サブスクリプションサービスの始め方やメリット・デメリットを紹介

創業手帳

自社のサブスクリプションサービスを成功に導く始め方とは?

近年さまざまなビジネスが生まれている「サブスクリプション」。月額・年額などの料金形態で継続利用する方式のサービスをさします。その市場は確実に拡大しており、成功事例も多くなって来ましたが、一方でビジネスモデルがうまくいかず撤退を余儀なくされたサービスも少なくありません。

この記事ではサブスクリプションサービスをうまく軌道に乗せるためのはじめ方や、成功例・失敗例などを紹介していきます。自社でサブスクリプションサービスへの参入を検討する際の参考にしてください。

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サブスクリプションとは


サブスクリプションは英語で「subscription」と書き、「定期購読、継続購入」という意味です。元々は、主に雑誌や新聞の定期購読を指す言葉でした。現在では、より一般化して、月一回、年一回など定期的に料金を払いながら継続的に利用する形態のサービス全般を指します。

サービスの形態自体は決して最近確立されたものではなく、日本でも新聞・雑誌などの定期購読は以前から存在しました。また、携帯電話・スマートフォンについては従量制との組み合わせではありますが、基本料金の部分については従来より定額となっているケースが多くみられました。

しかし、音楽のSpotify、動画のNetflixなど、以前と異なる新たな分野でのサービスが普及。足元では旅行や食材などサブスクビジネスはより一層の広がりを見せています。

サブスクリプションの市場規模

続いてはサブスクリプション形式のサービスの市場規模を見ていきましょう。近年サブスクリプション形式のサービスが身の回りに増えていることからも分かるように、この形式の市場規模は急成長しています。

市場規模は1兆円目前

市場調査などを強みとする矢野経済研究所の調査によると、2020年のサブスクリプションサービスの市場規模は8,759.6億円で、前年比で約+28%の急激な成長を示しています。


参考https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2696

2021年には1兆円目前まで市場が拡大し、2022年以降も当面は順調な拡大が続くと予想されています。サブスク化できそうなビジネスに心当たりがある企業は、この市場拡大の波に乗り、サブスク化を早期に進めていったほうがよさそうです。

コロナ禍がサブスクリプションの普及につながった可能性

これまでもサブスクリプションサービスを広める動きは散見されたものの「認知されても利用(及び継続利用)が進まない」という悩みを抱える企業が多い状況でした。

しかし、2020年は多くの人がコロナ禍によって生活様式や働き方の変革を迫られる中、そして従来の娯楽や活動が制限される中で、新たなサービスを積極的に試す動きが広がりました。

そのため、サブスクリプションにおいても、登録するだけにとどまらず、実際にサービス体験をする人が増加しました。これによりサブスクリプションサービスの利便性が理解されたために、利用者が増え、先に紹介したような2020年の急速な市場拡大につながったと見られています。

サブスクリプション始め方

続いては、ビジネス経営をしている企業の視点から、実際にサブスクリプションサービスを始める方法を紹介していきます。サブスクリプションを軌道に乗せるためには、コストを過度にかけることなくサービスを普及させ、スムーズに継続顧客を獲得していくことが大切です。

サブスクリプションサービスの3ステップ

サブスクリプションを始める際は、次の3ステップに従って綿密に準備した上で、サービス展開を図ることが大切です。

  • ターゲットとサービスの確定
  • 収益モデルの策定
  • サービスをするためのシステム構築

ターゲットとサービスの確定

まずはじめに行うべきなのは、ターゲットとサービスの確定です。ターゲットについては、マーケティングのように、性別、居住地、職業や性格、生活様式などから「ペルソナ」を設定して、どのような層を顧客に取り込んで行くのか明確にします。

ターゲットを開拓するために、適したサービスを定めていく場合もありますし、自社の特定サービスを普及させるために、ターゲット選定を行う場合もあります。いずれにしても、ターゲットのニーズとサービス内容がうまく合致していることが大切です。このプロセスを誤ると、サブスクリプションサービスを軌道に乗せる難易度は非常に高くなります。

収益モデルの策定

ターゲットとサービス内容が定まってきたら、収益化するまでのモデルを策定します。サブスクリプションモデルはユーザーの参入障壁を下げて集客した後に、定期料金を徴収して安定収益化するケースが多いです。例えば、最初の○ヶ月を無料としたり、機能を制限した無料もしくは低額のプランを設定して、集客効果を高める施策はしばしば導入されます。

集客用のプランを策定する上では次の3点のバランスを取ることが大切です。

  • エントリープランが高い集客効果を持つこと
  • エントリープランと通常プランのギャップによる顧客離脱を抑制すること
  • 顧客に迎合しすぎて収益性を阻害しないこと

サービス展開のためのシステム構築

収益化するまでのプロセスが定まったところで、いよいよサービスを展開するためのシステムを構築します。現代では、ほとんどの場合Webを活用して集客、サービス提供、決済などサブスクリプションビジネスの一連のアクションを行うことになります。

したがって、サブスクリプションサービスの運営と管理に必要な一通りの機能をシステム上に構築することになります。

自社でシステム構築することももちろん可能ですが、近年ではサブスクリプション用のプラットフォームも増えてきています。ここからはプラットフォームを活用した場合と、自社で構築した場合の2つのパターンについて解説します。

プラットフォームの活用

サブスクリプションビジネスを行うのに必要な機能が一通り揃ったプラットフォームサービスが増えてきています。自社でのシステム構築に自信がない、構築費用を削減したいという企業にはプラットフォームの活用がおすすめです。

特徴としては、プラットフォームの費用も月額料金の「サブスクリプション」形態をとっていることです。ビジネスによる収益も月額で安定的に入ってくることから、収益・費用をマッチングさせやすくなっています。

機能の幅はプラットフォームによってさまざま。Webサイト作成の代行、決済機能や商品の配送管理などサブスクリプションビジネスに必要な機能が得られるほか、CRMや販売促進などマーケティングツールの機能まで兼ね備えているものも。また、店舗型、BtoB型など特定の業態のサブスクリプションサービスに特化したプラットフォームもあります。

サービス内容と必要とする機能を踏まえて、適切なプラットフォームを活用するとよいでしょう。

自社でのシステム構築

基本的には自社開発の方が難易度が高くなります。検討できるのは、自社内にシステム開発関連のノウハウを持つ部署があり、また初期投資を大胆に行える企業に限られるでしょう。

月額の料金プランの構築やそれに合わせた決済システム、エントリープランから収益プランへの顧客管理など、通常のECとは異なるサブスクリプションサービス独特の構造に対するシステム構築が必要に。通常プラットフォーム利用より開発に時間がかかるため、サービス開始までのリードタイムも長くなります。

一方で、自社で自由に開発できるため、集客のためのWebも、ビジネス管理ツールなども、ニーズに沿って柔軟に構築できます。また、特にIT系の企業などの場合はサブスクリプションビジネスのシステム開発ノウハウを持つことが将来の強みにもなりうるでしょう。

また、一度構築したのちは、月額料金などが発生する訳ではないので、長期間ビジネスを継続する場合にはかえってコスト優位になる可能性もあります。

サブスクリプションのメリット・デメリット


サブスクリプションはビジネスの運営者と利用者双方にとってさまざまなメリットがあり、そのメリットが魅力的だからこそ順調に普及しています。一方で、デメリットもいくつかあり、ビジネスを軌道に乗せるためにはデメリットの抑制や回避に気を配ることも大切です。

サブスクリプション利用者のメリット

サブスクリプション利用者のメリットはおもに次の3点です。

  • 初期の利用コストを抑えられる
  • 知らなかったコンテンツを試しやすい
  • 物の管理コストが減る

利用者にとっての最大のメリットはやはり初期コストが下がることでしょう。近年サブスク化が進むビジネス領域は、従来であれば、都度商品を購入したり、サービスを利用したりするのに一定の費用がかかる商品・サービスが中心でした。サブスクリプション形式で利用すると、安いものでは一定の条件下で無料であったり、月額で見ると安価で利用できます。

また、これに付随して新しいサービスを試しやすいのもメリットです。初期費用が安いため、新しいものにチャレンジすることへの抵抗が減ります。特に事業者の多くが集客用のお得なプランを設定しているため、この効果はより一層大きいと言えます。

サブスクリプションサービスでは、月額契約する代わりに、サービス利用に必要な設備や商材を「所有しない」形式のサービスが多くなっています。特にBtoB向けのクラウドサービスなどでは多く見られる特徴で、自社で所有する必要がないため、管理コストや保管コストを削減できるのです。

サブスクリプション事業者のメリット

続いて、事業におけるメリットは次の3点です。

  • 継続的な売上が得られる
  • 新規ユーザーの獲得につながりやすい
  • データ活用によるサービスの改善がしやすい

基本的に月額契約を獲得すると、その顧客は継続的な売上をもたらしてくれます。基本的にはサービスの契約を終了して他のサービスを探すことは顧客にとってコストなので、サービスの質が低くなければ、安定収益を享受できる可能性が高いのです。

また、初期コストが安いことが顧客の参入障壁の引き下げに寄与。特に従来のビジネスモデルであれば高額な初期費用が必要であったサービスなどでは、サブスクリプション形式への以降を通じて集客効果を高めることができます。

サブスクリプションサービスは現在ほとんどの場合ビジネス全体をWebを通じて管理します。そのため、顧客情報や、利用状況などさまざまデータが自動的に蓄積。これらデータを活用してスピーディにビジネスの改善や発展を進めることができます。

多くのメリットがあるサブスクリプションモデルですが、もちろんデメリットもあります。あらかじめ確認し、対策を考えた上でサービスの内容を考えましょう。

サブスクリプション利用者のデメリット

まずは利用者のデメリットです。商品やサービス形態によってはデメリットの影響が大きくなりうるので注意する必要があります。

  • 利用しなくても料金が発生する
  • 解約するとサービスが利用できなくなる

サブスクリプションは月額で費用が発生するサービスなので、当然利用しなくても費用が発生します。特に一般的に利用頻度が低いサービスなどにおいては、このデメリットの影響は大きくなるでしょう。

また、基本的にサブスクリプションではモノを所有せずに利用する形態が多いので、解約するとサービスが利用できなくなります。例えばコレクター性の強い商品など長期に渡り所有することが良しとされる商品には不向きです。

ただし、一部のサービスでは一定期間利用すると、自分の専用の商品が手に入るような仕組みを構築して、このデメリットを克服した例もあります。

例えば、こちらの記事で紹介した「AYAME / 株式会社crossDs japan」は一年後にオーダーメイドのパンプスが手に入る仕組みが評価され、日本サブスク大賞2021の特別賞にノミネートされました。

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サブスクリプション事業者のデメリット

サブスクリプション事業者側にもデメリットがあります。これらのデメリットを踏まえて先立って対策を施しておくことが、ビジネス成長の鍵となるでしょう。

  • 利益が出るまで時間がかかる
  • スピーディなサービス品質の改善が必要になる

サブスクリプションはまず低額もしくは無料のプランでユーザーを集めたのち、徐々に有料プランで収益化を図ります。急激に有料プランへの移行を促すと顧客流出につながるので、ユーザーがサービスに慣れたタイミングでスムーズに移行する必要があります。そのため、収益化に至るまで時間がかかる傾向にあり、巷で急成長しているサブスクでも実は現時点では収益が赤字、というケースもあります。

サブスクリプションはサービスを気に入らなければ簡単に解約が可能なシステム。月々かかっているコストが低いため、解約にも抵抗を持ちにくいです。このデメリットは特に、他社でも似たようなビジネスモデルのサブスクリプションを展開しており「移行が簡単」である場合に大きくなります。顧客流出を防ぐ仕組みや、独自性の高いサービス提供、そして継続的なサービス品質の改善が重要です。

サブスクリプション成功例・失敗例

ここからはサブスクリプションビジネスの成功例・失敗例を2つずつ紹介していきます。急速に普及するサブスクリプションサービスは、魅力的なビジネスモデルに見えますが、その実失敗事例も決して少なくありません。

これからサブスクリプションサービスを始めようと検討している企業においては、先行事例を参考に、ビジネスモデルを精査するのがおすすめです。

成功例①キリンホームタップ

キリンビールが運営するビールのサブスクリプションサービスである「キリンホームタップ」。実は2017年から試験的に運用を始めていましたが、2021年から本格稼働。2021年末までに会員数を10万人に増やすことを目標に積極的なマーケティングが行われています。

キリンホームタップの特長は「ビールサーバー」をレンタルすることで、自宅で本格核的な美味しいビールが飲めること。定額制により、従来であれば家庭に置くのはややハードルが高かったビールサーバーを、気軽に利用できるようになったのです。

ビールは鮮度を重視していて工場から直送。また、季節限定のラインナップも含むさまざまなビールを楽しむ事ができるのも魅力です。

企業からすれば、従来は缶単位で購入されていたために、その時々でうつろいやすかったビール顧客の定着が可能に。また、キリンホームタップの場合はビールサーバーによる本格ビールが売りであるため、客単価を高めに維持できているのも収益面で見た場合の成功の秘訣といえるでしょう。

成功例②KARITOKE(カリトケ)

「KARITOKE(カリトケ)」は、ビジネスパーソンに人気の腕時計のサブスクリプションサービスです。腕時計はブランドものになると高価で「一点もの」という印象が強いですが、身なりに気を使う方であれば、できることなら頻繁に取り替えたいとい考えてる方も少なくないでしょう。

「KARITOKE(カリトケ)」はそのようなニーズに着目したサービスで、さまざまなブランドものの時計をリーズナブルな月額料金を支払うことでレンタル可能に。さまざまなプランがあるのも特徴で、最もリーズナブルなプランは3980円から。それでもGUCCIやHAMIRUTONなどの有名ブランドの時計をレンタルできます。また、最上位ランクのプレミアムプランならROLEX、HUBLOTなどの最高級ランクの時計も身につけられるのです。

無料登録後は、約3ヶ月半額で利用できるなど、集客を促進する仕組みを取り入れているのもポイント。おしゃれに気を使うビジネスパーソンのニーズを上手に集めたサービスといえるでしょう。

失敗例①牛角の食べ放題PASS

失敗例の一つ目は牛角の「食べ放題PASS」今ほどサブスクリプションサービスが普及していなかった2019年のこのサービス。サブスクリプションビジネスを検討するうえで注意すべきポイントがいくつもあるので、要チェックの事例と言えます。

食べ放題PASSは月額11,000円で、通常3480円の「牛角コース」が食べ放題になるというもの。決して需要が集まらなかったのではなく、むしろ「人気になりすぎた」ことが失敗の遠因となりました。

2019年11月にサービスが開始されると、年明けからSNSやメディアなどで話題になり購入者が殺到。その結果、対象店舗は顧客が殺到してしまい、通常顧客はもちろん、PASS所有顧客も入りきれない事態となったのです。これによりPASS非所有者からの本来の売上を逃し、いわゆる「機会コスト」が大きくなってしまいました。

さらに、このサービスは顧客が一定以上の頻度で通うと採算割れになるということが判明。焼肉のように原価が高めのビジネスは、期間中の使用回数が増えても「売上」は増えないサブスクリプションサービスには向いておりません。「焼肉業態のサブスクリプションは絶対に成功しない」とまでは言いませんが、少なくとも高度な採算管理が必須だったといえるでしょう。

失敗例②アオキsuitsbox

suitsboxは2018年に紳士服のアオキが運営していたスーツレンタルサービス。最もリーズナブルな月7,800円のプランでは、スーツ・シャツ・ネクタイ各1セットが毎月送られてきます。新しいボックスが届いたら前月のアイテムは返却するシステムです。

クールビズやビジネスカジュアルの浸透などでスーツ離れが進む若者を取り込む目論みで、「プロのコーディネート」や「季節感のあるスーツを揃えられる」のが魅力であり、実際に少なくとも利用者はこれらのポイントを高く評価していたようです。

ところが、同サービスは2018年12月に終了。わずか半年程度の運営期間となりました。その背景は、意外にも40代の顧客が多かったこと。40代の顧客はステータスなども上がり「高めのスーツ」を買ってくれる層で、アオキとしても収益顧客として重視しているターゲットです。

このような購買層を安価なサブスクリプションサービスで取り込んでしまうと、通常のスーツ販売の収益性を大きく圧迫していまいかねません。当初想定していたターゲットとは異なる層を取り込んでしまったが故の失敗であったといえます。

自社ビジネスに適したサブスクリプションの始め方の検討を


足元数年で大きく市場規模が拡大したサブスクリプションサービス。多くの企業が従来はなかった定額制のサービスをはじめ、またビジネスの拡大に成功しています。

しかし、事例の中で紹介したように、その影では収益化がうまくいかなかったり、本来の収益顧客と食い合ってしまうなどの失敗により、早期撤退を余儀なくされた事例もあります。

サブスクリプションビジネスに新たに乗り出す際には、自社のビジネスにとって適切であるかを判断し、顧客ターゲットの明確化や収益モデルの確立したうえで進めていくことが大切です。

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