話題の「サステナブルマーケティング」に注目!魅力や企業事例を紹介
SDGsにも関わる次世代マーケティング手法
近年、サステナブルという言葉を目にする機会が増えています。マーケティングにおいても注目されており、様々な企業で取組みがなされています。
しかし、どういった手法なのかイメージできない人も中にはいるかもしれません。
また、「環境に良いこと」であると想像できても、具体的な意味や魅力を知らなければ取り入ることは難しいでしょう。
そこで今回は、SDGsにも関わる次世代マーケティング手法として注目されているサステナブルマーケティングについて解説していきます。
サステナブルマーケティングが注目される理由をはじめ、サステナブルマーケティングの要素や魅力や注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
サステナブルマーケティングとは
まずは、サステナブルマーケティングがどういったマーケティング手法であるか詳しく解説していきます。
マーケティング手法の一種
サステナブルマーケティングは、「サステナビリティ」を活かしたマーケティング手法の一種です。
サステナビリティを直訳すると「持続可能性」で、地球環境や経済、文化といった側面が将来に渡って持続可能な状態であることを意味しています。
環境問題の文脈において用いられていた言葉です。
しかし、近年では企業活動でも重要な概念として位置づけられており、事業が環境や社会に与える影響を考慮して、持続可能な社会の実現に貢献することが世界中で求められています。
サステナブルマーケティングは、短期的な売上げを目的としたマーケティング手法とは異なり、長期的な視点で環境や社会への貢献を目指すマーケティング手法のことです。
具体的な手法として、省エネ製造や再生可能素材の使用、製品のリサイクル設計や二酸化炭素排出削減を目指した物流などが挙げられます。
エシカルマーケティングとの違い
サステナブルマーケティングと似た手法として、エシカルマーケティングを想像する人もいるでしょう。
エシカルとは、「倫理的な」や「良心的な」を意味する言葉となるため、倫理的なマーケティング手法がエシカルマーケティングとなります。
企業活動では、利益を見据えて実施されることが一般的です。
価格の安さなどが重視されてきた結果、ゴミの増加や資源の無駄遣い、環境破壊や労働者の人権侵害などの問題が次々と生まれました。
こうした問題を解決へと導くために必要とされるのがエシカルという視点です。
自己の利益だけではなく、良識やモラルに基づいて責任ある経済活動を実施することで、持続可能な社会の実現につながると考えられています。
サステナブルマーケティングとエシカルマーケティングは、環境や社会、人などを重視している点で共通しています。
サステナブルマーケティングが注目される理由
ここからは、サステナブルマーケティングが注目を集めている理由について解説していきます。
地球環境問題の深刻化
サステナブルマーケティングが注目されている理由のひとつに、地球環境問題の深刻化があります。
現在深刻化あしているのが、世界中で気候変動や海洋汚染、森林伐採といった環境問題です。
気候変動は、化石燃料の使用など、人間の活動が起因となり、気温や気象パターンに変化を与えているともいわれています。
猛暑や豪雨、ハリケーンなどの異常気象を引き起こす要因の一種と考えられています。
また、海を漂流するゴミの多くは人工物であるといわれており、生態系に悪影響を及ぼす要因の一つです。
人類の活動によって引き起こされた様々な問題が経済の発展に悪影響を及ぼすことが懸念されているため、国や企業、一般消費者の大きな関心事として浸透されつつあります。
その結果、環境問題に対応しながらも経済発展を続けるサステナブルの実現に取り組む企業が世界中で増加しています。
消費者の意識変化
環境問題は消費者の大きな関心事です。
環境や社会への配慮を重要視する方向へと変化しており、SDGsに対する関心の高まりにより、持続可能性がない製品を避ける人もいます。
社会が抱えている課題解決に積極的に取り組む企業を支援しようと消費活動を行うエシカツ消費が高まっているため、企業に対してはサステナブルなビジネスモデルの構築が求められています。
消費者に選ばれる企業になるために、サステナブルマーケティングが大きく注目されているのです。
ESG投資の広がり
ESG投資の広がりもサステナブルマーケティングが注目されている理由のひとつです。
ESG投資は近年急速に増加している投資手法です。
「環境配慮(Environment)」「社会配慮(Social)」「法令順守(Governance)」に対して積極的に取り組む企業に投資をすることを指しています。
企業にとっては事業資金の調達にも影響を与える可能性があり、サステナブルマーケティングへの取組みが様々な企業で進められています。
サステナブルマーケティングの3つの要素
サステナビリティには、「社会開発」「環境保護」「経済発展」の3つの要素があります。どういった取組みが実施されているのかを含めて解説していきます。
社会開発
教育格差や貧困、人権問題などを解決して、すべての人々が質の高い生活を送れる社会を目指すことを社会開発といいます。
実現のためには、ダイバーシティやインクルージョンの促進、コミュニティとの協力や関係構築が必要とされています。
具体的な取組みは以下のとおりです。
-
- 働きがいのある環境の提供
- 従業員のプライバシー保護
- 教育機会の提供
- ジェンダー平等
- 地元企業との協力
- NPOとのパートナーシップ構築
環境保護
地球環境を保全して持続可能な社会の基盤を守る事を目指すことが環境保護です。
環境保護を実現するためには、環境に配慮した製品の開発やエコロジカルなアプローチなどが必要とされます。
具体的な取組みは以下のとおりです。
-
- 再生可能資源を使った製品開発
- エネルギー効率向上
- 廃棄物削減
- 輸送時の二酸化炭素量削減
- エコロジカルなパッケージングの採用
- リサイクル可能な素材を使った製品づくり
- 廃棄物の適切な処理
経済発展
環境や社会への配慮を前提に、持続可能な経済成長の実現を目指すことが経済発展です。
短期的な利益だけではなく、長期的な利益の追求とのバランスを追求することが重要となり、企業価値を高めるためにも有効といえます。
経済発展の推進により、消費者や取引先からの信頼を獲得でき、ブランド価値向上や新しいビジネスの創出につながります。
具体的な手法は以下のとおりです。
-
- リスク管理
- 持続可能な投資
- 循環経済への移行
- 労働環境の改善
- 社会保障の拡充
サステナブルマーケティングの魅力
企業がサステナブルマーケティングに取り組むと、どういったメリットを得られるのか解説していきます。
企業価値を向上できる
サステナブルマーケティングに取組むことで、企業価値が向上します。
環境保護や社会改題に対する意識の高まりが消費者の間にも起こっているため、サステナブルな事業活動を積極的にアピールすることでポジティブな印象を与えられるでしょう。
コストやリソースといった面で短期的な負担は発生しますが、持続可能性を重要視する消費や投資化に対して、企業の信頼性やブランドの価値を高める効果に期待できます。
ブランド力がアップすれば企業成長にもつながります。
競合との差別化を図れる
競合との差別化を図れる点も魅力のひとつです。
現代では、様々な市場において製品やサービスがコモディティ化しており、差別化が難しくなっています。
環境や社会への配慮を強化して持続可能性を重視した姿勢を見せれば、他社と差別化を図ることが可能です。
環境に配慮した素材の活用や社会貢献への取組みを積極的に進める企業は、消費者の共感を生み出し、独自性を打ち出せます。
「環境に配慮しているものにしよう」「同じ商品なら環境に良いほうを選びたい」といった気持ちを生み出すような製品づくりやサービスの提供を目指してみてください。
ステークホルダーの関心を集めやすい
ステークホルダーから関心を集めやすい点も魅力のひとつです。
ステークホルダーとは企業活動に関わる利害関係者のことで、従業員や顧客、投資家や地域社会などが当てはまります。
ESG投資を行う投資家からの注目を集めれば、資金調達が容易です。また、取引先からの評価が高まれば、ビジネスチャンスの拡大に影響を与えます。
さらに、社会的責任を果たす企業として評価されれば、人材の採用や定着につながり、生産性アップにも期待できるでしょう。
ステークホルダーからの信頼獲得は持続的な企業成長につながります。
サステナブルマーケティングの進め方と施策例
サステナブルマーケティングを進めるためには綿密な計画と実行が重要です。
戦略の立て方を解説していきます。
①現状分析
自社を取り巻いている現状を客観的に分析します。自社の強みや弱みだけではなく、競合他社や市場トレンドの分析も欠かせません。
②ターゲット設定
サステナビリティに関心の高い消費者だけではなく、年齢や性別、価値観といった具体的なペルソナを設定します。
③KPI設定
戦略の効果を測定するためにもKPIを設定します。売上げの増加や顧客ロイヤリティの向上、ブランドイメージの向上など、事業目標と連動したKPIを設定してください。
④施策の立案
これまでの分析や設定に基づいて具体的な施策を立案します。商品開発や販売促進、広報活動などが具体的な内容です。
サステナブルマーケティングは、社会要請や技術革新に合わせて変化し続けています。
施策例の一部を紹介します。
-
- 脱プラスチック
- 再生可能エネルギー
- サーキュラーエコノミー
- サステナブルなライフスタイルの提案
サステナブルマーケティングの企業事例
ここからは、実際にサステナブルマーケティングに取り組んだ企業の事例を紹介していきます。
キッコーマン株式会社:無駄のない資源活用方法の実現に成功
醤油をはじめとした調味料や惣菜の素、豆乳などの商品を製造販売しているキッコーマンでは、経済・環境・社会の各要素で様々な取組みが行われています。
例えば、醤油を製造した際に残る「醤油かす」を、燃料や肥料、家畜用の飼料として活用しています。
また、排水処理施設から排出されている汚泥を発酵肥料化させて農家に提供しています。食品メーカーならではのイメージ向上につながる取組みです。
中川政七商店:地域資源を活かしたブランド戦略
「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、新たなものづくりに挑戦している企業が中川政七商店です。
地域の工芸メーカーと連携して、商品の開発から流通、ブランディングまでを一体で支援し、地域支援を活用しながら持続可能なビジネスを構築しています。
日本の心地良い暮らしを届けるために、中川政七商店では以下のことを大切にしています。
-
- 日本のものづくりであること
- 日本の文化風習を大切にすること
- 人の手がつくる風合いがあること
- 持続可能な豊かさをつくること
- 暮らしに長く深く根差していくこと
株式会社Allbirds:「ゼロ」にこだわる活動の実施
アパレルブランドを展開している株式会社Allbirdsでは、「ゼロ」にこだわった活動を実施しています。
2025年までに全製品のカーボンフットプリントを半減することと、2030年までに全製品のカーボンフットプリントをほぼ「ゼロ」にすることを目標に掲げています。
達成率は2023年に60%を超えましたが、2025年までの目標は90%以上の達成率です。
ほかにも、サトウキビ由来のソールやひまし油のインソール、ユーカリ遷移のニット素材など、自然由来の素材にこだわった製品づくりを積極的に実施しています。
成果はホームページ上でレポートとして1年ごとに紹介されており、透明性のある活動が行われていることも特徴です。
サステナブルマーケティングの注意点
最後に、サステナブルマーケティングの注意点について解説します。
サステナブルウォッシュに注意する
サステナブルウォッシュとは、サステナブルに取り組んでいると見せかけることを指します。
取組みを行っていると公表しながら実際に取組んでいなければ、消費者や取引先、投資家といったステークホルダーからの評価が下がってしまいます。
不買運動や取引停止などのリスクが生まれることに注意してください。
一方的な押し付けはしない
サステナビリティを前面に出し過ぎてしまうと、一方的な押し付けになる危険性があります。
消費者に対して一方的に行動を促すようなアプローチは、マーケティングにおいて逆効果となり、高感度が低下する恐れがあります。
理解や共感を自然に得ることを重視してください。
まとめ・小さく始めて続けるサステナブルマーケティングを実践しよう
環境や社会に配慮しながら事業活動を実施するサステナブルマーケティングは、企業価値の向上や競合との差別化を図れるといった魅力を持つ手法です。
しかし、サステナブルを謳うだけでは注目を集められません。
一方的な押し付けや見せかけだけの取組みでは企業価値が下がってしまうことに注意してください。
現状を分析して効果的な施策を立てた上で、サステナブルマーケティングを進めましょう。
国の方針としても、サステナブルを企業に求める傾向が強くなってきています。そのため支援なども手厚くなっているのが現状です。そのような国の支援策の一部をまとめているのが「補助金ガイド」です。国の支援策を読み解くことで、どのようなことが社会で求められているのかがわかります。ぜひこちらもあわせてお読みください。
(編集:創業手帳編集部)