【第2話】退職と会社設立、社会保険への加入 -連続起業Web小説 「社労士、あなたに会えてよかった」-

創業手帳

(連載)独立起業前に読んで納得!社会保険への加入手続きを社労士に依頼する

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【第1話】退職手続きと社会保険 -連続起業Web小説 「社労士、あなたに会えてよかった」-

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前回、あおい社会保険労務士事務所の社会保険労務士 榊原のアドバイスを受けて、4月1日付での起業を決意した竹田は、法務部門責任者として勤務しているイーデザイン社の社長の堀谷へその決意を伝える。堀谷やイーデザインの仲間からエールを送られつつ円満退職を果たし、竹田はついに念願の起業を実現、リンク・エデュケーション社を設立するが、社会保険の加入にあたって予想外に手間取ってしまう。そこで、再び榊原に助け舟を求めるのだが・・・

【登場人物】

竹田 裕二(35) 起業家 (リンク・エデュケーション社長)

資格試験予備校「キャリアセミナー」の講師を経て、IT企業「イーデザイン」へ転職。現在は、オンラインスクール「リンク・エデュケーション」を起業するために奮闘している。

榊原 葵(32) 社会保険労務士(社労士) あおい労務管理事務所 代表

「トヨサン自動車」に勤務し、海外事業部や経営企画室など会社の中枢部門で活躍していたキャリアウーマンであったが、様々な仕事をこなしていく中で「企業は人なり」という言葉を実感し、社会保険労務士へ転進。持ち前のバイタリティで事務所経営を軌道にのせ、現在はスタッフ10名、顧問先200社を抱えている。

起業の意思を伝え、円満退社する

ソース イーデザイン社の社長である堀谷は、竹田を六本木ヒルズのレジデンス棟にある自宅に招き、食事をともにしていた。
 眼下に広がる夜景は、東京タワーやレインボーブリッジがひときわ美しい。

 竹田は、年明け早々に社長室を訪ね、堀谷に独立起業の意思は固いことと、4月1日を会社設立の日に決めたことを伝えた。
 堀谷も、最初はいつも通りあれやこれやと引き止めていたが、今度ばかりは竹田の意思が固いことを感じ取り、今後は同じ土俵に立つ経営者仲間として頑張っていこうという激励の意味も込め、自宅での食事に誘ったのだ。竹田は円満退職ができそうなことに安堵するとともに、堀谷の心遣いに感謝をした。

 堀谷に連れられて彼の自宅に到着すると、テレビや雑誌で見覚えのある可愛らしい女性が出迎えてくれた。堀谷の妻は、紅白歌合戦にも出場し、一斉を風靡したアイドルグループの元メンバーだった。ミリオンヒットを記録した代表曲は、明るくコミカルな歌詞とダンスで、長期デフレに苦しんでいた当時の日本に勇気を与えたものだ。

 竹田は彼女が堀谷の妻であることを知ってはいたが、実際に会うのは初めてで、テレビの中しか見たことのないアイドルが目の前にいることに若干の戸惑いを覚えた。だが、気さくに笑顔を見せる彼女はアイドル時代のイメージそのもので、戸惑いはすぐに消えていった。

 それにしても、堀谷の妻の料理は本当に美味しかった。彼女の北海道の実家から送ってくれたという、鮭や蟹などの海の幸を使った料理は、どれも素晴らしいものであった。
 聞くところによると、彼女は現在も歌手や舞台女優として仕事をしながら、フードマイスターの資格を取るなど、忙しい堀谷の健康を気遣い、献身的に支えているということだ。イーデザインの上場成功には彼女の内助の功も大いにあったのだろう。

 3人での食事を終えた竹田と堀谷は、彼女が淹れてくれたハロッズNo.14の紅茶を口に運びながら、イーデザインを上場させるまでの思い出話や、業務を引き継ぐ後任者のこと、今後のビジネスプランなどを夜遅くまで語り合った。紅茶はいつの間にか、バランタイン17年のロックに変わっていた。

仲間の応援に励まされながら退職、有給消化中も起業準備を進める

乾杯 その後、竹田は後任の法務部門責任者に指名された後輩に仕事を引き継いでいき、2月下旬には一通りの引継ぎを無事に済ませることができた。

 3月からは有給休暇の消化に入る予定だったので、2月末に会社の仲間たちが大々的に送別会を開いてくれた。社員は全体で200人ほどいたが、ほぼ全員が参加してくれたことに竹田は感謝の気持ちでいっぱいになった。

 「竹田さんならきっとうまくいきますよ!」「応援してます!」とかわるがわる声をかけてもらった。祝福されながらこの会社を卒業することができて、竹田は本当に嬉しかった。
 逆に、自分が誰からも応援されないような人間だったら、独立しても上手くはいかないだろうと思っていたので、そういう意味でも大いに励まされたのだ。

 3月は予定通り有給休暇の消化にあて、家族サービスをしたり、会社の登記の準備をしたり、ホームページの作成を発注したりなど、起業に向けての段取りを計画的に進めていった。

会社設立後、社会保険への加入手続を試みたが・・・

ビジネスマン タブレットコンピューター そしていよいよ4月1日になり、竹田の会社「リンクエデュケーション」が設立された。

 会社の登記や税務署への開業の届出などは無事に済み、次は社会保険の加入手続ということになった。
 新しく設立した会社を社会保険に加入させるためには、インターネットで書式をダウンロードして、健康保険・厚生年金保険の「新規適用届」という書類を書けば良いことは、12月にセミナーで会ったときに社会保険労務士の榊原から聞いていた。ぱっと見たところ、さほど難しそうな書類でもない。竹田は自分で書いてみることにした。

健康保険・厚生年金保険「新規適用届」|日本年金機構

 ところが、いざ書き始めてみると、あちこちでペンを握る手が止まってしまう。たとえば、「事業の種類」という項目をとっても、「事業の種類が分かるように具体的に」とあるが、どの程度詳しく書けば良いのか分からない。「健康保険組合名」という欄に至っては、そもそも何を書けば良いのか分からなかった。
 事務所の地図を書く欄もあるが、手書で書かなければならないのか、Google MAPを別添するような形でも許されるのか、迷うことだらけなのである。

 竹田は、会社を設立したばかりの忙しい時期に、「勘弁してくれ」というのが気持ちになった。
 社労士の榊原の話によると、これとは別に、竹田個人が社会保険の被保険者になるための手続(被保険者資格取得届)、竹田の家族を被扶養者に加えるための手続(健康保険被扶養者異動届)が必要とのことであった。

健康保険・厚生年金保険「被保険者資格取得届」|日本年金機構
健康保険「被扶養者異動届」|日本年金機構

 本業を軌道に乗せるために営業周りをしなければならない竹田は、1つ1つの疑問点を潰しながら書類を書き上げる時間がないのは明白であったし、一刻も早く社会保険に加入して保険証を手に入れたいという気持ちもあった。

社労士に社会保険加入手続きの代行を依頼する

 そこで、竹田は榊原の事務所に社会保険の加入手続の代行を依頼することにし、下記のメールを榊原宛に発信した。

あおい労務管理事務所 
社会保険労務士 榊原先生

ご無沙汰しております。昨年12月のセミナーでは、退職の仕方や退職後の社会保険について色々とアドバイスを頂きありがとうございました。

当初の計画通り、4月1日に無事会社を設立することができました。先生からアドバイスを頂いたように、社会保険に加入しようと思うのですが、先生の事務所に代行をお願いすることは可能でしょうか。また、可能な場合はお見積金額をご教示いただけたらと存じます。

株式会社リンクエデュケーション
竹田裕二

 竹田は、インターネットで大体の相場観は掴んでいて、社会保険の加入手続き一式で5万円程度と予想をしていたし、榊原は売れっ子の社労士のようなので、相場よりも高いであろうことを覚悟していた。

 ところが、榊原から返ってきたメールに添付されていた見積額は、社会保険加入手続き一式で4万円。意外な金額である。
 驚いた竹田は、電話を取り、本当にその報酬額で大丈夫なのか榊原に聞いてみた。電話を受けた榊原は、微笑みながら、「電子申請に対応しているからこの報酬額で大丈夫」と回答をしてくれた。さらに話を聞けば、顧客管理ソフトなどIT化された環境で業務の効率化を図っているから相場未満の報酬でも充分に採算が取れるというのだ。

原の事務所に社会保険の加入手続の代行を依頼することにし、下記のメールを榊原宛に発信した。 榊原は余談として語ってくれた。

 「私が以前勤めていたトヨサン自動車でも、工場の製造部門はもちろんのこと、間接部門も含め、日々効率化とコストダウンに取り組んでいた。それは社労士事務所でも同じで、お客様のために経営努力をして、業務の効率化を図っていかなければならないと思っている。」

 「ご存知のように、トヨサン自動車は『トヨサン』ブランドとは別に『レグーザ』という高級車ブランドを設けている。『トヨサン』ブランドの車は手頃な価格で品質の良い車を一人でも多くのお客様に届けることを目指している。一方、『レグーザ』ブランドの車はラグジュアリーなカーライフを楽しんでもらうことに重点を置き、高い付加価値を提供するとともに、それに見合った売価を設定している。」

 「それと同じで、私の事務所では、手続代行や給与計算など基本的な業務は効率化を勧めて手頃な価格で活用してもらい、M&Aのコンサルティングや海外進出のサポートなどでは、それに見合った対価を頂くようにしている。」

 竹田は榊原の話を聞いて、経営者としての明確な考え方と、顧客本位の視点に感銘を覚えた。

 電話の最後に榊原は、社会保険の加入に必要な書類一式を後ほどメールするので、PDFの添付ファイルで構わないので、それらを送って欲しいということであった。

 ほどなくして榊原からメールが届いた。

株式会社リンクエデュケーション
代表取締役 竹田様

お世話になっております。先ほどのお電話の件ですが、社会保険の加入に関しまして、下記の書類の送付をお願いいたします。

  1. 委任状(社会保険加入手続きの委任状)作成
  2. 別添の委任状に記名押印をお願いします。

  3. 新規適用届の作成に必要なもの
  4. 登記簿謄本

  5. 被保険者資格取得届の作成に必要なもの
  6. ・竹田様の現在住所が分かる書類のコピー(運転免許証等)
    ・竹田様の年金手帳 (基礎年金番号が分かるページのコピー)

  7. 被扶養者異動届の作成に必要なもの
  8. ・奥様の年金手帳(基礎年金番号が分かるページのコピー)
    ※奥様が税法上の被扶養配偶者でない場合は、所得の額を証明する書類も
    ・お子様のお名前と生年月日

  9. プラスアルファで教えて頂きたい情報
  10. ・竹田様の月額役員報酬 (交通費等もあればそれらも)
    ・御社の給与の締め日と支給日
    ・御社の電話番号

以上、宜しくお願い致します。

あおい労務管理事務所
社会保険労務士 榊原 葵

 竹田は、これだけの情報を送れば、あの面倒臭い社会保険加入手続きを、まとめて4万円で代行してもらえるのかと思うと、社会保険労務士のことを身近で頼りがいのある存在に思えた。

社会保険への加入完了とアフターフォロー

リラックスする男性 竹田が必要な情報を榊原に送信してから10日ほど後に、榊原からメールが届いた。そのメールにはリンクエデュケーションが社会保険に加入したことを証明する書類がPDFで添付されていた。
 時を同じくして、健康保険協会から保険証も竹田の元へ郵送されてきた。竹田は自分と家族の名前が書かれた保険証を確認し、これで安心して事業に邁進できると思った。

 数日後に榊原から次のようなメールが届いた。

株式会社リンクエデュケーション
代表取締役 竹田様

お世話になっております。保険証は無事に受け取れましたでしょうか。

今回は保険料の納付についてご案内です。

各月の社会保険料の納期限は翌月末日なので、たとえば4月分の保険料でしたら、5月31日が納期限となります。

原則としては、年金事務所から納付書が送られてきて、それに従い納付する形となりますが、「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」に必要事項を記入・押印のうえ、口座振替を利用する金融機関の確認印を受けた後、年金事務所の窓口に提出をすれば、口座振替による納付も可能となります。

「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」は複写式の用紙でインターネット上からのダウンロードはできませんが、年金事務所に行くか、郵送を依頼すれば入手することができます。もちろん、当事務所でも代行可能ですので、必要に応じご相談ください。

今後とも何かありましたら、お気軽にお申し付け下さい。

あおい労務管理事務所
社会保険労務士 榊原 葵

 丁寧なアフターフォローと、大きな事務所を構えながらも、自分のような新規の顧客にも親切に対応してくれるスタンスが竹田には嬉しかった。今後も人事労務関係で何かあれば、是非とも榊原の社労士事務所に依頼しようと竹田は思った。

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(監修:あおいヒューマンリソースコンサルティング 代表 榊 裕葵
(編集:創業手帳編集部)

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