分かりやすい市場調査の方法9つ

創業手帳

成功は地道な調査から!

(2018/10/24更新)

「新しいサービスを作るのに、顧客のニーズを知りたい」「新商品が売れるかどうかの見込みを知りたい」…そんな時にはまず市場調査を!という話を聞いたことがあるかと思います。けれど、市場調査って実際に何をしたらいいの?
今回はそんなお悩みに答え、市場調査の基本をおさらいします。

市場調査とは

そもそも市場調査とは、商品やサービスを企画したり、販売する際に「市場」つまりはお客様や世間一般の人たちの需要や要望・イメージ・適切な価格設定などを探るための調査をすることです。

「市場調査」と言うと何か堅苦しい、特別なことのように感じられるかもしれません。しかし、例えば小売店でお客様と雑談しながらどんな商品を欲しいのか推測したり、店頭で試食品を出してみたり、お客様の様子を観察しながら品揃えやメニューなどを調整したりするのも広い意味で市場調査のひとつ。商売をしている方なら誰でもやっていることです。

ここでは、そのような手軽なものから、少々大がかりなものまで、さまざまな市場調査について取り上げていきます。

市場調査は何のためにするのか?

市場調査は、以下に挙げるような目的のために、企業の大小や業種を問わずどのようなビジネスにも関わってくる、不可欠な活動のひとつと言えます。

誰もが「市場調査だ」などと意識することなく行っている、ごく初歩的な「市場調査」の例を前に挙げましたが、あらためて「市場調査をしましょう」という場合には、その手順として、まず「何のために調査するのか?」といった目的を考えて行う必要があります。

企業が市場調査を行う目的としてよくあるのは、下記のような場合です。

・企画中の商品、試作品などを利用者・消費者に提示して、ニーズに合っているかどうかを調べる。
・商品価格をいくらに設定するか調べる。
・自社のブランドイメージや認知度などを調べる。
・商品やサービスの満足度を調べる。
・広告やキャッチコピー、商品やパッケージのデザインなど、どれが好印象・高評価であるか複数の案を比較調査する。

そんな市場調査ですが、その方法は次の項で紹介するようにさまざまです。目的に合った方法を選ぶためにも、まずは「何のために行うのか」「何を知りたいのか」を整理することが大切です。

市場調査の方法9つ

市場調査の方法は大きく分けて「定量調査」「定性調査」に分けることができます。

定量調査は答えが数字(件数、割合、金額など)で出てくるものです。例えば、アンケート用紙に質問と選択肢式の回答欄を用意して記入してもらって集計するようなものが典型的です。

具体的な調査方法には以下のようなものがあります。

定量調査

訪問(面接)調査

調査員が自宅などを訪問して聞き取ります。ほかにも面接型の調査として、街頭や店頭で対象者を選定する方法や一定の会場に調査対象者を集める形で調査を行う方法もあります。対面のコミュニケーションを通して的確な回答を得られるメリットがある一方、人件費をはじめ、費用と相応の時間がかかります。また、調査対象に不信感を持たれてしまうなど、敬遠されがちな部分もあります。

インターネット調査

ウェブ上にフォームを用意するなどして、調査対象者に入力してもらって回答を集めます。比較的低コスト、短期間で実施できますが、インターネットを使わない人を調査対象にすることはできません。

郵送調査

質問票を郵便で送り、返送してもらいます。訪問するよりは低コストに広範囲を対象にすることができます。しかし、調査対象者が書いてポストに投函しなくてはならないので、面倒だったり調査内容に興味がないと回答されない(回収率が下がる)ことがあります。返送を待つ時間もかかります。

電話調査

対象者に電話をかけます。つながればすぐに答えが得られますし、比較的低コスト、広範囲に調査ができます。調査員とのコミュニケーションで的確な答えを集められますが、質問数を少なく手短にしないと調査対象者に嫌がられる場合があります。(自動音声を使う方式もあります。)

定量調査のメリットは何より、わかりやすい数字で結果が出ることです。逆に、「質問しなかった答えは得られない」「用意しなかった選択肢は選ばれない」ので、調査票を十分に作り込むことが大切です。

定性調査

一方、定性調査は、数字で表しにくい要素を探ろうとする調査です。調査結果は文章などの形で表されます。

インタビュー

典型的なものはインタビューです。数人単位でグループインタビューをする方法のほか、テーマや内容によっては1対1のインタビューを行う方法(インデプスインタビュー)もあります。

例えば、あるバッグをテーマにインタビューをして自由な意見を集めれば、「軽さがいい」「カラーバリエーションをもっと増やして」「派手すぎて私にはちょっと」「ポケットをもっと充実したほうがいい」など、多様な評価や意見が調査対象者から出てくるでしょう。

うまくインタビューできれば微妙な心理や本音を聞けたり、事前に想定もしなかった予想外の答えを得ることもできますが、少人数の主観や場の雰囲気などにも影響されますので、調査対象者選びやインタビューの進行、会場の運営に注意が必要です。また、調査する側にも調査結果をどのように読み取るかが問われます。

インタビューのほかには、このようなものがあります。

ショプアロング調査

対象者の買い物に同行して観察したり、インタビューの実施や行動観察を行う調査。

ミステリーショッパー

自身の店やサービスを覆面調査員に利用してもらって、利用者目線の評価をしてもらう。

ホームユーステスト

商品を提供して調査対象者の自宅など実際の環境で使った感想などの報告を得る。

テイストテスト

商品を実際に試飲・試食してもらうことで、商品コンセプトが消費者に受け入れられるのか、期待している反応とのギャップがないのか等を調べる調査。

などの方法もあります。

市場調査を行う場合の注意点

市場調査では、「目的」を明確にし、正しい「方法」を選ぶことのほか、適切な「調査対象」に対して行うことも重要です。
例えば、若い女性向けの商品なのに中年男性に調査しても無意味です。

また、調査で得られた回答の分析にも注意が必要です。
例えば6人のグループインタビューで4人がある意見に賛同したからと言って、必ずしもそれが「市場の多数意見」とは限りません。定量調査で統計的な結果を出すには、一定の回答数を集めることも必要になります。必要に応じて複数の手法を組み合わせることも有効です。

さらに、調査を行うインタビュアーが無意識的に答えを誘導したり、質問や答えの選択肢の作り方が誘導的だったりすると、調査結果が作為的なものになってしまうことがあるので十分注意が必要です。調査する側にとって「期待通りの答え」が出るかもしれませんが、それでは「市場」を調査したことにはなりません。

市場調査にかかる費用・時間


さて、では市場調査を行うのに「どれくらい費用と時間がかかるのか?」は誰しも気になるところです。

自分たちの手の届く範囲で、来店者や近隣の方たちなどを対象に実施するなら、手間も人件費も、およそ見えると思います。しかし、ある程度の規模で市場調査を行う場合、とりわけ近年は個人情報保護の関係などで不特定多数の調査対象者の情報を集めるのは容易ではありません。調査に必要な人員確保なども面からも市場調査会社のサービスを利用すると便利な場合もあります。

今回は、創業手帳編集部が調査した、インターネット上に目安料金を掲載している調査会社の事例を引用してご紹介します。ただし、こちらはあくまでも一例です。調査方法・内容・質問の数・調査対象者・地域・規模・また・条件設定、追加オプションなどによっても金額には大きな幅があるので、実際に市場調査を検討する方は各調査会社に問い合わせしてみてください。

定量調査

インターネット調査

最低7万円(質問5問、サンプル100件)から。所要時間は準備(内容の決定や回答入力用ウェブ画面の作成など)が完了してから最短24時間後~としています。

訪問調査

300件で560万円~。必要な期間は準備から報告書作成まで含めて20日~1ヶ月程度を要します。

郵送調査

質問15問、500件で約150万円。調査期間は約5週間と例示しています。

電話調査

自動音声の10,000コール(ただし、1万回発信して有効な回答が得られる目安は350件程度)で10万円。最短翌日から実施可能としています。

スタッフが電話をかける方式の電話調査では、質問を15問、100サンプルで約150万円、期間は3週間という例があります。

定性調査

インタビュー

グループインタビューで1グループ(6名)52万円~、1対1のインタビューであれば1人19万円~という料金が紹介されています。

行動観察調査

1日の観察を3名行い、特定商品の利用状況などを観察する場合で、納期2ヶ月、約200万円~という事例が掲載されています。

ミステリーショッパー

調査員30名で15項目まで、店舗利用費(商品購入やサービス利用の代金)1人あたり3,000円、交通費1名1,000円含めて約66万円とのことです。

ホームユーステスト

50サンプル、質問40問程度で約80万円~としています。

調査料金一例まとめ

調査の種類 条件の例 金額の例
インターネット調査 質問5問、サンプル100件 約7万円
訪問調査 300件 約560万円
郵送調査 15問、500件 約150万円
電話調査(自動音声) 10,000件(回答目安350件) 約10万円
電話調査(オペレーター) 15問 回答100件 約150万円
定性調査・グループインタビュー 6名 約52万円
定性調査・1対1インタビュー 約19万円
行動観察調査 3名、1日観察 約200万円
ミステリーショッパー 30名、15問、商品代・交通費含む 約66万円
ホームユーステスト 50名、約40問 約80万円

※費用は調査会社、条件設定などにより大きく異なる場合があります。

まとめ

市場調査はビジネスを支える重要な手法のひとつですが、他方、「(形になって提示されるまで)人は自分が何を欲しいのかわからないものだ」と言われることもあるように、革新的な商品は市場調査にとらわれない直感と創造力から生み出されることもあります。市場調査の性質をよく理解して上手に活用しましょう。

(執筆:創業手帳編集部)

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