Co-Studio 澤田真賢|ソーシャルグッドをキーワードにイノベーションの実現を目指す

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年06月に行われた取材時点のものです。

Z世代がおこす「令和維新」に期待!自分のストーリーを持って動けば周囲が変わる

大手企業でキャリアを積んだあと、オーナーシップを持って働くことができないことに対して限界を感じ、起業した澤田氏。社会課題の解決と大企業のイノベーションを最終目的とし、さまざまなワークショップを開催したり大企業の活性化のための伴走をしている。

グローバルに活躍されている澤田氏に、日本の大企業のあり方やオープンイノベーションがなぜ日本で浸透しないかなど、創業手帳代表の大久保がじっくりとお話をうかがった。

澤田 真賢(さわだ まさやす)
Co-Studio株式会社代表取締役CEO
国内の大手IT企業や損害保険会社、電気機器メーカーなどで経営企画、イノベーション事業開発などを歴任。会社全体の中長期経営戦略などを担当する。しかし「社会課題の解決」と「大企業として行うべき事業」の間に、ジレンマを感じ始める。
そして2019年にCo-Studio株式会社を立ち上げる。企業、NPO、行政等が事業提携を通じて互いの経営資源を持ち寄り、社会課題の解決につながる革新的な事業モデルの開発に取り組む。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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大企業の活性化を通して、社会課題を解決したい

大久保:2019年に起業されたとうかがいましたが、事業内容について、詳しく聞かせていただけますか。

澤田:はい。「共感を軸に広がるコミュニティの実現」をミッションに、さまざまなワークショップを企画・実行しています。具体的には、アート思考ワーク、北米VC共同ワーク、市民参加型ワークショップ、自治体・地域巻き込み型ワークショップなどです。

バックキャスティング(※1)という発想法でゴールであるイノベーションの実現を目指し、そのプロセスを共にしていきます。最終的に目指しているのは、イノベーションの実現とソーシャルグッド(社会課題の解決)です。

また、カンパニービルダーとして会社を作ったり、組織変革・企業拡大といった目的に向けて大企業の活性化のための伴走といったこともしています。

※1 現状から未来を予想するフォアキャスティングの逆で、未来のあるべき姿から現状を考える発想法。

大久保:どのようにして起業することになったのでしょうか。

澤田:日本の大手企業で新規事業の開発に長年関わってきましたが、「これは事業として進めるのが難しいな」と感じる局面が共通してありました。経営陣からオーナーシップ(権限)を持って進めることを求められるのですが、実際に動いていると企業側のガバナンス(管理)が効きすぎていてみんなオーナーシップを持っていないんです。自分自身もオーナーシップを持って社会課題を解決することができませんでした。

そこで、それなら自分が大企業から外に出て、オーナーシップを持ち、大企業ではやりにくいことを共通の出島にしてしまえばいいと思ったことがきっかけで、起業に至りました。

大久保:わたしも澤田さんも大企業を出て起業したわけですけれど、澤田さんは大企業を変えたい、活性化したいという思いがあるわけですね。

澤田:そうですね。日本の大企業はダメだ、という発想で起業するのもいいですが、それでは社会実装にならず、結果としてイノベーションには結びつきません。社会的課題を解決しようと思うと、大企業を活性化することが必要になってきます。

ワークショップを通して、業種を超え、複数社で集まって社会課題の解決をしませんかということを提案しています。グローバルに活動していて、例えばアメリカのAIチャットボットのベンチャー企業の日本展開を検討するといったプロジェクトもあります。

例えば会社を作るというように、形にしないと変化は起こりにくいといえます。アートで心を癒し、自尊心を育む事業に取り組む528という会社を作ったのですが、社長はJAZZピアニストであり、音楽療法士でもあります。会社設立後約1年が経つのですが、大手企業と軒並み契約を結んでおり、形にする重要性や民主化というキーワードを体現してくれている存在です。

大久保:資金としてはどのように獲得しているのですか?

澤田コンサルやイノベーションの伴走ということで、大企業からいただいているものをベースに回しています。創業時なので借入もしています。

自分のストーリーを持つことが何よりも大事

大久保:オープンイノベーションという言葉が流行って久しいですが、あまりうまくいっていないように感じます。どう思われますか。

澤田誤訳というか、技術革新だと誤解されていることも多く、なかなか日本企業に浸透するのは難しいと感じます。日本でイノベーションを起こすのは難しいので、海外で黒船を作って輸入するほうがいいというアドバイスをもらったこともあります。

以前いた企業で、シンガポールでベンチャーと大企業を組み合わせて事業開発をしていたことがありますが、日本よりも形になるなと感じました。日本だと、文化的にどうしても本社側から足を引っ張られてしまうんですよね。

日本企業の特徴として、予測不能なことを予測したがるということがあると思います。海外ではコンサルをつけてやるイノベーションなんて聞いたことがないです(笑)。中期経営計画化したがるから物事が進まないのではないかと感じていますね。

大久保:確かに日本企業は中期経営計画書を一生懸命作りますよね。日本だけなのでしょうか。

澤田:10年くらい前にシリコンバレーに行ったとき、アントレプレナーに会いましたが、こちらがビジョンを持っていれば普通に話してくれるんですよね。日本は村社会で、クローズなコミュニティという印象がありますが、海外はオープンだなと感じました。

ホテルのような場所で話をしたんですが、そのときに言われたのが「自分自身のストーリーを持て」ということと、「電柱をたどっていきなさい」ということです。ゴールは5つめか6つめの電柱にありますが、1つめ2つめの電柱のところにいる時はゴールがどこにあるかわからない。結局、物語があり、それに沿って動いていけば周囲を巻き込んでゴールにたどりつくということで、海外ではそれが方程式になっているんですね。

ですから中期経営計画というのは海外のベンチャーや新規事業ではあまりない発想だと思います。

大久保:オープンイノベーションのコミュニティがオープンじゃないというのは面白いですね(笑)。

日本の企業には新陳代謝が足りない

大久保:平成元年にはトップ5を日本企業が独占していた世界時価総額ランキングですが、今や上位の顔ぶれはアメリカと中国のIT企業ばかりですよね。こういった現状についてどう思いますか。

澤田:ひと言で言えば、古い企業を新しい企業が塗り替えていくような新陳代謝が全くないことが致命的だと思いますね。

シャープは台湾のホンハイに買収されましたが、本来ならばこれを国内でやっていかないと、このスパイラルは脱却できないのではないでしょうか。茹でガエル理論(※2)というものがありますが、日本の大企業はまさに少しずつ業績が悪化してもあまり深刻にとらえず、対策が後手後手となってしまい手遅れとなってしまったのではないかと思いますね。

※2 蛙はいきなり熱い湯に入れると驚いて逃げ出してしまうが、常温の水から少しずつ水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失い、最後は茹でられて死んでしまう。このように、ゆっくりと進む環境の変化や、少しずつ近づいてくる危険を察知する難しさ、そしてこれらに反応することの大切さを戒める言葉。

大久保:なるほど。新陳代謝を促すためには弱肉強食的な考え方も必要なのですね。日本には中小企業が多いですが、大企業が倒れると大変という印象です。大企業が活性化するとどんないいことがあるのでしょうか。

澤田:大企業はビジネスモデルで劣っている面もありますが、技術力や人材を持っているので、それを生かせるのは利点だと思います。

ただ大企業、中小企業といいますが、形態として会社って何だろう?と考えると、副業なども含めて今後は定義が変わっていくのではないかと思っています。

大久保:日本の企業は今後どうなるといいと思いますか。

澤田オーナーシップの付与や、エクスターナルR&D(外部での研究開発)などがキーワードとしてあげられると思います。新しい創業者を積極的に生み出さない限り、才能をつぶしてしまうので、若手を起用することも重要だと思います。実際に弊社の執行役員のひとりは春に大学を卒業したばかりですが、パフォーマンスとしてはプログラムを回したり契約をとってきたりと素晴らしいです。未来は変えられるんじゃないかなという気はしていますね。

個人的にメンターになっていただいている、スタンフォード大学のバイオデザインの池野先生に聞いた話ですが、スタンフォードと東大で学生に「グーグルやアップルに入りたいか?」と聞くと、スタンフォードでは「入りたくない、自分で起業したい」と答える割合が多いんだそうです。東大では逆だそうですが、やはり日本のカルチャーや教育的なところが大きいのではないでしょうか。

ただ、明治維新ではないですが、これからのZ世代が「令和維新」的なことを始めてくれるんじゃないかと僕は思っています。

大久保:今後の展開についてはどのように考えてらっしゃいますか。

澤田:まずは自分の物語を軸に、今の活動をどんどん広げていきたいですね。2025年の大阪万博に向けて、大企業やZ世代を巻き込んで活動をしていきたいと思っています。

また、アウトプットがちゃんとできていないと思っていまして、いま子会社が9社ありますが、大企業に貢献できるなら売却することも検討しています。売却益が軍資金になりますし、いろんなことに投資することも可能になります。
今はオーナーシップをもって会社を作り、エクジットするときにエクイティ化が可能というところが見えてきた段階ですので、フェアにリターンを得て、それを原資にして社会課題を解決するというところまで到達したいと思っています。

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(取材協力: Co-Studio株式会社代表取締役CEO 澤田真賢
(編集: 創業手帳編集部)



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