JULIA IVY福井仁美|メーカーの枠を超えたビジネスモデルを開拓し、美容業界に革新を起こし続ける「ハリウッドブロウリフト」代表の戦略とは

創業手帳woman
※このインタビュー内容は2022年11月に行われた取材時点のものです。

企業の価値は「良いチームを作ること」。業種転換を経て築いた組織の力

全国約6,000店舗のサロンで導入されているアイブロウ施術「HOLLYWOOD BROW LIFT®︎(ハリウッドブロウリフト)」を展開するJULIA IVY。その代表取締役社長を務める福井さんは、ブラジリアンワックスのサロン経営を経て、国内初となる眉毛に使用できる化粧品登録された液剤を開発。美容サロンオーナーからメーカーへ業種を広げ、新しい試みを実践し続けています。

メーカーという括りに留まらない新たなビジネスモデルを確立し、独立が多い美容業界で組織作りにも力を注ぐ福井さんに、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

福井仁美(ふくい ひとみ)
株式会社JULIA IVY 代表取締役社長

早稲田大学第一文学部在学中、女子大生タレントとしてスカウトされ芸能界入り。
2016年にPR会社を設立。全国にアイラッシュ・エステティック・ブラジリアンワックス・ホテルスパなど11店舗をオーナー経営し、数々の人気サロンを立ち上げる他、インフルエンサーマーケティングやコンサルティング事業を展開。
2018年、国内初となる「ブロウリフト®︎」商材の開発に着手。2020年に「株式会社JULIA IVY」を設立すると同時に、アイブロウソリューション®技術『HOLLYWOOD BROW LIFT®』を全国にリリース。講習事業とEC事業を展開し、アイブロウコスメ「LENA LEVI」の日本総代理も行う。
2022年、眉毛美容のジャンルでブロウアーティストという新たな職業を生み出し、女性の雇用と社会進出、女性の起業支援に貢献する『ジャパンアイブロウ協会 (JEBA)』理事長に就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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「人気に左右されないキャリアを築きたい」と起業を決意


大久保:福井さんは、『王様のブランチ』に8年半レポーターとして出演されるなど、長年芸能活動をされていましたが、起業のきっかけは何だったのでしょうか。

福井:元々、結婚する予定で芸能界を引退したのですが、婚約が破綻になってしまったんです。収入がなく、未来が見えない不安をこれ以上味わいたくないと思いました。そして「もう1度自分のキャリアを作りたい」そのために「今までの自分のPR力を活かし、人気に左右されない企業を作ろう」と考えたのが私の起業のきっかけです。

大久保:起業に対して不安はありませんでしたか?

福井:ビジネス番組『賢者の選択』のナビゲーターを務めていたので、インタビュアーとして経営者の方々から、会社を作ることの大変さや成し遂げた時の面白さについて話を伺ってきました。だからこそ「とにかく起業して、会社を作ってみる」という行動に移すことができたと思います。

また、起業したのは29歳の時なのですが、ちょうど大手企業に勤めていた大学の友人たちが、独立し起業したタイミングでもあったんです。そういった身近な友人に話を聞くこともでき、環境に恵まれていました。

ステージごとに訪れる店舗経営の難しさ

大久保:最初はブラジリアンワックスのサロン経営から始められたのですよね。

福井:はい。ブラジリアンワックスのサロンからスタートし、現在は、アイブロウ、ブラジリアンワックス、エステ、アイラッシュのサロンを全国で11店舗経営しています。

大久保:異業界への挑戦ということで、特に1店舗目では大変なことも多かったのではないでしょうか。

福井:めちゃくちゃ大変でした。特に大変だったのは、スタッフ全員に辞められたことですね。創業から2年ほどは、毎日スタッフと一緒に汗水垂らして現場で働いていたのですが、店舗の運営が回り始めた頃、オーナーの仕事に専念しようと、現場に顔を出さずスタッフに任せることが増えたんです。すると、スタッフが皆非常に優秀だったこともあり、「オーナーがこれだけ来なくてもお店が回るんだったら、自分たちでやったほうがいい」と退職されてしまいました。その時に、技術職を雇う大変さを思い知りましたし、スタッフのケアを怠ったことを反省しました。

大久保:技術があるからこそ、腕だけで渡っていくことが可能ですからね。

福井:この一件で、マネジメントの重要性や「このサロンで一緒に働いていくことで掴める未来」を明確に見せることの大切さを実感しました。ただ単に、他のサロンよりも高い給料にすればずっと働いてくれるわけじゃないですから。人間と人間だからこその難しさを痛感しました。

大久保:一般的に、店舗を拡大していく際に経営に躓くという方も多いようです。複数の店舗を経営していくコツや大変だったことを教えていただけますか?

福井:1店舗だけではスタッフたちのキャリアに限界がきてしまうので、「既存の店舗が回るようになったら、その次の店舗を」という形で店舗を拡大していったのですが、特に大変だったのは3店舗目を作った時ですね。2店舗までなら現場をしっかりと見ることができたのですが、3店舗目になると、クオリティーの維持や全員のビジョンを統一させることが難しくなってしまったんです。それまでは、常にみんなと意見を交わしながら勢いで大きくしてきたのですが、阿吽の呼吸でやってきた部分もすべてマニュアルを作成し、会社のビジョンやスタッフのキャリアをきちんと可視化し、わかりやすく伝えていくことの大切さを学んだのが3店舗目の時でした

大久保:2店舗までならパワーと勢いで運営していくことができても、3店舗以上になると難しくなってくるのですね。

福井:そうなんです。さらに店舗を全国に拡大していくと、滅多に会えないスタッフも出てきてしまったので、現場と私を繋ぐ立場のポジションを新たに作りました。現在は11店舗に増え、FC加盟も始まったので、更なる組織改革に取り組んでいます。

ココ重要!
  • 1つの店舗を運営するのと、複数の店舗を運営するのとでは、オーナーの役割やチームとしての仕事の仕方が変わってくる。全店舗で品質を保ち、人材を確保し続けるためには、明確なビジョンの提示やマニュアルの作成など根幹となる部分の可視化が必要。

サロン経営からメーカー業への転換


大久保:現在の眉毛ビジネスを始められたきっかけは何ですか?

福井:20代の頃は、1日も休みがないぐらいの忙しさで芸能活動をしていたので、店舗の運営が安定してきた段階で「いろんな国へ旅行に行きたい」という夢を叶えました。コロナ前は海外に行く度に、その土地ならではの楽しみとして眉毛の毛流れを改善するパーマ(ブロウラミネーション)を体験していたのですが、「日本だったら薬機法に引っかかるだろうな」と思う強い液材を使っていて、日本で眉毛パーマはできないと思っていたんです。でもある時、スタッフの一人が「私もこんなのやってきたんで見てください」と日本で試行錯誤してやっているサロンを発見してきて、衝撃を受けました。もしかしたらこれは日本でもできるのではないか。そんなふとしたきっかけで2018年から液剤の開発を始めました。

海外では、眉毛の毛流れの改善にパーマ液を使っているのですが、日本では薬機法でパーマ液を頭髪以外に使用することが禁止されています。なので、薬機法をクリアし、なおかつ「なるべく低刺激な国産のクリームを開発したい」と考え、2019年に化粧品登録実績として国内初となるオリジナルの液剤の開発に成功しました。まずはブラジリアンワックスサロンのメニューに加え、小規模で施術を始めたのですが、非常に需要が高いことを実感したので、この液剤を自分たちで囲うのではなく、全国に広めるべく株式会社JULIA IVYを設立し、新たにメーカー業を立ち上げました。

大久保:その液剤を使用することによって、どのような効果が得られるのでしょうか。

福井:実は、眉は顔の印象を大きく左右するパーツなんです。でも、日本人は眉癖®︎が強く、横や下に向かって眉毛が生え、毛流れが揃っていない方が多いんです。そういった日本人特有の眉癖®︎に着目した、業界唯一の眉癖矯正技術が「ハリウッドブロウリフト®︎」です。オリジナルの液剤と専用ブラシで毛流れを整えることで、自眉を活かした美しい眉毛に仕上げます。

大久保:ありそうでなかった技術なのですね。

福井:はい。ありそうでなかったですし、開発を始めた当時は、まつ毛やネイルは注目されていたものの、眉毛の施術といえば皮膚に着色するアートメイクがメインでした。毛を抜いたり剃ったりして処理するか、肌に色をつけるといった2つの選択肢しかなかった眉毛業界において、毛流れを意識するハリウッドブロウリフトは革新的な技術となりました。これまでの「眉毛は処理をするもの」という固定概念を覆し、「ケア」に意識を変えることで、多くの方に共感を持ってもらうことができたんです。

また、眉毛業界拡大の追い風になったのは、コロナ禍でのマスク着用です。それまではリップやチークなどを重視していた方も、毎日マスクを着用するようになった結果、マスクに隠れない眉毛が目立つようになり、一気に需要が増えました。 眉毛は「顔の額縁」とよばれるほど顔の印象を左右するパーツです。施術後に「自信を持って顔を出せるようになった」「自分の表情が明るくなった」と、感動して泣いてくださるお客様もいらっしゃいます。人の人生を変えられる技術でありながら、肌に着色したり傷をつけたりするわけではないので、気軽に何度でも変えることができるのもハリウッドブロウリフトの魅力の一つだと考えています。

メーカーの枠を超えた新たなビジネスモデル


大久保:メーカーとして液剤を販売するだけでなく、技術の講習なども実施されていると伺いました。

福井:はい。ハリウッドブロウリフトを導入していただくサロンの方に、液剤の知識や施術技法などのノウハウを学んでいただく講習事業を行っています。全国6都市で地方講習も実施していますが、ブランドの世界観を体感していただき、ワクワク感やモチベーションを高める講習の場として、2022年1月、東京・恵比寿に業界初となる「HOLLYWOOD BROW LIFT®︎フラッグシップスタジオ」をオープンしました。

また、​カリスマ性を重視したオーディションで講師を選んだのも業界初です。美容業界では、講師をスカウトしたり、現役を引退した方が講師になることが一般的ですが、弊社ではサロン現役層の中から講師を選んでいます。講師は裏方の職業なので、人から綺麗に見られることに意識を注ぐ必要はないと思っている方が多く、施術者も「自分はあくまで人を綺麗にしてあげる人なので」と思っている方が多いのですが、やはり施術者は、お客様に「この人みたいになりたい」と思ってもらえる憧れの存在でなくてはならないと考えています。だからこそ、ブロウアーティストを育成する講師陣もカリスマとなる存在を選びました。

大久保:商材を売るだけでなく、技術者の自己実現の後押しもされているのですね。

福井:はい。ビジネスモデルとしては、まず講習に来ていただき、そこで資格を取得すると液剤が購入できるようになるという流れになっています。受講後も講師がサポートしているため、未経験の方が資格取得後サロンを開業し、成功された方もいらっしゃいます。

私たちはB to Bのビジネスモデルですが、先にB to Cにブランディングとマーケティングを行ったのも、業界内では新たな試みでした。業界内におけるメーカーの既存フローは、まずサロンに宣伝し、サロンがお客様に宣伝という流れでしたが、それでは認知にも時間がかかるので、私たちはまずSNSを中心にB to Cへアプローチし、その地域に顧客が既にいる状態でサロンに導入してもらうという、B to CからB to Cという新しい流れを作りました。私たちの最終的なお客様は被施術者であるエンドユーザーであり、施術を受けたお客様に「自信を持てるようになった」、「人生が変わった」と思っていただくことに価値があると考えています。

SNSを上手く運用するコツ


大久保:B to CへのマーケティングはSNSの活用がカギになりますね。上手く活用するコツがあれば教えていただけますか?

福井:共感を呼び、シェアされるような「施術によって人生が好転した体験」を発信するようにしています。モノが溢れている時代だからこそ、人の心を動かすには「ストーリー」が求められる時代です。また、SNSを様々な場面でクオート(引用)することで、顧客とのコミュニケーションが生まれ、エンゲージメントを高めることにも繋がりました。

大久保:SNSは「共感」を重視することが大切なのですね。

福井:本当に共感命です。実は、創業1期目はSNSを駆使してマーケティングを行ったため、広告費は0円でした。スタートアップとして、とにかく必死でしたが、そういった経験を活かし、講習ではSNSの活用法についても指導しています。また、講習はオフラインですが、その後のコミュニケーションはオンラインで行っており、資格取得後も長く寄り添える存在でありたいと考えています。

大久保:集客に重きを置くのではなく、お客様と繋がれるのが本来のSNSのあり方ですよね。

ココ重要!
  • SNSを上手く活用するカギは「ストーリー性」。共感を呼び、拡散されるような体験談を発信することが大切。

一人ひとりの力を活かし、チームで支え合う


大久保:組織作りにおいて大切にされていることがあれば教えてください。

福井:私たちは「一人では見ることができない景色をみんなで一緒に見にいくこと」を大切にしています。美容業界は独立が多い業界ではありますが、やはり一人で見る景色と、みんなで見に行く景色は規模が全然違うので、マンスリーカンファレンスを実施し、予実の発表だけでなく、市場の獲得の意義、社会に残すべきインパクトを共有し、社員や講師陣全員が一丸となって同じ夢を見る仲間でいることが、組織の強みだと思っています。

大久保:具体的な未来を共有していくことが重要なのですね。

福井:そう考えています。あとは、一人ひとりが「ここで働いている自分がかっこいい」と思えることですね。業務を成し遂げた際に、フルマラソンを走り終えた時のような達成感や高揚感を全員で共有することも、プロジェクトを立ち上げ、回していくために大切なことだと考えています。

大久保:それでは最後に、これから起業される方に向けてのメッセージをお願いします。

福井:ハリウッドブロウリフト受講者の中には、脱サラしてサロンを開業される方も多いです。一歩踏み出した先には、これまで見たことのない世界が広がっているので、まずは、その一歩を踏み出す勇気を大切にしていただきたいと思います

起業は楽な道ではないと思っています。だからこそ、「人とどう関わっていくか」が非常に重要になります。分からないことがあったら自分一人で抱え込まず、誰かに聞いてみることが大事です。私も、とにかく人に聞いて教えてもらっていたので。分からない時は誰かに教えてもらうことで解決できることが多いのではないかと思います。

また、チームで支え合うことでお互い成長し合うことができるので、良いチームを作ることが企業としての価値であり、創業者や代表としての価値だと考えています。私も現在進行形で組織作りに力を注いでいますが、ぜひ素晴らしい仲間とともに素晴らしいチームを作ってもらえたらと思います。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社JULIA IVY 代表取締役社長 福井仁美
(編集: 創業手帳編集部)



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