売で起業するうえで、必要な知識や法令などをまとめました。起業に向けて準備を始める前に、一通りおさえておきましょう。
許認可が必要な品目を理解しておく
輸入・販売するうえで、許認可が必要な品目が多数あります。たとえば、以下のような製品が当てはまります。
- 食品全般
- 家電製品
- 医薬品・化粧品
- アルコール類
- 中古品
- 水産物
- 薬物・劇物
自分が販売を検討している製品の許認可の要否と、必要な場合の手続きの方法を確認してください。なお、許認可が必要=法人化必須というわけではなく、個人で許認可を取得可能な品目も多数あります。
一定の英語力はあった方がよい
海外の業者と取引を行う以上、一定の英語力は身につけておきましょう。現代では翻訳ツールが多いですし、日本語で運営されている輸入仲介のECサービスもあります。小規模な事業を営むなら、平時には英語を活用するシーンは意外に少ないかもしれません。
しかし、事業が拡大してくれば、魅力的な仕入れ先を見つけるために自ら海外業者と交渉・相談するケースも想定されます。トラブル発生時には、直接業者とコミュニケーションを取らなければならない可能性もあるでしょう。輸入販売を安全に営み、事業の拡大を目指しているなら、最低限の英語力はつけておくのが得策です。
基本的な貿易関連の知識が必要
貿易に関する法制度や決済方法などの基本的な知識をつけたうえで、起業を進めましょう。先に紹介した許認可が必要な製品や輸入禁止商品、物流の仕組みや関税の仕組みを一通りおさえてください。また、海外との円滑な決済方法や輸入した場合の自分の責任範囲、トラブルが発生したときの相談先なども学んでおきましょう。
本屋やWeb上の知識で、個人として必要な貿易関連の知識は身に着けられます。本格的に、事業をスタートする前に読んでおきましょう。
日本国内の法令遵守は輸入者の責任
基本的に日本国内の法令を遵守する責任は、輸入した経営者が負います。たとえば、輸入した製品の商品表示が日本の法令に乗っ取っていなかった場合は、輸入者がラベルや注意書きを加えるなどして、法令に沿った記載内容に変更しなければなりません。
輸入販売を手がけるときは、日本国内の関連する法規制を正確に理解して、適切に対応しましょう。
必要な資格は特にない
輸入販売を行ううえで、必要な資格は特にありません。ただし、国内で販売するのに個別で資格が必要な商品は、輸入販売でも必要になります。たとえば、魚・肉、加工食品の販売には、食品衛生責任者の資格が必要ですが、これは輸入した該当食品を販売する場合でも同様です。
なお、必要な資格ではありませんが、通関手続きを代行する通関士や貿易実務能力や知識を図る貿易実務検定などを学習して取得すると、輸入販売を営むうえで役立ちます。
ECサービスでの輸入販売の手順
ECサービスの輸入販売を始めるときは、以下の手順で準備を進めましょう。
- 輸入・販売する商品を絞り込む
- 仕入れ先を見つける
- 商品の発注
- 税関で輸入通関手続きを行う
- 販売するECサイトの準備
- 開業に関する手続きをする
輸入・販売する商品を絞り込む
輸入・販売する商品を絞り込むのが最初の作業です。個人が小規模から始める場合は、取り扱う品目数をいたずらに増やさず絞り込んだ方がよいでしょう。また、販売店舗(ECサービス含む)のコンセプトを明確にするうえでは、特定のジャンルの製品に絞るのが得策です。
あとは、日本で売られていないのであれば、日本人が盛んに使うと期待できる商品であれば最良です。広告・宣伝をスムーズに行うためには、自分が詳しいもしくは興味のある商品が適しています。
仕入れ先を見つける
商品が決まったら、取り扱う業者からの仕入れを検討します。いきなり現地へ赴いて交渉するのは個人にはハードルが高いので、輸出を扱うECサービスを活用して、インターネット上で商談を進めるのがおすすめです。
手軽な一方で、不良品などのトラブルのリスクもあるので、複数の業者を見ながら信頼のおける業者と商談を進めましょう。
商品の発注
商談の中では、発注内容を調整します。次のポイントを確認しながら、自分が手がける事業にマッチした業者を利用しましょう。
- 日本への輸出可否
- 最低注文数
- 見積もり価格
具体的な商談を進めるときは、さらに以下の内容を確定させる必要があります。
- 注文者の氏名と連絡先
- 数量・単価・総額
- 輸入方法
- 送料・納期
- 保険料
- その他にかかる手数料
- 決済方法
金額や決済関連が重要なのは言うまでもありませんが、納期にも注意を払いましょう。時間がかかりすぎるのは問題ですが、早すぎると開業前に大量の商品が届いてしまい、保管場所に困ったり、劣化したりするリスクがあります。
輸入販売商品の支払方法は?
輸入の支払方法は、次の3つの方法があります。
- 国際送金
- 電信送金
- クレジットカード
国際送金と電信送金はいずれも、現金を送金する方法で、国際送金の方がより大口の送金に適した手法です。一方で、個人の場合はクレジットカードでの決済が便利です。
外貨を持ち合わせていなくても、現地通貨と日本円の為替を加味してくれますし、カードブランドによってはポイントが付与されてお得に仕入れができます。本格的に事業を始める前に、事業用のクレジットカードを作成しておくのも一案です。
税関で輸入通関手続きを行う
輸入商品は、輸入通関手続きを税関で行う必要があります。通関手続きとは、輸入物品の管理や関税の徴収などの目的で行っているものです。一般的に税関を通さずに海外から輸入をしてしまうと、密輸になってしまいますので気をつけましょう。
通関手続きは個人で行うことも不可能ではありませんが、一般的には通関業者に依頼して代行してもらうのが効率的です。日本通関業連合会や国際フレイトフォワーダーズ協会のウェブサイトにて、通関業者の検索・選択が可能です。通常は、通関手続きの代行に加えて国内の配送地までの輸送も対応してくれます。
初めて利用する際には、まず通関業者に通関業務の委任状を提出します。その後、貨物が到着したら、船積書類(運送書類、インボイス、パッキングリスト等)を速やかに渡しましょう。また、通関完了後の貨物の取扱方法(配送地、配送方法、配送日時など)も連絡しておいてください。
販売するECサービスの準備
商品が揃う前あたりから、販売するECサービスの準備を進めましょう。実店舗で販売をしても「輸入販売」といえますが、個人がスムーズに起業するうえでは、ECサービスで展開するのが得策です。賃料など店舗に関するコストがかかりませんし、陳列など商品管理・店舗管理の手間もなくなります。
Web上で商品を販売する場合、自分でECサイトを開設する方法と、楽天市場などのECモールに出店する方法があります。双方のチャネルを解説して、顧客との接点を増やすのも一案です。
開業に関する手続きをする
開業に関する手続きも、実際に商品を売り始める前に済ませましょう。小規模から始める個人の方は、個人事業主として開業届を出して、事業を始めるケースが多いです。一方で、本格的に取り組むなら、登記して法人化する方法もあります。
実態としては個人事業主で小さく始めて、収入が増えて所得税の負担が重くなってくると法人化を検討する方が多いです。
輸入販売する商品の探し方
輸入販売で起業する場合、何よりもまず「売れる商品探し」が重要です。かつては現地に行って商品探しをする必要がありました。現在では「インターネット」を活用すれば、海外へ渡航せずとも商品を見つけられます。
インターネットで探す
インターネットを活用すれば、日本に居ながらにして商品を探せます。検索エンジンで「日本未発売」などと検索すれば、該当する商品が出てきます。また、イーベイ(eBay)・アマゾン(Amazon)といった海外ECサービスで検索するのも有効です。
ただし、インターネットの難点は、購入して商品が到着してからでないと実物を確認できないことです。不良品・粗悪品を掴まされるリスクのほか、Web上の画像や資料イメージと異なる商品が届く可能性もあります。
不安な方は、やはり現地で商品探しをするのが一案です。また、最初はお試しで少量仕入れるようにすれば、仕入れの失敗による損失を抑えられます。
見本市や展示会で探す
日本を含む世界各地で、見本市・展示会という商品を展示するイベントが開催されています。規模も大小さまざまで、特定のジャンルに狭く絞って展示される場合もあれば、幅広いジャンルの商品が展示されるイベントもあります。
現地に行かなければならないという手間はありますが、実物をみて販売業者と直接コミュニケーションを取ることが可能です。資金に余裕があって英語力に自信がある方はぜひチャレンジしてみましょう。なお、JETROでは、世界中の見本市・展示会の予定を検索できます。
輸入販売で起業するときの必要資金は?
輸入販売の必要資金は、取り扱う商品の仕入れ値に大きく依存します。ただし、無店舗で開業する場合には、比較的少額の初期費用でも始められる業種の一つです。
生鮮食品のように短期間で劣化しない商品の場合で、ひとまず月商1ヶ月分くらいは先行で仕入れる想定で仕入れ代金を確保しましょう。もしPCやネット環境、プリンター、カメラを事業用に購入するなら、これらの備品調達が必要です。
また、ECサービスの利用料がかかります。月額では1~2万円の基本料で済むサービスもありますが、年払いなら30万円前後はみておいた方がよいでしょう。
以上を全て加味すると、たとえば月商30万円で以下のような目安となります。
項目 | 費用 |
仕入れ | 30万円 |
仕入れ以外の運転資金 (無店舗なので費用は小さい) |
10万円 |
PCなど設備一式 | 30万円 |
ECモール利用料 (1年分を一括払いするイメージ) |
30万円 |
100万円前後を用意しておけば、スムーズに開業を迎えられそうです。もし開業費用を抑えるなら、当初の月商を少なめに見積もって最初の仕入れを抑える、PCなどの設備は今あるものを使うなどの対策があります。ECモールを使わずサイトを自作する、もしくは月払いが可能なECモールを利用するなども有効です。
輸入販売での起業の注意点やポイント
輸入販売での企業をうまく進めるためには、次の点に注意しましょう。
- 禁止品目を理解し、販売しないよう徹底する
- 保険へ加入して想定外の事態に備える
- 可能な限り少量から始める
- リサーチを徹底し、商品・販売方法を工夫する
禁止品目を理解し、販売しないよう徹底する
販売が禁止されている商品が多数あるので、あらかじめおさえたうえで、誤って取り扱わないよう注意してください。たとえば、次の様なものが輸入禁止です。
- 麻薬、あへん、覚醒剤ほか指定薬物
- けん銃、小銃などの武器
- 爆発物・火薬類
- 貨幣、有価証券などの偽造品、変造品、模造品
- 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品
販売ができないどころか、輸入した事実が発覚すると処罰対象になるので、輸入しないよう徹底してください。
保険へ加入して想定外の事態に備える
消費者に損害賠償請求を受けたときなどの万が一のトラブルに備えて、保険へ加入しておきましょう。輸入製品の日本国内における責任は、基本的に販売者が負わなければなりません。PL保険(生産物賠償責任保険)に加入して、万が一の賠償請求を受けたときに備えてください。
そのほかにも、事業に対する保険や、ケガ・病気などにおける自身の収入に対する保険など、事業者・経営者への備えになる保険への加入も検討しましょう。
可能な限り少量から始める
輸入販売は、一般の小売業以上に少量から事業を始めることが大切です。初めての仕入れで優良な業者から仕入れられるとは限らないため、粗悪品・不良品を仕入れるリスクがあります。
仮に正常に仕入れられたとしても、仕入れた商品の日本での需要が乏しく売れない恐れもあります。潜在需要はあっても、ECサービス上の流入数がなかなか伸びず、売上拡大に時間がかかる可能性もあるでしょう。
仕入れロットが多いほど、初期費用が高くなり、失敗したときのダメージも大きくなります。失敗しても軌道修正して再チャレンジできる余地を残すために、小規模から始めることを心がけましょう。
リサーチを徹底し、商品・販売方法を工夫する
徹底したリサーチで、需要が見込める商品を取扱い、さらに広告・販売方法を工夫しましょう。まず、競合が少なく魅力的な商品を見つける必要があります。競合の販売状況、価格帯や利益率なども分析して、安定的な利益が期待できる商品に絞り込みましょう。
また、販売サイトや広告・宣伝も重要です。競合が少ない=日本で販売されていなければ、現時点ではその商品に注目している人が少ない可能性が高いといえます。消費者の興味が多くなければ、ECサイトにアクセスする人も増えないため、なかなか売上につながりません。
商品のターゲットとなる消費者が集まるWebサイトやSNSなどを活用して積極的に情報発信をして、認知度を高める必要があります。商品が魅力的に見えるように広告コンテンツにも工夫が必要です。
輸入販売で日本にまだない魅力的な商品を販売しよう
輸入販売は、ECサービスをうまく活用すれば、比較的少額からでも始められるビジネスです。個人での起業に適したビジネスモデルの一つといえます。
輸入販売を成功させるためには、自分がうまく売り込めそうな、魅力的な商品を見つけるのが何より重要です。自分自身が得意とする領域の商品や、心から魅力的に思えてマーケティングポイントを見つけられる商品を手がけるのがよいでしょう。
今回は、輸入販売の基本的な特徴や、起業プロセス、始める上での特徴をまとめました。この記事を参考にして、輸入販売での起業にチャレンジしてみましょう。
創業カレンダーも無料でご利用いただけます。詳細は上のバナーをクリック!
(編集:創業手帳編集部)