【行政書士監修】定款の事業目的はどう記載すればいい? 起業のスペシャリスト、大久保がアドバイスします

創業手帳

【お悩み相談】定款の事業目的の作成、創業手帳がお手伝いします

【行政書士監修】定款の事業目的はどう記載すればいい? 起業のスペシャリスト、大久保がアドバイスします

会社を作る際、定款に必ず記載しなくてはならない「事業目的」ですが、具体的にどのように記入すればいいのか悩む方も多いはず。そこで、起業を考えているある女性の事業目的の作成を、創業手帳がお手伝いします! 起業を考えている方は、具体的な記載例をぜひ参考にしてください。

のちに目的変更となり書き換えが必要になったり、違反とならないために、最初に定款を作成する際に気をつけておくべきポイントもお伝えします。

創業A子(そうぎょう えーこ)
関西にある芸術大学を卒業後、絵本作家を目指すも思うようにいかず、一般企業に就職。数年勤めるも、やはり絵に関わる仕事がしたいと思い立ち、会社を辞めて人気のギャラリーに転職。親子で来られるギャラリーをオープンしたいという夢を持ち、資金を貯めつつ起業に向けて準備中の30代。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
飯塚正裕

監修:飯塚正裕(いいづかまさひろ)飯塚税理士・行政書士事務所 代表
元立教大学大学院ビジネスデザイン研究科講師
中央大学経済学部卒
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了
著書『改訂版 合同会社設立のすゝめ』他

創業支援に力を入れており、創業時の最大の悩みとなる資金繰りを積極的に支援していくため事務所内に「創業・制度融資支援センター」を設置し、創業融資を積極的に活用している。
融資に必須の事業計画書は、創業者と一緒に市場分析、事業戦略など考察し融資のためだけではなく、今後の経営方針がブレることがないよう経営の指標となるものができるようにサポートしている。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

起業したい!でも定款の事業目的って、何を書けばいいの?

(創業手帳本社にて)

A子

こんにちは!どなたかいらっしゃいますか?

大久保

こんにちは。はい、なんでしょうか?

A子

突然すみません。創業手帳さんのことをネットで知って、相談に乗ってもらえないかと思って来てみたんです。

大久保

なるほど。現在起業を考えてらっしゃるんですか?

A子

そうなんです。今まで自己資金を貯めてきて、やっと起業できそうな段階まで来たんですが、定款の事業目的を書くところでつまずいてしまって…。

大久保

事業目的は自分ひとりで記入するには、難しい箇所かもしれませんね。記載方法に悩まれる方は多いですよ。よかったら、相談に乗りましょう。

A子

本当ですか?助かります!ありがとうございます。

そもそも定款とは?

定款とは、会社の憲法、すなわちルールブックのようなものです。法人を設立する際に必ず作らなければいけない書類で、会社を経営する上で守るべき基本的な規則が書かれています。

記載事項も会社法で定められており、その通りに漏れなく記載することが大切になります。そこに記載する内容は3種類の項目に大別され、それぞれ次のように呼ばれます。

  • 絶対的記載事項(必ず記載しなければならない項目)
  • 相対的記載事項(定款に記載した場合にのみ効力が認められる項目)
  • 任意的記載事項(会社法の規定や公序良俗に反しなければ、盛り込むことが可能な項目)
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    事業目的は必ず記載すべきもの?

    A子さんがどう書いていいか悩んでいる事業目的は、会社はどのような事業をして収益を得るのかを明確にするものです。「絶対的記載事項」に入る項目ですので、どんな会社も必ず記載しなければならない、重要な項目となります。

    事業目的には3つの制約があり、この3つに反する事業内容は認められませんので注意してください。

    • 営利性:利潤を追求することを目的とする事業内容になっているか(ボランティアなどはダメ)
    • 適法性:法律に違反しない事業内容になっているか(麻薬の売買などはダメ)
    • 明確性:誰が見ても明らかに分かりやすい事業内容になっているか(専門用語や難解な表現はダメ)
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    定款の事業目的は将来の書き換えや違反を防ぐため、どんなことに気をつけて書くべき?

    大久保

    どんな事業内容で起業を考えているんですか?

    A子

    若いアートの描き手を応援するために、小さなギャラリーをオープンし、高額だと思われがちなアート作品を、手ごろな値段で買えるネットショップを立ち上げたいと考えています。

    幅広い年代の方が来られるようなギャラリーにしたいんです。なかなか子どもってギャラリーや美術館に入れないイメージですけど、親子で美術鑑賞できるような場があったらいいなと思って。

    大久保

    それはなかなか面白いアイディアですね。

    A子

    こういった事業内容で定款の事業目的を記入するときに、気をつけておきたいのはどんなことでしょうか?

    大久保

    そうですね。事業目的の書き方のポイントとしては、記載数に上限はないため、今後の事業の展開を考えて可能性がある事業は書いておくべしということですね。

    A子

    なるほど。すぐにではないですが、いずれはゆっくりと展示品を楽しんでいただけるように一角でコーヒーなどをお出しするのもいいなあ、なんて夢見ているんです。

    大久保

    実は創業手帳も、カフェを開くことも想定して、事業目的に「飲食店経営」というのは入れてあります(笑)。

    A子

    わあ、創業手帳さんがカフェを?でも今日来てみたら、オフィスというよりもちょっとカフェっぽい感じだなと思ったので、起業家さんたちが気軽に相談に来られるカフェがあったら、いいかもしれないですね!

    将来定款の書き換えや違反にならないために、気をつけておきたいこと

    事業目的で気になるのが、「もし記載されていない事業を行った場合は違反となり、罰則があるのか?」ということではないでしょうか。

    記載されていない事業を行ってはいけないことになっていますが、現状、会社法による罰則規定はありません。ただ、もちろん事業目的は実態にあったものにしておくことが望ましいですし、事業目的以外の事業を営んでいることが取引先や金融機関に分かった場合、信用を失いかねません。

    そのため、設立後すぐには始められない事業でも、将来、事業が拡大していく過程で始める可能性がある事業は書いておくべきです。

    また、事業によっては「古物の販売」など許認可が必要なものがありますが、そういった事業を後で開始しようと思い立ったときに、目的にその文言が記載なしだと、変更登記が必要になります。

    そうなるとかなり手間がかかってしまいますので、変更登記を避けるためにも、許認可が必要な事業を後々やりたいという気持ちがあるのなら、最初から事業目的に含めておきましょう

    許認可が必要な事業の例

    • 旅行代理店
    • 人材派遣業
    • 不動産業
    • マッサージ店
    • 古物の販売

    事業目的の数は10件程度がベスト

    事業目的の数に上限はありません。また、事業目的に記載したからといって必ずその事業をしなければならないわけではありません。事業内容が多岐にわたる商社などでは、事業目的が数十件にのぼることもあります。

    ただ、あまりに多く記載し、実際に行っている事業内容と定款の内容がかけ離れてしまうと、取引先や金融機関からあまり良い印象を持たれない恐れがあります。

    融資を受ける際には、会社の謄本(全部事項証明書)の提出が必須です。こちらに目的も表示されます。また、設立したばかりの会社の創業融資の場合には、会社の資料も少ないため定款の提出を求められることもあります。

    事業目的が魅力的だと、融資が通りやすくなるということはないです。融資の面談時に事業目的に珍しいものなどがあると、話題が広がることはあるかもしれませんが、融資が有利になるということはありません。ただ、目的が多すぎてバラバラだと、メインの事業は何か聞かれますし、なぜその目的を入れているのかなど、確かにあまりいい印象を持たれないこともあります。

    融資の場面では、過去に支払いが遅れる、破産したなどの事故がないか、これから始める事業がうまくいき返済がきちんとできるかといった部分が重要です。

    以上を考えて、現実的に事業目的の数は10件~15件程度がよいでしょう。

    定款の事業目的を実際に考えてみよう

    大久保

    では、実際にA子さんの事業目的を考えてみましょう。まず先ほど言っていた内容を事業目的とすると、次の3つになりますね。

    • 画廊の経営
    • 絵画、彫刻等の美術工芸品の販売
    • 前各号に付帯する一切の業務

    A子

    おお!一気にそれらしくなりましたね!

    大久保

    少し本気を出せばこんなものです。自社で画廊を運営して、販売をするだけであれば、これでも差し支えないと考えられます。ただ、ひとつひとつの事業の可能性を改めて考えていくと、広く意味をとれる文言にしておいた方がいいことがあります。

    A子

    なるほど。というと?

    大久保

    例えば画廊の運営がうまくいき、他者から自分もやりたいからコンサルティングして欲しいといわれるようなことがあって応じることがあるならば
    ・画廊の企画、設計、管理、運営及びコンサルティング
    というようなものも考えられます。

    A子

    コンサルティング…わたしがそんなことできるのかな…。でも、それって3.の「前各号に付帯する一切の業務」に含まれないんですか?

    大久保

    なかなか鋭い質問ですね。はい、厳密にいえば画廊に付随して他社のコンサルティングをしても、この付帯業務の一種とみることは可能です。
    ただ、会社目的に
    ・画廊の企画、設計、管理、運営及びコンサルティング
    を入れて、これを自社のホームページに記載したり、聞かれたときに応えたりすることで、その業務が舞い込むこともあります。

    A子

    なるほど。目からウロコです!じゃあ、ちょっとドキドキしますが、将来のために書いておこうかな。

    大久保

    また絵画を販売するだけでなく、展示会を開いたり、買い取ってレンタルすることも考えられるようであれば、以下のような項目も考えられます。
    ・絵画、彫刻等の美術工芸品の仕入、買取、展示、販売、仲介、レンタル、リース及び輸出入

    A子

    絵画のレンタル、いいですね。いま流行りのサブスクで、月ごとに家に飾れる絵が届くサービスもありますよね。

    大久保

    家の中で毎月新しいアートに触れられるのはいいですね。一定の需要がありそうです。先ほどカフェの話も出たので、
    ・飲食店の経営
    も入れておきましょう。

    A子

    これはぜひ実現したいですね。いつかお客さまに出したいなと、好きなカップをコレクションしているんです。

    大久保

    将来カフェをオープンされた際には、コーヒーを飲みにうかがいたいですね。美術品と一緒に骨董品などを仕入れて販売などもするようであれば
    ・古物の売買
    も入れましょう。

    A子

    北欧のアンティークのカップが好きなんです。画廊で販売するのもいいかもしれませんね。こちらの事業は許認可が必要なのですよね?

    大久保

    はい、そうです。変更登記をしなくて済むように、最初に事業目的に含めておくのをおすすめします。ネット販売は、「絵画、彫刻等の美術工芸品の販売」の【販売】に含まれますが、別項目で設けたい場合は
    ・インターネット等を利用した通信販売
    というのを入れてもよいです。

    A子

    次世代の芸術家を育てるという意味で、将来的には絵画教室なんかもいいなあと思っていますが、そういった目的も入れてしまっていいのでしょうか?

    大久保

    もちろんです。
    ・絵画教室、カルチャー教室等の企画、運営
    となりますね。
    芸術家自身のマネジメントをすることも視野にあれば
    ・芸術家、モデル、タレント等のマネジメント及びプロモート業務
    も入れるといいでしょう。

    A子

    どんどん広がりますね!いろいろと妄想して、楽しくなってきました。芸術家の方の講演会を開くっていうのもいいですよね。

    大久保

    ・講演会、講習会、セミナー等の企画、開催、運営
    を加えましょう。これでそろそろ10個ですね。

    A子

    というと、これで完成ですか?すごい!こんなに短時間ですらすらと書けるとは思いませんでした。

    実際に事業目的を考えるときの注意

    事業目的に実際に入れるかどうかは別にして、設立時に今後の展望をすべて洗い出して、やりたいことを整理することで、他者から「あなたの会社は何ができるの?」と聞かれたときにとっさにできる回答も広がり、業務が広がります。

    つまり、事業目的に記入する項目を考えるということは、しっかりと今後の展望や希望を見据え、整理するいい機会だと言えます。のちのち後悔しないためにも、しっかりと時間を取り、さまざまな可能性を考えてみてください。同じような業種の他企業の事業目的を見ることも、参考になるのでおすすめです。

    最近の動向として、公証役場で定款の認証を受ける前に、定款の中身の事前確認を受けることになっているのですが、この際に事業目的で同じ内容の被りの指摘をされ、修正することが増えているようです。提出前に事業目的の内容が被っていないかどうかを、しっかりとチェックするようにしましょう。

    ホームページに定款の事業目的以外の事業内容を記載したら、どうなる?

    自社ホームページにWEBに登記されている事業目的をそのまま掲載する、あるいは簡単にまとめた感じで掲載するといった会社は多いです。特に、法人設立して最初に作るホームページには、謄本そのままの情報+αくらいしか情報がない会社が多くあります。

    一方、会社の事業目的に登記されていないことをわざわざホームページに記載する会社は珍しいかもしれません。もちろん違法ではないので、記載できないことはありません。

    許認可が不要だったり、BtoCであれば会社の謄本を見られることもほぼないでしょうから、問題になることは少ないかもしれません。一方、BtoBで契約を締結するという場合には、謄本や印鑑証明など公的な証明書類は確認されますので、いざ提携しようとしている事業がホームページには掲載されていたのに、謄本の事業目的に入っていないようなことがあれば、問題となるでしょう。以上の理由から、定款に記載されている事業目的から、あまりにもかけ離れた事業内容をホームページに記載するのは、可能であれば避けたほうがいいでしょう。

    これがA子さんの会社の事業目的一覧です!

    • 画廊の経営
    • 絵画、彫刻等の美術工芸品の販売
    • 画廊の企画、設計、管理、運営及びコンサルティング
    • 絵画、彫刻等の美術工芸品の仕入、買取、展示、販売、仲介、レンタル、リース及び輸出入
    • 飲食店の経営
    • 古物の売買
    • インターネット等を利用した通信販売
    • 絵画教室、カルチャー教室等の企画、運営
    • 芸術家、モデル、タレント等のマネジメント及びプロモート業務
    • 講演会、講習会、セミナー等の企画、開催、運営
    • 前各号に付帯する一切の業務

    こちらがA子さんが設立する株式会社の事業目的一覧となりました。
    将来どんなふうに事業が展開していくのか、今から楽しみですね。
    定款の作成が終了したら、認証方法を選び、受け取る公証役場を決めておきましょう。

    A子

    今日はありがとうございました!一緒に事業内容や自分のやりたいことを考えていく中で、今後の事業展開などを改めて考えることができて、非常に有意義な時間でした。

    大久保

    事業目的を考えることは、自分のやりたいことがクリアになるのでいい機会ですよね。第三者が入ることによって話が広がったり、自分には思いつかないようなアイディアをもらうこともできるので、これから起業する皆さんもできれば誰かに事業目的を見てもらったり、相談できるといいかもしれませんね。

    A子

    本当にそう思いました。これから事業を展開していくのが楽しみです。カフェをオープンした際には、ぜひ遊びに来てくださいね。ご連絡します!

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    (監修: 飯塚税理士・行政書士事務所/代表 飯塚正裕
    (編集: 創業手帳編集部)

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