アドレス 佐別当 隆志|住まいのサブスク「ADDress」で多拠点居住という新しいライフスタイルを提案

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年06月に行われた取材時点のものです。

日本全国にある200以上の居住地に毎月引っ越す「地域との交流」を重視する新しいライフスタイル


コロナ禍に入り、テレワークをする人が急増した現代では「多拠点居住」という新しいライフスタイルが生まれました。毎月住む家を変えながら、色々な地域での交流を楽しむサービスを提供しているのがアドレスの佐別当さんです。

ガイアックスの起業家支援カルチャーやシェアリングエコノミー業界の現状について、創業手帳代表の大久保が聞きました。

佐別当 隆志(さべっとう たかし)
株式会社アドレス代表取締役/一般社団法人シェアリングエコノミー協会幹事
2000年ガイアックスに入社。広報・事業開発を経て、2016年シェアリングエコノミー協会設立。内閣官房、総務省、経産省のシェアリングエコノミーに関する委員を務める。2018年、定額で全国住み放題の多拠点コリビングサービス事業 ADDress代表取締役社長。2020年シェアリングシティ推進協議会代表、2021年シェアリングエコノミー協会幹事。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

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シェアリングエコノミー協会を設立後にアドレスを創業

大久保:起業までの流れを教えてください。

佐別当:アドレスを起業する前は約20年ガイアックスに勤めていました。

その間に、都心に一軒家を購入し、家族とともにシェアハウス「Miraie」(ミライエ)の運営を始めました。この当時の日本には「民泊」や「シェアリングエコノミー」という言葉もないくらいの時期です。

この経験から「シェアリングエコノミー」に強く興味を持ったので、シェアリングエコノミーの文化をもっと広めるために、「シェアリングエコノミー協会」を2016年に立ち上げました。

2017年には「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」に任命していただき、全国でシェアリングエコノミーを広めるためにイベントや講演などを行いました。

そして、2018年に定額で全国住み放題の多拠点移住サービス「ADDress」を展開する「アドレス」を創業したという流れです。

シェアリングエコノミーを広めるために「ロビイスト」になる必要がある

大久保:内閣官房シェアリングエコノミー伝道師とはなんですか?

佐別当:私は元々起業家というより政治家や官僚と起業家を繋ぐ「ロビイスト」になりたかったんです。

政府は1つの企業だけ応援することはできないので、政府とのやりとりをスムーズに行うために「シェアリングエコノミー協会」を立ち上げました。

初めて内閣官房に招待していただいた時に、政府の方々はAirbnbの民泊サービスを法律的に問題視していました。しかし、無理矢理に法規制をするとシェアリングエコノミーの産業が壊れてしまうと思い、関係する起業家を巻き込んで企業と政府で一緒に改善策を考える提案をしました。

この流れで、内閣官房の中に「シェアリングエコノミー促進室」という部署ができて、そこのアドバイザーとして活動するために「内閣官房シェアリングエコノミー伝道師」に任命していただきました。

アドレス創業時に受けたガイアックスの手厚いサポート

大久保:ガイアックスには起業家支援のカルチャーがありますよね?

佐別当:その通りです。私がガイアックスに勤めていた約20年の間にも、何名もの起業家を輩出している姿を見ていたので、私が起業を決意した際にも真っ先にガイアックスの上田社長に相談しに行きました。

創業時に出資をしていただきましたし、ガイアックスの創業支援制度を使って経理業務は全てガイアックスにアウトソースしました。事業がうまくいかなかった時に、ガイアックスに融資してもらうなど、金銭面でのサポートもしてもらえたので、より良いサービスを開発することに集中できました。

大久保:会社員の時にはあった他社との繋がりが、起業すると少なくなるという問題はありませんでしたか?

佐別当:私は起業家の仲間も多く、仲間たちに様々な場面で力を借りることができたのでありがたかったです。

すでに起業している同僚や起業仲間などの約20名にエンジェル投資家として出資をお願いしました。金銭面でのサポートがほしかったというよりは、アドレスの応援者になってほしかったんです。

判断や選択で悩んだ時には、起業家の先輩たちにたくさんアドバイスをもらいました。

大久保:証券型クラウドファンディングのようですね。信頼できる人に少しずつ出資してもらったんですね。

佐別当:株主を増やしすぎるとトラブルや問題の原因になる恐れがあるとアドバイスをもらったので、経営の中で問題が生じたら「私が株主から株を買い取る権利」をもらっています。

この条件に合意してくれた人だけが投資家になってくれています。

Airbnbで日本トップ5のホスト!民泊界隈での認知度が向上

大久保:起業前からなぜそんなに多くの起業家仲間がいたんですか?

佐別当:日本に「民泊」や「シェアリングエコノミー」という言葉がない10年くらい前から、私はAirbnbのホストをしていました。

当時、日本トップ5のホストになれたことで、アメリカにあるAirbnbの本社に招待されて創業者に会ったり、Airbnb広告に私が運営するシェアハウスが採用されるなど、日本市場の立役者の一人と言ってもらうこともありました。

ガイアックスではなくAirbnbの社員だと認識している人がいるくらいにシェアリングエコノミー界隈で知名度が上がっていき、ガイアックスとは関係なく私自身と繋がりを持ってくれる人が増えました。

大久保:Airbnbは今どのような流れの中にありますか?

佐別当:現在、最高収益を上げており、ビジネスの規模がどんどん大きくなっています。コロナ禍でリストラをしなければならない厳しい時もありましたが、テレワークが世界中で広がったことで、リモートで仕事をしながら世界を転々とする人が増えました。

これまでAirbnbの宿泊地は観光地が多かったのですが、よりローカルな場所でゆっくりと長期滞在する使い方も増えています。

地域との交流を重視した「ADDress」の新しい住まいの形

大久保:「ADDress」はどのようなプロセスで広がりましたか?

佐別当:「ADDress」が完成した際に、軽い気持ちでプレスリリースを出したところ、初日から1,400名以上の方々から反響があり、サービスをリリースしてすぐに認知を広げることができました。

今までに倒産の危機もありましたが、多くのユーザーや投資家の方々に応援してもらえたおかげで、「利益」よりも「サービス品質」を重視し続けられています。社会のみなさまに応援していただき、ここまで続けられていると強く感じます。

大久保:「ADDress」のビジネスモデルは従来の民泊とどのように違いますか?

佐別当「ADDress」は「多拠点居住のプラットフォーム」で、月額の家賃を払うと、全国200箇所以上ある居住地の中から好きな場所で自由に暮らせる「住まい」のサービスです。

「ADDress」と従来の民泊サービスとの1番の違いは「地域との交流」です。

これまでの民泊は旅行や観光の要素が強く、ホストや他の利用者との交流や共同生活はありえませんでした。私は交流ができる民泊に魅力を感じていたので、「ADDress」は同居型の住まいを提供しようと思いました。

「ADDress」の利用者は滞在地が生活拠点になるので、地域のコミュニティとの関わりを創出したいと考えています。ユーザーはシェアハウスのような形で暮らしながら、他のユーザーと共同生活をしたり、家守というその地域のコミュニティ・マネジャーを中心に、地域の方々との交流も生まれたりする仕組みを作っています。

ユーザーと地域の架け橋となる「家守」の存在

大久保:家守の役割を教えてください。

佐別当家守とはユーザーと地域の架け橋としての役割を担っていただいています。多拠点居住を楽しむのに、一番大切なのは「地域との関係性」です。

住む場所はお金で解決できますが、地域の方々からの信頼はお金では買えません。知らない土地で1から地域の方々との関係性を築くことは大変なので、家守の存在はとても重要です。

家守に会いにその地域に通い、次第にその地域のことが好きなり、移住する人もいます。多拠点居住をする方がその地域の本当の魅力を感じるには、家守が必要なのです。

大久保:家守は物件の持ち主の方ですか?

佐別当:物件の持ち主であるとは限りません。

特に地方に増えている空き家問題への取り組みとして「ADDress」に登録するホストもいるので、物件のオーナーと家守は別であることが多いです。

コロナ禍の影響でテレワークが急増!「ADDress」ユーザー層も変化

大久保:アドレスを創業した時は、テレワークがこんなにも普及すると考えていましたか?

佐別当:アドレスは2018年に創業したので、コロナ禍になり、急激にテレワークが普及したことは追い風になりました。しかし、創業した時から近い将来テレワークが広がると予測されていたので、いずれ必要になるサービスだと思っていました。

大久保:コロナ禍の影響でユーザー層に変化はありましたか?

佐別当:コロナ前はフリーランスや自営業をされている方がユーザーの中心でしたが、コロナ以降は会社員の方が約40%に増えていて、一番多いユーザー層となりました。

さらに、大学生ユーザーが全体の約10%を占めるようになり、様々な地域で様々な人と出会いながら、オンラインで大学の講義を受けられるので、実家とアドレスを拠点にしている大学生が増えています。

これまではフットワークの軽いフリーランスや自営業の方が利用してくれていましたが、会社員の方の利用が増えたことで、マーケットはさらに拡大すると思います。

大久保:事業が伸びるタイミングで組織的な問題などはありましたか?

佐別当:私は今の企業の組織経営のあり方は古いと思っています。

アドレスでは家守やユーザーもアドレス組織の一員だと考えており、アドレスの社員は20名程度とあまり増やしていません。社員だけでなく家守やユーザーなどアドレスに関わる人みんなで会社を経営している感覚です。

幸いにも「ADDress」のファンの方々は大勢いるので、組織的に困ったことがあっても、家守やユーザーに助けていただいています。

人脈と経験を生かせるので「40代以降の起業」は成功率が高い

大久保:起業家に向けてメッセージをお願いします。

佐別当:私は40歳で起業しましたが、起業してよかったと思っています。

40代以降の方の多くは家族がいるので躊躇する人も多いと思いますが、若い頃より人脈も経験もあるため、40代以降の起業は成功率が高いと言われています。積極的にぜひチャレンジしてもらいたいです。

若い方々は、相談できる経験豊かな先輩が身近にいると、経営において間違った選択をする機会は減ると思います。仲間は本当に大切です。お金の繋がりではなく、同じビジョンを持ち、心を預けられるような仲間作りが必要だと感じています。

大久保:最後に多拠点居住の魅力を教えてください。

佐別当:人生が変わるタイミングはそんなに多くはないと思います。例えば、引っ越しや就職、転職などで居住地が変わることは人生を大きく変えるチャンスです。

多拠点居住は毎月引っ越しをしている感覚なので、人生が変わるタイミングが毎月あるとも考えられます。自然が豊かな場所で暮らしたり、趣味を楽しめるメリットもありますが、自分の人生観が変化したり、常に新しい気づきがあることが多拠点居住の魅力です。

サービスを利用して、人生が大きく変わったという会員さんは多くいます。皆さんも自分の生活を変えるために多拠点生活をしてみませんか?

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(取材協力: 株式会社アドレス 代表取締役/一般社団法人シェアリングエコノミー 協会幹事 佐別当 隆志
(編集: 創業手帳編集部)



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