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CRUST JAPAN株式会社 Travinder Singh|食品ロスのアップサイクル事業が注目の企業

食品ロスのアップサイクル事業で注目なのが、Travinder Singhさんが2019年にシンガポールにて創設し、2021年に日本法人を立ち上げたCRUST JAPAN株式会社です。

近年、まだ食べられる食品の廃棄問題が世界規模で取り上げられています。世界中で年間に廃棄される食べ物の量は約13億トンにのぼり、そのうち日本では612万トン、東京ドーム約5個分の食糧廃棄があるといいます。今この瞬間にも、食べるものがなく、栄養失調や病気にかかり、飢えで苦しんでいる人たちが世界中に大勢いるにもかかわらずです。

そもそも日本は食料自給率が低く、2020年時点で37.17%(カロリーベース)しかありません。食料の多くをわざわざ外国から購入して賄っています。
にもかかわらず、これほどの食糧が無駄に廃棄されているというのは非常にもったいないお話です。
もっとも、各国がビジネスの視点でせめぎ合い、自国の食糧を少しでも多くよその国に買ってもらって外貨を稼ぎたいという思惑も背景に潜んでいると思いますので、一概に日本が無駄な輸入を繰り返しているとは言い切れません、が、現に貴重な食糧がその本来の役目を果たすことなくただのゴミとなっている事実は受け止めるべきだと思います。

将来的には世界規模での人口は増加の一途をたどると予想されており、このままでは深刻な食糧不足が起きると危惧されてもいます。
また、廃棄量が増えることは単に食品を無駄にするというだけではなく、廃棄処理をするための工程が増えるということでもあります。それは今まさに目指している「脱炭素社会」への足かせにもなるのです。

こうしたまだ食べられるにもかかわらず捨てられてしまう食品群に新たな命を吹き込み、人々に求められる商品によみがえらせるフードテックな取り組みに、今注目が集まっています。

CRUST JAPAN株式会社の食品ロスのアップサイクル事業の特徴は、食品ロスを原料とし、それとは別の新しい製品によみがえらせ、原料が最後まで消費されるサイクルを回し続けているという点です。

今回はCRUST JAPAN株式会社のゼネラルマネージャー吉田紘規さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

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・このプロダクトの特徴は何ですか?

日本国内の農家、企業や組織、食品工場、ホテルやレストランから出たロス食品(まだ食べられるのにも関わらず、廃棄される予定だった食品)を「アップサイクル」ー 新たにおいしい製品に生まれ変わらせ、食品ロスの削減はもちろん、持続可能性を高めています。


・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?

企業、組織、国内食品メーカーの加工工場や農家、ホテルやレストランはもちろん。「食品ロスが出て困っている。なんとかそれらを活用して、地域振興につなげたい!」という各都道府県や自治体の皆様にも、是非利用していただきたいです。

・このサービスの解決する社会課題はなんですか?

日本では食品廃棄物が年間約2,500万トン排出されています。驚くことに、その内の600万トン以上が消費期限前に破棄され、ロスになっています。食品ロスの問題は、環境問題にも大きな影響を与えており、食品ロスが原因で排出される温室効果ガスは、航空業界全体で年間に排出される温室効果ガスの約4倍の量にも及ぶそうです。
CRUSTでは「アップサイクル」というソリューションを提供することで、こうした食品ロスや温室効果ガスの削減に取り組んでいます。CRUST Group 全体で、2030年までに世界全体の食品ロスを1%削減することをミッションとしています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

企業や個人のSDGs、食品ロスへの注目はコロナによってもたらされた生活や思想の変化によって加速度的に進んでいるのですが、それでもほとんどの企業にとってアップサイクルという事業自体に全く馴染みがないために、ビジョンとそれを達成するための仕組みを説明してもなかなか理解されませんでした。
食品ロスをアップサイクルするためには、まず食品ロスを見つけるところから商品化、流通まであらゆる企業の協力が前提となりますので、新規性の高いものを受け入
れづらい日本社会では本当に苦労しました。
それでもシンガポール親会社の成功事例や海外ではすでに多くの企業や個人がアップサイクルに積極的であることなどを繰り返し説明しました。
徐々に興味を示してくださる企業が出てきてくださり、実際に商品化してからは多くの企業から話を持ちかけられるようになり、現在に至ります。

・今の課題は何ですか?

より多くの商品を展開し、事業を拡大していくうえでの第一の課題として、ロス食品やアップサイクル商品に対して、まだまだ理解が少なかったり、誤解されてしまっている点が沢山あります。
例えば、「アップサイクルしている商品だから安いイメージ」や「食品ロス=廃棄されているもの=もう食べられないもの」など、解決しなくてはいけない課題は様々です。
今後より多くのアップサイクル商品が受け入れられて、食品ロスを継続的に有効活用することが当たり前の世の中にするためには、関わる企業が単なる収益を得るだけでは十分ではありません。おいしい事を大前提として、製品づくりをしていくことはもちろん。一般商品からは得られないメリットがある事や、地球環境への配慮の必要性をより多くの人々に正しく理解して頂く必要があります。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

アップサイクルは耳馴染みがない言葉のため、現代的な聞こえ方がするかもしれませんが、日本人の”ものを大事にしてもったいないを無くそう”という古来の考えに現代のテクノロジーをかけ合わせた、生まれるべくして生まれたハイブリッドだと思います。”おいしいとソーシャルグッドを両立したアップサイクル商品”を提供することで企業も消費者も、有意義で晴れ晴れした気分になれる、食品ロスの削減と地球の温暖化ストップに参加出来る、そのような日常を日本中に創る会社を目指しています。
今後はアップサイクル商品を手に取るのが当たり前になり、それがサステナブルな社会への大きな一歩になると確信しています。

・読者にメッセージをお願いします。

日本でも食品ロスをアップサイクルした美味しいビールやノンアルコール飲料などの商品を通して、みなさんの日常の生活の中でお会いできるのを楽しみにしています!
飲むだけで食品ロスへの貢献に繋がりますので、よろしくおねがいします!

会社名 CRUST JAPAN株式会社
代表者名 Travinder Singh
創業年 2021年
事業内容 食品ロスのアップサイクル事業
所在地 大阪府大阪市北区角田町1番12号阪急ファイブアネックスビル GVH#5
回答者プロフィール ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、アメリカに留学、Kapiolani Community College卒業。
帰国後は、 G-STAR RAWにて西日本エリアの営業統括、PING GOLFにて新規事業のセールスリーダーを経験。それらの経験を活かし、2015年に飲食店展開及びインバウンドコンサルを行う。株式会社UTOGARIAを創業。現在は活動内容に感銘を受けたCRUSTの日本での発展に従事。
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カテゴリ 有望企業
関連タグ CRUST JAPAN アップサイクル サーキュラーフード サステナビリティ フードテック 食品ロス
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