ODYSSEY 平岩康佑|元・朝日放送のアナウンサーが起業して「eスポーツ業界」へ飛び込んだ理由【前編】

創業手帳

2018年には市場規模が13倍!eスポーツの急成長と今後の展望

毎年、市場規模が拡大を続ける「eスポーツ」。注目されるeスポーツ業界へ飛び込んだのが、平岩康佑さんです。

平岩さんは、朝日放送のアナウンサーとしてスポーツ実況などを担当。2018年に朝日放送を退職して、株式会社ODYSSEYを創業しました。

アナウンサーからeスポーツ業界に飛び込んだ理由について、創業手帳代表の大久保が聞きました。

平岩 康佑(ひらいわ こうすけ)
株式会社ODYSSEY 代表取締役
2009年米ワシントン州の大学で経営学を学び卒業後、朝日放送にアナウンサーとして入社。プロ野球や高校野球、Jリーグ、箱根駅伝などの実況を担当​。2017年には高校野球の実況が評価され、ANNアナウンサー賞優秀賞を受賞。2018年に同社を退社し、株式会社ODYSSEYを設立。​日本最大級のeスポーツイベント「RAGE」や「CRカップ」などで実況を担当。
テレビ朝日:ReALeレギュラー 著書:KADOKAWA「人生の公式ルートにとらわれない生き方」

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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アナウンサー兼経営者へ転身

大久保:平岩さんは、アナウンサーから経営者に転身した珍しいキャリアですね。大学時代にアメリカの大学で経営学を学ばれていたそうですが、そのときから将来会社を創業したいと考えていたのでしょうか?

平岩:そのときは、会社を創業することはイメージできませんでした。大学を卒業して、アナウンサーになりました。アナウンサーは、みなさんが想像しているよりも会社員らしいといいますか、組織の一部といえます。番組のディレクターやプロデューサーのほうが、クリエイティブな仕事ですね。

大久保:そうなんですか。

平岩:オンエアでは好きなことを話せるので、任されている部分もありますが、何か企画を考えて通したりするのは難しいです。そこは、少し自分に向いていなかったかもしれません。
自分で何かやりたいな、と考えアナウンサーを辞めようと考えました。じつは、アナウンサーを辞めるとき、最初は起業ではなくて転職しようと考えていました。ただ、いいなと思っていた会社に落ちてしまったんです。
そのときにゲームが好きだったので、自分の得意な実況とかけ合わせてやりたいな、と考えたのがスタートです。

大久保:思い切りましたね。当時はそれほど注目されていなかったと思いますが、いまではeスポーツの伸びは、すさまじいものがあります。eスポーツがこれほど急成長した要因はなんだと思いますか?

平岩:スマホや配信プラットフォームが普及したことは大きいと思います。
配信映像を、自分のベッドで寝転がりながらスマホで気軽に見られますから。コロナ禍でステイホームが呼びかけられた際に、さらに伸びましたね。

大久保:昔はゲーム機がインターネットにつながっていなかったのですが、いまはつながっているのが当たり前になったことも大きいですね。

平岩:そうですね。インターネットにつながっていない時代は、一緒にプレイするには、同じ場所に集まらなくてはなりませんでした。いまは、家から全世界の人とつながれます。これは大きな違いだと思います。

eスポーツではチームワークも重要

大久保:eスポーツは、個人戦だけではなくてチーム戦もあるようですね。

平岩:チーム戦の場合、協調性も必要になります。協調性がないとチームが勝てません。ゲーミングハウスでメンバーが一緒に生活して、チームワークを高めることもあります。
それぞれの性格をリーダーやコーチが把握し、コミュニケーションを取りながらチームを作っています。

大久保:チームへのスポンサーも増えている印象です。

平岩:海外では、eスポーツのチームや大会にハイブランドがスポンサーにつくのがトレンドになっています。
GUCCI(グッチ)がチームとのコラボ商品を作っていたり、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)が大会のスポンサーをしたりしています。
そのぶん、eスポーツチームやプレーヤーは、コンプライアンスやSNSでの発信についても、しっかりしていかなければなりません。もちろん、すでにしっかりとやっているチームはありますが。

大久保:なるほど。平岩さんの会社も所属している方へ、SNSでの発信について教育をしているのでしょうか?

平岩:基本的には、所属しているキャスターの全投稿を僕が見ています
配信も、なるべく見るようにはしていますね。それで「ちょっと、これは危ないな」と感じたらすぐに連絡して、削除などの対応をしてもらいます。当然ですが、一緒に仕事をする方がよく思わないような投稿は避けたほうがいいです。

大久保:平岩さん自らがチェックしているんですね。

平岩:未来に生まれる利害関係みたいな調整は、代表の僕がするのが一番いいと思っています。

大久保:そうなると、やることが多岐にわたりますね。

平岩:そうなんです。最近は、僕自身が出演する仕事を少し減らしています。自分が表に出るよりは、調整やマネジメントに時間を使うようになってきました。

アナウンサーのスキルは経営にも活きる?

大久保:アナウンサー兼経営者となりましたが、アナウンサーのスキルが会社経営に活かされたことはありますか?

平岩:プレゼンテーション能力は、アナウンサーの経験が活きていると思います。
何かを簡潔に説明することは得意ですし、ビジネスにおいても大事なスキルになります。何がポイントなのかを把握する能力も大事です。
ポイントを把握したうえで、どう伝えるかが勝負なので、アナウンサーの経験は活きていますね。

大久保:私も会社の代表なのでわかるのですが、プレゼンテーション能力は大事です。会社の代表は、自ら営業する機会も多いですからね。

平岩:うちの会社は、僕が営業を全部やっています。まだ会社の規模が小さいこともありますし、そのほうが早いですから。

eスポーツのビジネスモデル

大久保:いまのeスポーツは、広告ビジネスの要素が強いのでしょうか?

平岩:いまは、スポンサーがいて成り立っています。大会やチームそのものにスポンサードしていることが多いです。
チームスポンサーであれば、ユニフォームに企業やブランドの名前を入れたり、所属している選手が商品の広告をしたりしています。
ゲームはSNSに強いので、毎日のように何かしらのゲームがトレンド入りしています。そうなると宣伝効果も高いので、スポンサーとして参加してくれる企業がいるという状況です。

大久保:eスポーツに詳しくない人間からすると、構図がよくわからない点があります。プレーする人とスポンサーする企業とゲーム会社が存在するイメージでしょうか?

平岩:eスポーツのメインはゲーム大会です。選手が居て、大会の運営が居ます。
一番強いステークホルダーは、ゲーム会社です。
サッカーや野球の場合、競技そのものは誰のものでもありません。サッカーや野球の権利をどこかの会社が持っていませんよね。ですので、大会をやろうと思えば、誰でも場所さえあればできます。
でも、eスポーツの場合はゲーム会社が販売しているゲームを使って大会を開催しようと思っても、ゲームの権利は会社にあるわけです。いくらお客さんが集まっても、ゲーム会社がゲームの使用を認めてくれないと大会は開けません。

大久保:なるほど。ゲーム会社の許可がないと大会の開催すらできないと。

平岩:そうです。ただ、ゲーム会社にとっては、eスポーツ大会に自社のゲームが使われることはプロモーションになります。

ODYSSEYの事業内容

大久保:平岩さんが代表を務めるODYSSEYは、大会が開かれた場合にどのような立ち位置になるのでしょうか?

平岩:当社は少し特殊です。事業としては大きく2つあります。

1つがeスポーツに特化した出演者のマネジメントです。僕を含め、eスポーツのキャスターが6人所属していて、年間で600以上の放送やイベントに出演しています。ゲームの理解が必要なので、アナウンススキルだけだと難しいです。

もう1つが代理店事業です。eスポーツ大会の中継制作やイベント運営の請負もおこなっています。

大久保:キャスターの腕によって大会の盛り上がりも変わるのでしょうか?

平岩:変わりますね。eスポーツの現場は、基本的にゲームの音と解説、実況の声と観客の歓声しかありません。
もちろん、主役は選手ですが、僕らの声が場の盛り上がりを左右します。

大久保:なるほど。eスポーツは、ここ数年で一気に伸びました。昔から業界を見てきた平岩さんが感じた変化を教えてください。

平岩:eスポーツは、2018年に前年比で市場規模が13倍になりました。なので、2018年が「eスポーツ元年」と呼ばれています。
そこからずっと成長を続けています。規模や注目度は、やはり大きくなりましたね。

出典:Gzブレイン

eスポーツという言葉自体も全然知られていなかったのが、知られるようになりました。ゲーム大会の賞金額もすごい額になりましたね。国内で一番高い賞金総額が3億円という額ですから。
いまでは芸能人の方がゲーム好きを公言して、ゲーム配信したりしています。そのおかげでゲームの印象が良くなったと思います。
誰かがゲームをしている姿を見る、という文化自体が形になっていると感じますね。

トップレベルのプロゲーマーはここがすごい

大久保:平岩さんは多くのプロゲーマーを見てきたと思います。その中でもトップクラスの人と、そうではない人との違いは何だと思いますか?

平岩:瞬間的な判断力、課題発見力、解決能力はすごいです。あるゲームタイトルでは、1秒間に12個のマルチタスクをやり続けているという研究があります。
自分の位置、複数の仲間の位置、それぞれの必殺技のたまり具合、複数の対戦相手の位置関係などを常に処理しています。それを統合したうえで、勝ちに向かう最短の判断をしていきます。
少しでもずれると負けてしまうので、コンマ何秒の世界です。

大久保:相当な集中力も必要そうですね。プロ選手に若い人が多いのも、判断力が求められるからでしょうか?

平岩:ゲームにもよりますが、eスポーツの世界は20歳を超えると引退を考えるくらいサイクルが早いです。16歳から20歳が黄金期とも言われます。あまりにもシビアな反射神経と動体視力と判断力が求められるからです。
残念ですが、年齢を重ねると難しくなっていきます。経験の力で勝てるゲームもありますけどね。相手がどんな動きをするのかが、経験によって分かります。

大久保:動きがわかるということは、ゲームでも人によって癖のようなものがあるんでしょうね。

平岩:ありますね。僕もプレイ画面を見るだけで、誰がプレイしているか分かりますから。視点の動かし方も人によって違います。

今後のeスポーツ業界

大久保:平岩さんから見て、今後eスポーツ業界はどのように変化していくと考えているかお聞かせください。

平岩:プロ野球のように大きな興行になっていくと思っています。中国を見ていると、とんでもない成長の仕方をしています。観戦枠が1万人のところに35万人が応募してるくらいです。
高齢者の方にも広がっていってほしいですね。のんびりと景色を見るようなゲームもありますから。
いまのようにコロナで家から出られなくても、いろいろなところに冒険できますし、コミュニケーションツールとしても活用できます。
ゲームの中でお孫さんと一緒に冒険できたら、すごく良いと思うんです。脳の活性化にもつながりますし。

すでにありますが、海外ではブックメーカーが増えていきそうです。賭けのようなものですが、これがあると視聴者数が伸びます。
ソニー傘下のSony Interactive Entertainmentが、eスポーツ用の賭けシステムに必要な技術をアメリカで特許出願しました。こうした流れは進むのかもしれないと思っています。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社ODYSSEY 代表取締役 平岩 康佑
(編集: 創業手帳編集部)

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