大学発ベンチャーとは?分類・業種・メリット・デメリット・成功事例をご紹介

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大学発ベンチャーとは大学との関りが深いベンチャーのこと!分類は5つ!業種はIT・バイオなどが多い!


大学発ベンチャーとは、大学との関りが深いベンチャー企業のことで、さまざまな分類や業種があります。

大学発ベンチャーの強みは、大学との関りの深さならではの技術力の高さや、大学教授が多くかかわることにより、彼らのネームバリューを活かせることです。

この記事では、大学発ベンチャーに関するさまざまな知識を提供します。

また、大学発ベンチャーの実際の成功事例もご紹介します。最後まで読んでいただくことで、より大学発ベンチャーに対する興味をお持ちいただけるでしょう。

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大学発ベンチャーとは

大学発ベンチャーとは、大学との関わりが深いベンチャー企業のことです。

大学発ベンチャー企業の強みは、大学の最先端の研究成果を事業に反映させることができる点です。

経済的にイノベーションをもたらすことが期待されています。

大学発ベンチャーを立ち上げる対象者は、大学の教官・学生・研究者などです。大学の関係者が副業として起業するほか、大学の研究成果をいかし新たなビジネスとして立ち上げるケースがあります。

大学発ベンチャーの分類と業種


大学発ベンチャーには、さまざまな分類や業種があります。それぞれ特徴が異なりますので、別々に解説します。

大学発ベンチャーの5つの分類

大学発ベンチャーは、以下の5つに分類されます。

  • 研究成果ベンチャー
  • 共同研究ベンチャー
  • 技術移転ベンチャー
  • 学⽣ベンチャー
  • 関連ベンチャー

では、それぞれについて解説します。

1.研究成果ベンチャー

研究成果ベンチャーとは、大学の研究成果に基づく特許や、新たな技術を事業化するためのベンチャー企業のことです。

従業員は特に博士が多いことが特徴です。

2.共同研究ベンチャー

共同研究ベンチャーとは、企業の創業者の持つ技術やノウハウを事業化する目的で、設⽴5年以内に⼤学と協同研究などをおこなうベンチャー企業のことです。

3.技術移転ベンチャー

技術移転ベンチャーとは、既存事業の維持と発展を目的として、企業設⽴5年以内に⼤学から技術移転などを受けたベンチャー企業のことです。

4.学⽣ベンチャー

学生ベンチャーとは、その名の通り大学と関りが深い学生のベンチャー企業のことです。

5.関連ベンチャー

関連ベンチャーとは、⼤学からの出資があるなど、⼤学と深い関連のあるベンチャー企業のことです。

大学発ベンチャーの業種

大学発ベンチャーの業種には、以下のようなものがあります。

  • IT系(アプリケーション、ソフトウエア、ハードウエア)
  • バイオ・ヘルスケア・医療機系
  • ものづくり系(ITハードウエア除く)
  • 環境テクノロジー・エネルギー系
  • 化学・素材などの自然科学分野(バイオ関連除く)
  • その他サービス

これらを見ると、科学と関りの深い業種が大学発ベンチャーには多いことがわかります。

その中でも特にIT系、バイオ・ヘルスケア・医療機系の事業が多い傾向があります。

ただし、その他サービスの事業をおこなっている大学発ベンチャーも多数あるため、さまざまな業種での企業の道があると考えられます。

【2023年度版】大学発ベンチャーの現状


大学発ベンチャーの数は順調に伸び続けています。基本的には首都圏の有名大学にて設立されることが多いです。

直近7年間の大学発ベンチャーの数

大学の研究成果を利用する大学発ベンチャーは、経済社会に革新をもたらす存在として注目されています。そのため、経済産業省は大学発ベンチャーにおける設立状況・事業環境・成長要因などを調査しています。
直近7年間の大学発ベンチャーの数は、以下の通りです。

年度 社数
2022年度 3,782社
2021年度 3,305社
2020年度 2,905社
2019年度 2,566社
2018年度 2,278社
2017年度 2,093社
2016年度 1,846社

参考:経済産業省HPより

直近7年間のベンチャー企業の数の推移を見ると、順調に伸びていることがわかります。

2022年10月時点の大学発ベンチャー数は、3,782社です。企業数及び増加数ともに過去最高を記録し、2021年度の3,305社から477社増加しています

この傾向から、今後も大学発ベンチャーの数の伸びは大きくなっていくと予想されるでしょう。

大学別大学発ベンチャー数ランキング

最新の大学別大学発ベンチャー数ランキングは、以下の通りです。

順位 大学名 2020年度企業数 2021年度企業数 2022年度企業数
1位 東京大学 323 329 371
2位 京都大学 222 242 267
3位 慶應義塾大学 90 175 236
4位 筑波大学 146 178 217
5位 大阪大学 168 180 191
6位 東北大学 145 157 179
7位 東京理科大学 111 126 151
8位 名古屋大学 109 115 137
9位 早稲田大学 90 100 128
10位 東京工業大学 98 108 119

参考:経済産業省HPより

ランキングを見ると、旧帝大や早慶といった超難関大学がメインです。やはり研究に力を入れている大学ほど大学発ベンチャーが生まれやすいのでしょう。

細かく見ていくと、大学発ベンチャー数は東京大学が2020年と2021年に引き続き1位となり、2022年は371社です。2022年の2位は京都大学の267社、3位は慶応義塾大学の236社で大幅に増加し上昇しました。

また、2022年の4位は筑波大学の217社、5位は大阪大学の191社となりました。中でも、慶應義塾大学と筑波大学は前年度と比べて大幅に増加しており、大学間のベンチャー創業競争が活発だとわかります。

都道府県別大学発ベンチャー数ランキング

最新の都道府県別大学発ベンチャー数ランキングは、以下の通りです。

都道府県名 2020年度企業数 2020年度順位 2021年度企業数 2021年度順位 2022年度企業数 2022年度順位
東京都 931 1位 1,117 1位 1,352 1位
大阪府 218 2位 242 2位 271 2位
京都府 196 3位 207 3位 236 3位
神奈川県 150 4位 177 4位 207 4位
福岡県 150 4位 162 5位 162 5位
愛知県 117 6位 132 6位 161 6位
茨城県 101 8位 114 7位 120 7位
宮城県 109 7位 100 8位 112 8位
北海道 77 9位 83 9位 94 9位
静岡県 67 10位 71 10位 79 10位

参考:経済産業省HPより
地域別の大学発ベンチャー数が最多なのは、関東地方です。2020年度・2021年度・2022年度のどの年も関東地方が最も多くなっています。次いで多いのは近畿地方です。

また、2021年度比の増加率が最も多いのも、関東地方です。次いで、中部地方・北海道・東北地方が続きます。都道府県別でみると、東京都が最多で、次いで大阪・京都が続いています。

業種別大学発ベンチャー数

業種別の大学発ベンチャー数は、以下の通りです。

業種 2020年 2021年 2022年
アプリソフトウェア 868社 981社 1,146社
ハードウェア 251社 277社 315社
バイオヘルス 907社 1,021社 1,126社
環境 266社 292社 318社
自然科学 223社 238社 271社
ものづくり 514社 532社 597社
その他 863社 1,086社 1,309社

2020年~2022年までの3年間で、その他を除いて最も多いのは、アプリソフトウェアです。次いで、バイオヘルスが多くなっています。

なお、2020年と2021年まではバイオヘルスが1位でしたが、2020年はアプリソフトウェアが1位になりました。

大学発ベンチャーの存続率

米国と日本の大学発ベンチャーの存続率は、以下の通りです。

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
米国設立数 1,080 1,080 987 1,117 996
米国活動企業数 6,050 6,518 6,328 6,567 6,144
日本設立数 203 211 244 275 291
日本活動企業数 2,093 2,278 2,566 2,905 3,305

2021年における米国の大学発ベンチャー設立数は996件、活動中の企業は6,144件あります。2020年と比べて、どちらも数が減少しました。

また、2017年~2021年までの5年間における存続率は、米国が1.8%です。設立数の累計は5,260件で、活動企業数が94件増えています。一方で直近5年間における日本の存続率は99.0%です。設立数の累計は1,224件で、活動企業数が1,212件増えています。

このように、米国と日本の大学発ベンチャーの存続率に大きな差があります。米国が失敗を恐れず次々に挑戦する考えの人が多いのに対し、日本は会社の清算を失敗と捉えてしまう人が多い影響があると考えられているためです。

大学発ベンチャー3つのメリット


大学発ベンチャーのメリットは、以下の3つです。

  • 技術的な優位性がある
  • 参入障壁が高い
  • 大学教授としてのネームバリューを活用できる

では、それぞれについて解説します。

技術的な優位性がある

大学ベンチャーは大学との結びつきが強いため、大学教授などの知識や、充実した研究施設を活用できます。

そのため、一般的なベンチャー企業と比較すると、技術的な優位性があります。特に日本の大学ベンチャーでは、世界トップクラスの技術力を利用していることも多いです。

また、大学ベンチャーはグローバル展開がしやすいです。なぜなら、高い技術力は海外にも浸透しやすいためです。

また、海外の最先端技術とも連携することで、企業としてのさらなる成長が期待できます。

参入障壁が高い

多くの大学発ベンチャーが関わっている業界は、参入障壁が高いです。

なぜなら、多くの大学発ベンチャーは高い技術力を擁しており、これらに対抗することは難しいからです。

そのため、大学発ベンチャーの業界におけるポジションは守られやすいと考えられます。

大学教授としてのネームバリューを活用できる

大学ベンチャーは、多くの著名な大学教授と関わっています。

そのため、大学教授のネームバリューを活かし、他企業や大学と連携することができます。

また、大学教授はさまざまな学会や大会に参加しているため、最新の研究の動向に関する知識が豊富で、それらを自社に取り入れることも可能です。

大学発ベンチャー3つのデメリット


大学発ベンチャーのデメリットは、以下の3つです。

  • ビジネス面での経験不足
  • 業績が短いほど赤字率が高い
  • 小規模な企業が多い

では、それぞれについて解説します。

ビジネス面での経験不足

大学発ベンチャーは、ビジネス面での経験が不足していることがデメリットの1つです。

大学教授は専門分野には特化した知識や技術はありますが、その一方で、企業として必要なマネジメント能力やマーケティング能力は一般企業のビジネスマンと比較すると不足している傾向があります。

そのため、大学発ベンチャーはヘッドハンティングを活用するなどして、ビジネスに明るい人材を確保することが、今後のさらなる発展のために必要となるでしょう。

赤字率が高い

大学発ベンチャーは、赤字率が高いです。その要因としては、開発した製品の製品化率が低いことが挙げられます。

製品の開発にはコストがかかりますが、製品化がされないとコストの回収ができないため、結果として赤字率は高くなります。

小規模な企業が多い

大学発ベンチャーには、年間売上高5,000万円未満の小規模な企業が多いです。

その理由は、先述の通り製品化率が低く売上が上がらないため、企業規模拡大のための原資を調達できないためです。

そのため、大学発ベンチャーで大企業を目指すのは難易度が高いかもしれません。

大学発ベンチャーの成功事例を紹介


大学発ベンチャーにはさまざまな成功事例があり、中には多くの方に知られている有名な企業もあります。では、大学発ベンチャーの成功事例を6つ見ていきましょう。

株式会社ユーグレナ

株式会社ユーグレナは、2005年に東京大学出身者を中心に設立された企業です。

2005年12月には、世界で初めて微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)の屋外大量培養に成功しました。

今現在も、ユーグレナの屋外商業大量培養を実施しているのは、株式会社ユーグレナのみです。

ユーグレナは栄養豊富で、食品や化粧品に使用されています。また、ユーグレナによるバイオ燃料の研究開発もおこなわれています。

2014年に東証1部に上場するなど、大学発ベンチャーの中でも大きな成功を収めている企業です。

株式会社イーベック

株式会社イーベックは、2003年に北海道大学遺伝子病制御研究所名誉教授である高田賢蔵氏が持つ「EBウイルスを利用したヒト抗体産生技術」の実用化を目的として設立されました。

2008年にベーリンガーインゲルハイム社と完全ヒト抗体の開発・製品化についてライセンス契約を締結したことで、海外大手製薬企業との大型契約として注目を集めました。

株式会社ミクシィ

株式会社ミクシィは、1994年に東京大学出身の創業者によって設立されました。

SNSの「mixi」やスマートフォンゲームアプリの「モンスターストライク」が有名です。

株式会社ブイキューブ

ブイキューブは、まず1998年に前身の会社が慶應義塾大学在学中の創業者によって設立されました。

その後2002年には、慶應義塾大学と資本提携をしています。

事業としては、Web会議システムなど、Webを介したコミュニケーション関連サービスが有名です。

サンバイオ株式会社

サンバイオ株式会社は、2001年に米国サンフランシスコ・ベイエリア(シリコンバレー)で、インフォマティクス関連企業の新製品開発責任者だった森敬太氏と、医療情報企業・株式会社ケアネットを創業した川西徹氏によって設立されました。

また、科学顧問に慶應義塾大学医学部生理学教室教授の岡野栄之氏を迎えています。

幹細胞などを用いて細胞・組織・器官の再生や、機能の回復を目指す再生医療に取り組んでおり、2015年にはマザーズに上場しました。

アンジェス株式会社

アンジェス株式会社は、まず前身となる企業が、当時大阪大学医学部で助教授として遺伝子治療の研究に取り組んでいた創業者によって設立されました。

現在は、遺伝子医薬品などの研究開発をおこなっており、新型コロナウイルス感染症向けに関わる研究開発もしています。

大学発ベンチャーを設立するモチベーション


大学発ベンチャーを設立するモチベーションは、まず環境に恵まれていることです。

大学の敷地内にオフィスを構えることが多いですが、静かで仕事に集中でき、学食でリーズナブルな食事を楽しむこともできます。

ストレスに晒されることの多い経営者にとっては、このように癒しのある環境は生産性を高めるための味方となってくれるでしょう。

また、既存概念にとらわれず新しいことにチャレンジできることも、ベンチャー企業の経営者にとっては面白いと思います。

特にノーベル賞を輩出するような研究設備の充実した大学での事業は、まさに画期的なものになるでしょう。

多くの各学会の権威とつながることができる機会があることも魅力です。彼らと切磋琢磨することもできますし、新たな知識を得て成長することも出来ます。

大学発ベンチャーを設立する4つのステップ


大学発ベンチャーを設立するステップは、以下の4つです。

  • 事業構想の検討
  • 事業計画の作成
  • 学内手続き
  • 法人設立手続き

では、それぞれについて解説します。

1.事業構想の検討

大学発ベンチャーを設立するには、まず事業構想を検討します。

つまり、どのような事業を立ち上げるのか考えるのです。世の中には未だに満たされていないニーズがあるのか、そしてニーズの充足が達成可能なのか検討しましょう。

2.事業計画の作成

次に、事業計画書を作成します。

事業計画書とは、新たに事業を始める際に必要となる、事業内容や数値計画等のさまざまな要素をまとめた資料です。主に投資家から資金調達をおこなう際などに活用します。

こちらもあわせてお読みください
【税理士監修】事業計画書とは?4つのメリットや注意点、書き方解説!事業計画書は起業や資金調達の成功ポイント

3.学内手続き

事業計画書が完成したら、学内手続きをおこないましょう。

主に学長による許可を得たり、各種支援施策に関する情報提供や、金融機関や事業会社とのマッチング等の支援を受けたりします。

4.法人設立手続き

学内手続きが完了したら、法人設立手続きをします。法人設立の流れは以下の通りです。

    基本事項の決定
    定款の作成
    定款の認証
    会社の印章の作成
    出資金の払込
    設立時役員等の選任
    登記申請

法人設立は難易度が高く、手間も時間もかかるため、税理士や司法書士などの専門家に依頼するのも手です。

法人設立についてはこちらの記事もご参考ください
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まとめ

大学発ベンチャーには、さまざまなメリットがあります。また、企業数は順調に伸びてきており、今後のさらなる成長が期待されます。

ビジネス面での弱点はありますが、その点は外部から優秀なビジネスマンを雇い入れるなどして解決すべきでしょう。

大学発ベンチャーは研究の成果が事業に活きるため、研究熱心な方にとってはやりがいのある仕事ができるでしょう。

未だ満たされていないニーズの充足のために、ぜひ大学発ベンチャーに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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