小規模企業共済の貸付制度を使ってみよう!概要から申し込み方法までまとめ

資金調達手帳

貸付制度から退職金まで小規模企業共済を活用しよう


小規模企業共済は、資金繰りに困窮する小規模企業の救済や、退職金制度で生活の安定を図る目的の制度です。
小規模企業救済を活用すれば、無担保・無保証でも低金利での借入れが可能です。また、掛金は所得控除の対象となるため、節税メリットもあります。

小規模企業は掛金の額も一定の範囲で選択できるため、まずは少額からスタートしてみましょう。

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小規模企業共済について知っておこう


小規模の企業は、景気や社会環境の変化によって事業が左右されやすく、経営を安定させるのが困難な場合もあります。
規模が小さいために融資を断られることもあるため、中には資金繰りに悩む事業者もいるかもしれません。

そこで、事業資金を用立てるために役立つのが中小機構の小規模企業共済です。
小規模企業共済の貸付制度は、加入者が積み立てた掛金から貸付を受けられる制度です。

小規模企業の経営者に対して迅速な事業資金の融資を行うほか、退職金制度によって経営者の生活の安定を図る目的で作られました。
まずは、小規模企業共済の特徴から紹介します。

小規模企業共済の特徴

小規模企業共済は、小規模の個人事業主や、共同経営者または会社などの役員が事業の安定化や生活資金確保を目的とした資金を前もって準備するための共済制度です。
運営しているのは、国からの委託を受けた独立行政法人中小機構です。

積み立てた掛金からお金を借りられる

小規模企業共済は、積み立てた掛金からお金を借りられる制度です。
積み立てたお金を借り入れる際は、審査なしで融資を受けられます。

最高2,000万円の融資も可能

小規模企業共済で受けられる借入限度額は、一般貸付けの場合には、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円~2,000万円以内(5万円単位)です。
借りられる限度額は掛金限度内なので、以下の式で計算できます。

掛金月額×加入月数×0.7~0.9=借入れの限度額

正確な限度額を計算する際は、中小機構から送付される「貸付限度額のお知らせ」と書かれたはがきをチェックしてください。

貸付制度で借りられる事業資金の種類

小規模共済の貸付制度では主に事業資金を借入れ可能です。
借入金の使い道によって以下の7種類に分けられます。

・一般貸付制度
迅速に事業資金を借り入れたい場合には、一般貸付制度を利用します。
掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入れ可能です。
利率は年1.5%です。
送付された最新の「貸付限度額のお知らせ」で利用限度額を確認できます。

・緊急経営安定貸付け
経済環境の変化などによる一時的な売上げの減少で、資金繰りが著しく困難な時に利用できます。
経営の安定を図るため、事業資金を低金利で借入れ可能です。

掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で50万円以上1,000万円以内(5万円単位)を借り入れられます。
利率は年0.9%が適用されます。

・傷病災害時貸付け
疾病または負傷が原因で一定期間入院をした場合、または、火災・落雷・台風・暴風雨などの災害により被害を受けた場合に、経営の安定を図るために利用できる制度です。
掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、50万円以上1,000万円以内(5万円単位)を借り入れられます。

さらに、(流動負債-当座資金)+1/2(給与+賃金+その他経費)の計算で算出した額が1.000万円を超える場合にはその額を借入れ可能です。
利率は年0.9%が適用されます。

・事業承継貸付け
事業用資産または株式など取得の事業承継に要する資金を、低金利で借り入れられる制度です。
掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、50万円以上1,000万円以内(5万円単位)で借入れができます。
利率は年0.9%が適用されます。

・創業転業時・新規事業展開等貸付け
創業転業時は掛金納付月数通算制度を利用して、新規開業・転業後に共済契約を再度締結する場合に、事業資金を低金利で借入れができます。

この制度は、共済契約者の事業多角化に要する資金や、共済契約者の後継者が新規開業、あるいは事業多角化に使うための資金を低金利で借入れができるものです。
掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、50万円以上1,000万円以内(5万円単位)で借入れが可能です。
利率は年0.9%が適用されます。

・廃業準備貸付け
個人事業の廃止や会社の解散を円滑に実施するために、設備の処分費用や事業債務の清算といった廃業の準備に要する資金を借り入れられる制度です。
借入れの限度額は、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、50万円以上1,000万円以内(5万円単位)で、利率は年0.9%が適用されます。

・福祉対応貸付け
共済契約者もしくは同居する親族の福祉向上のために、必要な住宅改造資金や福祉機器購入に使う資金を借り入れられます。
借入限度額は、掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、50万円以上1,000万円以内(5万円単位)です。
利率は年0.9%が適用されます。

他社借入れがあっても利用可能

一般的な銀行融資であれば審査があり、他社借入れの件数も確認されます。
他社の借入れが多くある場合には、返済能力が低いとみなされて審査を通過しないこともありますが、小規模企業共済は審査不要で他社での借入れがあっても融資を受けられます

保証人不要

小規模企業共済は保証人も必要なく、無担保でも借入れが可能です。

事業では、災害などで急に資金が必要になったものの、保証人や担保を用意できないケースも珍しくありません。
小規模企業共済であれば災害時でも低金利で貸付けを利用できます。

掛金の範囲で何度も利用できる

小規模企業共済には、借入れの回数制限はありません。
そのため、借入れをしてから再度資金が必要になった場合にも積み立てた掛金の範囲内であれば何度でも借り入れられます。

金利は0.9%または1.5%

小規模企業共済の貸付制度で、金利は一般貸付けで1.5%、特別貸付けで固定の0.9%です。
これはビジネスローンなどと比較しても低金利といえます。資金が必要ではあるものの、できるだけ出費は少なくしたい場合にも、小規模企業共済の貸付制度は有効です。

ただし、小規模企業共済の貸付制度は利息を前もって支払う仕組みであり、資金調達しようとした額よりも受け取った額が少なくなります。
家賃の支払いや買掛金の支払いなどのように、必要な金額が決まっている場合には多めに借り入れていないと足りない場合もあるかもしれません。

資金繰り悪化時に無利子で借りられるケースがある

小規模企業共済は、不景気や事業環境の悪化で資金難となった企業も利用しています。
売上げの減少で資金繰りが厳しくなった場合には、小規模企業共済の特例緊急経営貸付けを利用できるケースがあります。

特例緊急経営貸付けを利用すれば、無利子で事業資金を借入れ可能です。
据置期間も設定されているため、すぐに返済できない場合にも利用しやすいといえます。

退職後の保証も受けられる

多くの人が老後資金を考える時には、退職金についても視野に入れているのではないでしょうか。
小規模企業共済は、経営者や事業主が退職や廃業に備えて資金を準備するための制度で、国が用意している退職金制度のひとつともいえます。

掛金を積み立てておくことで、廃業した時や死亡した時、退職した時に掛金月額・納付月数に応じた共済金が支払われます。
共済金の受け取りは一括払いのほかに分割払いの方式と、一括と分割の併用方式から選択可能です。
共済金の請求は、廃業・死亡・老齢もしくは役員退職時に実施します。

小規模企業共済であれば、独力で経営者の退職金制度を用意できない場合であっても、生活基盤の安定化を図れます。
老後の準備として小規模企業共済の活用も検討すると良いでしょう。

小規模企業共済には節税メリットもある

小規模企業共済は、貸付制度や退職金制度が利用できる上に、節税面でもメリットがあります。
小規模企業共済の掛金として支払ったお金は、全額が経営者の個人所得税の所得控除対象です。

小規模企業共済を利用すると、年間で最大84万円まで控除できます。
例えば、課税される所得金額が1,000万円の場合、掛金月額が1万円だとすると52,400円の節税が可能です。
掛金月額が5万円の場合には、262,200円が節税できます。

節税できる額は課税所得金額や掛金によって異なり、中小機構のホームページでは小規模企業共済制度加入シミュレーションも可能です。
節税額のほか、受け取れる共済金額も計算できるため、加入前に計算することをおすすめします。

加えて、共済金を受け取った場合の税金の扱いは受け取り方によって異なります。
一括受け取りの場合には退職所得になりますが、年金払い受け取りでは雑所得、解約した場合には一時所得です。
間違うことがないように会計処理をしてください。

貸付けを受けるには最低でも1年以上の加入期間が必要な点に注意

小規模企業共済の貸付制度は、小規模企業でも利用しやすく多くのメリットがあります。
しかし、数少ないデメリットが、1年以上の加入期間が求められる点です。

貸付けを利用する条件として、共済契約成立後、貸付資格判定基準日までの掛金納付月数が12カ月以上経過していることがあります。
貸付資格判定基準日とは、貸付資格の判定および、貸付限度額の算定基準となる日のことで、具体的には4月末日と10月末日です。

さらに、4月末日で算定した貸付限度額による貸付けは10月1日から、10月末日で算定し
た貸付限度額による貸付けは翌年4月1日からと定められています。

上記の条件に加えて、貸付資格判定基準日において納付済掛金(前納掛金は除く)の掛金区分ごとに、その納付済の月数に応じて70%から90%までの範囲内で定める割合を乗じた金額が10万円以上であることも条件です。

小規模企業共済に加入する流れ


小規模企業共済に加入するためには、一定の要件を満たさなければいけません。
小規模企業共済の対象となる人や加入手続きの流れを紹介します。

小規模企業共済の対象者

小規模企業共済に加入するためには、常時使用している従業員数が一定以下の人数である必要があります。
具体的には、建設業や製造業・運輸業・サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)・不動産業・農業などを営む場合には、常時使用従業員の数が20人以下の個人事業主または会社などの役員が対象です。

企業組合や協業組合の役員の場合には、常時使用従業員数は20人以下であることが求められます。
もしも2つ以上の事業を行っている時には、主たる事業の業種で加入できるかどうかを判断します。

資料請求

小規模企業共済に加入するためには、まず中小機構が業務委託契約を結んでいる団体または金融機関の窓口で必要書類を受け取ります。
加入する人の立場によって求められる書類が異なります。

書類の記入

小規模企業共済に加入するためには、契約申込書と預金口座振替申出書を提出します。

加えて、個人事業主の場合には確定申告書の控えが必要ですが、事業を始めたばかりで確定申告書がない場合には、開業届の控えを提出してください。

法人の役員の場合には、役員登記されていることが確認できる書類が必要です。
共同経営者の場合には、個人事業主の確定申告書の控えや共同経営契約書の写し、報酬を支払ったことが確認できる書類が必要です。

窓口に提出

小規模企業共済では、郵送による書類の提出は受け付けていません。
必ず窓口に出向いて手続きします。

初回の掛金を現金で支払う場合には、払込区分(1カ月・半年・1年)に応じた金額を用意し、前納する場合は、その分の現金も持参します。

書類の受け取り

申し込んでからおよそ40日程度で、中小機構から「小規模企業共済手帳」と「小規模企業共済制度加入者のしおり及び約款」が送られてきます。
もしも、審査の結果により小規模企業共済に加入できない場合には、約2カ月後に中小機構からそれを通知する書類が送付されます。
申込みの時に支払った現金は、掛金引き落としで指定された口座への振り込まれるため、確認してください。

小規模企業共済の貸付制度を利用するには

小規模企業共済の貸付制度を利用する時にも、窓口での手続きが必要です。
必要書類は以下のものを用意してください。

  • 発行後3カ月以内の印鑑登録証明書
  • 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
  • 貸付金額に応じた収入印紙
  • 共済契約者本人の実印
  • 貸付金借入申込書
  • 共済契約者番号が掲載されている中小機構からの送付物
  • (「貸付限度額のお知らせ」・「借入資格取得通知書」・「ご返済期日到来の案内」または「共済手帳」を用意)

 

貸付金借入申込書に記載して必要書類を提出します。
手続きが完了したら、借入金とともに「貸付金計算書」と「金銭消費貸借契約証書(借主控)」を受け取ります。

小規模企業共済の貸付制度はスピーディーに利用できる点が大きなメリットですが、必要書類が用意できない場合には借入れができません。
印鑑登録証明書は発行して3カ月以内のものしか取り扱ってもらえないため、発行日をよく確認する必要があります。

まとめ

小規模企業共済の貸付制度は、経営が苦しくなった時や資金が急に必要になった時に利用できるもので、掛金の範囲内で速やかに資金調達できます。
無担保・無保証で利用でき、金利も低いため、困窮する企業や起業して間もない事業者の助けになるでしょう。

ただ、この制度は1年以上加入していないと利用できない点に注意が必要です。
加入期間は長いほうが借入れの限度額も大きくなるため、リスクに備えて早い段階での加入を検討してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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