年末調整をしないとどうなる?手続きの基本からリスクなどを徹底解説

創業手帳

年末調整をしないと国税から罰則を受ける可能性もある?


会社に雇用されている従業員は、年末調整を受けられます。
本来であれば、所得を得た場合には確定申告が必要なところを、会社が手続きを行うことにより、個人で手続きをする必要がなくなります。
所定の書類を会社が提出しなければ、従業員の年末調整が実施されず、所得税の還付や各種控除を受けられません。

今回の記事では、年末調整をしないとどうなるのかを詳しく解説します。

創業手帳では、副業をされている方向けの「副業確定申告ガイド」や、経営者向けの「確定申告ガイド」をご用意しています。記事とあわせてぜひ参考になさってください。





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この記事の目次

年末調整とは何か


そもそも、年末調整とはどのようなものでしょうか。

年末調整の概要について

年末調整は、あらかじめ従業員の給与から天引きした源泉徴収と、本来の所得税額の差異を調整する作業を指します。
年末で給与が確定すると、本来支払うべき所得税と源泉徴収の金額に差額が生じることがほとんどです。

そのため、正確な所得税額を確定させた上で、源泉徴収の過不足を算出しなければなりません。
結果、源泉徴収で支払いすぎた場合は、従業員に差額を還付し、金額が足りない場合は追加で徴収することになります。

年末調整が必要である理由

年末調整が必要な理由は主に2つあり、1つめは所得税を正しく納める義務が挙げられます。
税法により、日本国民は納税の義務が課せられています。その中で所得税は、ある一定ライン以上の所得を得た人が、必ず納めるべき税金です。

給与からの源泉徴収と、年末に確定した給与との差額を正しく計算し、決められた金額の所得税を納めなければ、税法に抵触してしまいます。
そして、年末調整をする理由の2つめは、年末調整は所得控除を受けるために必要なものだからです。
所得控除とは、所得を得た人に何らかの条件が当てはまれば、その条件ごとに設定された金額が所得から控除されます。

これにより、所得の総額が圧縮され、結果的に所得税の総額も減額できる仕組みです。
年末調整を受け、所定の手続きを踏むことで、この所得控除を受けられます。

年末調整で受けられる各種控除

年末調整をすることで受けられる主な所得控除には、以下のようなものがあります。

・基礎控除
基礎控除は、所得総額に応じて設定されたもので、所得を得た人すべてが受けられます。
基礎控除の金額は所得総額によって決められており、最低でも48万円の控除が適用される仕組みです。

・配偶者控除
配偶者がいる場合、その配偶者の所得総額が48万円以下であれば、この控除を受けることが可能です。
控除を受ける人の所得総額、または配偶者が一般・老人控除(その年の12月31日時点で70歳以上)いずれの対象であるかによって、控除額が異なります。

・配偶者特別控除
上記の配偶者控除とは別に、一定の条件を満たした場合には配偶者特別控除を受けることが可能です。
控除額は、控除を受ける本人と配偶者それぞれの所得総額によって、細かく設定されています。

・扶養控除
扶養家族がいる人向けの控除です。年齢または控除を受ける人と同居しているかどうかなど、いくつかの条件をクリアした場合に、複数の区分に分類されて決まった額が控除されます。

・社会保険料控除
控除を受ける人自身、もしくは配偶者などが支払った健康保険や厚生年金保険をはじめとする各種社会保険料に関しては、その全額を所得から控除することが可能です。

・生命保険料控除
生命保険・介護保険・個人年金保険に加入している場合、保険料に応じた金額の控除を受けられます。

・地震保険料控除
何らかの損害保険に加入している時、その補償内容の中での地震による損害保険料にあたる部分は、最大5万円の控除を受けることが可能です。

・住宅借入金等特別控除
一般的に、住宅ローン控除と呼ばれているものです。住宅の新築・取得・増改築を行った時、住宅ローンを組んだ場合に適用されます。
その住宅が一定条件を満たせば、住宅区分や住んでいる年数により、控除額および期間が決められます。
ただし、ローンを組んだ最初の年に関しては年末調整で控除できず、確定申告を行う必要がある点に注意してください。

年末調整では適用されない各種控除

年末調整を行っても、適用されない控除があります。これらの控除は、確定申告をしなければ受けられません。その種類は以下のようなものです。

・雑損控除
災害や盗難などの被害で、何らかの損失を負った人が受けられる控除です。損失を負った対象は、住宅・家具・資産などのように、最低限生活に必要なものに限られます。

・医療費控除
自分自身もしくは配偶者などが、一定ラインを超える医療費を支払った場合、所定の計算式によって算出された金額が控除されるものです。

・特定支出控除
勤務に関連した通勤費・転居費・研修や資格取得費などの支出額が、給与所得控除(給与収入額に応じて一定額控除されるもの)額の2分の1を超える時、超過分について控除を受けられます。

・寄附金控除
国・地方自治体・公益社団法人などに寄附を行った時、寄附金の合計額、もしくは所得総額の40%のどちらか低い金額から2,000円を差し引いた額が控除されます。

年末調整と確定申告とはどう違うのか

年末調整は、従業員を雇用している会社が、従業員に代わって所得税の計算を行うものです。
一方、確定申告は、雇用主のいない個人事業主や給与所得以外の所得を得た人が、自分自身で所得税を計算し、届け出ます。
なお、給与所得者でも副業で別に所得を得た場合は、年末調整の対象にはなりません。確定申告を行わなくてはならないため、注意が必要です。

年末調整と確定申告の違いについて、詳しくはこちらの記事を>>
年末調整と確定申告の違いと注意点

年末調整を受ける条件とは?状況別に解説


それでは、年末調整を受けるために必要な条件とは何でしょうか。対象となる人の条件のほか、受けられる場合に準備すべき書類などについても解説します。

年末調整を受けられる人の条件

年末調整を受けられる人は、基本的にその年の12月31日時点で会社に雇用されて勤務している人です。これらの人は、原則として12月の年末調整を受けられます。
それ以外に、年の途中でも年末調整を行うことがあり、下記のような人が対象になります。

  • 海外転勤などで国内に居住しなくなった人
  • 死亡したことで退職した人
  • 心身の障害などで退職し、再就職が難しい人
  • 12月分の給与を受け取ってから退職した人
  • パートタイマーなど勤務し、中途退職した場合に、その年の給与総額が103万円以下、かつその年に別の勤務先から給与を受け取っていない人

 

年末調整を受けられない人の条件

反対に、以下のような条件の人は、年末調整を受けられません。

  • その年の給与が2,000万円を超える人
  • パートやアルバイトで2社以上掛け持ちし、より給与の多い会社から年末調整を受ける人
  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を行わなかった人
  • 何らかの理由で、源泉徴収税の還付などを受けた人
  • 日雇い労働者や業務委託契約者にあたる人
  • 中途採用で、前の会社から源泉徴収票をもらっていない人
  • など

 

以上の人は、ケースにもよりますが、自ら確定申告を行う必要があります。

個人事業主やフリーランスは年末調整が必要なのかについて、詳しくはこちらの記事を>>
個人事業主・フリーランスは年末調整が必要なのか?

アルバイト・パートでも条件を満たせば年末調整は必要

アルバイトやパートで働く人でも、前述したように年末調整を受けられる条件に当てはまる場合は、勤務先での年末調整が必要です。
ただし、アルバイト・パートの人が結婚して配偶者の扶養に入り、給与収入が103万円以下の場合、配偶者の扶養控除を受けることとなります。

年末調整を受けるために必要な書類

自身が年末調整を受ける条件に該当する場合、必要な書類を準備しなくてはなりません。
どのような書類があるのか、代表的なものをみていきましょう。

各種申告書

年末調整に必要な申告書は、従業員が手続きに必要な事項を記載し、会社に提出します。その種類は、以下のようなものです。

  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

多くの場合、申告書は事業所側が用意してくれるケースもあります。
ただし、住宅借入金等特別控除申告書は控除を受ける本人に送付されるため、自身で準備が必要です。

各種控除証明書

特に、各種保険料控除を受ける場合に、以下のような控除証明書が必要です。

  • 社会保険料の控除関連書類
  • 生命/介護保険・個人年金の控除証明書
  • 地震保険の控除証明書
  • など

 
これらは、年末調整の少し前の時期から、自治体・健康保険組合・年金事務所・保険会社などから送付されるため、なくさないように大切に保管しておきます。

その他各種書類

年末調整を行う会社は、税務署や自治体に提出する書類を用意します。その書類とは、以下のとおりです。

・所得税徴収高計算書(納付書)
従業員の所得を6つの区分に分け、それぞれに支払い年月や支払いの合計額などを記載します。これにより、正確な所得税額を割り出し、税務署に納付するものです。

・給与所得の源泉徴収票および退職所得の源泉徴収票
給与所得および退職所得を得た人について、源泉徴収税の計算を行った源泉徴収票を提出します。
源泉徴収票には、給与収入から給与所得控除を差し引いた後に、所得控除をさらに差し引き、所得税率・税額控除・復興特別所得税それぞれを加味して算出した金額を記載します。

中途退職をした人の年末調整の方法

年の途中で退職した人については、基本的に転職先の会社(その年の12月31日まで転職先に在籍している場合)で、前職分も含めた年末調整を受けてもらいます。
しかし、12月31日時点でどの会社にも勤務していない場合は、その年に勤務していた期間の所得税について、確定申告で税務署に申告しなくてはなりません。

ただし、退職の際に得た退職所得に関しては、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、源泉徴収税を差し引いた金額が支給されるため、確定申告は行わなくても良い仕組みになっています。

年末調整において事業者と給与所得者でやるべきこと

年末調整は、事業者と給与所得者の双方にやるべきことがあります。
どちらか片方だけの手続きでは進行できません。
事業者と給与所得者、それぞれのやるべきことを知り、年末調整を円滑に進めていきましょう。

事業者側がやるべき年末調整の手続きは?

事業者側が行うべき年末調整の手続きは、主に以下のとおりです。

  • 申告書の準備、配布、回収
  • 申告書の記載内容の確認、添付資料との照合
  • 所得税の年税額の計算
  • 所得税の還付、徴収
  • 源泉徴収票の発行

事業者側は、必要な書類を従業員に記入してもらい、その照合や所得税の計算を行います。
各申告書の様式は国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署の窓口でも受け取りが可能です。

電子申請を用いる場合、書類の情報は電子データで送信してもらうこともできます。
紙書類であれば余裕をもって配布し、指定した期限以内に回収できるよう告知しておきましょう。

控除証明書などの添付がある場合、記載内容と証明書の内容に乖離がないかなどを照らし合わせておきます。
12月分の給与・賞与が決まり次第、収集した申告書の内容を含めて所得税の年税額を計算しましょう。

計算の結果により、払い過ぎた税金がある場合は還付、不足しているなら徴収することで、正確な納税が完了します。
また、源泉徴収票の発行も忘れずに行ってください。

給与所得者側がやるべき年末調整の手続きは?

給与所得者側は、主に次の手続きの準備を進めます。

  • 各申告書への記載
  • 各申告書と控除証明書の提出

給与所得者は、年末調整に必要な申告書への記載を行います。
住宅借入金等特別控除申告書など、本人が税務署から受け取る申告書もあるため、もらったあとは大切に保管しておいてください。

毎年10月頃には、保険会社などから控除証明書が送付されます。
申告書に記載する際の資料となるほか、添付も必要であるため、こちらも紛失しないよう注意しましょう。

配偶者がいる場合は配偶者控除等申告書の欄も確認するなど、自身の状況に応じて記載する範囲は異なります。
記載すべき欄をすべて埋めたうえで、控除証明書といった添付資料とあわせて事業所に提出してください。

多くの場合は期限が定められることとなるので、会社から通達された期日を守るようにしましょう。

年末調整をしないとどうなるのか?罰則やデメリットについて


会社側のミスなどが原因で年末調整をしなかった場合には、どのようなことが起こるのでしょうか。

税法に違反する

所得税の納付については所得税法によって規定されており、年末調整は従業員を雇用する会社に義務付けられているものです。
また、従業員側としても、年末調整を受けることが義務であるため、双方が手続きを怠った場合、所得税法に違反する恐れがあります。
罰則として、会社側が年末調整を行わなかった場合や、従業員側が書類に虚偽を記載した場合、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。

また、会社が従業員の所得税を税務署に納めなかった場合は、10年以下の懲役・200万円以下の罰金のどちらか、または両方が科される重罪です。

追徴課税について

上記のようなケースで、税務署に所得税を納めなかった場合、罰則とは別に追徴課税が課せられることがあります。
追徴課税の詳細は下記のとおりです。

・延滞税
税金の納付期限を過ぎた場合、その期限の翌日からの日数に応じて決まった税率による延滞税が別途加算されます。

・過少申告加算税
納めるべき税金の金額を少なく申告していた場合に、本来の納税額に加算される税金であり、こちらも条件により税率が決められています。

・重加算税
例えば、年末調整などで虚偽の申告をしたり、事実を改ざん・隠ぺいしたり、その手口が悪質と判断されたりした場合に科せられる重い罰則です。
その税率は、ほかの追徴課税よりも高く設定されています。

所得税の還付が受けられない

通常、会社は従業員の所得から概算した源泉徴収額をあらかじめ天引きしています。この時、所得税額確定後の金額よりも多く徴収していることがほとんどです。
そのため、年末調整を行えば、たいていの場合は従業員に過剰な分の所得税が還付されますが、年末調整を行わないと還付を受けられなくなります。

住民税額がつり上がる可能性も

所得控除が受けられなくなると、所得の圧縮ができず所得税はふくれ上がります。
そして、確定した所得税から翌年の住民税が算出されるため、所得税が高くなれば、その分住民税もつり上がる仕組みです。

源泉徴収税が高くなる

毎年、国税庁が公開する「源泉徴収税額表」では、会社が従業員に対して行う給与の支払い方法によって「月額表」と「日額表」を使い分けます。

この時、税区分として「甲欄」・「乙欄」・「丙欄」が使用され、このうち給与所得を得る人に適用されるのは「甲欄」と「乙欄」です。
年末調整をしない=「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しないと、「乙欄」に区分され、「甲欄」よりもかなり多額の源泉徴収税を徴収されることとなります。

ふるさと納税のワンストップ特例の対象外になる

ふるさと納税は、自治体への寄附金であるため、寄附金控除のひとつとして数えられます。
この場合、基本的に確定申告が必要ですが、年末調整を受ける人に関してのみ、確定申告なしで控除が受けられるワンストップ特例が制定されています。
しかし、年末調整を行わない場合にはワンストップ特例が適用されず、確定申告を従業員自身が行わなければなりません。

年末調整を忘れてしまった場合の対処法


もし、年末調整の手続きを忘れてしまった場合は、どうすれば良いのでしょうか。

確定申告を行う

年末調整を行わなければ、所得税を確定させられず、従業員への還付もしくは追加徴収ができなくなります。そのため、従業員が個々に確定申告を行わなければなりません。
給与所得を得ている人は、確定申告書2種類(A・B)のうち、Aを使用します。そのほかに、以下のような書類が必要です。

  • マイナンバーカード1種類か、住民票の写し・運転免許証・健康保険証などの2種類の本人確認書類
  • 銀行口座の通帳
  • 所得が証明できる源泉徴収票
  • 所得控除を受けるために必要な各種証明書

補足:年末調整とは別に確定申告が必要なケース

年末調整を終えても確定申告が必要な場合もあります。
年末調整とは別に確定申告をすべき人は、以下のとおりです。

・副業をしている人
会社に雇用されて勤務している以外に副業を持っている場合は、副業で得た所得(収入-経費)が20万円を超える場合に、年末調整とは別に確定申告を行います。

・年末調整の対象外である控除を受ける人
前述したように、雑損控除・医療費控除・寄附金控除などを受けたい人は、年末調整の対象外であるため、別途確定申告が必要です。

還付申告を行う

年末調整で所得控除や所得税の還付を受けられなかった場合、還付申告を行うことが可能です。
もともとは、確定申告が義務付けられていない人に対して設けられた制度であり、確定申告と同じ手順を踏んで手続きを行います。
還付申告は、その年から5年以内に行えば問題ありません。

年末調整の期限について

従業員から提出された年末調整の各書類の提出期限は、年末調整を行った翌年の1月31日までであり、最終的に計算した源泉徴収税は翌年1月10日までに納付します。
そのため、会社は11月ごろから準備を始め、従業員の給与が確定するまでの間に従業員から必要書類を集めて、所得税の計算や各種提出書類の準備を行わなければなりません。

年末調整を簡単にする電子化について


年末調整の手続きは、電子化する動きが広まっています。電子化により、年末調整の失念や誤りなどのリスクを避けられます。

年末調整を紙書類で処理する際の問題点

書面での処理では、従業員側と会社側のいずれにも問題点があります。

従業員側では各種申告書を手書きし、保険料控除などの金額も自ら計算しなくてはなりません。
不備があった場合は修正する手間がかかり、コア業務にあてる時間を書類作成の手続きに費やすこともあるでしょう。
また、長期保存が求められる控除証明書を紛失する恐れもあります。

会社側も同様に、従業員から提出された各種申告書を担当者が確認し、人事・給与システムに入力する手間があります。
誤りや不備があれば、従業員に訂正を求めるなどコミュニケーションコストがかかるだけでなく、再度確認しなくてはなりません。
各種申告書を決められた期間にわたって保存する必要もあり、管理の手間もかかります。

紙書類の保存期間について

年末調整にかかる各種申告書や控除証明書は、7年間にわたり保管することが義務付けられています。
その分、書類保管スペースを確保しなければならず、オフィスを圧迫する要因となりえます。

年末調整を電子化することによるメリット

年末調整を電子化すると、従業員側だけでなく会社側にもメリットがあります。
従来の書面による年末調整とどのような点が異なるのかを紹介します。

従業員側のメリットは?

従業員が年末調整のデータを作成する際には、国税庁の「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」を使用します。
このソフトを従業員が使うことで、各種申告書を記載する手間が省け、控除額の計算が自動化されて不備が減るなどが考えられます。

また、控除証明書がデータで送付される点も書面での年末調整とは異なり、紙で保管するスペースも不要になり、紛失する心配もありません。

会社側のメリットは?

一方、会社側では、従業員から各種申告書がデータで送付されるため、会計担当者はシステム入力の手間が大幅に省けます。
申告書の抜け漏れは自動でチェックされるため、会計担当者が従業員へ修正を求めたり、書類を再度確認したりする手間もかかりません。

申告書のデータを保管できる点もメリットのひとつです。
書面では従業員分の申告書を保管するスペースが必要ですが、電子化すると保管場所が不要になり、紛失や劣化も避けられます。

年末調整の電子化に対応したツール

年末調整の電子化には、多くの会計ソフトや給与計算システムが対応しています。
また、年末調整専用のシステムもリリースされているため、自社に合ったものを選んで活用しましょう。

年末調整の電子化について、詳しくはこちらの記事を>>
年末調整の電子化のメリット・必要な準備とは

年末調整を円滑に行うポイントは?

年末調整は慣れていないと処理に手間取るうえ、歳末期は他の業務も多忙になりやすく、負担が増大します。
できるだけ円滑に年末調整を行うためのポイントを以下にまとめました。

会計ソフトなどの電子ツールを活用する

年末調整には、給与や税金の計算を効率化できる電子ツールの活用がおすすめです。
年末調整の手続きを容易にするのはもちろん、日常の経理業務にも活かせます。
年税額の計算ミスといったヒューマンエラーが減少し、正確な納税の実現にも寄与するでしょう。

また、年末調整そのものを電子化するのも有効です。
書類の配布・回収といった手間の削減だけでなく、給与データをそのまま反映するなどの便利な機能も使えます。
従業員側は紙書類に記載する負担が省けたり、前年度のデータを反映して入力効率を上げたりすることが可能です。

年末調整を代行してくれるサービスを使う

煩雑な年末調整の手続きを代行してくれるサービスがあります。
代行サービスでは、記載の済んだ申告書の確認作業や、従業員ごとの年税額の算出などを依頼可能です。
所得税の過不足がないかの計算も任せられるほか、源泉徴収票の作成まで担ってくれます。

年末調整の手続きは1年に1回であるため、担当者であっても慣れにくいことが予想されるでしょう。
代行サービスにスポット業務として依頼すれば、年末調整に手間を割くことなく、他の必要な作業に集中できるのです。
依頼報酬を踏まえたうえで検討し、年末調整をスムーズにする手段として利用してください。

計画を立てたうえで年末調整を進める

年末調整は場当たり的に行うのではなく、あらかじめ計画を立てて進めるのが理想です。
提出期日があるため、逆算して計画的に手続きを進行しましょう。
担当者が把握しておくことはもちろん、従業員にも周知させ、期限内に申告書を記載してもらう必要があります。

可能であれば、申告書の記載手順を記したマニュアルを整備しておくとスムーズです。
修正があると従業員に差し戻す手間が発生するため、そのリスクを低減する手段として検討しましょう。

まとめ・年末調整をしないリスクを理解して実施しよう

年末調整を行わなければ、従業員の負担が増えるだけではなく、会社側にも罰則が科されます。
年末調整担当者は、多忙や作業の煩雑さで作業がおろそかになってしまう場合もあるかもしれませんが、そのようなケースを防ぐのが作業の電子化です。

電子化に対応したツールをうまく利用して、スムーズに業務を行うようおすすめします。
年末調整をしないことで発生する様々なリスクを避けるためにも、確実に手続きを行いましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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