サイバーセキュリティクラウド 小池敏弘|企業の脅威となるサイバー攻撃を遮断!「攻撃遮断くん」「WafCharm」で目指すシェア拡大

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年08月に行われた取材時点のものです。

世界的に希少価値が高いサービスと、シリコンバレーで培った経営術で海外進出

近年、業種や規模を問わずあらゆる企業がサイバー攻撃の対象となっています。デジタル化された情報の改ざんや漏えいなどの脅威に対し、防衛手段として確立されたのがサイバーセキュリティです。

そのような情勢下で急速に市場が拡大しているサイバーセキュリティ業界の中でも、サイバー攻撃を遮断するクラウド型WAF「攻撃遮断くん」や、世界的にも希少性が高いパブリッククラウドWAF自動運用サービス「WafCharm(ワフチャーム)」などの開発・運営を行うサイバーセキュリティクラウドへの期待値が上昇しています。

代表取締役社長兼CEOを務める小池さんは、リクルートでキャリアをスタートし、大きな転機となったシリコンバレーでの経営や、起業を経験した後、同社の経営陣に招かれる形で参画しました。

小池さんがジョインするまでの経緯や、経営上で必要となる基礎体力を培ったシリコンバレー時代の経験について、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

小池 敏弘(こいけ としひろ)
株式会社サイバーセキュリティクラウド 代表取締役社長兼CEO
1983年生まれ。甲南大学法学部卒業後、2006年にリクルートHRマーケティング関西(現リクルート)に入社。営業組織のDX推進や事業企画、新規サービス開発などに従事。2016年にコミュニケーションツールのSaaS開発をおこなう米国AppSocially Inc.のCOOおよび日本子会社の取締役に就任。日米マーケットにてプロダクトの開発やグロース、および経営全般を管掌。2018年、株式会社ALIVAL(現M&Aナビ)を創業し、M&Aプラットフォームを開発し日本全国に展開。同社を譲渡したのち2021年、当社の代表取締役社長 兼 CEO、Cyber Security Cloud Inc. (USA) CEOに就任。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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本場シリコンバレーでの経営をはじめ、多彩な経験を基に参画

大久保:小池さんは、サイバーセキュリティクラウドの経営陣からお声がかかり、代表取締役に就任されたと伺っています。まずは参画するまでの経緯についてお聞かせ願えますか。

小池:大学卒業後、現リクルートに入社し、営業組織のDX推進や事業企画、新規サービス開発などに従事しました。

リクルートは数多くの起業家を輩出しているため、起業関連の話題を一切咎められない環境でしたが、若い頃の私は独立を考えていなかったんですね。企業勤務で高みを目指す人生を描いていました。

転機となったのは、リクルートが上場した2014年前後に巻き起こったシリコンバレーブームです。シリコンバレー流のノウハウが注目され、多くの経営者やビジネスマンがこぞって参考にする中で、私は運良くシリコンバレーがあるサンフランシスコを中心にアメリカのビジネスエリアへの出張機会が多い業務を担当していました。常に「なにか活かせるものはないだろうか?」と探求しましたね。

そんな日々を送っていたところ、新たなステージへの縁を持つことができまして。2016年にリクルートを退職して、サンフランシスコに本社を構えるITベンチャー企業のAppSocially Inc.に参画し、COOと日本子会社の取締役に就任しました。起業の意思がなかった一方で、経営に対する興味を抱いていたので即断できたんですね。

ブームのど真ん中にあった本場シリコンバレーで、独自の理念やカルチャーを体験することができ、非常に刺激的な毎日でした。この当時の経験が、現在のサイバーセキュリティクラウドを経営する上で必要となる基礎体力をつけてくれたと言っても過言ではありません。

その後、同社の経営から離れ、2018年にALIVALを設立。M&Aプラットフォームの開発・運営事業で日本全国への展開に成功しました。

結果的にALIVALは事業譲渡することになったのですが、その理由は新型コロナウイルスの影響です。M&A仲介業は顧客の獲得コストなど多額の先行投資が必要な一方で、売買成立のタイミングでようやく手数料が入るため、売上の回収がかなり先になります。ところが新型コロナウイルスの感染拡大により、市場は急激に不安定な状況に陥り、先行き不透明になったんですね。そのため、企業体力が充実している早い段階で決断しました。

ちょうど同じ時期の2020年3月26日、サイバーセキュリティクラウドは当時の東証マザーズに上場しましたが、コロナの影響を受けにくい事業だったんですね。ただし上場後はより高く、より早い成長を求められるため、ビジネス手法を変えるべく新たなリーダーを探していました。

そこで白羽の矢が立ったのが私です。経営陣とは旧知の仲でしたので、「ぜひ我が社に」と。こうした流れでALIVALの事業譲渡後、2021年にジョインし、代表取締役社長兼CEOに選任されました。

シリコンバレーのメソッドを成立させている、愚直な泥臭さの積み重ね

大久保:リクルートでのサラリーマン時代、シリコンバレーのスタートアップ企業でのCOO、ご自身で起業、そして現在の上場企業の経営者と、小池さんのご経歴を大きく分けるとこの4つのカテゴリーで形成されています。多彩なご経験で培った経営手法における大切なポイントについてお聞かせください。

小池:やはり最も大事なのは、投資することではないでしょうか。

大手企業と、中小企業やベンチャーでは資本金が大きく異なり、必然的に投資できる金額も変わってきます。ただし共通しているのは「額を問わず、企業は投資しないと成長できない」ということです。

企業規模に比例して財布の大きさが違うため、資金の使い方や調達方法も異なります。とはいえ、どんな企業でもキャッシュをまわすために資金を使い、リスクを取りながら事業を伸ばすことが重要です。あらゆる企業や立場を経験し、なおさら痛感しました。

大久保:先ほどお話しいただいたシリコンバレーで得た知見の影響も大きいのでしょうか?

小池:はい。日本ではシリコンバレーが想像上の物語として語られている傾向があり、実像と離れた側面もあります。ところが実際に本場でキャリアを積む中で一番驚いたのは、ひたすら泥臭く、愚直にビジネスを進める姿でした。

大久保:確かに日本に浸透したシリコンバレーメソッドは、非現実的な世界観で展開する魔法の手法みたいなイメージがありますよね(笑)。

小池:そうなんですよ(笑)。だから私は「大切なポイントは違うよ」ということをお伝えしたいです。

書籍やWebにはシリコンバレーのフレームワークや格言があふれていて、特に日本人はこうしたビジネスメソッドを好む傾向があるので、熟読されてらっしゃる方も多いですよね。もちろんそうした姿勢を否定するわけではなくて、その前にやるべきことがあるのではないかなと。

お客様のもとを訪ねて、きちんと話を聞きましたか?
「顧客を知ることが大事だ」と社員に熱弁する経営者自らが実践し、顧客に会いに行っていますか?

シリコンバレーでは、まず経営者がきちんと動くし、すべて実行します。それこそ街を歩いている誰にでも声をかけ、率先して市場調査も行うんですよ。

たとえば、現地では「スターバックステスト」と呼ばれる調査手法があります。大学生向けのサービス展開をする企業の経営者なら、街やキャンパスにいる大学生に「スタバのコーヒーをご馳走するから話を聞かせてほしい」と声をかけるんですね。「いいよ」と返事をもらった瞬間、本当にどの経営者もその学生と連れ立ってスタバに行き、熱心に話を聞いて事業に役立てています。

日本の経営者が同じ手法をやろうとしても、「そうなんですか!すごいですね〜」で終わってしまい、恐らくわざわざスタバに行く方はほとんどいませんよね。ここにシリコンバレーとの最も大きな違いがあります。

シリコンバレーの魔法のようなメソッドや理念が成立しているのは、すべてにおいて泥臭さの積み重ねがあるからです。綺麗事の手法だと称する方もいますし、私自身も現地で働くまではどこかピンとこない印象がありました。でも、実は愚直に行動を続けた結果だからこそ、彼らの手法は非常に美しいんですね。

シリコンバレーは、決して夢物語ではありません。等身大で素晴らしい在り方だなと実感しています。

世界的な注目を集めるサービスでサイバー攻撃から企業を守る事業展開

大久保:サイバーセキュリティクラウドの事業についてお聞かせください。

小池:弊社では、主にAI技術を活用したWebセキュリティサービスの開発・運営を行っています。企業サイトやアプリをサイバー攻撃から守るサービスですので、リスクの増加と比例しながらここ数年でさらに需要が高まってきました。

大久保:「攻撃遮断くん」と「WafCharm(ワフチャーム)」がサービスの2本柱ですよね。どういう違いがあるのでしょうか?

小池「攻撃遮断くん」はクラウド型WAFで、外部からのサイバー攻撃を遮断し、個人情報漏えいやWebサイト改ざん、サービス停止などからWebサイトを守るセキュリティサービスです。日本向けのサービスとしてローンチから10年以上経ちましたが、変わらずご愛顧いただいており、クラウド型WAF分野における累計導入社数・累計導入サイト数の国内シェアNo.1(※)を獲得しています。
* 日本マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:2021年10月期_実績調査

一方の「WafCharm」は、「攻撃遮断くん」のノウハウを活用して開発した、パブリッククラウドWAFの自動運用サービスです。AWSやMicrosoftのAzureなどのクラウドプラットフォームでの開発を行う際に必要となる、複雑なセキュリティの設定やサポートを提供しています。

現在の売上高は「攻撃遮断くん」がおよそ11億円、「WafCharm」が5億円強です。ただ「WafCharm」は世界的にも非常にユニークで、これまでになかったサービスとして評価されているんですね。AWSの関係者からも「私たちのウィークポイントを補完してくれるプロダクトだ」とのお墨付きを得ていまして、急速にシェアを伸ばしています。

現時点ではアメリカにもヨーロッパにも存在しないサービスですので「ぜひ世界に展開しよう!」という支援をいただき、本格的な海外進出を開始しました。

大久保:サービス価格をお教えください。

小池:「攻撃遮断くん」は月額1万円から、「WafCharm」は月額5,000円からご利用いただけます。トラフィックが少ない段階での費用を抑えることが可能です。サイトが育ってきてからでも、平均して月額5万〜6万円とリーズナブルにご活用いただけます。

外資系に勝つためにも重要な、日本語でのきめ細やかなカスタマーサポート

大久保:これまでのWAF運用は、社内にノウハウを持ったエンジニアを用意できないと難しかったですが、「WafCharm」の登場でハードルが下がりましたよね。

小池:はい。およそ5分で設定後、基本的におまかせでご利用いただけます。

大久保:「攻撃遮断くん」もそうですが、日本語での24時間365日の技術サポートを含めて心強く感じる顧客が多いのではないかと思います。カスタマー面での評判はいかがでしょうか?

小池:サイバーセキュリティ企業の多くは外資系で、大手はアメリカが占めています。弊社は純国産企業で、すべてのサポートを日本語で提供しているため、お客様からは「ありがとう」とお伝えいただくことが多いんですね。外資にはない特長でもあり、強みだと思っています。

大久保:きめ細やかなカスタマーサポートをすべて日本語で提供できる優位性は、日本企業ならではですよね。

小池:日本のマーケットを狙うのであれば、しっかりとした日本語のサポートを用意すれば勝機に変えることが可能です。特に対外資で戦略を立てる場合、非常に大きな強みになります。

大久保:創業から間もなかったり、企業規模が大きくない会社では、サイバーセキュリティを万全にしておくという概念が根付いていないケースも少なくありません。セキュリティに対する意識をどの程度まで持っておいたほうがいいか、アドバイスをいただけますか?

小池セキュリティ対策は、保険と同じなんですね。たとえば地震保険なら、地震で自宅が倒壊してから「加入しよう」と考える方が多いのと似た構図でして(笑)。

ところが、実際のリスクは高いわけです。「うちの会社は狙われることなんてないから大丈夫」とお話しされる経営者もいますが、マンションを狙う強盗に例えることができるほど、どんなWebサイトでもサイバー攻撃の脅威にさらされています。

日本政府もデジタル庁を発足させ、DX化の推進とともに、サイバーセキュリティの重要性を提言するようになりました。今後はさらに、サイバーセキュリティ対策が必要な状況になると予測されています。これは決してポジショントークではなく、企業規模が小さな会社でも真剣に取り組むべきだと思いますね。

視界を狭めずに、常にまだ見ぬ世界をイメージしながら事業を創出

大久保:最後に、起業家に向けてのメッセージをいただけますか。

小池:創業直後は右も左もわからない状況の中、あらゆる作業が山積みで「やりたいことがなかなか実現できない」という方も多いかと思います。

ただ、起業家にはルールがありません。だからこそ、視界を狭めてしまわないように強く意識した上で、常にまだ見ぬ世界をイメージしながら事業を作っていただきたいとお伝えしたいです。

私自身もずっとその連続で、ここまでやってきました。あらためて自分の経験を振り返り、心からそう思っています。

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(取材協力: 株式会社サイバーセキュリティクラウド
(編集: 創業手帳編集部)



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