ビジネスのキホン!! あなたの「商圏」の理解、大丈夫?

創業手帳

人口を調べて終わってない!? 商圏を理解して、正しく実践する!


(執筆:販路企画 田口勝)

(2016/02/29更新)

店舗でビジネスを行う場合、成功の大きな鍵を握るのが「場所」、つまり「商圏」です。『今さら何を……』と思われる方も多いと思いますが、実はこの商圏調査を勘違いしている人が非常に多いのです。今回は、商圏に対する正しい理解したうえで正しい商圏調査のやり方について堀下げていきます。

1.正確に把握できてる?商圏とは

前回のコラムで『エリアマーケティング』に重要性についてお話をしましたが、そのマーケティング(売る仕組みをつくる)戦略において、店舗型である飲食店はこの『商圏』という考え方が非常に重要なのです。

私は、多店舗展開支援を中心にお仕事をしておりますが、飲食店の独立開業の方の支援も実施しております。

その際に意識がとても多店舗経営をされる経営者様と独立開業をされた段階の経営者様では、この商圏という考え方に対する意識が大きく違うのです。

商圏とは、皆さんの主要のお客様が住んでいたり、施設を利用したり、通ったりする範囲を商圏と呼んでいます。

つまり、皆さんの商売の主要範囲であるということです。

商圏というとほとんどの方が、人口を調べるといったことを考えますが、それはあくまでも商圏調査の一部でしかありません。

例えば、東京であれば、お店に来店されるお客様のうち、近くに住んでいる方はごく一部であると思います。

皆さんのお店の前の通りを使って、近隣の駅や事業所や商業施設等を利用する方が多くを占めると思います。

その調査を行うことを商圏調査と言いますが、商圏調査は、主に次のことを実施します。

①人口特性調査
②交通量・通行量調査
③立地調査
④施設調査
⑤導線調査

商圏調査だけでもこんなにあるのです。

では皆さんに聞きますが、皆さんのお店の商圏範囲はどこからどこまでですか?

そして人口だけで捉えてもどれぐらいの方が住んでいますか?

この質問は、私は商圏調査に関するセミナー多数開催しておりますが、ほとんどの方は資料もなければ、当然頭にも入っている方はほとんどおられません。

つまり、マーケティング(売る仕組み)を考える上で、自分のお店がおかれている状況がわからずに、売る方法を考えているということです。

実は、フランチャイズチェーン等を行う飲食店はこの情報を正確に把握しているケースが多いのです。

大手チェーンはしっかり情報を掴んで、戦略を考えているのに対して、中小零細店舗が情報を掴むこともできずに、戦略を考えている状況で戦うというはどれだけ至難の業なのかというのはご理解頂けると思います。

この商圏調査は、自分でもしっかり出来ます。

この調査の中の基本的な人口統計調査のやり方を解説します。

2.実際にやってみよう!商圏範囲を特定する

人口統計調査を行う前に必要なことは、商圏範囲を特定することです。

商圏範囲は、まず自店を中心に半径〇kmの円を書きます。

その距離をまず、特定しなくてはなりません。

商圏範囲の距離は一概には、個店毎の環境によって変わりますが、概ね一般的には次のように考えて頂ければと思います。

  商圏距離(半径) 必要人口 その他
和食レストラン

市街地:500m
郊外:3~5km

5,000人~1万人3~5万人  
中華料理店 500m 5,000~1万人  
ハンバーガー 郊外:5km 3~5万人 層が多い
ファミリーレストラン 2km~3km 4~5万人 来店所要時間10分
喫茶店 市街地300~500m 5,000人 昼間人口

〇km圏内で総務省統計局のデータで円内の人口のデータを調べます。

そうすると、自店の商圏内にどれだけの人口がいるのかがわかります。

総務省統計局のシステムで『e-Stat』というソフトがあります。

無料で使えて、通常市販されているシステムと同等の性能がありますので、是非活用下さい。

それ以外には、次の事項を調べます。下記は一例となります。

①世帯数・・・商圏内にどれくらいの世帯があるのか?
②世帯人数・・・人口÷世帯人数となります。世帯人数が低い程、単身世帯が多く、高い程、ファミリー層が多く住んでいるということがわかります。
③年齢別人口・・・年齢別で人口を見ることで、自店の商圏の客層を調査します。
④人口増減・・・人口が近年増えているエリアなのか?減っているのか?このデータを見ることで町の動きがわかります。
⑤所得・・・所得の高い層なのか?低い層が多く商圏内に住んでいるのかわかります。
⑥家計品目別支出・・・世帯毎の1ヶ月にいくら支払っているのか項目毎にわかります。
⑦昼夜間人口・・・東京等、昼間と夜間の人口が変わるところが多くあります。

上記のデータを調べただけでは単なる自己満足です。それを分析し、戦略に活かすことが目的です。

ここまでデータを調べるとなんとなく、自店の商圏にいらっしゃる方の『顔』が見えてきます。実はこれが重要なのです。

商圏調査は、調査分析の結果見えてきたお客様の『顔』に対して、『誰に(ターゲット)』『いつ(利用シーン)』『どこで(現在来店しているお店)』『なぜ(ニーズ)』『何を(商品やサービス)』『どういう方法で(来店手段・来店を促す方法)』の仮説を立てるために、調査を行います。

具体的に数値に裏付けられた仮説ですので、当たる確率は圧倒的に上がることは予測されると思います。

『お客様を知る』これが店舗で売上を上げるには最重要です。

そのために、『商圏を知る』ということが重要なのです。

3.ちょっと待って!実は商圏は円ではない

ここまで、人口統計調査のやり方をお話してきましたが、実は商圏は円ではありません

前の話はなんだったのだと思われると思いますが、円を書いて調査することが第1段階で実は次に『実勢商圏』というものを特定しないといけないのです。

これは商圏に『商圏バリア』というものが存在します。商圏バリアとは、店舗に来店するにあたって、お客様が来店の障害となるものです。

これも実は一概のこれはバリアになっていて、これはバリアになっていないというのは現場で見ないとわかりませんが、概ね次のようなものが、『商圏バリア』として存在します。

①山
②大きな河川
③線路
④駅
⑤大型の施設(学校、工場、公園、行楽施設、商業施設等の背後の商圏)
⑥中央分離帯有の2車線道路

例えば、山ですが、自店と山を境に反対側に住宅があるとします。

自店と同じ業態が山の反対側にあれば、わざわざ山を越えてまで来店するということは、お客様にとって非常に障害になるのです。これを商圏バリアと呼びます。

先ほど、場合によると言ったのは、山の反対側に同じような競合がない場合であれば、来店して頂ける確率が上がります。

更に通常、山を越えて、出勤したり、買い物に住民の方が出ているのであれば、商圏バリアとはなりません。

つまり、現地で確認することが重要なのです。

このバリアを特定し、先ほどの円から引いたものが、実勢商圏となり、一番来店の確率が高い商圏の方ということになります。

つまり、商圏バリアによって、人口統計調査の結果は変わるということになります。

4.まとめ

本日は、飲食店の売上を上げる際の戦略を考える際の前提条件として、『商圏』と『人口統計調査』『商圏バリア』についてお話を致しました。

調査は戦略の確率を上げる手段です。

私の経験上、調査や分析が出来れば、戦略の70%は見えてきます。

逆に調査が甘いと、70%部分は不確実な戦略を立てているということです。

是非、商圏調査を実行されることをお勧め致します。

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(監修:販路企画 田口勝(たぐちまさる)
(編集:創業手帳編集部)

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