世界唯一!大学研究室発のカラス誘導型被害対策事業「株式会社CrowLab」

創業手帳

事業内容や創業ストーリー、ワークスタイルについて創業者兼代表の塚原直樹氏にインタビューしました


黒い羽を輝かせ、大きな体で存在感を放つカラス。日本では、カラスによる被害が社会問題となっています。鳥類の中でも知能が高く、ごみを荒らす、人間を威嚇攻撃するなど人間に嫌われたり恐れられたりするカラスですが、そのカラス被害対策の専門業者が存在します。

今回は、大学の研究室から生まれた事業で、科学的根拠に基づき「カラスをだまし、誘導」する対策を提供する、株式会社CrowLab代表の塚原直樹氏にインタビューを実施しました。

株式会社CrowLabのユニークな事業内容、カラス被害対策事業を起ち上げた背景や創業者としての経験・考えについての記事をぜひ、ご覧ください。

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塚原直樹(つかはら・なおき)株式会社CrowLab 代表取締役

1979年、群馬県桐生市生まれ。宇都宮大学農学部卒業、東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了。論文「ハシブトガラスの発声に関する研究」で博士(農学)。総合研究大学院大学助教を経て現職。宇都宮大学バイオサイエンス教育研究センター特任助教も務める。動物行動学・動物解剖学などを専門とし、主に、カラスの音声コミュニケーションに関する研究に従事する。鳴き声を用いたカラスの行動をコントロールする技術を基に、製品やサービスを提供している。著書に『カラスをだます』(NHK出版)。

「カラスとヒトが共存できる社会」を目指すカラス被害対策会社CrowLabとは?

ー事業内容を教えてください。

塚原:私たちは、カラスに関する研究を行い、対策を提案する会社です。事業内容としては自治体向けのカラス対策のコンサルティングや一般企業・農家・個人のお客様などカラス被害にお困りの方に対して現場に最適なサービスや製品を提供しています。

ー「カラスとヒトが共存できる社会」という事業コンセプトはどのような考えから由来するのでしょうか?

塚原:カラスの行動をコントロールして、被害を減らせればヒト側としてハッピーですし、カラス側としてもやたらと駆除されることが減るので平和的な解決になりいいのではないかと考えています。

しかし、カラスの行動を完璧に制御することは不可能です。なぜなら、我々はカラスの行動を制御するための技術を開発し提供してますが、カラスは、もともと生息場所がヒトと重なりますし、空を飛ぶため、物理的に生息場所を棲み分けるのが難しいからです。そこで、ヒト側の行動や意識も変えていく必要もあります。例えば、生ごみや廃棄農作物などをきちんと管理することで無自覚に餌付けしてしまっている状況を改善するなどです。そして、カラスの存在やもたらす被害について、ヒトがある程度許容することも必要かもしれません。ヒト側とカラス側の両方に働きかけ、同じ場所でも滞在する時間帯を分けたり、両者の物理的距離が近づきすぎないように心理的距離を置くことにより、うまく棲み分けることができる可能性があります。その結果、両者の軋轢が減り、カラスとヒトが共存できる社会が実現できるのではないかと考えています。

カラス被害の現状とCrowLabが提供する解決策

ーどのようなカラス被害の相談が寄せられますか?

塚原:まず、自治体で多くいただくご相談は市街地の糞害です。

また、農家の方に関しては、果物や野菜が食べられてしまう被害について、畜産農家の方からは、カラスに家畜がつつかれてしまう被害についてご相談をいただきます。

企業では、従業員が利用する駐車場の車へのイタズラがあります。同じく車への被害として、自動車メーカーさんの一時的に車を保管しておくモータープールでの車に対するイタズラもあります。

あとは、食品工場とかで残渣をつつく被害のご相談も受けます。

個人の方に関しては、ゴミ置き場でのゴミ荒らし被害などがあります。

カラスのお困り相談は多種多様で、業界・組織・法人個人問わずさまざまな相談が寄せられます。

ーさまざまなご相談があるなかで、どのような解決方法やサービスを提供していますか?

塚原カラスの鳴き声を使ってカラスの行動をコントロールするということが私たちが提供するカラス被害対策の基本になります。

私は、カラスの鳴き声に関する研究を19年間してきました。その中で、カラスの鳴き声をスピーカーで再生し、カラスの行動をコントロールする技術を開発しました。例えば警戒する時の鳴き声をカラス被害の現場で再生することによって、カラスにその場が危険なのではないかと勘違いさせて別の場所に移動させ、カラス被害を減らすことが可能です。具体的なサービスは、お客様と音声のライセンス契約をして、音声を提供するとともに付帯サービスとしてスピーカーなどの装置を貸し出すような形です。

ー株式会社CrowLabのサービスを利用したお客様のエピソードを教えてください。

塚原:CrowLabに相談にいらっしゃるお客様は、他のカラス被害対策を試されたけど効果が実感できなかった方が多く、私たちのサービスを利用したことで劇的な効果を得ることができたという声は多数いただいています。

例えば、ワインの生産で有名な北海道の池田町から受けた相談ですが、町が運営するブドウ畑の生産量が9割近くカラス被害により壊滅状態にあったのですが、CrowLabのサービスを導入したらほぼ被害が軽減できたということで大変喜ばれていました。その効果もあり、前年に引き続き今年度も利用していただくことになりました。

研究者のこだわりが見えるカラス被害対策サービスとワークショップについて

ー今、サービスで提供されている音声数としてはどれくらいありますか?

塚原:提供できる音声は無数にあります。弊社の「だまくらカラス」というサービスでは、最初、スピーカーに4種類の音声パターンをインストールしておきます。カラスの慣れなどに伴い、新しい音声パターンを無制限に交換します。音声パターンには、カラスが警戒している鳴き声を主に使っていますが、警戒している鳴き声だけでもかなりの数を保有してます。長年のノウハウにより、より効果を発揮するための、鳴き声の組み合わせ方法や、加工する技術があり、それらにより無数のパターンを作り出すことが可能です。現場により効果的なパターンが異なるため、カラスの反応を考慮しつつ、より現場に適したパターンをサービスの中で提供しています。

ーサービスや研究で使用している音声や剥製ロボット・剥製ドローンなどの開発にあたり大変だった事は何ですか?

塚原:サービスで使用している音声は、カラスの警戒している鳴き声なら何でも良いわけではありません。警戒の鳴き声も様々あり、カラスにとって不自然に思われるような音声を再生するとすぐに慣れます。よりカラスにとって自然な鳴き声の組み合わせや再生方法を見つけることにかなりの年月を費やしました。

ドローンやロボットは、カラスにとってのカラスらしさを知るという基礎研究のための道具として、シンガポール国立大学と木更津高専と共同で開発しました。

ドローンは、最初市販のものを使いましたが、ほとんどカラスが反応しなかったり、最初は少し反応しても数回飛ばすと反応がなくなりました。特に回転翼機と呼ばれる垂直上昇するマルチコプタータイプのドローンはほとんど反応がありません。より鳥の飛行に近い、固定翼機という実機の飛行機に近い物の方が多少反応はありました。ですが、やはり実際の鳥のような羽ばたきが必要だったり、見た目をリアルにする必要がありそうです。現在、剥製の翼を使ったドローンを開発中ですが、飛行制御が非常に難しいという課題があります。

一方、地上のロボットについては面白い成果が出始めています。その研究で、最初にヒトにとっては見た目がリアルな剥製をカラスに見せましたが、カラスは剥製のことを本物のカラスとは認識しませんでした。その原因が、「剥製に動きがない」ことだと考え、動く剥製ロボットを作ったのです。そして、その剥製ロボットをカラスの前で動かしてみると、カラスが激しく反応したのです。この実験から、カラスにとってのカラスらしさには動きがとても重要そうだということが分かってきました。

この基礎研究の結果をふまえ、動きをつけた翼だけのロボットというものを開発していて、製品化を目指しています。本物の剥製の翼を使い、警戒している鳴き声を一緒に流すことでカラスが危機的な状況にあることを再現して、カラスがその場に近づかなくなるというような対策の実現を目指しています。

ー運営しているワークショップはどんな目的で開催していますか?

塚原:カラス被害を減らす上で最も大事な考え方を理解していただくことを目的としています。カラス被害が発生する原因として、カラスの数が多いことが挙げられます。被害を軽減するためには個体数をコントロールしていくということがどうしても必要です。ただ、カラスを追い払うだけだとどうしても対症療法的になってしまうので、根本的に被害を減らすためにはやはり数を減らしていかなければなりません。

カラスの数を減らす対策として、全国の自治体で行われているのは、カラスの捕獲です。私としては、絶対に捕獲に反対というわけではないのですが、カラスは賢いので、餌を取れないような弱いカラスや若いカラスしかトラップに入りません。また、カラスの繁殖力を考えると相当数を捕まえる必要があります。そのため、個体数をコントロールする上で、捕獲はあまり効果的でないことが生態学的にわかっています。

実は自然界の餌が極端に減る冬に、かなりの数のカラスが餓死してる事が考えられます。逆の言い方をすると、冬の餌の量がカラスの個体数を決めています。このように、特定の地域において、その場に存在する餌の量により維持される個体数のことを生態学では「環境収容力」と呼んでいます。

この「環境収容力」の概念を説明するためにワークショップを開催しています。例えばゴミをしっかり管理するとか、畑に廃棄している農作物をしっかり埋めるといった、人間の活動から出てくる餌を減らすことが、カラスの個体数の減少に有効です。そのことを上手く伝えるために、ボードゲームの研究者と共同で開発したカラス被害対策ボードゲームがあります。このボードゲームでは、餌とカラスの関係を理解し、環境収容力の考え方を直感的に学ぶことができます。ワークショップの中でこのボードゲームを使っています。

カラス研究歴19年。科学的根拠に基づくノウハウを蓄積した研究者 塚原氏の創業エピソード

ーカラスの鳴き声の研究を始めたきっかけは何ですか?

塚原:大学生の時に入った研究室の先生に卒論のテーマとしてカラスの音声コミュニケーションに関する研究を勧められたことがきっかけで、それ以来ずっとこのテーマで研究を続けています。

ー研究者から創業者としてカラス対策事業を起ち上げたきっかけを教えてください。

塚原もともと自分がしてきたカラス研究の成果を社会に還元したいという気持ちがありました。大学教員をしながらでもそのような機会もあり、実際に複数の企業と共同で製品の開発もしました。しかし、出来上がった製品を見ると、製品化の際のコストの関係などから、必要な機能が削られ、私が望む形の製品とは程遠いものになり、効果の薄い製品になってしまったこともありました。大学教員をしながら社会に研究成果を還元することは難しいということに気付いたのです。

加えて、コンサルも必要ということに気づきました。カラスの生態に合わせた音声の再生方法が非常に重要で、間違った方法ですとすぐに効果が無くなってしまいます。しかし、その方法は、私の中で言語化できていない暗黙知のようなものもあり、それをマニュアル化することが非常に難しいのです。となると、単に製品を販売してそれっきりでは効果は持続しません。そこで、私自身によるコンサルが必要だと思い、起業を決心しました。

ー経営をするにあたり大切にしている言葉や信念はなんですか?

塚原:私が経営している株式会社CrowLabは、アカデミアから出てきた会社なので、エビデンスや科学的な知見をもとにしたサービス・製品を展開するという思いは大切にしています。

カラスの生態に関する誤った情報やそれをもとに開発された効果的とは思えない対策が世の中に多く出回っているので、科学的根拠に基づいた正しい情報や、適切な対策を提供したいと思った事も私が創業した理由の一つです。

今後も、「カラス対策だったらCrowLabに頼めば安心」だとお客様に感じていただけるよう、よりブランディングに力を入れるためにも科学的エビデンスにこだわり続けたいと思います。

今後の事業展開について

ー海外の研究所とカラスについての共同研究をされているとの事ですが、海外のカラス被害は日本のものと共通するのでしょうか?

塚原:海外にもカラスは居るので、ごみを荒らす、作物を食べてしまうなど、日本と同じような被害はあります。しかし、日本のカラス事情はかなり特殊で、海外では日本ほどカラスの被害がある地域というのはそれほどないです。海外では、一般的な野鳥のひとつという印象かもしれません。

ー今後、世界唯一の「カラス誘導」事業として海外に展開する可能性はありますか?

塚原:そうですね。海外でも局所的にカラスの数が多かったり、実際にお困りの現場もあるので、そのような場所で展開は出来ると思います。例えば、韓国ではものすごい糞害が発生していたり作物が食べられてしまう被害があります。

また、カラス対策のノウハウを横展開させて別の鳥の被害への対策にも着手し始めています。海外では市街地のムクドリや海沿いの海鳥による糞害などは多いです。それらを軽減するサービスも研究開発中です。

著書「カラスをだます」執筆に込めた思い

ー著書『カラスをだます』は、どのような想いを込めて執筆しましたか?

塚原:拙著は、カラスの生態についていろんな方に知っていただき、カラスをもっと身近に感じていただきたいという思いで執筆しました。実は、意外と間違って認識されているカラスの生態も多いです。例えば、カラスは生ごみを匂いで発見していると思っている方は多いですが、実は鼻が悪く、優れた視覚や餌場の記憶によってごみ荒らしをしています。また、超音波を感じ取れると言われることがありますが本当は認識できません。

それらの正しい生態に基づいた効果的なカラス被害対策に関する情報をお届けしたいという思いもあり、執筆しました。

ー著書の中に「カラスを食べる」という章がありますが、私たちがカラスを食べられるようになる日がくるのでしょうか?

塚原:イノシシやシカなどであれば食用として利用することができるわけですが、カラスに関しては捕獲してもただ処分されている現状があります。なので、捕獲されたカラスを上手く利活用できれば有益なんじゃないかと考えました。いろいろ調べてみるとフランスでは、ジビエとしてカラスが食べられていた事実もあり、ジビエのレシピ本に載っていたりします。そこで安全性に問題がなく、栄養価が高ければ利活用できるのではないか、と考えたことがカラスを食べる研究を始めたきっかけです。

実際に調べてみるとカラスはタウリンが非常に多かったり安全性にも問題ないということが検査で明らかになりました。ただ、捕獲やお肉にするためのコストが非常に高く、ビジネスにするには難しいかもしれません。そういった研究内容などを本の中で紹介しました。

ー最後に、読者に経営に関するアドバイスやメッセージをお願い致します。

塚原:個人的な考えとして経営をするにあたり、利益はもちろん大事ですが、利益に関わらず信念を貫くことによって長期的にはその信念が会社のブランドになったり信用につながるので大事なのではないかと思います。私としてもそれを信じて「科学的根拠に基づいたサービス」を信念に置き、事業を続けています。

特に経営がショートしそうなときや苦しい時は、利益優先で考えがちで事業の方向性も誤った方向に進みそうなときもあったのですが、信念を貫くことでそれを免れたので良かったと感じています。

ー貴重なお話、ありがとうございました!
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(取材協力: 株式会社CrowLab/塚原直樹
(編集: 創業手帳編集部)

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