注目のスタートアップ

株式会社musbun 鈴村萌芽|学生向けの「福祉体験」機会を創出する事業開発が注目の企業


学生向けの「福祉体験」機会を創出する事業開発で注目なのが、鈴村萌芽さんが2021年11月に創業した株式会社musbunです。

厚生労働省は、少子・高齢社会の進展により、ますます国民の福祉サービスに対する需要の増大・多様化が見込まれることから、福祉人材確保への対策を打ち出しています。
それと同時に、介護保険制度や障害者自立支援法の施行により、利用者本位の質の高い福祉サービスの提供が求められるため、サービス提供の根幹である福祉人材の養成と確保が極めて重要だとしています。
福祉・介護サービス分野においては、高い離職率と相まって常態的に求人募集が行われ、一部の地域や事業所では人手不足が生じているとの指摘もあります。
人手不足解消への1つの対策として、就職期の若年層から「魅力ある仕事」として評価・選択される必要があり、福祉人材定着のためのさまざまな施策に注目が集まっています。

株式会社musbunの事業の特徴は、提供している情報が「求人」ではなく「福祉体験」であることで、福祉を学んでいない学生でも関わりやすい、福祉施設でのレクリエーションのお手伝いや、オンラインを使った傾聴ボランティア、ウォーキングの付き添いなど、福祉というよりも自分の得意なことが活かせる募集を掲載し、応募への心理的ハードルを下げ、実際の福祉体験で福祉に興味を持つきっかけを提供しているという点です。

株式会社musbunの鈴村萌芽さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

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・このプロダクト開発するに至った経緯について教えてください。

原点は、「恩返ししたい」という気持ちです。私は小さい頃から、近所のおじいちゃん、おばあちゃんたちにたくさんかわいがってもらって育ったので、お年寄りに恩返ししたいという思いがずっとありました。
大学は管理栄養学科に進みましたが、それも、お年寄りは食べることが楽しみだから、食を通してお年寄りを笑顔にしたいなと考えたからでした。
入学後は栄養学を学びながらも、「今すぐ恩返しできることはないのだろうか?」と考えるようになり、偶然目にした福祉施設でのボランティア募集のチラシをきっかけに、ボランティア活動に参加するようになりました。

福祉の勉強はこれまでしたことがなく、自分にできることがあるのか不安でいっぱいでしたが、いざ施設に行ってみると、知識や経験がなくても関われることがたくさんあると気づきました。行くだけでお年寄りから喜んで頂いたり、逆にお年寄りから学ばせて頂くことも多かったです。
こうした発見や学びは、1回訪問したからこそ気づけたことでした。福祉の体験というとハードルが高く感じますが、1回でも行く機会があれば、福祉のイメージが変わって、福祉の道に進んだり、違う道に進んでもボランティアで福祉に関わろうとする人が増えていくのではないかと感じました。

また、ボランティアに行ってみて施設の人手不足の現状も知り、自分の目の前のお年寄りに喜んで頂くだけでなく、福祉に興味を持つ人を増やす仕組みを作って、みんなで福祉の現場を盛り上げていきたいと思いました。
そこで、まず福祉に興味を持ってもらうきっかけを作るために、大学4年生の時に、学生向けの福祉体験の情報サイト「musbun(ムスブン)」を立ち上げました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

提供している情報が「求人」ではなく「福祉体験」であることです。「利用者さんとゲームを通してお話ししませんか?」など、まず楽しいところから入ってもらいたいと思っています。
musbunでは、餅つきのボランティア、クリスマス会のお手伝い、レシピ企画など、福祉というよりも自分の得意なことを活かせる募集がたくさんあって、福祉を学んでいない人でも関わりやすくなっています。
リモートでできるデザイナーの募集もあったりするので、自分の得意なところから入ってもらって、福祉が身近であることを感じてもらえたらうれしいなと思います。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

福祉人材の不足を解決することです。
musbunでは、福祉体験を通して福祉に興味を持つ学生を増やすことを第1ステップとしています。次のステップとして、福祉に興味を持った学生を就職につなげていけるようにしたいです。将来的には、ボランティアを通して福祉関係で就職したいと思ってくれた学生さんに対して、職業紹介や提案をしていけるようになりたいと思います。

福祉人材の不足という課題はとても大きい課題ですので、私たちだけでは解決できません。同じ課題に対して取り組んでいる求人サイトや企業とどんどん連携して、みんなで解決していきたいと強く思っています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

正直に言うと全部です(笑)。私の場合、もともと起業したいという願望があったわけではなく、思いだけで突っ走ってきたので、分からないことだらけでした。
創業手帳さんの冊子で、やることの全体像をつかめたので、大変助かりました。
全体像をある程度つかんだ上で、先輩起業家の方や専門家の方に、具体的な相談できたので、構想から1年でなんとかスタート地点に立てたと思っています。
情報提供サイトを運営する上で必要な手続きをきちんとできているのか、知識が無かったのでとても心配でした。
創業手帳さんの冊子を読んだり、応援してくださる方のお力を借りながら、構想から1年でなんとかスタート地点に立てた感じです。

資金面では、私たちの会社がある愛知県のスタートアップ補助金に採択して頂き、自分の蓄えと合わせてなんとか頑張っていて、今後は資金調達も考えていく予定です。
最初は1人で始めましたが、思いに共感してくれる学生メンバーが徐々に加わってくれて、今は9人で活動しています。それが私にとって一番の励みになっています。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

第一に、福祉人材不足の課題解決を目指し、その先の、福祉に関わるすべての人に笑顔を届けることをゴールにしています。まだ認知度も低いので、より多くの学生さんにmusbunを知ってもらい、使ってもらうことを一番に推進し、登録してくださった学生さんと事業所さんにしっかりと価値をお届けすることに集中していきたいと思います。

認知度アップのためには産官学連携が必要と考えており、musbunを大学のカリキュラムに導入してもらい、行政で公認してもらうことを目指しています。
現在1校で導入が決まっていますので、これから導入先を増やし、福祉体験が当たり前の社会にしていきたいと思います。
また、愛知県大府市には公認を頂いたので、今後他の行政機関にもどんどん展開していきたいです。

そして、福祉人材が足りていないのはどこの国でも同じだと思いますので、いずれは海外の方にも使って頂けるようなサイトにしていきたいと思います。

・今の課題はなんですか?

musbunはマッチングサービスなので、事業所さんと学生さんの登録をバランス良く増やしていかなければいけません。学生がたくさん集まったとしても事業所が少なければ体験先が足りないですし、募集を出しても学生が来なければ事業所も離れていってしまいます。ともに同じペースで増やしていくことが難しく悩みどころですが、認知度を上げることで解決できると感じています。

学生さんの登録の約40%がSNS経由であることから、SNS対策に力を入れています。事業所さんはSNSよりも新聞を見て問合せしてくださるので、なるべく新聞に取り上げてもらえるようにプレスリリースを出すなどしています。

・読者にメッセージをお願いします。

介護施設でボランティアさせて頂いた時に福祉人材不足の深刻さを知り、この問題の解決に少しでも貢献したいと強く思いました。解決の糸口を求めて、たくさんの関係者の方にヒアリングをする中から、学生が福祉に興味を持つきっかけを増やすことが重要であることに気づきました。そこで、福祉に関心が薄い学生でも、自分の得意を活かしたり、楽しみながら福祉体験できる環境を整えたいと考え、この本サービスをはじめました。
まだスタートしたばかりですが、学生からは「musbunを通じて福祉体験に踏み出すことができた」「福祉の魅力に気づけた」、福祉事業者様からは「musbunのお陰で、今まで出会えなかったような学生と接点が増えている」「学生が施設に来てくれるだけで雰囲気が明るくなり、笑顔が増える」という声も頂き、手応えを感じ始めています。
しかしながら、福祉人材不足は極めて構造的で複合的な問題であり、私たちだけでは解決できないため、たくさんの方々と力を合わせて取り組んでいきたいと考えています。
この記事を読んで下さった方で、少しでも共感したり、少しでも興味を持って頂いた方は、ぜひお声かけをお願いいたします!

会社名 株式会社musbun
代表者名 鈴村萌芽
創業年 2021年11月22日
社員数 9名
資本金 100万円
事業内容 福祉に関する情報を提供するサイト運営
サービス名 福祉体験情報サイトmusbun
所在地 愛知県名古屋市中村区平池町4-60-12 グローバルゲート11階
代表者プロフィール 椙山女学園大学生活科学部4年生
たくさんのお年寄りの方にかわいがってもらって育った経験から、お年寄りに恩返ししたいという想いがあり、福祉施設でのボランティア活動に参加。
ボランティア活動を通し、福祉の魅力に気づき、同世代に福祉の魅力を伝えたいと思い活動を始を開始。
大学を休学し、2021年11月 株式会社musbunを設立
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