自己資金なしでも女性起業家が融資を活用できる制度をご紹介。融資を受けるポイント
自己資金なしでも女性起業家が活用できる融資・補助金・助成金などをご紹介。融資を受けるポイントも
「自己資金がないから起業は無理」と諦めていませんか。実は、女性起業家には手厚い支援制度が数多く用意されており、自己資金が少なくても融資を受けることは十分可能です。
日本政策金融公庫の女性起業家向け制度や各自治体の創業支援、クラウドファンディングなどさまざまな選択肢があります。重要なのは、しっかりとした事業計画と自分の強みを明確に伝えることです。
本記事では、自己資金なしでも活用できる具体的な制度と、融資審査を通過するための実践的なポイントをわかりやすくご紹介します。
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この記事の目次
自己資金なしでも女性起業家が融資を活用できる制度
自己資金がない女性起業家の方でも、融資を活用できる制度は少ないながらも存在します。以下でそれらの制度の概要をご紹介します。
1-1. 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」
「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、女性起業家や若い世代・シニア世代の起業を支援するための融資制度です。対象となるのは、新しく事業を始める方、または事業を開始してからおおむね7年以内の方で、女性の方か、35歳未満または55歳以上の方です。
融資の使い道は、新規事業の立ち上げや事業開始後に必要となる設備の購入資金、そして日々の事業運営に必要な運転資金となります。融資の上限額は7,200万円で、そのうち運転資金については4,800万円までとなっています。
返済期間については、設備資金の場合は20年以内、運転資金の場合は10年以内となっており、どちらも5年以内の据置期間を設けることができます。この据置期間中は元本の返済を猶予してもらえるため、事業が軌道に乗るまでの資金繰りに配慮された仕組みとなっています。
担保や保証人については、お客様のご希望やご事情を踏まえて個別に相談できます。また、この制度と併用できる特例制度として、経営者保証免除特例制度、創業支援貸付利率特例制度、設備資金貸付利率特例制度、賃上げ貸付利率特例制度があり、条件に応じてさらなる優遇措置を受けることも可能です。
1-2. 女性・若者・シニア創業サポート2.0(東京都)
「女性・若者・シニア創業サポート2.0」は、東京都内で女性、若者、シニアの方が地域に密着した事業を創業する際の支援を目的として設けられています。信用金庫や信用組合を通じて提供される低金利で無担保の融資に加えて、地域創業アドバイザーによる充実した経営サポートを組み合わせることで、創業から事業の成長まで総合的にバックアップします。
融資に関する条件として、融資の上限額は基本的に1,500万円以内となっていますが、女性の方については2,000万円以内まで利用可能です。運転資金のみの場合は750万円以内、女性の方は1,000万円以内となります。金利は固定金利で1%以内という低金利に設定されており、担保は不要です。返済期間は10年以内で、据置期間を3年以内で設定できるため、事業が軌道に乗るまでの期間を考慮した柔軟な返済計画を立てることができます。保証人については、法人の場合は必要となる場合がありますが、個人事業主の場合は不要です。
この制度の大きな特徴は、融資だけでなく手厚い経営サポートが受けられることです。融資を受ける前の段階から、事業計画の策定についてセミナーや個別相談を通じてアドバイスを受けることができます。さらに、融資が実行された後は最大5年間にわたって継続的なサポートが提供されます。具体的には、年9回の経営アドバイスと年2回の決算書作成アドバイスを受けることができ、決算書作成アドバイスについては融資後1年目のみの提供となります。
対象となる方は、東京都内で事業を行う女性の方、39歳以下の若者、55歳以上のシニアの方で、これから創業を計画している方、または創業してから5年未満の方です。女性の方については創業後7年未満まで対象となります。NPO法人なども対象に含まれており、地域の需要に応える事業や雇用の創出に貢献する事業を営む方であれば、幅広く利用することができます。
2. 融資以外にもある!女性起業家の資金調達方法
融資以外にも、自己資金なしで活用できるさまざまな資金調達方法がありますので以下でご紹介します。
2-1. 国や自治体の補助金・助成金
- 小規模事業者持続化補助金:販路開拓に最大50万円補助
- 創業助成事業:東京都においては最大400万円(下限100万円)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)は、小規模事業者が自分で経営計画を作成し、商工会や商工会議所からの支援を受けながら、新たな販路開拓などの取り組みを実施する際に、必要となる経費の一部を国が補助する仕組みです。
通常の持続化補助金では、販路開拓に関する取り組みに対して最大50万円までの補助を受けることができます。しかし、創業間もない事業者を対象とした「持続化補助金(創業型)」では、補助上限が最大200万円まで大幅に引き上げられており、開業したばかりの事業者にとって非常に手厚い支援制度となっています。
この創業型の補助金を利用できるのは、開業してから3年以内の小規模事業者の方です。ただし、申請するためには特別な条件を満たす必要があります。具体的には、産業競争力強化法に基づいて認定を受けた市区町村が発行する「特定創業支援等事業の修了証明書」を取得していることが必須条件となります。
この修了証明書を取得するためには、特定創業支援等事業として認定された研修やセミナーを受講する必要があります。代表的なものとしては、商工会や商工会議所、金融機関などが開催している「創業塾」や「創業セミナー」があります。これらの研修では、経営、人材、財務、販路開拓という4つの重要な分野について、事業運営に必要な知識とノウハウを体系的に学ぶことができます。これらすべての分野にわたる学習を完了していることが、創業型補助金の申請条件として定められています。
このように、単なる資金支援だけではなく、事業者の経営能力向上も同時に図ることで、より確実な事業の成長と持続的な発展を目指した制度設計となっています。
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創業助成事業
創業をお考えの方には、各自治体が実施している創業助成事業の活用をおすすめします。特に東京都が実施している創業助成事業は、非常に充実した内容となっており、創業を目指す方にとって心強い支援制度です。
この東京都の創業助成事業は、都内での創業を具体的に計画している個人の方、または創業してから5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方が対象となります。助成を受けられる期間は、交付が決定された日から6か月以上、最長で2年間となっており、事業の立ち上げから軌道に乗るまでの重要な期間をカバーしています。
助成の対象となる経費は幅広く設定されており、事業運営に必要な様々な費用に活用できます。事業費としては、事務所の賃借料、広告宣伝費、必要な器具や備品の購入費、特許などの産業財産権の出願や導入にかかる費用、専門家からの指導を受ける際の費用などが含まれます。また、従業員を雇用する場合の人件費や、市場調査や分析を外部に委託する際の委託費も対象となります。
助成金の上限額は400万円で、下限は100万円となっています。ただし、事業費と人件費を対象とする場合の上限は300万円、委託費を対象とする場合の上限は100万円と区分されています。なお、申請の際には事業費を助成対象経費として含める必要があります。助成率は対象経費の3分の2以内となっており、実際にかかった費用の大部分について支援を受けることができるため、資金面での負担を大幅に軽減できる制度となっています。
このように東京都の創業助成事業は、創業に関わる多岐にわたる経費を対象とし、高い助成率で長期間にわたってサポートする非常に手厚い制度です。創業を検討している方は、ぜひこの制度の活用を検討してみてください。
2-2. クラウドファンディング
「自己資金なし」でも共感型資金調達が可能。以下のような特徴があります。
- CAMPFIRE:女性の起業ストーリーが刺さりやすい
- Makuake:商品の事前販売形式に強い
CAMPFIRE
「CAMPFIRE」は、日本国内で最大級の規模を誇るクラウドファンディングプラットフォームです。個人からクリエイター、企業、NPO法人、大学、地方自治体まで、実に多様な立場の方々が持つ様々なファイナンスニーズに対応し、数多くの挑戦を支援してきた実績があります。
これまでの成果は非常に印象的で、プラットフォーム上で10万件を超えるプロジェクトが立ち上がり、1,300万人以上の方々から総額1,000億円を超える支援が寄せられています。この数字は、「CAMPFIRE」が多くの人々に信頼され、活用されていることを物語っています。
この仕組みの特徴は、プロジェクトオーナーと支援者の双方にメリットがあることです。プロジェクトオーナーは自分のアイデアや事業計画を「CAMPFIRE」上に掲載することで、多くの人々から支援という形で必要な資金を集めることができます。一方、支援者はプロジェクトに支援することで、商品やサービス、特別な体験などのリターンを受け取ることができるため、単なる寄付ではなく、価値ある交換が成立します。
特に注目すべき点として、女性起業家にとって有利な環境が形成されていることが挙げられます。女性の起業ストーリーは多くの人の心に響きやすく、共感を呼びやすい傾向があります。そのため、創業期の女性起業家にとっては、従来の資金調達方法と比較して、比較的資金を集めやすい環境が整っていると言えるでしょう。これは、新しいビジネスを始めようとする女性にとって、大きな追い風となる可能性があります。
Makuake
「Makuake」は、日本で最大級の規模を誇る「購入型」クラウドファンディングサイトです。このプラットフォームの最大の特徴は、まだ世の中に存在しない新しい商品やサービスの先行販売に特化していることです。プロジェクトの実行者は、革新的なアイデアや独創的な商品を、サポーターからの応援購入という形で実際に市場に送り出すことができます。
「Makuake」の仕組みは、従来の投資型クラウドファンディングとは異なり、購入型のスタイルを採用しています。これは、サポーターが金銭的なリターンを期待するのではなく、実際に商品やサービスを購入することでプロジェクトを支援する形式です。まだ一般販売されていない商品やサービスを、他の人よりも早く手に入れることができるという特別感や価値を提供しています。
プロジェクトの実行者にとって特に魅力的なのは、完全成果報酬型の手数料体系です。プロジェクトの相談や掲載自体には一切費用がかからないため、初期費用の心配をすることなく挑戦することができます。手数料が発生するのは、プロジェクトが目標金額を達成した場合のみで、成功した時にのみ費用を支払う仕組みになっています。これにより、資金に余裕がない創業期の事業者でも安心してプラットフォームを活用できます。
このように、「Makuake」は新しいモノや体験を世に送り出したい実行者と、革新的な商品やサービスをいち早く体験したいサポーターを結ぶ、応援購入という新しい形のサービスを提供しています。特に、まだ市場に出回っていない独創的なアイデアを持つ方にとって、非常に有効な資金調達手段となっています。
2-3. ベンチャーキャピタル・エンジェル投資
IT・サービス系スタートアップの女性起業家が注目。以下の点がカギ:
- 社会性・スケーラビリティのあるビジネスモデル
- ピッチでは「自分の強み」と「課題解決力」を明確に伝える
社会性・スケーラビリティのあるビジネスモデル
IT・サービス系スタートアップの女性起業家の方々には、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資の活用をおすすめします。これらの投資形態は、単なる資金調達の手段を超えて、事業の成長を加速させる重要なパートナーシップとなり得るからです。
この際、最も重要なポイントは「社会性・スケーラビリティのあるビジネスモデル」を選択することです。まず社会性について説明すると、これは単に利益を追求するだけでなく、社会的な課題の解決や人々の生活の質向上に貢献するビジネスを意味します。現代の投資家、特にベンチャーキャピタルは、ESG投資やインパクト投資への関心が高まっており、社会的価値を創造する企業への投資を積極的に検討しています。女性起業家が持つ独特の視点や感性は、従来見過ごされがちだった社会課題を発見し、革新的な解決策を提供する上で大きな強みとなります。
一方、スケーラビリティとは、事業規模を拡大する際の成長可能性を指します。投資家が最も重視するのは、投資した資金が将来的に何倍もの価値となって返ってくる可能性です。そのため、限られた地域や特定の顧客層にのみ対応するビジネスではなく、市場規模を大幅に拡大できる潜在力を持つビジネスモデルが求められます。IT・サービス系の事業は、デジタル技術の特性を活かすことで、比較的少ない追加投資で顧客基盤を大幅に拡大できる可能性を秘めており、この点で投資家からの注目を集めやすい分野です。
具体的には、一度開発したソフトウェアやサービスを、追加のコストをかけることなく多くの顧客に提供できるような仕組みや、ネットワーク効果によって利用者が増えるほど価値が高まるようなプラットフォーム型のビジネスモデルが理想的です。また、国内市場だけでなく、将来的には海外展開も視野に入れられるような普遍性を持ったサービスであることも重要な要素となります。
ピッチでは「自分の強み」と「課題解決力」を明確に伝える
また、ピッチの場面で「自分の強み」と「課題解決力」を明確に伝えることです。多くの起業家が技術的な特徴や市場規模について語る中で、投資家が本当に知りたいのは、「なぜあなたがこの事業を成功に導けるのか」という点なのです。
まず、「自分の強み」を明確に伝えることの重要性について説明します。投資家は数多くの事業提案を受けており、似たようなアイデアやサービスに遭遇することも珍しくありません。そのような状況で差別化を図るのは、実はアイデアそのものよりも、それを実現する起業家の能力や経験、独自の視点です。女性起業家の皆様には、これまでの職歴、専門知識、人脈、そして女性ならではの感性や視点など、他の起業家にはない独自の強みが必ずあります。例えば、特定の業界での深い経験、技術的な専門性、顧客のニーズを的確に把握する能力、チームを率いるリーダーシップ、困難な状況を乗り越えてきた経験などです。これらの強みを具体的なエピソードとともに語ることで、投資家に「この人なら成功できる」という確信を与えることができます。
次に、「課題解決力」を明確に示すことの重要性です。投資家が投資を決定する際の最も重要な判断基準の一つは、そのビジネスが本当に価値のある課題を解決できるかどうかです。しかし、多くの起業家が犯しがちな間違いは、課題の存在を指摘することに留まり、なぜ自分たちがその課題を最も効果的に解決できるのかを十分に説明できていないことです。真に求められるのは、課題を深く理解し、なぜその解決策が有効で、なぜ他の誰でもなく自分たちがそれを実現できるのかを論理的かつ情熱的に語ることです。
具体的には、まず解決しようとしている課題が実在し、かつ多くの人や企業にとって切実な問題であることを、データや実体験に基づいて証明する必要があります。そして、既存の解決策がなぜ不十分なのか、自分たちの提案する解決策がどのような点で優れているのかを明確に示します。さらに重要なのは、その解決策を実現するために必要な技術、知識、経験、人脈などを自分たちが持っていることを具体的に証明することです。
自己資金なしでも女性起業家が融資などを受けるためのポイント
自己資金なしでも融資を受けるためのポイントをご紹介します。
事業計画書を充実させる
自己資金がない状況で融資を受けるためには、事業計画書の質が決定的な要因となります。金融機関や投資家は、お金を貸す代わりに事業の将来性と返済能力を判断する必要があり、その唯一の判断材料が事業計画書だからです。単なる思いつきではなく、徹底的な市場調査に基づいた現実的で具体的な計画を示すことが重要です。
市場分析では、ターゲット市場の規模、成長性、競合他社の状況を詳細に調べ、自社のポジショニングを明確にします。財務計画については、売上予測、費用計画、損益計算書、キャッシュフロー計算書を少なくとも3年分は作成し、月次レベルでの詳細な計画を示すことが求められます。特に重要なのは、どのような根拠で売上予測を立てているかを具体的に説明することです。
リスク分析と対策も欠かせません。事業に伴う様々なリスクを洗い出し、それぞれに対する具体的な対応策を示すことで、冷静で現実的な経営判断ができることをアピールできます。また、競合優位性については、単に「良い商品だから売れる」ではなく、なぜ顧客が既存の選択肢ではなく自社を選ぶのかを論理的に説明する必要があります。
業界経験と専門性のアピール
自己資金がない場合、起業家個人の能力と経験が融資判断において極めて重要な要素となります。金融機関は「この人なら事業を成功に導ける」という確信を持てなければ融資を実行しません。そのため、これまでの職歴や専門知識、業界での実績を効果的にアピールすることが必要です。
具体的には、同じ業界または関連業界での勤務経験、培った専門スキル、人脈、業界特有の課題に対する深い理解などを整理し、それらがどのように事業成功に結びつくかを明確に説明します。女性ならではの視点や感性が、従来見過ごされてきた市場ニーズを発見する強みとなることも多く、このような独自の価値を具体的なエピソードとともに伝えることが効果的です。
また、継続的な学習姿勢も重要です。起業に向けて新たに取得した資格、参加したセミナーや研修、読んだ専門書などを通じて、常に知識とスキルの向上に努めていることを示すことで、成長意欲と真剣さをアピールできます。
信用力の構築
自己資金がない状況では、個人の信用力が融資の可否を大きく左右します。まず基本となるのは、個人信用情報の管理です。クレジットカードの支払い遅延、携帯電話料金の滞納、各種ローンの返済状況などは全て信用情報として記録されており、これらに問題があると融資は困難になります。
既存の取引実績も重要な要素です。メインバンクとの良好な関係を築き、定期預金や積立などを通じて取引履歴を作ることで、金融機関からの信頼を得ることができます。また、保証人や担保についても事前に検討し、必要に応じて家族や親族に相談しておくことも大切です。
事業に関連する実績作りも効果的です。副業として小規模に事業を始め、売上実績や顧客との取引履歴を作ることで、事業の実現可能性を実証できます。また、試作品の開発、顧客からの引き合い、業界関係者からの推薦状なども、事業への信頼性を高める重要な材料となります。
女性起業家向け制度の活用
女性起業家には、一般的な融資制度に加えて、女性の社会進出や起業を支援する特別な制度が数多く用意されています。これらの制度は、通常の融資よりも条件が優遇されていることが多く、自己資金が少ない場合でも利用しやすい設計になっています。
上述のように、日本政策金融公庫の女性起業家向け融資制度や、各自治体が実施する女性創業支援制度、などがあります。これらの制度では、金利の優遇、担保・保証人要件の緩和、返済期間の延長などの特典が設けられています。また、融資だけでなく、経営相談やセミナー、ネットワーキングの機会なども提供されることが多く、総合的な支援を受けることができます。
制度の利用にあたっては、それぞれの応募要件や申請期限を十分に確認し、必要な書類を早めに準備することが重要です。競争率が高い制度もあるため、複数の制度に並行して申請することも検討すべきです。
段階的な資金調達
自己資金がない場合、一度に大きな金額を調達しようとするよりも、段階的に資金調達を行う方が現実的で成功確率も高くなります。まず最小限の資金で事業を開始し、実績を積み重ねながら徐々に調達額を増やしていく戦略が効果的です。
第一段階では、親族や友人からの借入、クラウドファンディング、小額の創業支援制度などを活用して、事業の立ち上げに最低限必要な資金を確保します。この段階では、完璧なビジネスモデルよりも、まず事業を動かすことに重点を置きます。
第二段階では、初期の実績をもとに、より本格的な融資や投資を検討します。売上実績、顧客からの評価、市場での反応などの具体的なデータを示すことで、金融機関や投資家からの信頼を得やすくなります。このように段階的にアプローチすることで、リスクを分散しながら着実に事業を成長させることができます。
専門家のサポート活用
自己資金なしでの資金調達は複雑で困難な場合が多いため、専門家のサポートを積極的に活用することが成功への近道です。中小企業診断士、税理士、行政書士、経営コンサルタントなどの専門家は、資金調達に関する豊富な知識と経験を持っており、個別の状況に応じた最適なアドバイスを提供してくれます。
特に事業計画書の作成支援は重要です。専門家の助けを借りることで、金融機関が求める水準の計画書を作成でき、融資審査の通過率を大幅に向上させることができます。また、どの制度が最も適しているか、申請のタイミングはいつが良いか、必要書類の準備方法など、実務的なアドバイスも受けることができます。
商工会議所や商工会、各自治体の創業支援センターなどでは、無料または低料金で専門家による相談を受けることができます。また、女性起業家向けの支援機関では、同じような経験を持つ先輩起業家からアドバイスを受ける機会も提供されています。
ネットワーキングと推薦
自己資金がない状況では、人的ネットワークが資金調達において決定的な役割を果たすことがあります。信頼できる人からの紹介や推薦は、金融機関や投資家にとって重要な判断材料となり、融資の可能性を大幅に高めることができます。
業界の勉強会やセミナー、起業家交流会、女性起業家のネットワーキングイベントなどに積極的に参加し、様々な人との関係を築くことが重要です。これらの場では、同じような経験を持つ起業家から実践的なアドバイスを得られるだけでなく、投資家や金融機関の担当者と直接会う機会もあります。
また、メンターや相談役となってくれる経験豊富な経営者との関係も大切です。彼らからの推薦状や紹介は、信用力を大幅に向上させる効果があります。日頃から誠実で積極的な姿勢を示し、信頼関係を築いておくことで、いざという時に強力なサポートを得ることができます。SNSやオンラインコミュニティも活用し、より広範囲でのネットワーク構築に努めることも現代では重要な戦略の一つです。
4. よくある質問(FAQ)
他にもよくある質問と、それに対する回答もご紹介します。
Q. 本当に自己資金ゼロで融資を受けられる?
完全に自己資金ゼロでの融資は現実的にはかなり困難です。
「自己資金要件なし」と表記された制度でも、実際には何らかの自己負担や担保、保証人が求められることがほとんどです。金融機関は貸し倒れリスクを避けるため、起業家の本気度や返済能力を判断する材料として、ある程度の自己資金を重視します。
しかし、自己資金が少なくても融資を受けられる可能性を高める方法があります。最も重要なのは、徹底的に練り上げられた事業計画書の作成です。市場調査に基づいた現実的な売上予測、詳細な財務計画、リスク分析と対策を含む包括的な計画書は、自己資金不足を補う強力な武器となります。
同時に、個人の信用力も決定的な要因です。クレジットカードの支払い履歴、既存の金融機関との取引実績、業界での経験と専門性などが、金融機関の信頼を得る重要な要素となります。豊富な業界経験がある場合、保証人や担保を提供できる場合、女性起業家向けの特別制度を利用する場合などは、これらの要素と組み合わせることで融資の可能性が高まります。
最も現実的なのは、完全にゼロではなく最低限の準備資金(数十万円程度)を用意し、優れた事業計画と確固たる信用力を武器に、小額の融資から段階的に始めることです
Q. 主婦やパート経験しかなくても大丈夫?
主婦やパート経験しかない方でも、資金調達は可能です。
主婦としての経験は実は貴重なスキルの証明になります。家計管理は財務管理能力を示し、子育てや家事の効率化は問題解決能力の表れです。何より、消費者として日々商品やサービスを選択してきた経験は、鋭い市場理解力につながります。
特に強みとなるのは、主婦ならではの視点から生まれるビジネスアイデアです。育児や家事で感じた不便さ、既存商品への改善要望、同じ立場の女性が抱える悩みなどは、大きな市場機会となります。この実体験に基づく課題発見力は、投資家にとって非常に説得力があります。
パート経験も決して軽視できません。接客なら顧客対応能力、事務なら組織理解、販売なら商品知識など、それぞれから得たスキルを事業にどう活かせるかを明確に示すことが重要です。
成功のポイントは、これらの経験を過小評価せず、事業計画書で論理的に整理して伝えることです。女性起業家向けの支援制度も充実しており、生活者視点を重視する投資家も増えているため、主婦やパート経験を強みに変えて資金調達に挑戦する価値は十分にあります。
Q. 返済できるか不安です。
「返済できるか不安」という気持ちは健全で責任感のある考えです。この不安は、適切な計画作りで大幅に軽減できます。
最も重要なのは、現実的で詳細な収支計画を立てることです。楽観的な予測ではなく、保守的な売上見込みと確実に発生する費用を月次レベルで計算し、いつキャッシュフローがプラスに転じるかを明確にします。据置期間を活用して、事業が軌道に乗ってから本格的な返済が始まるよう調整することで、資金繰りの負担を軽減できます。
段階的な事業成長を示すことも重要です。いきなり大きな売上を目指すのではなく、小さく始めて着実に実績を積み重ね、段階的に事業規模を拡大していく計画を示します。第一段階では最低限の固定費で確実に顧客を獲得し、第二段階で人員や設備を増強するといった具体的なステップを明示することで、リスクを抑えた堅実な経営姿勢をアピールできます。
また、最悪・標準・最良の複数シナリオを用意し、どの状況でも返済可能であることを示すことが効果的です。万が一の場合の対応策も事前に検討しておけば、金融機関からの信頼も得られます。
返済への不安は、感情的なものではなく、数字に基づいた冷静な計画で解決できます。
Q. 審査にはどのくらい時間がかかる?
融資の審査期間は、金融機関や制度によって大きく異なります。
日本政策金融公庫の場合、一般的には申請から融資実行まで2~4週間程度が標準的です。ただし、これは必要書類が完璧に揃っている場合の目安で、書類に不備があったり追加資料が必要になったりすると、さらに時間がかかることがあります。創業融資など複雑な案件では、1~2ヶ月程度を見込んでおく方が安全です。
民間金融機関の場合は、通常の事業融資で1~3週間程度ですが、創業融資や特別な制度を利用する場合は、より長期間を要することが多いです。自治体の創業支援制度では、申請受付期間が限定されている場合もあり、審査期間も1~3ヶ月程度かかることがあります。
審査を早めるためには、事前準備が重要です。事業計画書、財務計画、必要書類を完璧に整え、金融機関の担当者との事前相談を活用することで、スムーズな審査につながります。また、複数の金融機関に並行して申請することで、より早い資金調達も可能になります。
創業時は資金が必要になるタイミングが重要なので、余裕を持ったスケジュールで申請することをおすすめします。
自己資金なしでも女性起業家が融資を受けることは可能
以上、女性起業家が自己資金なしで融資を受けるための方法やポイントについてご紹介しました。ぜひ参考にしてみてください。
創業手帳では、あらゆる資金調達手段についてわかりやすく解説した「資金調達手帳」を無料でお配りしています。自分にあった最適な資金調達手段は何かをご検討中の方は、ぜひこちらもあわせてお読みください。
(編集:創業手帳編集部)
創業手帳別冊版「創業手帳woman」のミッションは「女性の起業失敗のリスクを軽減させる」とこを掲げています。そのために女性起業家ならではの起業時におさえておきたいポイントを一冊にまとめています。無料でお届けします。