年末調整をしないとどうなる?会社の罰則・書類未提出の影響と対処法
年末調整をしないと国税から罰則を受ける可能性もある?

年末調整をしないとどうなるのかは、「会社が実施しない場合」と「従業員が書類を提出しない場合」に分けて考える必要があります。
会社には対象となる従業員の年末調整を行う義務があり、従業員が書類を提出しない場合は、本人の控除や税額の精算に影響が生じます。
今回の記事では、年末調整をしないとどうなるのかを詳しく解説します。
この記事の目次
年末調整とは何か

そもそも、年末調整とはどのようなもので、なぜ必要なのでしょうか。年末調整の役割を知ると、事業主がしないといけない作業である理由がわかります。
年末調整の概要と必要性
年末調整は、あらかじめ従業員の給与から天引きした源泉徴収と、本来の所得税額の差異を調整する作業です。
本来納めるべき所得税と源泉徴収には差額が生じるため、年末調整によって源泉徴収の過不足を算出し、還付や追徴を実施します。この調整は、年末調整が必要とされる主な理由の一つです。
もう一つの理由に、所得控除があります。所得控除とは特定の条件ごとに適用される控除制度で、税金のかかる所得額を軽減するものです。
年末調整により所得控除が適用されることで所得の総額が圧縮され、結果的に所得税の総額も減額できます。
年末調整の期限
年末調整は原則としてその年最後の給与を支払うときに行い、従業員の書類提出期限は、その計算に間に合うよう会社が社内で設定します。
2026年分の年末調整に係る源泉所得税の納期限は、通常2027年1月12日(火)、納期の特例を受けている場合は1月20日(水)です。また、源泉徴収票の交付や法定調書の提出期限は、2027年2月1日(月)です。
会社は11月ごろから準備を始め、従業員の給与が確定するまでに必要書類を集めなくてはなりません。書類の配布と回収、所得税の計算のすべての工程に余裕を持って進めなくては、期限に間に合わない恐れがあります。
年末調整と確定申告の違い
年末調整は、従業員を雇用している会社が、従業員に代わって所得税の計算を行うものです。
一方、確定申告とは雇用主のいない個人事業主や給与所得以外の所得を得た人が、自分自身で所得税を計算し、届け出ます。
なお、副業の所得があっても勤務先の年末調整は通常どおり行われます。副業分の所得税の精算は、必要に応じて本人が確定申告で行います。
年末調整をしないとどうなる?罰則やデメリットについて

会社側のミスなどが原因で年末調整をしないとどうなるのでしょうか。会社にも従業員にも、多くの問題が起こる可能性があります。
税法に違反し罰則のリスクがある
会社には所得税法第190条に基づき対象者の年末調整を行う義務があり、本人の希望では省略できません。
源泉所得税の徴収・納付を怠ると、所得税法第240条・第242条により刑罰の対象となる場合があります。
単なる遅れやミスで直ちに刑罰が科されるわけではありません。源泉所得税の納付不足には、加算税・延滞税がかかる場合があります。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 延滞税 | 税金の納付期限を過ぎた場合に、期限の翌日からの日数に応じて決まる |
| 不納付加算税 | 源泉所得税を法定納期限までに納めなかった場合に、納付税額の10%(自主納付なら5%)が課される |
| 重加算税 | 事実を隠ぺい・仮装して納付しなかった場合に、不納付加算税に代えて課される |
出典:e-Gov法令検索「所得税法」第190条・第240条・第242条、「国税通則法」第60条・第67条・第68条
納めすぎた所得税が精算されないままになる
年末調整をしないと、従業員側には納めすぎた所得税が精算されないデメリットが生じます。
会社は従業員の給与から源泉徴収税を天引きしていますが、毎月の源泉徴収税額と年間の所得税額には差額が生じる場合があり、年末調整によって還付または追加徴収を行います。なお、住宅ローン控除は原則として初年度に確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で適用できます。
そのため年末調整を行えば、たいていの場合は従業員に過剰な分の所得税が還付されます。未精算分は還付申告で取り戻せる場合があります。
控除が反映されず税負担が重くなる場合がある
年末調整を行わないと、所得控除が反映されません。その結果、従業員の所得税や住民税が本来より重くなるおそれがあります。
住民税は所得税額に比例するのではなく、市区町村が給与支払報告書などをもとに前年の所得から計算します。控除が反映されていないと、確定申告などで修正しない限り住民税の計算にも反映されません。
年末調整で適用される各種控除は以下のとおりです。
| 控除の種類 | 概要 |
|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得金額に応じて金額が決まる所得控除(2026年分は最大104万円) |
| 配偶者控除/配偶者特別控除 | 配偶者の所得総額が一定以下の場合に適用される控除 |
| 扶養控除 | 子供などの扶養親族がいる場合に適用される控除 |
| 社会保険料控除 | 健康保険や厚生年金などの社会保険料を納めた場合に適用される控除 |
| 生命保険料控除 | 生命保険や介護保険などの保険料を支払った場合に適用される控除 |
| 地震保険料控除 | 地震保険の保険料を支払った場合に適用される控除 |
| 住宅借入金等特別控除 | 一定の要件を満たす住宅ローンがある場合に、税額から直接差し引く税額控除 |
年末調整は納めすぎた所得税を調整するだけでなく、所得控除を正しく適用することで税金の負担を抑えているのです。
ふるさと納税のワンストップ特例が使えなくなる場合がある
従業員がふるさと納税をしている場合も、年末調整をしていないだけで直ちにワンストップ特例の対象外になるわけではありません。
ふるさと納税は自治体への寄附金であり、実施すれば寄附金控除が適用されます。控除の適用には確定申告が必要ですが、確定申告が不要な給与所得者で寄附先が5団体以内であれば、確定申告なしで控除を受けられるワンストップ特例が使えます。
ただし、確定申告をする場合は特例の申請が無効となり、申請済みの寄附も含めて寄附金控除を申告しなければなりません。
従業員側に確定申告の手間がかかる
年末調整が未実施の場合、精算は従業員自身の申告に委ねられます。2か所以上から給与を受けているなど確定申告が必要な人は期限内に申告し、義務のない人も納めすぎた分を取り戻すには還付申告が必要です。
年末調整も確定申告もしない場合、所得税の還付や控除の適用を受けられません。年末調整が未実施の中で還付や控除を受けるには、個人での確定申告をせざるを得ないのです。
従業員の負担軽減のためにも、会社の義務として年末調整を実施しましょう。
年末調整をする?しない?条件別に解説

年末調整は基本的にしなくてはならないものですが、例外的に必要のないケースもあります。
年末調整をすべき人と、しなくても問題ない代表的なケースをピックアップしました。
年末調整をしないといけない人
年末調整の対象者は、その年分の扶養控除等(異動)申告書を提出している人のうち、以下に当てはまる従業員です。
-
- 1年を通じて勤務している人
- 年の途中で入社し、年末まで勤務している人
- 年の途中で退職した人のうち一定の人(死亡退職など)
アルバイトやパートで働く人でも、上記の条件に当てはまる場合は勤務先での年末調整が必要です。
アルバイトやパートが複数の勤務先で働く場合、原則として扶養控除等申告書を提出した主たる勤務先で年末調整を受けます。
年末調整の対象外になる人・できない人
以下の人は年末調整の対象外です。
-
- その年の給与が2,000万円を超える人
- 災害減免法の規定により、給与の源泉所得税について徴収猶予または還付を受けた人
- 日雇い労働者や業務委託契約者にあたる人
- 扶養控除等申告書を提出していない人(2か所目以降の勤務先など)
など
これとは別に、本来は対象でも必要な情報を確認できず年末調整ができないケースがあります。代表的なのは前職分の給与等を源泉徴収票で確認できない場合で、会社は年末調整を行えず本人が確定申告で精算します。
個人事業主は対象外ですが、対象となる従業員に給与を支払う場合は年末調整が必要です。
【事業者・従業員】年末調整でしないといけないこと
年末調整は、事業者と給与所得者の双方にやるべきことがあります。どちらか片方だけの手続きでは進行できません。
事業者と給与所得者、それぞれのやるべきことを知り、年末調整を円滑に進めていきましょう。
事業者側がやるべき年末調整の手続きは?
事業者側が行うべき年末調整の手続きは、主に以下のとおりです。
-
- 申告書の準備、配布、回収
- 申告書の記載内容の確認、添付資料との照合
- 所得税の年税額の計算
- 所得税の還付、徴収
- 源泉徴収票の発行
事業者側は、必要な書類を従業員に記入してもらい、その照合や所得税の計算を行います。
各従業員が本来納めるべき所得税がわかったら、それぞれ還付または追加徴収を行いましょう。さらに源泉徴収票も発行し、従業員に配布します。
従業員側がやるべき年末調整の手続きは?
給与所得者側である従業員は、主に次の手続きの準備を進めます。
-
- 各申告書への記載
- 各申告書と控除証明書の提出
給与所得者は、年末調整に必要な申告書への記載を行います。配偶者や保険の有無など個々人で書くべき欄が変わるため、申告書をよく確認しましょう。保険料控除を受けるには、保険会社から発行される証明書も必要です。
多くの場合は期限が定められることとなるので、会社から通達された期日を守るようにしましょう。
事業者・従業員が作成しないといけない書類は?
年末調整には多くの申告書類が必要となり、事業者・従業員ともに関わることになります。
両者が準備すべき書類について、以下にまとめました。
| 申告書の種類 | 事業者 | 従業員 |
|---|---|---|
| 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 準備、配布、回収、確認をする | 必要欄に記入する |
| 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 準備、配布、回収、確認をする | 必要欄に記入する |
| 給与所得者の保険料控除申告書 | 準備、配布、回収、確認をする | 必要欄に記入する |
| 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | 回収、確認をする | 準備、必要欄に記入する |
| 各種控除証明書 | 回収、確認をする | 準備、添付する |
事業者側が行うのは、各種書類の準備と従業員への配布、回収、確認です。記載内容に誤りや漏れがないかチェックし、所得税の計算に活用します。
従業員側は配布された書類の記入がメインですが、住宅ローン控除申告書や各種保険料の控除証明書は自身で準備が必要です。いずれも管轄の場所から送られてくるので、大切に保管しておきましょう。
年末調整を忘れてしまった場合の対処法

年末調整を忘れた場合は、会社側で対応状況と再調整の可否を確認します。
会社・給与担当者が対応状況を確認する
会社は対象者や不足書類、計算・納付漏れを確認します。
年末調整後に控除内容が変わった場合、源泉徴収票の交付前は再調整ができます。徴収不足があれば交付後も会社側の対応が必要です。
会社で対応できない場合は確定申告を行う
会社で年末調整や再調整ができない場合は、本人が確定申告で精算します。確定申告が必要な人は、翌年2月16日から3月15日までに申告します。
申告には、会社が交付する源泉徴収票が必要です。
還付申告を行う
年末調整で所得控除や所得税の還付を受けられなかった場合、還付申告を行うことが可能です。
もともとは、確定申告が義務付けられていない人に対して設けられた制度であり、確定申告と同じ手順を踏んで手続きを行います。
還付申告は、確定申告の期間に関係なく、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます。
年末調整を円滑に行うポイントは?

本来すべき年末調整をしないと多くの問題が発生しますが、作業に手間がかかるのも事実です。
できるだけ円滑に年末調整を行うためのポイントを以下にまとめました。
年末調整を電子化する
年末調整を電子化すると、従業員と事業者の双方で大きなメリットが得られます。
従業員は国税庁の「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」を使うことで記入の手間が省けるほか、控除額の計算が自動化されるのでミス抑制にも効果的です。
入力漏れなどの不備の一部は自動でチェックされ、事業者側の確認作業を効率化できます。電子データは書類のような紛失・汚損リスクが少なく、管理にかかるコストも低下します。
電子化すれば年末調整の時短や効率化に伴い、コア業務に割く時間も拡大するでしょう。
会計ソフトなどの電子ツールを活用する
年末調整には、給与や税金の計算を効率化できる電子ツールの活用がおすすめです。年末調整の手続きを容易にするのはもちろん、日常の経理業務にも活かせます。
さらに、年税額の計算ミスといったヒューマンエラーが減少します。過誤納をを防ぎ、正確な納税の実現にも寄与するでしょう。
会計ソフトは自社に合ったものを第一に、導入や維持にかかるコストとあわせて検討が必要です。
年末調整を代行してくれるサービスを使う
煩雑な年末調整の手続きを代行してくれるサービスがあります。代行サービスでは、記載の済んだ申告書の確認作業や、従業員ごとの年税額の算出などを依頼可能です。
所得税の過不足がないかの計算も任せられるほか、源泉徴収票の作成まで担ってくれます。
年末調整の手続きは1年に1回であるため、担当者であっても慣れにくいことが予想されるでしょう。代行サービスにスポット業務として依頼すれば、年末調整に手間を割くことなく、他の必要な作業に集中できるのです。
依頼報酬を踏まえたうえで検討し、年末調整をスムーズにする手段として利用してください。
計画を立てたうえで年末調整を進める
年末調整は場当たり的に行うのではなく、あらかじめ計画を立てて進めるのが理想です。提出期日があるため、逆算して計画的に手続きを進行しましょう。
担当者が把握しておくことはもちろん、従業員にも周知させ、期限内に申告書を記載してもらう必要があります。
可能であれば、申告書の記載手順を記したマニュアルを整備しておくとスムーズです。修正があると従業員に差し戻す手間が発生するため、そのリスクを低減する手段として検討しましょう。
年末調整に関するよくある質問
こちらでは年末調整をしなかったり忘れたりした場合に関する、よくある質問にお答えします。
Q. 年末調整の書類を提出しないとどうなりますか?
A. 書類の種類によって異なります。その年分の扶養控除等(異動)申告書を出していない人は年末調整の対象外です。保険料控除申告書など個別の控除の書類を出し忘れただけなら、年末調整自体は行われ、その控除だけが反映されません。この控除は会社の再調整か本人の確定申告で受けられます。
Q. 自分で確定申告をする場合も、会社の年末調整は必要ですか?
A. 必要です。年末調整は対象者について会社に義務付けられた手続きで、本人が確定申告をする予定でも省略できません。医療費控除など年末調整で扱えない内容は、年末調整を受けたうえで本人が申告します。
まとめ・年末調整をしないリスクを理解して実施しよう
年末調整を行わないと、従業員に負担が生じるほか、会社側も法令違反による罰則等の対象となる可能性があります。
年末調整担当者は、多忙や作業の煩雑さで作業がおろそかになってしまう場合もあるかもしれませんが、そのようなケースを防ぐのが作業の電子化です。電子化に対応したツールをうまく利用して、スムーズに業務を行うようおすすめします。
年末調整をしないことで発生する様々なリスクを避けるためにも、確実に手続きを行いましょう。
(編集:創業手帳編集部)
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